2003.12.04 木曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第五十一話−
死闘!追い出し屋G対交渉人マスウラ、再び…の巻。
マスウラとの電話は続く−。
死闘はまだ始まったばかり。
きっぱりとマスウラの提案を断ったワタシに対し、
マスウラはと言えば、愚かな発言を繰り返すばかりであった。
マスウラ
「今回は、賃貸借契約てものがあるだろう。
ちゃんとした賃貸借契約だぞ。
家賃、敷金、更新期間。
契約は契約。
契約が守られなくて、どうする!!」
何を言ってるんだ、こいつは。
あまりにも支離滅裂な内容だ。
それこそ、内容がナイヨウ。
ちゃんとした賃貸借契約があるんだか何だか知らないが、
すでに占有者A子に対する裁判所の占有認定は出ている。
物件明細書でも明らかだ。
−本件占有者は使用借権である。
すなわち、占有者A子はタダでこのマンションの一室を借りている、
という一応とはいえ、裁判所お墨付きの認定だ。
また使用借権者は買受人に対し、どんな権限を持つか−。
−本件占有者は買受人に対抗できない。
−買受人に対抗できない占有者は引渡命令の対象となる。
もし退去に関して、買受人と占有者との間の話がまとまらなかったら、
買受人は所有権移転日から6ヶ月以内の間で、
占有者A子を相手方とした引渡命令の申立てを行うことが出来る。
以上を簡単に超訳すると…。
占有者A子は、賃貸借契約があるだの何だの言ってるが、
それは非常にインチキくさい。
つーか、オマエ、何らかの関係で、タダで借りてるだろ。
結局、タダ借りなんだろ?
どうせ今までタダで借りてたんだから、
つべこべ言わず、とっとと出ろよ!!
そこに居座る権利がないんだからさ。
あ、それでも居座る?
居座っちゃう?
それじゃあ、さすがのおにーさんも怒っちゃうよ。
じゃあ、やっちゃうよ。
やっちゃう、やっちゃう。
なにやるって、裁判所にお願いして、
ズバンと強制的に出て行って貰うよ。
それでもいいの?
−といった感じか。
ワタシ
「…マスウラさん」
ワタシは相手の懐に切り込むように、言った。
ワタシ
「先程は、ワタシ、黙って聞いてましたけどね
今度は言わせて貰いますよ」
マスウラ
「な、なんだ?」
うろたえ、あたふたと答えるマスウラ。
ヤツは今、動揺している。
−熱い。
ワタシは内なる熱を感じる。
胸がジリジリする。
煮えたぎれ、血潮!
この手、この足、このつま先!!
そう、今こそマスウラを叩き潰すチャンスだ!!
この機に乗じて、追い込みをかけるんだ!
今は攻撃あるのみ、あるのみ、あるのみ!!
ワタシは一気に戦闘モードに入った。
…続く。
2003.12.05 金曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第五十二話−
烈闘!追い出し屋G対交渉人マスウラ、再び…の巻。
マスウラとの烈闘は続く−。
マスウラ
「な、なんだ?」
比喩表現でいうならば、鳩が豆鉄砲食らった、とでもいうところか。
マスウラの動揺が目に見えて分かる。
もっとも今は電話でのやりとりの最中なので、
耳に聞こえて分かる、が正しいか。
今までの圧迫面接における面接官のような、
威圧的態度のマスウラは、もういない。
電話口の向こうにいるのは、
自身の動揺すら隠すことすら出来ない、ただのオッサンだ。
そんなマスウラの焦りの声を聞きながら、ワタシは思う。
勝機は我にあり!
今まさに攻撃せん!
熱い思いを抱きながら、ワタシはマスウラに斬りかかった。
ワタシ
「大体、何の根拠があって、そんなお話してるんです?」
相手が動揺すればする程、
ワタシは相手に対する優位性を如実に感じた。
言葉のどもりは、もう消えた。
むしろ滑舌(かつぜつ)が良くなっている自分に、我ながら驚いた。
マスウラ
「そ、そんな話って、一体何なんだ?」
マスウラは、ほんの少し前の余裕のある時と比べると、
言葉が明らかにたどたどしくなっている。
ちょっと前のワタシのどもりが伝染したかのようだ。
風邪は他人にうつせば治る、というが、
どもりも他人にうつせば治るのだろうか。
ワタシが滑らかな喋りをすればする程、
マスウラのどもりが面白い程、顕著(けんちょ)になってくる。
ワタシは相手の言葉尻が消えるやいなや、
更に言葉のテンポを速め、言った。
ワタシ
「決まってるでしょう。
占有者A子さんの賃貸借契約のことですよ!
仮に賃貸借契約が正規のものだったとしても、
抵当権設定以後の賃借権には正当性の欠片もない。
ワタシども買受人には対抗できないって訳ですよ」
ここで一気に畳み掛ける!
さあ、どうだ、マスウラ!
ワタシ
「そんな契約は何の意味もない。
ワタシどもは、マスウラさんの申し出に、
耳を貸すことなどありえません!」
ワタシはマスウラとの最初の電話で、
これと同じ事を言ったが、
その時は「だから、何?」というたった一言で、
ワタシは言い負かされてしまった。
相手の勢いに圧倒されてしまった。
だが、今はどうだ。
ワタシとマスウラの立場は逆転した。
同じ言葉を発しているだけなのに、この差は何なのだろうか。
思うに−。
前回の電話において、ワタシはマスウラに恐怖感を抱いていた。
今回の電話において、ワタシはマスウラに恐怖感を抱いていない。
前回と今回の対決では、これだけの違いしかない。
だがそのちょっとした違いで、結果はご覧の通りだ。
大きな差となって結果に反映されている。
−それは何故か?
もちろん、知識があることは交渉をする上での大前提である。
少なくとも基本的な部分が分かっていなければ、
交渉相手と話をすることすら、ままならないであろう。
例えば、今回のケースで言えば−。
占有者A子の賃貸借がおかしなものである、
という知識を三点セットの物件明細書だけではなく、
裁判所書記官からのヒアリングによって固めた。
知識は武器なのだ−。
だが、武器があっても、それを使いこなせなければ意味がない。
武器を上手く使えこなせるかどうかは、
相手に対する恐怖心があるかないかにかかってくる。
恐怖心に打ち勝たねばならないのだ。
武器の強さと扱う人間の精神的磐石さ−。
この二つが合わさって、はじめて、
交渉を自分の有利な方向へと導くことが出来るのだ。
ワタシは、その時、漠然としながらも、
そういった結論を見つけた。
話をまた対決の場に戻す。
マスウラは、何か言いたそうに、声を漏らしていたが、
ただそれは意味不明な雑音にしか聞こえなかった。
ワタシは言った。
ワタシ
「マスウラさん、他に何かいいたいことはありますか?」
それに対しマスウラは−。
…続く。
2003.12.06 土曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第五十三話−
怒気と怒号と怒声の交渉人マスウラ…の巻。
追い出し屋Gとマスウラの電話での対決は、終盤戦へ。
ワタシはマスウラに言った。
受話器を持つ手に一段と力がこもる。
ワタシ
「マスウラさん、他に何か言いたいことはありますか?」
それに対しマスウラは−。
一瞬の沈黙の後、かろうじて声を出した。
マスウラ
「あ、…いや。いや違うな。
そうじゃなくて−」
だが、それだけでは流石に言葉が足りない。
今までの混乱を収めるかのように、
自分で自分に言い聞かせるように続けた。
マスウラ
「そうじゃなくて、あれだ、あれ。
あれなんだよ」
ダミ声にますます拍車が掛かっている。
それにしても、あれあれ、言われても意味が分からない。
もっとも、あへあへ、などと言われても困るが。
マスウラ
「それだと約束が−。
そう、約束が違う。
約束が違うんだ−」
何度も何度も「約束」という言葉を繰り返し−。
そして、マスウラはいきなり大きな声を張り上げた。
マスウラ
「さっきと約束が違うじゃないか!!」
つーか、なんだその唐突な言葉は!?
約束が違うって、一体何のことだ?
いつ、どこで、誰が、誰と、何の約束をしたっていうんだ。
ワタシはマスウラと何らかの契約関係を結んだのか?
契約書に実印を押した、そんな記憶、ワタシにはまったくない。
意味不明だ。
それともマスウラは夢でも見ていたのだろうか。
すべてアナタ様の言う通りであります。
アナタ様のいうことは真の道理であり、
アナタ様のいうことをすべて守らねば、
必ずやワタシに天罰が下ることでしょう。
畏(おそ)ろしや、畏(おそ)ろしや。
ワタシは必ずアナタ様の言いつけを、約束を守ります。
すべてはゴッド・マスウラの仰せのままに−。
ワタシがマスウラを崇めるストーリーが、
夢の中で展開されていたのだろうか。
うーむ、マスウラは夢想家だな。
それだと、ワタシと同じではないか−、としみじみ思った。
ワタシは頭の片隅でそんな余計なことに思いを馳せながら−。
ワタシ
「あの、約束が違うってのはどういう意味ですか?」
ワタシは静かに言った。
ワタシの言葉に対し、マスウラは怒声を張り上げ、
更にダミ声を潰し、言い放つ。
マスウラ
「や、約束を覚えていないのか!?
大体、合意書をオマエが受け取ったのは、
今日今さっきのことじゃないか!!
合意書を受けとったってことは、
その条件を納得して、合意した。
約束したってことだろ!?
