2004.06.15 火曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第二百一話−
箱庭サイズの地獄絵図…の巻。
彼女の反応は――。
やはりというか、もっともというか、想像通りというか、
ワタシにとって芳(かんば)しいものではなかった。
コンソール越しに聴こえてきた彼女の「はい」という応答は、
夜の突然の訪問者に対し、警戒心に満ちたものであることが、
ありありと分かった。
そして、ワタシの声を聴き、訪問者がワタシ――占有者A子にとっては、
憎き交渉相手であろう――だということを彼女は理解すると、
今までの恐々とした警戒心を解いたものの、
今度は、ありのままの憎悪を彼女はワタシに見せつけたのであった。
その刺々しい憎しみの塊は、直接ではなく、機械を通した後であっても、
ワタシの痛覚を十二分に刺激せんばかりだ。
占有者A子
「……何しに来たの?」
彼女はたった一言で、今の気持ちを吐き捨てた。
他にも何か言いたいことがあるのかもしれないが、
彼女にとっても、そしてワタシにとっても、
その一言で必要十分条件を満たしているのだろう――。
そう言わんばかりの言葉だ。
――彼女の刺々しさに負けてはならない。
そして、彼女との再度の交渉を迎えるのだ。
そのためにも、ここで彼女との線を復活させなければ……。
ワタシはインターフォンに向い、声を掛けた。
ワタシ
「いやいや、今日のことを話し合いに来たのですよ。
今日の、地下室の、あれじゃあ、お互いにとって、
どうしようもない展開じゃないですか。
うん、どうしょうもない――」
ワタシの思いとは裏腹に、
彼女への話はとてもぎこちないものであった。
もっとシンプルに、もっとリラックスして……。
心の中で、ワタシは動揺を抑えるべく、
あたかも呪文のように自分を落ち着かせる言葉を繰り返した。
もっとシンプルに、もっとリラックスして……。
ワタシ
「これは、あれですよ。
お互い不幸――」
占有者A子
「ああああ、もうっ!!」
ワタシはまだ話の途中であったのだが、
彼女は、憎々しげな声を代えることなく、ワタシに言い放った。
それはまさに突然の出来事であり、
ワタシは今までよりも、更なる棘の鋭さを感じた。
占有者A子
「大体、アンタ、今、何時だと思ってるの!?
夜の、夜中に来ちゃってさあ。
迷惑だって、こんな時間に来るだなんて、非常識よ!!
この前も迷惑だって言ったのに、夜中に来て――」
インターフォンから止め処もなく流れてくる彼女の罵声の後ろから、
薄っすらと赤ん坊の泣き声が聞こえていた。
母親の怒りの急変に、子供は子供で不安を感じ取っていたのだろう。
だが、その子供の不安は、親にとっての憎しみを大火とする、
起爆剤の役割を果たすのであった。
彼女の声は不意に遠ざかり、なにやら喚き散らしている。
どうやら、彼女の怒りの矛先は――赤ん坊に向けられているようだ。
……ああああああ、うるさいのよっ!!
うるさい、うるさいっ!!
彼女の声に呼応するかの如く、
赤ん坊の泣き叫ぶ音がリフレインする。
更に血が沸き立ったように、占有者A子の声が――。
火がついた乳飲み子の、阿鼻叫喚の図。
ワタシは箱庭サイズの地獄にいるような気分に陥った……。
……続く。
<おまけ日記>
裁判所のおねえちゃんは可愛い子が多い。
顔で採っているのか?
6/14 22時
>まっ、無料で読めるんだから感謝しますよ。
>その代わり本買う時はGさん所と何か新しい事したら応援しますよ
はっきり言って、アマゾンの広告代は大したことがないのですが、
ここを経由して紹介した本が買われているんだなあ、
と思うと、ちょっと嬉しくなりますね。
6/15 1時
>PHSからでも読めるのかな。
どうなんでしょうか?
試してみてください。
6/15 7時
>思うように書いてくださいな。
>ながけりゃながいほど読みがいがありますよん。
はい、好き勝手に書いていきますです。
読み甲斐がある、といえば、
いつか、不動産営業小説というのを世に出せればいいなあ、と。
今、ちまちまと書いてますがね。
エンターテイメント指数はかなり高いです。
6/15 12時
>携帯(i-mode)のgoogleで検索かけて見ると,
>テキストだけ分割で表示されるんです。
>だから‘無理やり’です。パケ代大分かかります。
>でもいいんです。面白いから。
ほうほう、なんか強引な読み方の技があるのですね。
そこまでして読まなくてもと思いますが、それと同時に、
そこまでして読んで貰えると嬉しいですね、単純に。
6/15 15時
>元アイドル編が一番つまらな(バキッ
>次を楽しみにしています。
多分、ちょっと前までのワタシだったら、
つまらなかったら、時間の無駄だろうし、
読まない方がいいんじゃないの?
とでも言ってたかもしれませんが――。
今作が面白くなければ、次作が面白いとは限りませんよ。
ちなみに次のテーマは……。
まだ、言わなくて、いいか。
それではこれからも宜しくお願いします。
2004.06.16 水曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第二百二話−
子供嫌いのワタシと子供の親のA子…の巻。
ワタシは、基本的に、子供が好きではない。
大方のところで子供という存在に対して、
ワタシは苦手意識を感じているし、
緩やかな社会的節度を守れない子供に至っては、嫌悪感すら抱く。
特に電車の中で我が物顔に騒いだり、飛び跳ねたり、
シートに土足で上ったりする、
小憎(こにく)たらしい小僧(こぞう)には、
その光景を見て見ぬ振りをする大人
――そんな状況を微笑ましいものとして、
捉えることが出来るのは、馬鹿児の馬鹿親だけだ――共々、
市中引き廻しの上、逆さ磔(はりつけ)にでも処して、
ヒイヒイ言わしたろうか、おんどりゃあ!