そんなことも分からないのか、オマエは!!」
怒号に満ちた声を受話器に叩きつける。
だが、幾ら怒声をぶつけられても、どうってことはなかった。
ワタシはマスウラへの恐怖感など微塵も感じなかった。
マスウラは−。
マスウラは、そう。
ただ奇声を発するチンパンジーに過ぎない。
そう思うと逆に、怖さよりも面白さが沸いてくる。
はい、これがチンパンジーのマスウラくんです。
あれ、マスウラくん、キーキー啼いてますねえ。
これはエサを自分のものだぞー、渡さないぞー、
と他のチンパンジーを威嚇してるみたいですね。
…マスウラくんに他のチンパンジーが近づいてきました。
ありゃりゃ、マスウラくんの威嚇を無視して、
他のチンパンジー、追い出し屋Gくんが、
エサを取っちゃいましたね。
あーあ、マスウラくんのエサがなくなっちゃいました。
でも、マスウラくんってば、キーキーするだけで、
何も出来ないんだから。
しょーがないチンパンジーですね。
そんなマスウラのどこに怖さを感じればいいのだ?
ああ、何でこやつをあんなにも怖がっていたのだろう…。
ワタシはマスウラを怖がっていた時分の自分を恥じた。
ワタシはキーキーと喚(わめ)いているマスウラに言った。
努めて、冷静に−。
…続く。
2003.12.08 月曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第五十四話−
冷静な人間と怒りのチンパンジー…の巻。
キーキーと喚(わめ)くマスウラは、チンパンジーだ。
もはや人間ではない。
叡智(えいち)ある人類が、類人猿如き、
マスウラの相手をしていても仕方がない。
ワタシは努めて冷静に言った。
ワタシ
「マスウラさんが合意書、合意書と言ってるのは、
あくまでも占有者A子さんのご都合を書面化したものですよね?
そして、それをマスウラさんがウチに届けたってだけでしょ?
そりゃあ、わざわざ届けてやったという思いはあるでしょうが、
その合意書なる紙切れに、如何なる法的拘束力があるんです?
あるんだったら、その根拠を教えてくださいよ」
マスウラ
「……うぐ」
マスウラは何も言えない。
それはそうだろう。
根拠など何もないのだから。
喉元まで、「さっきからアナタの言ってることは、詭弁でしかない。
ただこちらをペテンにかけようとしているだけだ!!」
−という言葉が出掛かった。
もっとも、あまりにも正当過ぎる言葉であるが故に、
その言葉を口に出したら、
チンパンジー・マスウラの自分勝手な怒りの炎に、
ドボドボと油を注ぐ結果になるだろう。
交渉はクールにやっていこう。
マスウラ対する気持ちをぐっと押し殺し、
ワタシは感情を表に出さず、言った。
ワタシ
「ほらね、何もないんでしょ?」
マスウラは必死に抵抗する。
何が何でも認めたくない。
ただその一心なのであろうか。
マスウラ
「…いや、違う!
だから、賃貸借契約が−」
だが、言っている事は先程と変化がない。
賃貸借、賃貸借って何度同じことを繰り返せば気が済むんだ?
猿でももうちょっと物覚えがいいだろ?
ワタシ
「その賃貸借契約ってのが、占有者A子さんのご都合であり、
賃貸の継続がご希望ってことでしょ?
だから、ウチは契約の継続希望を呑むことは出来ませんし、
ウチがそれを呑む必要もない。
ただそれだけですよ」
マスウラ
「…だったら、占有者A子はどうすればいいんだ?
行くところがないじゃないか。
野宿して、野垂れ死ねっていうのか!?」
うーむ、つくづく、極論を言うオッサンだな。
別にそこまで言ってないし、その後のことについて、
どのようになるかはワタシは知らない。
自分のことだって分からないのに、
ましてや他人のことなど分かる道理がない。
予知能力ないし。
エスパーじゃないんだから。
まあ、エスパー伊東程度のことだったら、
ワタシにも出来ると思うが…。
あまり感情を表に出さず、出来得る限り、
クールに交渉をしようと思っていた矢先だったが、
マスウラの言い分は、あまりにも極端なものであったので、
ワタシは呆れ顔をしつつ、呆れ声で言った。
ワタシ
「野垂れ死ぬって、ねえ。
そこまでは分からないですよ。
そんな先のことなんて、誰が予測出来るってんですか」
すると、マスウラは−。
マスウラ
「無責任だな、オマエは!
いいか、オマエは占有者A子がいることが分かっていて、
このマンションを競売で落札したんだろうが!
だったら、ちゃんと占有者A子の権利を認めるってのが、
物事の筋道だろう!!
そんなことも分からないのか!!」
−などと脳内スイッチが激怒モードに切り替わったようだ。
マスウラの怒りにターボがかかる。
燃え上がれ炎!といった感じか。
だが、この男の言ってることは、
自分中心のご都合主義の言い分であり、
誰の目から見ても、明らかにおかしい。
もちろん、聞く方の立場としても、到底納得出来るものではない。
ワタシとしてはむしろ、物事の筋道や道理を分かっていないのは、
そっちの方だろ、と同じ言葉をそっくりそのままお返ししたい。
そんな感想を抱かずにはいられなかった。
それにしても−。
さっきから、ワタシのことを、オマエオマエと言いやがるな。
失敬なヤツだ。
ちょっとここは、かましておくか…。
交渉はクールにやる−。
ものの数分も経たないうちに、
その考えを120度転換するワタシであった。
そして−。
…続く。
2003.12.09 火曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第五十五話−
追い出し屋Gのかまし大作戦、発動…の巻。
電話での攻防戦は、最後の山場を迎える。
電話口で、相も変わらず、
キーキーと鳴き声ばかり出すチンパンジー・マスウラ。
それにしても−。
さっきから、ワタシのことを、オマエオマエと言いやがるな。
失敬なヤツだ。
ちょっとここは、かましておくか…。
交渉はクールにやる−。
ものの数分も経たないうちに、
その考えを120度転換するワタシであった。
何事か喚(わめ)き立てているマスウラに対し、
ワタシは言葉を叩きつける。
喰らえ、マスウラ!
エネルギー充填120パーセント!
波動砲、発射!!
ワタシ
「ちょっとねえ。
マスウラさん、まずはね、一言言っておきますけど。
話している相手のことを、オマエだとか、
そーゆー言い草はない!
いいですか、最初に話し合いをしようと言ってきたのは、
アナタの方なんですよ!
あんまりにも無礼な態度を取ってると、
こっちも話し合いをする気が失せてきますよ。
アナタは話し合いを壊すつもりなんですか!?
話し合いをしようと思ってるんだったら、
ちゃんとした話し方をしなさい!!」
波動砲を喰らったマスウラは、一瞬の沈黙の後、
またキーキーと鳴き始めた。
マスウラ
「…そ、それは違う!
別に話し合いを壊そうとしてない!
壊そうとしてるのは、アンタの方じゃないか!
俺は悪くない!」
自分の非を認めようとしない、マスウラ。
だが、マスウラの声には動揺が隠せない。
ワタシ
「…またアンタって言った。
やはりアナタは話し合いに向いていないですよ。
俺は悪くない、ってアナタ、そんなの子供のイイワケですよ。
いや、イマドキの子供だったら、
もっともっと上手いイイワケ考えますよ。
いいですか、アナタの言った、
アンタという言葉は明らかに相手を侮蔑した言葉ですよ。
いい大人なんだから、
自分に非があったら、ちゃんと認めなさい!」
マスウラ
「……」
さっきまでの鳴き声が一切止んだ。
もう一度かましてやるか。
ワタシ
「まあ、アナタもあまりにも当たり前のことを言われて、
だんまりするしかないのでしょうね。
いいですか。
このまま、話し合いを続けたいと思ってるのなら、
もう二度と無礼なことは言わないように!」
マスウラは、何事か言いたそうに声を漏らしたが、
最後に、わかった、と一言呟(つぶや)いた。
最初のかましはこれで成功っと。
でもね−。
まだまだ、これでは終わらないのだよ。
チンパンジーくん。
むしろ、これからが始まりだ!
ワタシは続けて、言った。
…続く。
2003.12.10 水曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第五十六話−
あの日の失敗の記憶と、オマエは誰だ?…の巻。
電話でのマスウラとの闘いは最後の詰めだ。
しかしここで、あともう一歩だからといって気を抜いたら、
最後の最後でやられる。
今までの人生において、
幾度となく最後の決め場で失敗したことからも、
それは実感として分かっている。
幼稚園の卒園式の日、一人ずつ名前を呼ばれ、
「はい!」と立ち上がる時、
他人の名前なのに元気よく立ち上がってしまったあの日。
小学生の頃、学芸会で小坊主踊りを無理矢理やらされたのだが、
皆が模造紙で作ったハゲカツラを着用しているのにも関わらず、
直前でそれを破ってしまった為に、
ひとりカツラなしで小坊主踊りを踊ったあの日。
高校受験の頃、志望校のテストを受けにいったら、
間違って、隣の全く関係ない女子高の校舎まで入ってしまったあの日。
あの日、あの時、あの場所で−。
−二度と同じ轍(わだち)を踏むまい。
最後の最後だからこそ、しっかりと締めなければ。
ワタシは更に気を引き締めて、話し掛けた。
ワタシ
「それにね、マスウラさん。
今まで深くは追及しなかったのですが。
アナタは−」
言葉をゆっくりとため、こう言った。
ワタシ
「アナタは一体誰なんです?」
ワタシのたった一言で更なる混乱が招かれたのだろうか。
マスウラは、それに対する何のリアクションもなく、
ただ黙っていた。
−かと思うと沈黙はすぐ破られ、まさしく猿の如き、
常人には理解不能な奇声としか思えない声をマスウラは出した。
恐らく電話の向こうにある、マスウラの表情たるや、
さぞかし面白いものだったろう。
電話なので、相手が見れないのが残念だ。
マスウラ
「…は、はあ、ハア?
俺は俺に決まっておろうが!
俺はマスウラだ!
マスウラ エイキチだ!」
マスウラは怒号とも悲鳴とも、もしかしたら、笑い声ともとれるような、
まさしく奇妙としか言い様がない声でワタシに反論した。
だが、その反論は反論に成り得ていない。
ワタシ
「あのね、マスウラさん。
ワタシはアナタの名前を聞いてるワケじゃないんですよ」
言葉を続けるワタシを遮るようにして、
マスウラは言った。
マスウラ
「だったら、何を言いたいんだ?
俺の会社か?
俺の会社は、R&Rコンサルタンツだ!」
マスウラの奇妙な声で返す。
ダミ声がベースのヘンな声だ。
そんな奇声を発するマスウラの返答に対し、
ワタシは再度ダメ出しをする。
ワタシ
「いや、違いますよ。
ワタシが言いたいことはそんなことでもない。
実際のところ、あなたがマスウラさんだろうが、
マスズシさんだろうが、会社がR&BだろうがB&Bだろうが、
ワタシには関係のないことです。
別に偽名を使っても構わないし、何の支障もない。
だけれどもね、マスウラさん。
ワタシが言いたいことは−」
ワタシはマスウラに言い切った。
ワタシ
「アナタは一体どんな立場で、
何のためにこの件にクビを突っ込んでいるのか、
ということですよ。
いいですか、今回、ワタシどもと直接、利害関係があるのは、
アナタではなく、占有者A子さんです。
ですが、今日朝からずっと話しているのは、
占有者A子さんではない、アナタとしか話していないんですよ。
だからワタシは問い掛けたんですよ。
アナタは一体誰なんだ、と…」
ワタシは再度繰り返した。
アナタは一体、誰なんです?
…続く。
2003.12.11 木曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第五十七話−
本当のことを言え、マスウラ!…の巻。
ワタシは再度繰り返した。
アナタは一体、誰なんです?
強い問い掛けの言葉だ。
それに対し、マスウラは−。
マスウラ
「…俺は、別に。
というか、別にそんなこと、関係ないじゃないか!
占有者A子とは、ただの知り合いだ!」
負の感情が入り混じった奇妙なダミ声で答えた。
マスウラは明らかに虚勢を張っている。
震える声がそれを証明していた。
強い口調で幾ら反論していても、
地の弱さをありありと露見させている、ということか。
ワタシ
「…ただの知り合い?
ほう、ただの知り合いねえ?」
ワタシは独り言のように、繰り返し−。
(もちろん、マスウラに聞かせるのが目的なのだが)
そして、ふと思いついたかの如く、うそぶく。
ワタシ
「…最初にマスウラさんからの電話を受けた時も、
マスウラさん、あなた、同じこと言ってましたね。
いわく、俺は占有者A子の知り合いだから、
賃貸借契約を存続させる為の交渉に臨んでいる、と。
そういった趣旨のことを言われましたよね?」
過去の言動を思い出しながら、質問をする。
マスウラ
「…そうだ、俺は知り合いだ。
知り合いが困っている時に、
助けてやらなくてどうする!?
知り合いだからこそ、俺が男だからこそ、だ!
男だったら、困っている人が近くにいれば、
助けるのは当たり前だろ!?」
マスウラは頑として、知り合いだと言い切る。
この期に及んでもそうだ。
電話口に唾を飛ばしながら、主張を反復しているのだろう。
マスウラが口から泡を飛ばし、震えたダミ声で熱弁を振るう−。
そんな姿が容易に想像できた。
自らの義侠心から、今回の交渉役を買って出たとでも、
言いたいのだろう。
占有者A子は女だから、代わって男であるこの俺が、
このコンサルタントのマスウラが登場、といったところか。
だが−。
ワタシは知っている。
マスウラ、お前の正体を−。
知り合いの占有者A子がピンチだから、
正当なる賃借権が犯されようとしているから、
自らの意思で進んで交渉に臨んでいる?
それは義侠心だ?
そんなワケがないだろう。
マスウラは−。
明確な目的があって交渉を代理しているのだ。
ワタシは静かに言った。
マスウラさん。
もう本当のこと、言いましょうよ…。
…続く。
2003.12.13 土曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第五十八話−
交渉人マスウラの嗚咽(おえつ)…の巻。
マスウラとの交渉は−。
終焉(しゅうえん)を迎える。
ワタシは静かに言った。
マスウラさん。
もう本当のこと、言いましょうよ…。
マスウラ
「…な、何が本当のことなんだ!?」
ワタシ
「本当のことですよ。
アナタは、一体誰か−」
マスウラ
「…俺は俺だ。
何を言いたいのか、よく分からん。
俺は−。
占有者A子とは知り合いで、ただの好意でやってるんだ」
ワタシは思った。
マスウラと占有者A子は、ただの知り合い?
マスウラ自身の好意から、今回の交渉の場に出て来ている?
それは違うだろ?
ワタシは冷静さを保ちつつ、言った。
ワタシ
「アナタの目的は、一体なんだ、ということですよ」
マスウラ
「……」
マスウラは黙ってしまった。
何も答えることが出来ない。
はたまた、返答する言葉を考えているのか。
いずれにせよ−。
これで終わりだ。
ワタシは、マスウラに断言した。
ワタシ
「黙っていては分からないですよ。
それじゃあ、ワタシが代わりに答えましょうか?」
マスウラ
「……」
マスウラは黙ったままだ。
その沈黙は何を意味するのか。
肯定、否定、思考停止…。
マスウラにはマスウラなりの心の動きがあるのだろう。
無論、ワタシにその真意を量り知ることなど出来ない。
−知りたくもない。
ワタシは、意気消沈のマスウラに言った。
彼への最後通牒だ。
ワタシ
「何も答えられないようですので。
じゃあ、ワタシが代わりに答えてあげますよ。
マスウラさん。
アナタは、占有者A子の知り合いだ、と。
ただそれだけの理由で、ワタシ−、いや、
占有者A子さんが住んでいるマンションの買受人である、
ウチの会社との交渉に臨んでいる、と。
…マスウラさん。
ワタシはハッキリ断定しますよ。
それは違うと−」
マスウラ
「……」
ワタシは一度息を整え、
言葉を一気呵成(いっきかせい)に叩きつける。
ワタシ
「アナタの好意の裏には、何があるか−。
分かってしまえば、実に簡単なことなんです。
アナタの目的は、ズバリ金なんですよ。
アナタがどう報酬を貰うのか、それについては分からない。
でも、アナタは占有者A子から貰う金の為に交渉に臨んでいる。
それがアナタが交渉の場に出ている、
たったひとつの、本当の理由なんですよ」
ワタシが言い放った後、マスウラは沈黙を守り−。
声を押し殺しているのだろうか。
ワタシ
「マスウラさん…。
アナタは金の為に、ワタシと話しているんだ」
マスウラはと言えば−。
電話口から、くぐもった呟きが微(かす)かに漏れていた。
それは嗚咽(おえつ)のように、聞こえた。
マスウラは−。
泣いている…?
彼は、泣いているのか。
そして−。
電話の向こうの、嗚咽は次第に高まっていく。
いや、これは嗚咽ではない。
悲しみや悔しさのあまり漏れ聞こえた、泣き声ではない。
その声の意図を、明確に理解出来た。
マスウラは、笑っていたのだ。
内容がどこにも見当たらない、
馬鹿げたテレビ番組を見て子供が出す。
そんな笑声(しょうせい)をたてていた。
マスウラはさも面白い話を聞いたかのように、
ひとしきり笑った後、ダミ声を荒立てた。
マスウラ
「…エラソウに何を言うかと思ったら、そんなことか」
つい先程までの沈黙などなかったかのように、
マスウラが語り始める…。
…続く。
2003.12.14 日曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第五十九話−
逆襲の交渉人マスウラ…の巻。
追い出し屋Gとマスウラとの電話での交渉−。
ひとしきりの哄笑(こうしょう)の後、
マスウラはダミ声でがなり立てる。
高橋がなり。
マスウラ
「…エラソウに何を言うかと思ったら、そんなことか」
つい先程までの沈黙などなかったかのように、
マスウラは矢継ぎ早にまくし立てた。
マスウラ
「…金、金、金の為?
俺が金の為に、今ここでこうやって話をしている?
そんなの、そんなのは、当たり前だろ。
今更、何を言ってるんだ?」
マスウラは、今まで黙っていて損をした、と思ったのだろうか。
次から次へと言葉を浴びせかける。
マスウラ
「世の中に疎(うと)い、占有者A子に代わって、
正当なことを言っているんだ、俺は。
それを報酬を貰って、やっている?
そうだ、それはその通りだ。
だがな、それのどこが悪いんだ?