程度のことは、思ってしまう――。
無論、実際にそのような虐待チックな行動を取ってしまったら、
それはそれで、新聞の1ページを飾ることになってしまうし、
第一、ワタシは「犬神家の一族」で頸(くび)から噴水の如く、
ざあざあと噴き出す絵の具のような血は当然のこととして、
自分の小指を不注意にも紙で切ってしまった時、
血がぷっくりと玉になっていく情景を見ていただけでも、
自慢じゃないが、ひいいいいとばかりに、
クラクラと眩暈(めまい)を起こしてしまう、貧血体質の人間だ。
虐待やら、残虐非道なことなど、出来るすべがない。
ワタシだけでなく、誰でもそうであろう――。
……そのようなことは、当たり前であり、当然なことだ。
ワタシはそう思った――思いたかった。
だけれども、現実はどうであろうか。
インターフォン越しに遠く聞こえている、
占有者A子の喚き声と、彼女の声の礫(つぶて)を一身に浴びている、
赤ん坊の泣き声は、一体なんなのだろうか。
赤ん坊の火のついた泣き声は尋常ではない。
恐らく、口で言っても泣き止まない乳飲み子に、
彼女は肉体的な暴力を与えていたのではないだろうか。
それこそ、程度の差はあれ、いわゆる幼児虐待ということだ。
虐待……。
これはマズイだろ、単純に……。
依然として、赤ん坊を責め立てるように、
愛情の欠片すら見当たらない、
怒りに身を任せたままの叱り方をしている占有者A子に対し、
ワタシは、彼女を止めるべく、インターフォンに向かって言った。
ワタシ
「あ、あの、占有者A子さん。
子供さんが泣いているようですけど、赤ちゃんだから……。
そう、赤ちゃんだから、多少泣いたって仕方ないじゃないですか。
だから、落ち着いて、落ち着いて――」
ワタシの言葉は変に震えていたかもしれない。
まさか、ワタシが今日、占有者A子を訪問することによって、
そのような虐待の現場に出くわすとは――。
ワタシは社長に怒られたり詰められるのとはまた異なる、
心に粘りつくような不快感を覚えたが、それでも話を続けた。
ワタシ
「あ、あの、確かに赤ちゃん泣いたら、うるさいかもしれないけど、
赤ちゃんっていったら、泣くのが商売みたいなもんですし――」
たどたどしい日本語で、ワタシは彼女に伝えたが、
機械からは、泣き止まない赤ん坊の悲鳴が、
止まることなく、聞こえていたのであった……。
……続く。
<おまけ日記>
今日は、びっくりドンキーのいちごミルク飲み過ぎた。
6/16 14時
>「あーたの方が100万倍迷惑だし非常識」とA子に言いたい。
そりゃ、その通りですね。
でも、彼女には彼女の理由と言うのがあるわけで。
もっとも、その理由が他人にとって、
納得出来るものではないかもしれませんが……。
6/16 14時
>千葉地裁は、イマイチです。おまけに愛想が悪い!+高齢です。
裁判所っていっても、例えば部によっても、
また違いますよね。
それではこれからも宜しくお願いします。
2004.06.20 日曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第二百三話−
赤ちゃんの泣き声と無言の彼女…の巻。
――あああ、アタシが、アタシが何したってのよ!!
このマンションのエントランスは、
白を基調とした色遣いをしているので、
この季節になるともう、寒々しく思える。
加えて、この状況だ。
ワタシの心も、ついでに財布の状態も寒いものだから、
尚更、そのように感じたのかもしれない――。
コンソールのスピーカーから、
占有者A子の喚き声と赤ん坊の泣き声が、折り重なっていた。
少し遠くの方から聴こえている為、
全体的にはっきりとしない鈍い音であるが、
それゆえ、リアリティさが増されているように感じた。
傍から見ているだけのワタシには、
彼女を物理的に止めることが出来ない。
ワタシに出来ることがあるのなら、それは――。
せいぜい、何かしらの言葉を発するだけだ。
もっとも、その言葉は自分自身に対する、
気休めの言葉であるかもしれないが……。
エントランスにひとり佇むワタシは、
あくまでも傍観者であった。
ワタシは妙に孤独を感じた。
ついで、ワタシの心中は、混乱を覚えていた。
大体、彼女が彼女の子供に対して起こしている悪行は、
今日の交渉結果からであり、そして、ワタシが今、
ここにこうやって彼女を訪ねたことで、
彼女の気持ちが爆発したのではないか――。
その爆発させた先にいたのが、占有者A子の子供である。
それは間違いないであろう。
だが、いずれにせよ、彼女が自身の子に当り散らすのは、
道理が通らないことであろうし、
ましてや、どの程度なのかは分からないが、
まだ小さな赤ん坊に手を上げるというのは、
言語道断である。
それに、彼女には彼女の行動の理由があるのと同様に、
ワタシはワタシなりの故がある。
今日、この時、この場所に来るのは、
ワタシにとって、意味があるものなのだ。
ワタシ
「あ、あの……、いや、A子さん、A子さん!
今のアナタの相手はワタシじゃないですか?」
ワタシは彼女に向けて、言った。
言った通り、今話さなければならない、彼女の相手は、
他でもない、ワタシである。
決して、まだ言葉も話せないであろう、彼女の子ではない。
ワタシは、混乱している場合ではない。
もっとしっかりしなければ――。
ワタシ
「今日、ここに来たのは、アナタが先程、
交渉の席から何も決まる事無く、立ち去ったってこと――。
それが原因なんですよ。
ご自分でもお分かりでしょう?
今のこの状態が、非常に中途半端なモノで、
何ひとつ、そう、まったく何も決まっていない――」
――アナタは、今、何を考えて、ここにいるのですか?
とワタシは続けた。
いつしか、スピーカーからは、彼女の声が聴こえなくなり、
ただ赤ん坊の泣き声だけが流れていた。
……続く。
<おまけ日記>
ファミレスのメニューって、ハンバーグ関係が多いですけど、
なんかもっと、マニアックなメニューを出して貰いたいですよね。
例えば、イカ飯ランチ、とか。
6/16 14時
>最初の頃と比べるとGさんが
>追い出し屋として成長している姿が読み取れて面白いです。
どうでもいいことですが、「追い出し屋」として成長って、
なんだか、嫌な感じの響きですね(笑)
6/16 14時
>つーか何で毎回夜に行くんですか?
>非常識よ!って言われない時間に行けばいいのに。
これは以前に書いた文中にも書いてありますが。
それではこれからも宜しくお願いします。
2004.06.21 月曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第二百四話−
機械と科学を礼賛するワタシ…の巻。
しばしの間、彼女は無言であった。
あれだけ騒いでいた彼女の声が先程のワタシの言葉を境に、
ぷつりと消えてしまったことが、不思議でならなかった。
ワタシは、はじめてマスウラの事務所で会った占有者A子を想起する。
そういえば、あの時の彼女も、人形のように黙ったままだったな……。
また、ひとつの懸念もワタシの心に過ぎる。
もしや、占有者A子はインターフォンでの会話を遮断してしまったのか?
だけれども、それは杞憂に過ぎなかった。
依然として彼女の子供の泣き声は、遠くではあるものの、
ワタシの耳に聴こえている。
これがワタシの産み出した幻聴でなければ、
会話のシャットダウンはなされていないようだ。
彼女はここにいる。
インターフォンの近くにいる。
まあ、ここで彼女が一言も喋らなくなったら、
強制終了されたものと代わりはないがな……。
ワタシは彼女の返事を待つべく、
エントランスのコンソールを見つめていた。
恐らく、このコンソールと繋がっている彼女の部屋のインターフォンは、
スピーカーをオン出来る、ハンズフリーのそれであろう。
受話器タイプの場合、通話している人の声以外、
あまり聴こえないものであるが、
室内の音を割と多く取り込んでいることからも、
そのことが窺(うかが)える。
それにしても――と、見つめたまま視線を逸らさずに、思う。
見つめる先にある、冷たい殻の着込んだ丸みを帯びた機械。
冷たく光るこの機械も、その内部では、
熱い動作を飽きる間もなく繰り返しているのだ。
彼は、ワタシの声を相手に伝え、相手の声をワタシに伝える。
細く長い線を経由して、声が行き来しているというのは、
考えようによっては、スゴイとしか言いようのないことだ。
まさしく、これは科学の力であり、科学を操る人間の素晴らしさに、
ワタシは胸を熱くする以外に何が出来るのか――。
しかも、更にスゴイことに、このコンソールときたら、時には、
遠隔操作でワタシの前に立ちはだかるエントランスドアを、
自由自在に開閉しているのだ。
どうだ、参ったか、このヤロウ!
これが科学の力というものだ!
ビバ、科学!
ビバビバ、科学!
科学の前にひれ伏せよ、この文系どもがっ――!!
――彼女との会話や、彼女と彼女の子供が織り成すその光景に、
ワタシは、緊張やストレスや不安や混乱を感じていた。
しっかりしろ、と自分で自分を励ましてはいるが、
その効果たるや一時的なものであり、
モルヒネの力はすぐ消える、といったところか。
ワタシの脳内は、明らかに感情の渦に巻き込まれていた。
その結果が、思考の麻痺だ。
痺れた頭は、現実逃避するかのように、目前にある、
コンソールを、インターフォンを、
それらを御している科学を賛美し続けた。
ありとあらゆる言葉を思い浮かんでは消えていった。
ワタシは気が遠くなる程、
長い時間をコンソールやら科学やらの礼賛に費やしていたかと思ったが、
後になって考えると、たかだか数十秒の出来事だったようである。
しかし、永久のように感じた時も、いつしか終わりが来る。
――そして、沈黙が破られた。
……続く。
<おまけ日記>
東京も台風の影響で、すげえ風が強いです。
飛ばされそう。
いや、むしろ、飛ばされたい。
6/21 4時
>子供の泣き声に腹を立てる親って最低ですね。
その通りですね。
だったら、産まなきゃいいのに、と思いますね。
単純な話し。
それではこれからも宜しくお願いします。
2004.06.22 火曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第二百五話−
沈黙を破った声の主は?…の巻。
沈黙を破ったのは、ワタシではなく、女であった。
だが、コンソールのスピーカーから流れるその声は、
占有者A子の声ではない。
その声は、彼女のそれよりも、明かにしゃがれており、
聴く者に老けを感じさせる声であった。
初老の女性で、この部屋にいてもおかしくない人物。
それはただひとり。
彼女の母親だけだ。
彼女の母親は、少し震え、
懇願に満ちている声でワタシに語り掛けている。
……今夜は――。
その声の主は続けた。
……今夜はもう、帰って下さい。
娘も、今、泣いておりますので。
確かに、よく耳を澄まし、スピーカーに耳を近づけると、
彼女の啜(すす)り泣きが微(かす)かに聴こえていた。
ワタシと同様、沈黙を守っていたかのように思われた
彼女であったが、泣いていたのか――。
初めて顔をあわせた、あの時も、彼女は泣いていた。
今も声を押し殺しつつ、涙に暮れているのであろう。
ワタシは、未だもって続く彼女の咽(むせ)び泣きと、
彼女の子供の泣き声と、それらの涙に追加された、
彼女の母親の哀願――。
エントランスに立ち尽くすワタシは、何をどう答えればいいのか。
ワタシは言葉に詰まっていた。
ますます混乱の度合いが深まり、
自分の取るべき行動が分からなかった。
混乱しているワタシを他所に、
老女はといえば、懇願する。
インターフォンはモニター付きのそれではなかったので、
彼女の表情や姿かたち、身振り手振りを、
目の当たりにすることは出来ないが、
その様子たるや、そしてその顔たるや、
必死の形相であろうことは、彼女の声からも分かる。
その理由は、ひとえに自分の娘の為に、だろう。
占有者A子は母という存在であるが、
彼女の母からすれば、占有者A子は娘ということだ。
……今日は、今日は、もう、駄目ですので。
もうこんな状況ですので――。
母親は幾度となく、「今日はもう帰ってください」
という言葉をワタシに投げる。
そして、「すいません、すいません」と一方的に言い、
それを最後にインターフォンは遮断された。
白いエントランスに、ワタシはただひとり取り残された。
……続く。
<おまけ日記>
今日は暑い。
暑いと言う言葉を書きたくないくらい、暑い。
こんな日は、いちごミルクでカキ氷ですね。
え、ビアガーデンが盛況?