政治家は、国民に代理して政治を行ってるんだろ。
警官だって、市民を代表して悪事を働いたヤツを捕まえる。
消防士もそうだよな。
皆に代わって、火消しをしている。
もし、それを悪いっていうんだったら…」
マスウラは少し言葉をためた。
マスウラ
「世の中のすべての行為は悪にしかならない!」
ワタシは急に雄弁に語るマスウラに戸惑いながらも、
断片的な言葉を発した。
ワタシ
「なるほど…」
マスウラは悪いことをしていないときっぱり断言する。
一転、強気の態度のマスウラに、
ワタシはしばし呆然としてしまった。
ワタシの見立ては甘かったか−。
ワタシはてっきり、マスウラが報酬目的で、
ウチの会社と占有者A子との間に喰らい込んでいる。
この事実を指摘すればマスウラは動揺して、
自ら交渉のテーブルを降りるのではないか。
−そう思っていた。
思い込んでいた。
確かにマスウラが金の為にやっているのは事実だ。
それをあからさまにしていなかったのも事実だ。
その事実を突きつけたが、マスウラには何の効力もなかったようだ。
笑い声さえ立て、平然とした面持ちを崩さない。
でも…。
ワタシの頭の中で、ひっかかるものがあった。
それはあまりにも小さい断片で、
目に見ることすらままならない。
だが、その突起物は確実に存在する−。
そんな違和感が残っていた。
一体、これは何だ…?
もやもやした思いを拭い去れないワタシに、
マスウラは、一気に畳み掛けてきた。
マスウラ
「大体、追い出し屋Gさん。
アナタだって、会社の代理人として交渉してるってワケだろ?
それは悪いことなのかい?」
マスウラの問い掛けは、誘導尋問だ。
こんな質問にノーと答えられるワケがない。
ワタシ
「悪いと思ってたら、ここでこんな風に、
マスウラさんと話してはいませんよ…」
他にどんな答えがあるというのだ、くそ。
…続く。
2003.12.15 月曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第六十話−
立て!立つんだ!追い出し屋G!…の巻。
マスウラの誘導自問に、ワタシはノーと言えなかった。
ワタシ
「悪いと思ってたら、ここでこんな風に、
マスウラさんと話してはいませんよ…」
他にどんな答えがあるというのだ、くそ。
ワタシは答えながら、心の内で悪態をついた。
しかし、しかしだ…。
やはり何か引っかかる。
それは魚の小骨のような、小さいものであるが、
確実に存在する違和感…。
頭の中でムズムズする様な違和感を感じているワタシを尻目に、
マスウラはといえば、ますます頭に乗った発言を繰り広げた。
マスウラ
「そうでしょ、追い出し屋Gさん。
それだったら、ワタシもアナタも立場として代わらないじゃない。
だからどうしたってことだよ。
俺が交渉しちゃいけないって道理はないだろ?」
マスウラはワタシを攻め立てている。
この男といったら、穴を見かけるや否や、
それに向かって突進するタイプなのであろう。
穴があったら、いざ、攻め立てん、と言った感じか。
ああ、ワタシも穴があったら、入れたいよ。
そんな中途半端な下ネタともつかないことを思いつつ…。
マスウラ
「俺が交渉しちゃ、何かマズイことでもあるの?」
非常に困る質問である。
ワタシはマスウラが金を貰って交渉をしている、
このこと自体をマスウラに突っ込めば、
相手側の気勢を削ぐことになり、
結果として、交渉を有利に進められるものと思っていた。
だが、マスウラはと言えば、開き直りを見せている。
金を貰って、何が悪い?
ワタシは焦っていた。
電話を切ってしまいたい衝動に駆られた。
自分で最後の最後の詰めが肝心、
などと言っていたのにも関わらず、
この体たらくはいかなるものか。
ワタシはこのまま思考停止する−。
ワタシ
「……」
いや、それじゃ駄目だ。
駄目だ、駄目だ、駄目だ。
ここで思考を停止してしまったら、
つい先程までのワタシと代わらないではないか。
ワタシはマスウラを見切ったはずだ。
大した相手ではない、と。
見切った相手にちょっと言われた位で、
考えることを止め、逃げ出してどうする。
立ち向かえ。
最後の最後だからこそ、しっかりと立ち向かうんだ!
立て!
立つんだ、追い出し屋G!!
ああ、真っ白に燃え尽きたよ…。
って、燃え尽きちゃダメじゃんっ!!
おいおい、一人ボケ一人ツッコミする余裕など全くないぞ。
真っ白に燃え尽きる前に、
ワタシは、今の状況を整理しようとした。
まずいいか。
マスウラは、何をやっているのか。
占有者A子の代わりに、立ち退き交渉に首を突っ込んでいる。
何故、交渉に口を挟んでいる?
それは占有者A子から、金を貰うためだ。
金を貰う?
それは金を貰っての、代理行為だ。
一体何の権原で?
マスウラは、コンサルタントだ。
コンサルタントの権原?
そんなのに、権原なんてあるのか?
もしくは、交渉には資格がいるのか…。
資格?
資格…?
そうか、資格だっ!!
ワタシの頭の中に魚の小骨の如く、引っかかっていた違和感。
ぼんやりとではあるが、それが何なのか、分かった。
その答えとは…。
マスウラ
「…あのさ、追い出し屋Gさん。
何も言えないの?
何も言えないんだったら、こっちの要求呑んで終わり、
ってことでいいんじゃないの?」
ワタシを説得しようとしているのか、
いきなり猫なで声(でも、ダミ声)で語り掛けるマスウラ。
気持ちが悪い。
…というか、どーゆー理論だ。
気色悪さと意味不明の理論を拭い去るべく、
ワタシは、マスウラに言った…。
…続く。
2003.12.16 火曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第六十一話−
太陽と北風と追い出し屋Gとマスウラ…の巻。
マスウラの逆襲と守備側の追い出し屋G−。
マスウラ
「…あのさ、追い出し屋Gさん。
何も言えないの?
何も言えないんだったら、こっちの要求呑んで終わり、
ってことでいいんじゃないの?」
ダミ声と猫なで声が混ざった耳障りな音だ。
甘えた声で甘えたことを言うマスウラ。
これが可愛い女子だったら、話は180度変わるのだが、
相手はただのオッサンだ。
気色悪いの一言に尽きる。
もしかしたら−。
太陽と北風の童話よろしく、寒さ厳しい北風の如き説得ではなく、
暖かく柔らかい包み込む陽差しのような対応で、
マスウラはワタシを説得しようとしているのか。
だが、その口調は春の爽やかな木漏れ陽でも、
夏の眩しい陽差しでもなく、今まさに幽霊が現れんとしている、
そんな肌にまとわりつく生温(ぬる)い風にしか過ぎない。
それ以前に、口調は変わっても、
その言い分は全くといっていい程、
変化のへの字も見られないものであるが−。
マスウラ
「なあ、どうなの、追い出し屋Gさん?
可哀想な占有者A子さんを助けてやってよ」
やはり気持ち悪い。
生温く生臭い風が体中にまとわりつく−。
言ってることも、いつまでも変化がない、意味不明の理論だ。
気色悪さと意味不明の理論を拭い去るべく、
ワタシは、マスウラに言った…。
ワタシ
「マスウラさん。
マスウラさんの言いたいことはよーく分かりましたよ」
マスウラなるチンパンジーの言うことなど、
到底理解できるハズがない。
−が、まずは下手に出ておく。
ワタシ
「でもね。
マスウラさんが今言ってることは、
こちらとしては条件として呑めないワケなんですよ。
どう考えても無理」
マスウラ
「無理?」
マスウラは訝(いぶか)しげに反復する。
ワタシ
「無理、無理、無理…。
無理って言葉が十回続く程、無理です」
ワタシとしては当たり前のことを当たり前の如く言ってるのだが、
それをマスウラは自分に対する挑発と受け取ったようだ。
マスウラ
「…あのさぁ。
それだとさっきから言ってることが同じことだろ。
呑めない呑めないと、堂々巡りだ!
それじゃあ、話し合いにならん!
こっちが優しく言ってやってるのに、
そんなことも分からないのか!?」
彼がワタシとの交渉を柔軟な姿勢で臨もうとする太陽政策は、
ほんの数分の歴史をもってその幕を閉じた。
さすがはチンパンジー。
チンパンジーは三歩歩けば忘れる、といったところか。
あ、この場合、チンパンジーじゃなくて、ニワトリだったっけ。
どっちも同じ、似たようなものだ。
…って、似てないか。
マスウラ
「ちゃんとこっちの言い分を理解しろ!」
意見の押し付けたるや、この上ない。
マスウラの怒りの炎はまた徐々に燃え盛ってきたようだ。
さあ、燃料投下はもう十分か−。
あとは、燃料に火をつけて、自爆してもらうだけだよ。
その後に出来るものは、チンパンジーの丸焼きだ−。
不味そうだが、丸ごと喰らってやろう。
ワタシはマスウラに言った。
それはそう、ワタシの脳裏に閃(ひらめ)いた答え−。
起死回生の言葉だ。
…続く。
2003.12.18 木曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第六十二話−
起死回生の言葉【前編】…の巻。
起死回生の一言であり−。
ワタシの脳裏に閃いた、その答えとは…。
ワタシ
「まあまあ、マスウラさん。
興奮しない、興奮しない」
マスウラ
「これが興奮せずには入られるか!