うーむ。
でも、ビアガーデンのつまみってダメじゃないっすか?
6/22 1時
>こゆーケースで時間外手当は付きます?
お近くの不動産業者の営業さんに同じ質問をしてみてください。
多分、ワタシと同じ答えが返ってくると思います。
それではこれからも宜しくお願いします。
2004.06.23 水曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第二百六話−
自虐的な笑いの行方…の巻。
ワタシは、そこに一人きりでいた。
実際、一人であったのだが、この孤独感は尋常ではない。
月並みな表現であるかもしれないが、
いきなり氷点下の雪原へ裸で放り出されたような――。
ワタシは、心も凍りつくような疎外感を感じずにはいられなかった。
夜のエントランスに佇む男がひとり――。
ワタシは、もう一度、彼女の部屋を呼び出そうという気力もなく、
仮にボタンを押しても、そのまま、呼び鈴が鳴り続けるだけで、
誰も出ないか、それとも、彼女の母親に「帰ってください」
と言われるのがオチだ。
大きな溜め息が自然と出る。
ワタシはもう一度、コンソールを見たが、
それに触れる事無く、黙ってエントランスを出た。
外に出ると、先程ここに来た時より、
一段と寒さが身にしみた。
もう秋というより、冬といった方がよいかもしれない。
心も寒いのに、体も寒い。
散々だとしか思えなかった。
交渉も上手くいかないし、彼女の部屋に行っても、
僅かながらの進展すら見ることは出来ない。
……う、う、うふふ。あはは。
ワタシは、薄く笑った。
今日一日のことを思い返してみると、
自然と自虐的な笑いがこみ上げてくる。
本当に散々としか言いようがない一日だ。
その一日の最後を締めくくるのが、今のこんな状況だ。
心無く、笑うしかないではないか。
薄っすらとした笑いを顔にへばり付けたワタシは、
マンションの外から、占有者A子の部屋を見上げた。
このマンションは、そんな大規模な共同住宅ではないのだが、
この時ばかりは、とてつもなく大きいものに思え、
その存在にワタシは押し潰されそうになった。
周りは、電灯の点々とした灯りだけである。
彼女の部屋から光が漏れていることは、すぐに分かる。
ワタシはそれを見て、思った。
光は、明るさの象徴である。
だがその灯りは、家族の団欒の暖かい彩りではなく、
取調室で刑事が犯人を照らしているような、
そんな寒々しい光に過ぎなかった。
あの光の中、占有者A子の家族は、
何をしているのだろうか――。
ワタシは、部屋を見上げるのを止め、駅へと歩を進めた。
アルコールを呑んだワケでもないのに、
少し足をもたつかせながら歩いていた。
フラフラしながらも道すがら考える。
家族のこと。
彼女の家族のこと。
占有者A子、彼女の子供、彼女の母親――。
三人家族。
たった三人しかいない家族――。
その家族が今は皆、泣いていた。
彼女達には、それぞれ涙を流す理由があったのだろう。
今は――彼女達は何をやっているのだろうか。
ワタシは占有者A子の家族について、
ぐるぐると思いを巡らせ――そして、ワタシはハタと気が付いた。
占有者A子の家族の成り立ちについて大事な要素を。
ここから、自ずと次なる指針が導かれるではないか。
そうだ、そうなんだ――。
駅への足取りもフラフラとか細いものから、
力強いものへと代わった――。
同時に、ワタシの顔から自虐的な笑みは消えた。
そんな笑いなぞ、必要ない――。
……続く。
<おまけ日記>
今日は四組の占有者と会ってきました。
会えなかった人もいましたが、共通して言えることは、
どれもこれも、なかなか簡単には出なさそうだということ。
仕方が無い。
本腰入れてやらねば。
2004.06.24 木曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第二百七話−
はじめての民事執行センター訪問…の巻。
あくる日の午後――。
ワタシは目黒の裁判所を目前にしていた。
目黒の裁判所――正式名称を、
東京地方裁判所民事執行センターという。
ここは、不動産競売など、民事執行を扱う専門部が、
より多くの民事執行実務をこなせるよう、
霞ヶ関の東京地裁本庁舎より、
分離移転して出来たセンターである。
東急東横線の「学芸大学」駅が最寄り駅であるが、
駅からおおよそ15分ほど歩いた住宅街の中に所在する。
静かな住環境の中、センターはその身をそびえさせていた。
ワタシは、その白い庁舎を前にして、
しばし、呆然と、昨日の成果を振り返っていた。
昨日の――。
昨日のワタシは――何をしたのだ?
占有者A子のマンションに行ったものの、
反応は全くと言っていい程、芳(かんば)しくなく……。
それどころか、逆に占有者A子の家族の関係を、
悪化させただけに終わった。
そこには一片の成果すらない。
ワタシが手にしたのは、散々たる終局だけであった。
それはボロ着のような結果である。
だが、しかし――。
ワタシは彼女のマンションを訪問したおかげで、
そのボロボロの古着の中に、
ワタシは掘り出し物を見つかるかの如く、
僅かに漏れ出でる、一筋の光明を見つけた。
ワタシが目の当たり、いや……、
耳当たりした占有者A子の話から導き出された、
「家族」という名のキーワード。
占有者A子、占有者A子の母親、占有者A子の子供。
家族の肖像に足りぬ者。
占有者A子の、まだ一言の言葉も話しことがない赤ん坊。
それらの存在や不存在に対し、導き出された帰結は、
次にワタシが何をすべきかという、指針を示していた。
煙に舞う光のように、淡く、心細いものであったが、
ワタシには、進むべき道先がある。
確かに、微かかもしれない。
それに、その先にあるのは、にっちもさっちもいかないような、
断崖絶壁の行き止まりなのかもしれない。
だけれども、手探りも出来ないような、
暗闇の中にワタシはひとり取り残されているのではないのだ。
立ち止まり悩んでいる暇などない。
進むべき先を進むだけ、ただそれだけである。
そして、その示された先を進むための、
地図となりうる情報を得るために、
今日、ここに、センターに来たのだ。
ワタシは、「よし」とばかりに、右手をグッと握り締め、
警備員の脇を通り過ぎ、建物の中へと入った。
ここに、ワタシの求めている情報があるはずだ――。
……続く。
<おまけ日記>
眠い。
なんか、こればっかだな。
6/24 12時
>Gサンの心理描写がリアルで好きです。
リアルですか。
傍で読んで、面白いと思うようなものであれば、
いいかなあ、と思いますです。
6/24 13時
>最初はドキュメントDDだったのに、
>いつのまにかドラマに変わってたって感じです。
>小説書く練習ですか?
ドキュメント番組だったら、
ワタシは「ノンフィックス」とかが好きですね。
人生の悲哀をモロに感じるようなモノが特にいいですね。
練習ってよりも、ワタシは好きなように好きなものを書いている、
ってな感じですかね。
それではこれからも宜しくお願いします。
2004.06.26 土曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第二百八話−
真の主役に会いに行く…の巻。
はたして、センターには、ワタシの求める情報があった――。
裁判所には事件記録――これは、競売に関わる、
今までの履歴や書類が一まとめにされている記録である
――その競売事件の記録を紐解くと、大して探す事無く、
ワタシの探すべき情報は記載されていた。
それは、一通の配達記録であった。
配達記録に不整然と並んでいる、文字列をワタシは指でなぞった。
達筆過ぎて、非常に読みにくい金釘流で住所が書かれている。
――埼玉県K市。
紙に跡がつくほど、幾度と無くなぞった。
まるで、目で知覚するのではなく、
インクの文字を触覚で認識するかのように、何度も何度も。
その文字列をなぞりながら、ワタシの頭では、
占有者A子の家族を思い浮かべていた。
彼女の家族――。
家族の肖像として、そこには足りない存在がある。
その存在こそが、今、混沌とした占有者交渉を紐解く、
たったひとつの鍵なのだ。
その鍵となるべき人物は――。
――ここに、彼がいる。
指でなぞる度にワタシの心は急かされ、
その指先に力強い圧がかかっていく。
ワタシは思った。
――これから、そこへ行く。
彼――マンションの所有者であり、
今回の競売の真の主役たる、所有者Yに会いに行くのだ。
ワタシは、彼に会いに行くべく、センターを後にした。
……続く。
<おまけ日記>
暑いです。
なんだか、最近、暑いか、眠いかのどちらかしか、
言っていないような……。
まあ、それは事実だから仕方ないんですけどね。
とりあえず、今日の仕事は午後の早いうちで終了。
なにはともあれ、インドア派のワタシとしては、
家の中でゴロゴロとDVD鑑賞でもしてるのが一番です。
6/25 2時
>仕事の依頼は、ケイバイアット追い出し屋コムで良いのかな?
>それで良ければ、早速お願いしたいのだ!
それで結構です。
仕事はまあ、今夏から本格的にお受けする予定です。
詳しくは、近々サイトで発表しますです。
それではこれからも宜しくお願いします。
2004.06.27 日曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第二百九話−
嵐の前!本屋での闘争と敗北…の巻。
――埼玉県K市。
学芸大学の駅より、私鉄とJR、次いで私鉄を乗り継ぎ、
K市の駅に着いた時には、日は大分、翳(かげ)っていた
目的地に向かって、脇目も振らず、
真っ直ぐ進んできたが、やはり移動には時間が掛かる。
ワタシは私鉄の駅を後にすると、
真っ先に駅前の本屋に立ち寄った。
ワタシは、その小さな本屋で片隅に陳列してあった、
地図を立ち読みした。
K市の詳細地図だ。
地図と、センターで得た所有者Yの住所を照らし合わせる。
どうやら、そこは駅前から、さほど遠くないところにあるようだ。
時間にして、駅より徒歩10分程度といったところか。
ワタシは、地図で駅からのルートを網膜に焼付けた。
センターで住所の文字列を指でなぞったように、
今度は目で幾度と無くなぞった。
――よし、覚えた。
ワタシが地図を閉じて、陳列棚にそれを戻し、
さあ、行くぞとばかりに店を出ようとした時に、
店のオヤジと目が合った。
オヤジの目は、燃えていた。
それは怒りの眼差し、というところか。
オヤジは、この立ち読み野郎が!
しかも、地図の立ち読みかよ――。
立ち読みは、ようは記事の読み逃げ。
いわば、無銭飲食と同様。
ちゃんと金を払えよ、おらあああああああああ!!