エラソウな態度で、下らない事をベラベラ言われたら、
腹が立たない人間なんぞ、いない!」
よく喋る男だ−。
いや、よく啼くチンパンジーといった方が正しいか。
ワタシ
「マスウラさんね…。
ワタシが何故、マスウラさんの立場に拘(こだわ)るか−。
その理由は分かりますか?」
ワタシは努めて冷静にもの申す。
熱くなっている人間に、冷や水を掛けるが如く、だ。
ここで衝動に身を任せ、怒りの側面を見せてしまったら、
自分も相手と同じ対等の段階にいることになる。
所詮はチンパンジー。
人間様は、霊長類の長としての余裕を持たなければ…。
マスウラ
「分からない。
何が言いたいのかも、そちらの意図も分からない。
そちらさんと話していると、分からないことだらけだ。
よくもまあ、次から次へといけしゃあしゃあと…。
それとも何か、俺と禅問答でも遣りたいのか?」
電話なので相手を観察することは出来ないが、
興奮した面持ちで答えているのだろう。
ダミ声に磨きが掛かり、ますます甲高いトーンになっている。
ワタシ
「そうですか、分からないですか…」
ワタシは言葉にたっぷりと間合いを持たせる。
焦らしの時、だ。
−相手に隙を与えず、さりとて相手の隙を見つけたら、
一息に撃つべし、撃つべし!!
それこそ、交渉の極意でっせ!!
いかにも贋者(にせもの)な臭いを漂わせる大阪弁−。
脳中に、不思議な声が響いた…。
−おお、分かってるデ!
ワタシは精一杯、大阪弁を真似てみた。
あのオッサンも見守ってるんだな…。
ぼんやりと思うワタシに対して、
あからさまに怒りを見せているマスウラ。
マスウラ
「分からないんだよ!」
−。
今だ−!!
ワタシ
「分からない、分からないって。
あ、もういいですよ。
分からないと言葉を繰り返すのは−」
ワタシは声を出し、マスウラが同じフレーズを口に出すのを止めた。
このままだと、またもや同じ繰り返しとなるだろう。
チンパンジー曰(いわ)く「分からない、分からない」、
そんなのはもう聞き飽きたんだよ。
ワタシ
「ズバリ、マスウラさん、あなたは−」
起死回生の言葉、それは−。
…続く。
2003.12.22 月曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第六十三話−
起死回生の言葉【中編】…の巻。
起死回生の言葉、それは−。
ワタシ
「ズバリ、マスウラさん、あなたは−」
ワタシは、間髪入れず立て続けに言った。
ワタシ
「一体、何の資格で
代理人交渉をやってるんです?」
起死回生の言葉−。
それは、マスウラの資格を問うものである。
何の資格か?
代理人としての資格、だ。
そして、起死回生の言葉は餌となる。
何の餌か?
マスウラを釣る為の餌だ。
ある意味、これは釣りだと思う。
追い出し屋Gという釣りの初心者が、齢(よわい)を重ね、
老獪(ろうかい)な動きを見せるマスウラを、如何に釣り上げるか。
バス・フィッシングならぬ、マスウラ・フィッシングだ。
ワタシは、その餌を投げ入れたのだ。
マスウラ
「し、資格ぅ〜?
そんなもの、持ってるわけないだろ!?
おれはただ代理をしているだけだ!!」
マスウラは、車に轢かれた猫のような声を上げた。
−ひっかかったっ!!
ワタシは投げた釣り針に食らいつく、マスウラの感触を知った。
竿がぐいぐいとしなる。
さあ、これをどうやって釣り上げるか。
じわじわと追い詰めていくか、ここで一気に行くか−。
タイミングを見計らって…。
ワタシ
「ということは…、
金を貰って代理人をやってるってことですね?」
マスウラ
「…だから、何だ?」
−獲物の動きは強くなってくる。
ワタシ
「いや、だから何だ、じゃなくてワタシが訊いてるのは、
アナタが金を貰って代理人をやってるってことですよ」
マスウラなる深海魚の動きにあわせ、
ワタシはのらりくらりと糸を垂らす。
糸が切れないように。
糸が切れたら、魚を釣り上げる、その目的が達成できない。
その目的物である−。
マスウラは一瞬の躊躇(ためら)いの後、答えた。
マスウラ
「…だとすると、何だっていうんだ?
さっきから、同じことの繰り返しじゃないか!」
−獲物の動きはますます激しい。
だが、その激しさは線香花火の最後の輝きに似ている。
そして光の瞬(またた)きの後には−。
マスウラ
「何だって言うんだ!」
−非常に強い口調だ。
ただその口ぶりには、かつての威厳は感じられない。
そこにあるのは、疲労だけだ。
もっともワタシも話し疲れているが、
それ以上にマスウラは疲れている声を出していた。
ワタシには疲労の内に、一瞬の隙があるように見えた。
ワタシ
「…いいですか。
アナタは今までここまで代理という行為について、
くどくど話してきたのは−」
ワタシは、疲れを相手に悟られることなく、静かに続けた…。
…続く。
2003.12.23 火曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第六十四話−
起死回生の言葉【後編】…の巻。
マスウラの代理人資格を問う投げ掛け−。
それが何故、起死回生の言葉と成り得るか。
追い出し屋Gと交渉人マスウラとの攻防戦は、
今、漸(ようや)く幕を降ろす…予定。
ワタシ
「…いいですか。
アナタは今までここまで代理という行為について、
くどくど話してきたのは−」
激しい動きを見せたせいか、疲れを見せているマスウラ。
ワタシも疲れはあるが、ヤツはワタシ以上だ。
釣り上げるのは−。
今だ!
ワタシは言葉を紡(つむ)ぎ出す。
ワタシ
「資格を持った人間でないと、
代理行為は出来ないからですよ」
ワタシはそう断言した。
対してマスウラはと言えば…。
マスウラ
(゚Д゚)ハァ!?
驚いた声を出すだけだ。
実に間の抜けた声である。
そんなマスウラの隙をうかがいながら、
ワタシは一気にルアーを巻き上げる!
ワタシ
「大体、アナタは弁護士なんですか?」
マスウラ
「……」
ワタシ
「それじゃあ、代理人として法的な資格はあります?」
マスウラ
「……」
ワタシ
「何も無いんですよね?」
多少の引きはあるものの、順調にルアーは巻き上がっている。
ルアーが巻けば巻く程、ワタシの舌の調子も良くなってくる。
このケーバイの仕事は駆け出しかもしれない。
だがワタシだって、今まで不動産営業として、
様々なシチュエーションで交渉して来たんだ。
それなりの修羅場もあった。
それを潜り抜けて、今ここにワタシがいるんだ…。
そうだ−、そうなんだ。
…などと自分に陶酔しながら、
ワタシは質問を投げ掛けた。
それに対し、押され気味のマスウラは、
思い出したかのように、言った。
苦し紛れの一言だ。
マスウラ
「…あ、アレだ。アレならあるぞ」
ワタシ
「アレって何です?」
マスウラ
「…た、宅建だ、宅建!」
宅建−。
宅地建物取引主任者、か。
そんな資格だったら、ワタシでも持ってるわ!
不動産業従事者には、必須アイテムだし。
ワタシは彼の所有資格を、一蹴する。
ワタシ
「いやいや、宅建と言われても…。
宅建資格で出来ることと言っちゃあ、
重要事項説明と書類への署名捺印とか、そんなものですよ。
決してこういった交渉の場に出てくる資格じゃあ、ない。
ちなみに、普通免許ってのも駄目ですからね。
アレは車を運転する為のものですし…。
後、危険物取扱者ってのも、駄目−」
マスウラ
「……う」
ワタシが、一笑して一蹴されたマスウラの宅建資格であるが、
それが余程悔しかったのだろう。
彼は言葉を詰まらせながらも、言い返してきた。
マスウラ
「うるさいっ!
だったら、そっちこそ、どうなんだ!?
追い出し屋Gさんよー!
そちらだって、ただの雇われ人なんだろ?
だったら、俺とアナタだって、
立場として代わりはないじゃないかっ!」
最後の暴走か−。
ふとワタシは思った。
ただ暴走と言っても、所詮はチンパンジーの浅知恵。
こんな程度しか、言い返せない。
ワタシは、マスウラの小ささを見切った。
そして、競売業界に片足を少し突っ込んだだけの業歴とはいえ、
こんな程度の人間にやり込められた自分を恥じたのであった。
ワタシは、飽きもせずキーキーと喚くチンパンジーに言った。
ワタシ
「あのね、マスウラさん−」
−ルアーが巻き切るのも、もうあとわずかだ。
…続く。
2003.12.28 日曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第六十五話−
代理人としての資格−無資格は犯罪?…の巻。
ワタシは、飽きもせずキーキーと喚くチンパンジーに言った。
ワタシ
「あのね、マスウラさん−」
−ルアーが巻き切るのも、もうあとわずかだ。
そしてその時こそ、マスウラの最後の時。
ワタシは、言葉を続けた。
侮蔑(ぶべつ)をこめた言葉だ。
ワタシ
「アナタの言うとおり、ワタシはただの雇われ人です。
でもね、ワタシの場合、会社の代表者からオマエがコレやれ、
と言われやっていることですから。
確かにワタシは弁護士でも何でもないですが、
会社の代表者から頼まれて、代理として交渉に臨んでいる、
ってなワケなんですよ。
だって、ワタシがこの会社の窓口だからこそ、
アナタもワタシと話してるってことでしょ?