オヤジの目は明らかにそう物語っていた。
ねっとりとした、嫌な眼差しである。
ワタシは、非常に居心地の悪い、非常に嫌な気分になった。
と同時に、罪悪感も感じる。
本来、ワタシは対人恐怖症の小心者である。
このような商売を行ってから、
時間が経過している今であっても、
小心者のクセ、というか、習性は抜け切れていない。
しかも、この本屋の構造上、外に出るには、
このオヤジが陣取るレジの前――30センチにも満たない、
それほど狭い通路をすり抜ける様に通らなければならない。
ワタシは、オヤジの視線を無視し、素通りすることが出来るか。
……いや、出来ないかも。
ワタシは思わず、レジ前にあった雑誌をよく見もせず、
レジに突き出した。
こ、これ……下さい。
あたふたと財布を取り出し、金を支払う。
オヤジは、この時になって、表情を和らげ――。
って、和らげてない。
全く和らげられていない。
オヤジの顔は、客商売にも関わらず、不機嫌そうな顔のままだ。
しまった――。
このオヤジ、デフォルトの顔がこのような、
「この読み逃げヤロウ!」と威嚇する顔だったのか。
ワタシが地図を立ち読みしていた時も、
ただ単に見ていただけなのか。
ワタシは、かなりの敗北感を感じつつ、
店のオヤジから手渡された雑誌入りの紙袋を受け取り、
本屋を出た。
これから、所有者Yと対面しなければならないのに――。
この負けっぷりたるや、いかがなものか。
ワタシは誰かに問い掛けたかったが、
道行く人に、敗戦投手のようなワタシを紹介しても、
仕方ないと思い、それは止めておいた。
それにしても――。
吟味すらしなかったが、何の雑誌を買ったのだろう。
ワタシは紙袋を乱暴に破り、一冊の雑誌を取り出した。
……雑誌『すてきな奥さん』。
それがワタシの敗北感を更に増幅させるのであった。
……続く。
<おまけ日記>
今日、ひさびさにゲームやってます。
これはハマる。
詳細は、あとでBlogにでも書いておきますです。
2004.06.28 月曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第二百十話−
所有者Yの住所にあった建物は?…の巻。
見知らぬ街の、見知らぬ道を歩く。
勝手知ったる道を歩くのと比べて、
知らない道を歩くのは疲れる。
それも今、歩いているような、きちんとした完全舗装でなく、
砂利の飛び出た簡易舗装の道路だと、
歩き疲れも倍増するといったものだ。
まだ季節的に、秋が深まっているとはいえ、
痺れるような寒さを感じる時期の手前だったことが、
外を歩く上での、たったひとつの救いであるといえよう。
駅前の商店街を五分ほど歩き、脇道に入って住宅街を進む。
住宅街は、古い住宅とまだ真新しい住宅が混在している。
道幅はさほど広くはないが、車通りは激しい。
郊外というのは、交通機関としての自動車の重要度というのが、
都内と比べると、比較するべくもない程、高いのであろう。
そして、ほとんどの車は躊躇(ちゅうちょ)することなく、
人や自転車の間を、大してスピードを落とすさず、走っていた。
あたかも、それは車社会に生きるものとしては、
スピード第一、それが命だ、と言わんばかりである。
逆に交通規則を守り、慎重に走るような車には、
容赦ないパッシングの嵐が浴びせかけられていた。
その様子たるや、ここには皆が皆、
車を早く走らせなければならないという掟があり、
その掟を守れぬ者は即座に排除される、というところか。
とりあえず、これらの車が事故を起こすにしても、
ワタシへのボディアタックは回避されますように――。
そんな風に心の片隅で祈りつつ、
ワタシは所有者Yの住居地へと向かった。
また更に歩を進ませ、デコボコした簡易舗装の道を抜けると、
今度はまた商店街にぶつかった。
とはいえ、駅前の商店街とは比べ物にならない程、
小規模であり、肉屋と魚屋、名前も知らない、
独立系であろう小さなスーパーの他は、
まだ夕方だというのに、店のシャッターを下ろしていた。
この商店街の風景。
陳腐な言葉で言うならば、不況の煽りを受けた、ということか。
シャッター街と化している店々の前を歩くと、
季節的な寒さとはまた違った、寒々しさをワタシは感じた。
しばらく、周りを観察しつつ歩いていたワタシであったが、
シャッターの閉まった店舗と店舗の間に挟まれた、
こじんまりとした二階建の建物の前で、ふいに足を止めた。
……ここが、所有者Yがいるであろう住所、か。
過去、真っ白に塗られていたであろう、その壁は、
今はもう、くすんだ灰色になっている。
ワタシは、軒先から出ている看板をじっと見つめていた。
――その建物は病院であった。
……続く。
<おまけ日記>
最近、ユンケル消費量が激しいです。
んでも、あんまり飲み過ぎると効果が低下しそうだな、
と思いつつも、今日もがぶ飲み。
6/27 13時
>「すてきな奥さん」にワロた。
>でも、読み逃げ(利益窃盗)は犯罪じゃないよね。
笑ってもらえれば、幸い。
立ち読みは、どうでしょうか。
んでもやっぱ、本は買ってから読むのが筋だと思いますよん。
6/28 14時
>その雑誌はどうしたんですか(笑)?
「すてきな奥さん」はまた後で登場します(笑)
それではこれからも宜しくお願いします。
2004.06.29 火曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第二百十一話−
所有者Yと病院との関係は?…の巻。
その灰色の建物には、外科医院と看板が出ていた。
寂れた商店街の外れに鎮座する、小さな病院であった。
病院というより、医者ひとりでやっているような、
こじんまりとした診療所といった方が適切かもしれない。
外観から見て、一階に受付と診療室があって、
二階が住居部分になっている――そのような造りである。
ワタシは、この建物が病院であると分かった時、
所有者Yは、ここに入院でもしているのかと思った。
ベットの上で、息も絶え絶え、折れそうなくらい、
細くなったその身を横たわらせている。
そんな所有者Yがワタシの脳裡に浮かび上がった。
もしかしたら……とワタシは思う。
入院後、看護の甲斐なく、亡くなられました。
簡単に言えば、死んじゃいました――。
――なんて、この病院の看護婦あたりから、
言われてしまったら。
ううむ、彼に会えない、それだとまた一歩後退だ。
どうしよう……。
ワタシは一瞬ではあったが、心の動揺を感じた。
――だが、それは杞憂に終わった。
この病院の名前は、Y外科医院といった。
所有者Yの苗字と同じ冠がついた病院名だ。
彼はベットに寝ている患者ではなく、
この個人病院の医者であり、経営者であるのだろう。
もっとも、所有者Yとは赤の他人の、
同姓の人間が経営している病院という可能性も、
無きにしも非ずであるが、その確率は低いだろう。
まったくのゼロとまでは言えないが……。
何はともあれ、だ。
彼――あのマンションの所有者Yは、ここにいる。
ワタシは断定した。
そうでなければ、話も続かないし。
ワタシは、彼に会うべく、こじんまりとした建物に似合っている、
これまた形ばかりの門扉をくぐり、敷地内に立ち入った。
建物には、出入り口が二箇所あった。
ひとつは、病院の玄関――引き戸には、
赤文字で「休診中」とプリントされたプラスティック製の、
白く、細長い札が掛かっていた。
脇には、診療時間と診療曜日が書かれたプレートも
備え付けられている。
今日の曜日と、今の時間――。
まだ、診療が行われているべき時間帯であるのだが……。
周りをじろじろと見ていたワタシであったが、
ん――? とひとつ気が付いたことがあった。
休診中の札であるが、よくよく見ると、
それは埃(ほこり)にまみれていたのだ。
その汚れ具合から推測するに、
かなり長い間、掛かったままになっているようだ。
一階の窓ガラスもカーテンが閉め切ったままで、
診療室に人がいる気配がない。
また、もうひとつの出入り口――病院への引き戸が、
目立つ位置にあるのと対照的に、
建物の影に隠れるようにして、木製のドアがついている。
ドアの脇には「Y」と苗字だけの表札が出ていた。
こちらが住居部分への玄関ドアなのだろう。
ワタシは、建物の影になっているドアに向かった。
――彼は、いる。
間違いなく、ここにいる。
そう断定的に思い、自分を自分で鼓舞しながら、
ワタシは呼び鈴を押した。
そうだ、彼はここにいる――。
……続く。
<おまけ日記>
世の中、嫌なことばかりですね。
少しくらい、世の中が明るくなるくらいの、
景気がいいことが起きればいいのに。
あ、でも、ワタシはオリンピックとかで、
日本人が金メダル取ったとしても、
浮かれるほど嬉しいかって言ったら、
それは微妙なところですので、念の為。
って、誰に言ってるんだか……。
6/29 12時
>なんだか寒々とした情景が目に浮かびます。
>で病院て。さらに寒い…ひゅるる〜(T▽T)
多分、この物語の最後辺りは、
痛快なものではなく、寒い状況が描かれるかも(^^;
6/29 21時
>いやね、買って読むのが筋なのは当たり前なんだけど、
>立ち読みしたのはGさんじゃないの。笑
だからこそ、罪滅ぼし的なところで、
「すてきな奥さん」を購入したというワケです。
もっとも、好き好んでこれを手に入れた
ワケではないのですが(^^;
それではこれからも宜しくお願いします。
2004.06.30 水曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第二百十二話−
「言い切る」ことと「言いっ放し」の違い…の巻。
呼び鈴を鳴らしたワタシはしばらく、
扉の前で立ちすくんでいたものの、
一向に玄関ドアが開く気配がなかった。
彼はここにいる――なんて断言してしまった以上、
ワタシの気持ち的にも、
所有者Yがここで登場してもらわなければ困る。
いや――、気持ちの問題以上に、東京から時間を掛けて、
埼玉のそこそこ奥の方まで訪ねて来たんだ。
居てもらわなければ困る。
そして、ワタシと対面してもらわなければ困るのだ。
彼と会うことが出来ないなんて、
ワタシにとっていい結果が出る出ない以前の問題だ。
彼と会わなければならない……。
ワタシは、目黒の民事執行センターから、
ここに来るまでの間、
会社に一本、電話を掛けたことを思い出した。
その時のワタシは、所有者Yの居場所が分かったということで、
少々興奮気味であったかもしれない。
今となれば、そんなこと程度で、喜びをあらわに出来る、
そんな自分が非常に愛おしく思えるのだが、
それはそれ、これはこれ、
ということで脇に置いておいて……。
電話口に出た社長に、ワタシは息継ぐこともなく、
一息にこう言った。
――社長! 恐らくなんですけれども、
例のマンションの所有者Yが住んでいるであろう、
住所が分かりました。
その場所なのですが、埼玉のK市みたいです。
今からそこに行って、
占有者A子を速やかに退去させるような、
その糸口を見つけてきます!
これに対して、社長はワタシの言葉を聴くや否や、
次のように言い返す。
思いもかけぬほど、不機嫌な声だった。
――馬鹿モン!
「恐らく」とか「あろう」とか「みたい」とか、
そういった懐疑的な言葉を使うな!
そんな報告の仕方があるか!?
ある訳ないだろう!?
だったら、上に報告するときは、断定しろ、断定!!
断定ってのは、「言い切る」ことだ!
不確定なことを言うってのは、
結局、「言いっ放し」になる!
「言い切る」ことと、「言いっ放し」ということは違うんだぞ!!
語尾荒く、社長の話す言葉のすべてに「!」が、
おまけとして、漏れなくついてきます、といったようだった。
またもや、と言うべきか、いつものこと、と言うべきか。
電話での報告時においても、
いきなりのカウンターパンチを喰らうワタシであった。
これから、相手方のところに行こうってのに、
単純に、テンションが下がる……。
社長も社長で、社員がほんの少し前までは、
意気揚々と喋っていたのにも関わらず、
今、「は、はぁ……」と生返事で返答した、
社員の態度に気が付いたのだろう。
ワタシをフォローし、発破を掛けるように、付け加えた。
先程の口調とはうってかわって、穏やかなそれであった。
大方、これから所有者のところに向かうワタシの気を、
全面的に削ぐのは愚策だ、とでも思ったのだろう。
今の現在のワタシであれば、それくらいの読みが出来るが、
その時点のワタシには、そこまでの頭はなく、
ただただ社長の話に身を任せるままであった。
――もっとも、アレだ。
オマエが自分で考えて行動したってことでもあるからな。
気張って、成果だしてみろや。
答えを待ってるからな。
……頑張れよ。
急激な社長の言葉の変化に戸惑いながらも、
受話器を握り締めたまま、
「分かりました」と社長に見える訳もないのに、
大きく頷きながらワタシは答えた。
それはそれは、力強く……。
……ワタシは答えてしまったのだ。
だから、ワタシは所有者Yに会わなければならない。
――しかし、ワタシの目の前にある、
扉は堅く閉ざされたままであった。
すでに陽が落ちた中、ワタシは呆然と立っていた。
電話での社長との会話を回想していたが、
ふと、嫌な結論が思い浮かんだ。
社長の言葉は、フォローでも、ましてや激励でもなく、
単に「成果を出すまでは、会社に戻ってくるな」
という強い命令なのか――。
いや、きっとそうだ、そうなんだ。
実際のところ、電話での社長の話には、
そこまでの真意はなかったのであったが、
ワタシは裏を読み過ぎる程、過剰なまでに読んでしまっていた。
だとすると――。
尚更、引けない。
絶対に所有者Yと会わなければならない――。
ワタシは暑さなど微塵もないのに、嫌な汗を背中に感じた。
祈る気持ちで、再度、呼び鈴を鳴らした……。
出て来い、所有者Y!