そんなワタシとアナタはどう違うのか。
いいですか、アナタと占有者A子さんがどんな関係なのか。
アナタは占有者A子さんの会社か何かの従業員です?」
マスウラは何も言わない。
ワタシ
「…違いますよね?
じゃあ、アナタは弁護士でもない。
法人の一員でもない。何でもない」
マスウラは何も言えないようだ。
ワタシは、ルアーを巻く−。
ワタシ
「いいですか、ワタシとアナタでは立場が違うのですよ。
ワタシには代理をする立場がある。
そして、アナタにはそれが全くない。
そんなアナタが何故、金を取って代理をするんです?」
マスウラは−。
少し震えた声で言った。
マスウラ
「…うっ。
か、金取ってやっちゃいけないのか?」
弱い声だ。
口に釣り針が引っかかった魚も、
最後の足掻きを終え、力尽きたということか。
−今がルアーを巻き切るチャンスだ!
ワタシはより一層、力を込めて断言した。
ワタシ
「資格のないものが、金取って、
代理人交渉を行うのは、犯罪です!」
ズバリと言い切った。
マスウラ
「…は、犯罪〜っ!?」
まさしく、素っ頓狂としかいいようのない声を上げた。
−ルアーは巻き切られた。
マスウラと言う奇魚は、陸の上でビチビチと跳ねている。
白い腹を見せながら…。
…続く。
2003.12.30 火曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第六十六話−
弱気のマスウラと慈悲の追い出し屋G…の巻。
交渉人マスウラとの電話での攻防戦は、
最後の詰めの詰めだ。
マスウラ
「…は、犯罪〜っ!?」
電話口から聞こえる、断末魔−。
だが、その叫びは他人からしてみれば、
まさしく、素っ頓狂としかいいようのない声であり、
非常に喜劇的なものであった。
最も本人にとってみたら、悲劇であるのかもしれないが…。
−ルアーは巻き切られた。
マスウラと言う奇魚は、陸の上でビチビチと跳ねている。
白い腹を見せながら…。
でも腹の中は真っ黒であろう。
陸の上の奇魚は、最後の抵抗を試みた。
マスウラ
「は、は、犯罪って、俺は何も悪いことしてないぞっ!
俺はただ占有者A子の話に乗ってあげただけだ」
マスウラは、自分が悪いことをしていない、
ということを自己確認するかのように繰り返した。
マスウラ
「俺は悪いことをしていないっ!」
ワタシはマスウラを諭すように言う。
ワタシ
「あのねえ、マスウラさん。
悪いことをしていないって、
占有者A子さんの話に乗ってあげてること自体が、
ダメなんですよ…」
ワタシは何か言葉を発しようとしたマスウラにその隙を与えず−。
ワタシ
「だって、金取ってるんでしょ?」
マスウラ
「うっ…」
ワタシ
「さっきもワタシ確認しましたよね?
アナタ、金取ってやってるんでしょ、って訊いたら、
マスウラさん、何て答えました?
そりゃ当たり前だろ、みたいな。
そう言いましたよね?」
マスウラ
「あっ…」
マスウラは溜め息にも似た声を漏らす。
ワタシは彼に追い討ちを掛けるかのように、話を続けた。
ワタシ
「しかも、資格あるかと訊いたら、
これに対しても、あるワケがない、と。
それじゃあ、ダメですよ。
こんな商売したら。
金の絡む交渉は、ね…」
マスウラ
「ぐっ…」
−白い腹(でも中は真っ黒)をさらけ出し、
最後の足掻きをしていた奇魚であるが、
最早これまでと観念し、漸(ようや)く動きを止めた。
マスウラ
「うっ…。
それでだから−」
しばし言葉を失ったマスウラであったが、
そのままでは少しも進展がないと思ったのだろう。
言葉を無理矢理にでも紡(つむ)ぎ出すかのように、喋った。
マスウラ
「で、だからどうしろと言うんだ?
そちらさんは、俺にどうしろと言うんだ?」
それはワタシに方向性を尋ねる言葉であった。
マスウラ
「俺に、話から降りろというのか…?」
「犯罪」というキーワードが余程利いたのか、
マスウラはこの上なく弱気になっている。
そして、このオッサンはワタシに救いと慈悲を求めている。
少なくともワタシにはそう聞こえた。
救いを求めるのなら、救ってあげよう。
右の頬を打たれたら、左の頬を殴り返せ、だ。
ワタシは、噛んで含めるように言った。
ワタシ
「マスウラさん…。
ワタシはね、こう思うんですよ」
いよいよ、次回、交渉人マスウラ電話編は終了!
本当に本当。
…多分。
…続く。
2004.01.01 木曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第六十七話−
交渉を続ける為の条件とは?…の巻。
半ばワタシに対し救いを求めるマスウラ−。
敵対するワタシにそれを求めるのは、
全く筋違いだと思うが、それはそれ、これはこれ。
救済を求めるのなら、与えてあげよう。
ワタシは慈悲深い男なのである。
右の頬を打たれたら、左の頬を殴り返せ、だ。
ワタシは、噛んで含めるように言った。
ワタシ
「マスウラさん…。
ワタシはね、こう思うんですよ」
マスウラ
「……」
マスウラは、救済の言葉を待っていた。
すがるような息遣いが電話の向こうから聴こえる。
ワタシ
「我ながら非常に矛盾したことかもしれませんが。
ワタシはね、マスウラさんが何をどうやろうと、
勝手にしてください、それはアナタ方の自由です、
…というスタンスなんですよ、本来だったら。
それについて、何で資格ないのに代理行為してるんだ、
金取ってるんだ、なんてガタガタ言いたくない。
別に占有者A子さんから金取っちゃダメとは言わない」
マスウラは少しホッとした声を出した。
自分で確認するかのように、そうか、そうかと呟いていた。
ワタシ
「でもね、本来だったらそう思うのですが−。
ただ今の状況が状況で、
お互いの言い分が食い違っているじゃないですか。
あまりにも違いすぎている。
だからね、マスウラさん。
ワタシはね、この閉塞の事態を打破する為にも、
ひとつ条件をつけたいんですよ」
数瞬、間を空けた後−。
マスウラ
「条件−、条件って何だ?」
マスウラは訝(いぶか)しげにダミ声をあげる。
ワタシ
「いや、条件っていっても簡単なことですよ」
マスウラ
「…やっぱり俺に話しから降りろってことか?」
マスウラは、ポツリと漏らした。
マスウラ
「…いずれにせよ、あまり聞きたくない」
ワタシはその呟きを無視し、淡々と続けた。
ワタシ
「まあ、聞いて下さいよ。
マスウラさんに話から降りて下さい、
ってことじゃないですよ。
条件って言っても大したモノではありません。
条件なんて大げさに言っちゃうから、
気張ってしまうだけで−。
要はワタシの前に本人連れ来て下さいよ。
ただそれだけです。
今、こうやってマスウラさんだけを前にしてお話するよりも、
効率がいいと思うんですよね」
ワタシはマスウラに今後の交渉についての条件を提示した。
だが、マスウラはワタシの提示に難色を示す。
マスウラ
「…でも、交渉には俺がいるじゃないか。
代理人としての俺が−」
ワタシはマスウラの条件提示拒否の態度を一蹴する。
ワタシ
「マスウラさん…。
まだワタシの言っていることが理解出来てないようですね。
ワタシは直接、占有者A子さん本人を交えて交渉しましょう、
と言ってるんですよ。
別にアナタをあからさまに蔑(ないがし)ろにしよう、
というワケじゃなく−。
当然、アナタもその交渉の場に参加して結構ですよ。
但し、アナタだけを相手にしての交渉は、
これ以上出来ません」
そして最後に、それが交渉を続ける為の条件です、
と付け加えた。
マスウラ
「……」
黙りこくるマスウラ。
でもね−。
マスウラくん、キミに選択権はないんだよ。
チンパンジーだったらチンパンジーらしく、
黙ってご主人様に尻尾でも振っておけ。
あ、尻尾振るのは犬か。
最も、猿も犬も所詮はケモノ。同じようなものだ。
ワタシはマスウラを諭すように言った。
ワタシ
「これでも、ワタシはアナタの顔を立ててるつもりですよ」
マスウラは−、重い口を開いた。
…電話編もいよいよ次回で最後−。
結局、今回終わらなかったじゃん。
それはまあ、予想通りということで。
次回こそ本当に電話編ラスト!
電話編の後、いよいよ主役登場か…?
…多分。
…続く。
2004.01.05 月曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第六十八話−
今年は申年。マスウラの年だな。…の巻。
マスウラは重い口をやっと開いた−。
マスウラ
「…分かった、分かった、分かった」
彼は、針の飛んだレコードみたいに言った。
そして、それでも飽きたらぬか、うわ言の如く、繰り返す。
マスウラ
「…分かった。分かりました。
分かったって言えばいいんでしょ?」
マスウラは−、いや、このサルは−、
寝際を叩き起こされたといった感で、
この上なく気の抜けたサイダーみたいにダルそうだ。
その声を聴いたワタシは、表情を歪ませる。
彼の言い方は、ダダをこねている子供の様である。
ワガママな子供が大嫌いなワタシとしては、
マスウラを石畳の上に正座させ、
おい、チンパン!
オマエは何をどう分かっているのか!
−などと問い詰めたい。
小一時間問い詰めたい。
この時のワタシの気分たるや、マスウラに対する腹立たしさと、
サルと交渉をしないといけないという憂鬱さが複雑に絡み合い、
例えるなら、貴婦人のアンニュイな午後、といったところ。
でも、自分は全く高貴な人間じゃないじゃん、と即刻訂正。
というか、それ以前にどこがどう貴婦人なんだ、
なんぞと根本的な問題にブチ当たってみたり。
それにしても−。
二日酔いで胃の中が捻じられるような不快感を感じる、
マスウラの発言は、如何なものかと、
全世界の皆様方に問い掛けたいところだ。
ただその問い掛けを書いているだけで、
平気で十話くらい書けそうであるが、ここは我慢の子。
グッと我慢しておく。
我慢できずに、だらだらと余計なことで書き連ね、
長文をカマしていたら、
物語が進まない!遅い!本題と関係ないじゃねーか!
こういう時だけ遅漏気味になってるんじゃねーよ!
…等々、ありがたいお言葉がメールやら掲示板で、
ワタシの手元に寄せられることだろう。
−話を元に戻す。
いずれにせよ、このサル男は不愉快な奴だ、と思うが、
それは仕方ないか。
だって、サルなんだし。
それに対して、こちらは大人だ。
大人以前に、人間だ。
この地球はいずれ猿の惑星になるのだから、
仕方がないと思っておく。
まあ、この物語を書いている今年は、申年だしな。
ワタシは腹立たしさとアンニュイさを心に仕舞い込み、言った。
ワタシ
「…マスウラさん。分かったってことは、
今回ウチが落札した物件を占有している、
占有者A子さんとワタシたちが間を通さずに、
退去に関する交渉を直接行う。
その件について、もっともなことだ。
わかりました。同意します。
−と、受け止めても宜しいワケですね?」
マスウラはワタシの問い掛けに、
ますます気が抜けた声を発した。
マスウラ
「…そう言うしかないじゃないか。
それが交渉を進める為の条件なんだろ?」
ワタシは相手から見られているワケでもないのに、
大きく頷(うなず)いた。
ワタシ
「そうですね」
「笑っていいとも」の観客みたいな返答をするワタシ。
何だか、こちらまで気が抜ける。
脱力感溢れる、電話での交渉シーンだ。
マスウラ
「…分かった、分かった。
ただ、こちらとしても言い分はあるから、
それは予め察しておいて下さい。
あと、本人も不安がるといけないから、
その場には、同席させて貰います!」
マスウラは、本人が不安、というところを特に強調した。
何をどう察しよ、というのか。迷惑な話しだ。
大体、このオッサンの丁寧語とエラソウな言葉が混ざった、
奇妙な言葉使いは一体何なのだろう。
まあ、これもまた、チンパンジーだから仕方がない、か。
それに今年は申年だし。猿の惑星だし。うっきー。
ワタシ
「…先程も言いました通り、
マスウラさんが同席するのは構いませんよ。
本人さんが居ればの話ですが−」
前置きもそこそこに、
(というか今までの話自体、長い前フリであったが)
ワタシはマスウラと今後のスケジュール立てる。
それだったら、二週間後のいついつにどうだ、
場所は、自分の事務所でどうだ、
とマスウラから日程と場所の提案をされた。
ワタシは日程の部分でもう少し早めることは出来ないのか、
と前倒しの要請をしたが、
それに対するマスウラの答えはこうだ。
自分としてもやるんだったら早いところ決着をつけたい。
でも占有者A子は今、旅行に行っているので、
申し訳ないけれども時間的に無理。
旅行先から戻ってくるのが二週間後だから、
その頃に交渉の場を設けたい、とのこと。
ホントかよ、と思うが、
それは違うと、第三者であるワタシが言い張るのも、
おかしな話なので、それは真実であると思い込むことにした。
ワタシ
「…それはそうと。
旅行先にいる占有者A子さんに交渉の場に来て貰うことと、
それと時間についてなんですけど。
前もって彼女に訊かなくてもいいんです?」
ワタシは至極当たり前の疑問を口にした。
時間は空くとは言え、
独断専行的に具体的な日時と場所を言ってるけど、
それで本人は、その時間にその場に来るの?
マスウラ
「大丈夫、大丈夫。
大丈夫だって言ってるんだから大丈夫。
心配しないでよ」
それを聞いたワタシは、喉の先まで、
いやいや、アンタだから心配なんだよ!
などという言葉が出掛かったことは、言うまでもない。
…続く。
<追記>
全然、電話編終わらないですね(^^;
ちなみに電話編とは、今回の物語の中である一部分−、
電話での、追い出し屋Gとマスウラとの交渉部分を指します。
従って電話編が終わってから、
今回の最大のメインである元アイドルとの直接対決を迎えます。
果たして、元アイドルとの対決の行方は?
最後に、マスウラが取った対応とは?
そして、交渉の結末は…?
真相がどこまで語られるかは、ワタシの気分次第です。
読みたい人は、まあ、感想メール・掲示板などで感想など。
あまり反響がないなとワタシが思ったら、
少年ジャンプの打ち切り漫画の如く、
唐突な終わり方をすることを予め察しておいて下さい(笑)
それとも、元アイドルが出た瞬間に、
会員制サイトに移行して、入場料でも取ろうかなと。
でも、金払ってまで見たいヤツはいないだろうなあ。
その時は、いいや。
自分ひとりのために書こう(笑)
2004.01.06 火曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第六十九話−
チンパンジーは信用できない。…の巻。
追い出し屋Gとマスウラとの電話交渉は、
終盤になっているのは間違いないのではあるが−。
一体いつになったら、終わるんだ?
早く次の交渉へ行けよ!
とっととアイドル出せよ!
という読者の声を最大限に無視し、
いつ果てることなく、延々と話は脇道を突き進む。
そう、それは無人の野を走るシベリア超特急のように−。
マスウラ
「大丈夫、大丈夫。
大丈夫だって言ってるんだから大丈夫。
心配しないでよ」
それを聞いたワタシは、喉の先まで、
いやいや、アンタだから心配なんだよ!
などという言葉が出掛かったことは、言うまでもない。
ワタシは一瞬、間を空けた。
呆気に取られた、一瞬だ。
その間を彼は彼なりに察したのかもしれない。
マスウラ
「…何?心配してるの?
俺が言ってるから大丈夫だよ」
ワタシは、もう一度、心の中で叫んだ。
それはもう、世界の中心で愛を叫ぶ、位に叫んだ。
だから、アンタだから心配なんだよ!
そんなワタシのことなどお構い無しに、
飄々(ひょうひょう)と自己に都合の良いことを語るマスウラ。
マスウラ
「追い出し屋Gさん、さー。
私もね、今まで色々と交渉を経験したけど、
皆、最後は上手くまとまっているから−」
チンパンジーはダミ声でがなり立てる。
呆けた声で、呆けたことをのたまう。
それにしても不思議なことに、
信用出来ない人間程、自分を信じろ、信じろ、と言う。
この男は紛れもなくそういう類の人間である。
あ、人間じゃなくてチンパンジーか。
間違い、間違い。
マスウラ
「やっぱり、人間、話さないとね。
話せば分かる!
だってお互い人間なんだし」
何故、そのような発言が今出来るのか、
意味が分からない。
先程まで、声を震わせていたチンパンジーは、
三歩、歩けば忘れてしまうニワトリの脳でも、
持ち合わせているのだろうか。
今ではすっかり調子の良い男になっている。
この男も、チンパンジーだったり、ニワトリだったり、
色々とご苦労なことだ。
しかし、立ち直りの早さは、彼の唯一ともいえる、
長所なのかもしれない。
彼とは逆に、立ち直りに時間が掛かるワタシにしてみたら、
彼の復活のスピードは見習うべき点があるかもしれない、
−なんて敵対する相手からも、その長所を見習う、
優等生的発想をしてみる。
もっともそんな発想は即、アンインストール。
永遠にアデューだ。
ワタシ
「…マスウラさん。
それがまとまるかどうかは、占有者A子さん次第ですよ」
再三再四、調子の乗った発言を繰り広げるマスウラに、
ワタシは至極真っ当な意見を述べる。
マスウラ
「…ま、まあ、そうだけれども。
でも、追い出し屋Gさん。
頼みますよ。
こちらの言い分もちゃんと汲んでくださいよ」
−この男、交渉方針を土下座外交へと方向転換したのか?
ころころと方針を変える男だ。
社会経験があまりないワタシからしても、
やはり信用のおけない人間だな、
とますますマスウラに対する不信感が募ってくる。
すでに不信感メーターは振り切れているが−。
もう、この辺りでこいつとの電話は終わりでいいだろう。
だらだらとした電話はここまで、だ。
…続く。
<追記>
昨日の追記は、戯言を書いたのですが−。
これからも適当に書いていきますので、
ヒマな時にでも期待しないで読んでちょうだいな、
といったところです、はい。
あ、そうそう。
ワタシは、サイト運営を頑張らないですよー。
頑張るのは、本業だけで十分です。
これは趣味の文章なので、ワタシが本業で刺されない限り、
続けていくと思われます。
なお、元アイドルが誰なのかについては、
本作中では明かされることはありません。
いつまで経っても占有者A子としか記載されません。
予めご了承ください。
ちなみに今、サイトやらメルマガとは別に、
今までの自分の経験を詰め込んだ、
リアルタッチな読み物を記しているのですが、
これは面白いかも、と。
元々、自分自身のマニュアルとして、
書いてるモノなのですがね。
ちなみに、これ、趣味中の趣味のモノなので、
ネットで公開とかはしません。
あしからず。
2004.01.07 水曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第七十話−
電話を切った。そして次は…の巻。
受話器をずっと握っていると、
掌(てのひら)からはじっとりとした、不快な念を感じる。
相手を目前にしない、電話での交渉もいよいよ最後。
本当か?
本当に本当か?
本当に本当に本当か?
それは、今話の最後まで読んで貰えれば分かること。
早速、本編−。
圧迫外交から土下座外交へ。
ころころと交渉方針を変える男だ。
社会経験があまりないワタシからしても、
やはり信用のおけない人間だな、
とますますマスウラに対する不信感が募ってくる。
すでに不信感メーターは振り切れているが−。
もう、この辺りでこいつとの電話は終わりでいいだろう。
だらだらとした電話はここまで、だ。
ワタシはマスウラにこう切り出した。
ワタシ
「…ということで、マスウラさん。
次回、お会いする時間も決まりましたし、
場所も決まったと。
二週間後の、×日の午後二時。
場所はマスウラさんの事務所で−」
当事者である占有者A子を交えた、
次回交渉に向けての話をしているワタシ。
そのワタシの話をダミ声が遮る。
もちろん、マスウラの声だ。
マスウラ
「あ、そうだ。
これ、追い出し屋Gさんに言っておきたいんだけど。
どうせやるんだったら、次回交渉でまとめましょうや。
追い出し屋Gさんの社長さんにも言っておいてよ。
何度も何度も話し合いをもったとしても、
それは無駄でしょ?
時間の無駄、無駄、無駄…」
無駄な時間を過ごすのは意味がないことだ。
非常にもっともなことを述べる彼であるが、
無駄、無駄、無駄って、最も無駄なモノは、
そりゃあ、アンタの存在自体のことだろ。
そう心の中でツッコミを入れる。
ワタシ
「何度も無駄無駄言ってますけど。
それはその通りだとワタシも思います。
時間は有意義に使ってこそ、
ナンボと言ったところでしょうし−」
ただ、ここでどんな意見であろうが、
このチンパンジー男の言っていることが正しい、
で終わってしまったら、ちょっとばかり気分が悪い。
大体、このマスウラの発言は、
ワタシのそれを遮ってされたものだし。
だから、ワタシは付け加えた。
ワタシ
「でもね、マスウラさん。
何度も言ってます通り、
すべては占有者A子さん次第です。
ウチはこの物件を、占有者A子さんに貸し続ける、
そのような言葉は一切出ませんので−」
−当然だ。
占有者A子本人を引っ張り出したからといって、
そのことだけに満足し、
久々に孫の顔をみた田舎のお婆ちゃんよろしく、
相手の言い分をハイハイ言ってたら、
ワタシの立場がない。
会社での立場がないどころか、そんな人間、即クビだ。
ワタシ
「繰り返しになりますが、
賃貸という話は絶対に出ませんので、
その旨は占有者A子さんに前もって言っておいて下さい」
ワタシの決意表明とも言える発言だ。
それを聞いたマスウラは、ただポツリと一言。
マスウラ
「…手厳しい態度ですなぁ」
しかし、何故だか分からないが、
少し余裕がある体で構えているようだった。
余裕−?
マスウラの態度に、ワタシは奇異な臭いを感じた。
この奇妙な感覚は一体何だ?
ここで−。
ふと、思う。
今までワタシは幾度となく、
占有者A子に落札したマンションを貸す気はない。
現所有者との賃貸借契約を
早々の退去を求める。
その旨を伝える度に、マスウラは必ずと言っていい程、
声を荒げ、反抗してきた。
「占有者A子さんにはここに住む権利がある!」
この一点張りで対抗してきた。
だが、今のマスウラの反応はどうだ?
ワタシが多少脅したとは言え−。
その脅し−代理行為は弁護士以外の人間には出来ない、
(実はこの脅しにはちょっとしたエピソードがあるのだが)
だけでここまで方向転換出来るものだろうか?
このチンパンジー男には、
もしかしたら他に考えがあるのだろうか…。
−ワタシはその答えを後々知ることになる。
マスウラの奇異な対応について、
少し考え事をしているワタシであったが、
本人光臨のアポを取った以上、
ここでこの猿男との会話をいつまで続けても仕方がない。
ワタシ
「…まあ、こちらも仕事でやってますので。
それじゃあ、マスウラさん。
当日は宜しくお願いします−」
マスウラの「こちらこそ、宜しく」を最後まで聞いたかどうか、
ワタシは電話を切る。
マスウラとの、長い電話での交渉はこうして終わった。
長かったが、最後は何とも呆気ない。
ワタシは少し呆けたように、ぐたっと椅子に深く座り直した。
そして、今まで受話器を握っていた、
右の掌(てのひら)を見る。
やはり、汗が滲(にじ)んでいた。
…続く。
<追記>
ワタシが感想やら何やらを書いて貰いたいぞ、
なんつったら、色んな意見がWEB拍手に書かれてますね。
もしくは掲示板とかメールでも貰ってるんですけど。
まずは、素直にありがとうございます。
んでも、WEB拍手よりも掲示板とかメールとかの方に、
何らかの感想なんぞを貰った方が嬉しいかな、と。
そう思う今日この頃だったりします。
ここからWEB拍手の感想へのお返事。
>う〜ん、じれるなー・・・・・
焦らしが今回の裏テーマです。
存分に焦れて下さい。
>ここまで、読み続けているので
>ファンの期待を裏切らないでください。
ファンの期待ですか…。
まあ、タダで読める文章なので、
そんな期待しないで下さいな。
>頑張って書いて下さい。できれば毎日ね。
死にます。
でも更新回数はどうだろ。
この手の連載では、普通以上にはあると思いますよ?
>A子との対決を楽しみにしています。
>打ち切らずに続けてください。
はい、多分書くと思います。
余程のことがない限り、打ち切らないかなー?
>毎日興味深く拝見してます。
>大変とは思いますが是非とも続けてください。
>因みに元アイドルはO場 久美子?
残念ながら、違います。
当然のことながら、これからも占有者A子でずっと通します。
芸名等、名前は出しません。
ご想像にお任せします。
>第一話が9月17日かぁ。もう完結しないな、これは。
おお、去年の9月からやってたんだあ、としみじみ。
ちなみに完結に関してですが、
物語を終わらせることだったら速攻、出来ますよ?
少年ジャンプの打ち切り漫画みたいな結末ですけど。
>最新更新日付の年号が…(^_^;)
あー、トップページですか?
西暦が間違ってましたね。
直しておきました。
>そう言わずに、気合いを入れて頑張って下さい:-)
収入になるのなら、気合を入れられます(笑)
趣味だったら、こんなもんかなー、と。
それではこれからも宜しくお願いします。
2004.01.09 金曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第七十一話−
起死回生の言葉、実は…の巻。
マスウラとの対決は一先ず終わった。
電話を切ったワタシは、
少し呆けたように、ぐたっと椅子に深く座り直す。
そして、今まで受話器を握っていた、
右の掌(てのひら)を見る。
やはり、汗が滲(にじ)んでいた。
ワタシは重い疲れを感じていた。
テニスをしたような、心地よいそれではなく、
ただただ徒労感に囚われるものであった。
疲れは吐き気に転換される。
−気持ちが悪い。
この胸のムカつきは一体何だろう。
マスウラとの再度の電話交渉を臨んだ矢先は、
チンパンジーに恐怖を感じる必要が無いとばかりに、
高揚感を煽りに煽り、いざ参らんと意気込んでいた。
だが交渉相手は自分より年上の人間だ。
しかも、立ち退き交渉に首を突っ込んでくるのだ。
それなりに人生の酸いも甘いも噛み分けている。
対するワタシはどうだ。
経験も知識もほとんどない。
酸っぱいも甘いも分からない。
そんなぽっと出のワタシが猿だ猿だといったところで、
マスウラも簡単には落ちないのは当然とも言えよう。
事実、ワタシは相手をバカにし、追い込もうとして、
逆に猿と罵っていた相手に遣り込められそうになった。
このままだと、交渉の駆け引きが危うい。
自分の不利な結果に陥ってしまうかもしれない…。
だからこそ、だからこそ、ワタシは言ったのだ。
交渉の勝機を、神風を吹かせる為の言葉…、
起死回生の言葉を−。
ワタシは右手で、こめかみをマッサージした。
瞼(まぶた)の裏が熱い。
とにかく疲れていた。
−頭が痺れを感じる中、
ワタシは先程の交渉を回想する。
ワタシはマスウラに断言した。
「ズバリ、マスウラさん、アナタは−」
ワタシは、間髪入れず立て続けに言った。
「一体、何の資格で代理人交渉をやってるんです?」
呆気に取られるマスウラに更に追い討ちを掛けるように言う。
「資格を持った人間でないと、
代理行為は出来ないからですよ」
「……」
「大体、アナタは弁護士なんですか?」
「……」
「それじゃあ、代理人として法的な資格はあります?」
「……」
「何も無いんですよね?」
ワタシは網を狭めるように、マスウラを追い込む。
チンパンジーは、徐々に網に絡め取られていく。
さあ、今だ!
マスウラよ、これでも喰らえ!!
「資格のないものが、金取って、
代理人交渉を行うのは、犯罪です!」
ズバリと言い切った。
「…は、犯罪〜っ!?」
マスウラは、まさし