……続く。
<おまけ日記>
今日はボーナス支給日ですね。
皆さん、どうでした?
2004.07.01 木曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第二百十三話−
コガネムシを押し潰したワタシ…の巻。
――しかし、ワタシの思いとは裏腹に、
扉が開け放たれることはなかった。
それほどまでに、この扉は重いのか――?
再び、呼び鈴を鳴らす。
一度押す――反応なし。
もう一度押す――反応なし。
ワタシは舌打ちをすると、堰を切るかの如く、
扉の脇に取り付けられている呼び出しボタンを、
何度も何度も押した。
インターフォン機能のついていない、
その呼び出しブザーは、
なんだかコガネムシに似ていた。
玄関ドアの傍らの壁に、へばりついているコガネムシ。
ワタシはコガネムシを押し潰す勢いで、
ボタンを連射した――。
……出て来いよ、所有者Y!
オマエが登場しないことには、物語が進まないんだ!
ワタシは心で念じ、それだけでは飽き足らず、
ぶつぶつと所有者Yに対する恨み言を呟きながら、
ボタンを押し続けた。
だが、最早、コガネムシは息が絶えてしまったか。
いつしか、羽ばたくことすら、叶わなくなっていた。
背中を流れる汗が、一層冷たさを増してくる。
――と同時に、心の中には、暗雲が広がっていった。
先程、電話口で受けた社長の最後の言葉だが……。
実はそれは、ワタシに対するフォローでもなんでもなく、
単に「成果を挙げろ!答えを出すまで戻ってくるな!」
という内容を若干、温和に告げた――。
ただそれだけだったのではないか――?
そう思えば思うほど、悪い気は増幅し、
ワタシという器は、暗闇で溢れんばかりに、
満たされていくのであった……。
それでは、実際のところ、
社長が「気張って、成果だしてみろや。
答えを待ってるからな」と言ったのは、
ワタシに占有者交渉を早くまとめろと、
いわば最後通牒を突きつけたのであろうか――?
その真意に関しては、
ワタシは社長ではないので、知る由もない。
ただ、冷静に振り返ってみるに、
社長は単純に部下の行動を励まし、
鼓舞するために付け加えたのだ、と思う。
普段、褒めることも、励ますことも、
その手の分野に関してのボキャブラリーが
貧困というよりも、枯れ果ててしまったのではないか、
と思わざるを得ないほど、言葉がない、
あの社長が、「頑張れ」という稀有な言葉を掛けたのだ。
普段、励ましの言葉のひとつも掛けない社長が、
放つ言葉だからこそ、その意味は重い。
決して、最後通牒を突きつけた訳ではないのだ――。
しかし、考えというものは、ひとたび悪い方向へ進み出すと、
坂道を転がり落ちるように、加速度を増す。
ワタシの疑心暗鬼もまた、同様であった。
次から次へ、粗悪で粗末な考えが浮かびあがる。
一連の悪循環を止めることは出来なかった。
闇の熱に浮かされてたワタシの恨み言は、
秒単位で大きくなっていき、
ハッキリと声に出して言っていた。
……なんで、なんで、オマエは出てこないんだ?
いないのか、いないんじゃないだろう?
いるんだろ、そこにいるんだろう?
ワタシは押し潰されたコガネムシではなく、
扉を叩きながら、恨み言を連ねた。
手が痺れるほど痛くなるほど、扉を叩いた。殴った。
…・・・今日、ここには、いないのか。
恨み言の山を重ね、疲れもピークに達していたワタシ。
所有者Yと会うことを諦めかけた――その時である。
扉の内側から、ドアチェーンが外れる金属音がし、
かくして、開かずの扉は、開いたのであった――。
……続く。
<おまけ日記>
いやあ、少し重いですね。
面白い文章だけを書いてればいいのでしょうが、
こーゆー部分も書きたいと思う、
ワガママなワタシだったりします。
それにしても、ようやく、扉が開きました。
んで、どうなるのでしょうか。
それはまた次回の話。
6/30 23時
>おおっと 展開がいいぞお!
前回のいくぜえええ!!という展開を、
今回、ブルーな感じに反転しました(^^;
7/1 2時
>ボーナスのある業界が羨ましい。
ワタシもボーナスではなく、歩合なので、
ボーナスが出る人は羨ましいですね。
つーか、パーセンテージもっと上げろ!
とここで、歩合について愚痴ってみる(笑)
それではこれからも宜しくお願いします。
2004.07.02 金曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第二百十四話−
冷静サンと思いつき君、そしてニセ仙人…の巻。
開かずの扉が開き、彼が姿を現した――。
ただそれだけのことであったが、
ワタシは今日の目的を達成したかのような思いを得た。
恨みも悲痛も吹き飛んだ。
無論、それは錯覚であって、
彼と会おうかどうしようが、何らかの形で、
今回のマンションの占有者立退き交渉についての、
前進を見なければ、全く意味を成さない。
しかし、彼と会えたという、その事実だけで、
ワタシはここに来た甲斐があった、と実感した。
しかし、その達成感も一瞬にして、立ち去ることとなる。
何故ならば、他の感情を消し去る程、
彼の容貌は、ワタシに大きなインパクトを与えたからだ。
いや、彼を見た誰もが衝撃を与えられるだろう。
彼は、あだ名を”にせ仙人”に決定せざるを得ない程、
髪とヒゲに覆われていた――。
髪の毛はぼうぼうに、生えるがままに任せ、
口、頬、顎、喉仏など場所を問わず、
顔と首を隠すかの如く、ヒゲが伸びきっている。
小学生の頃、聞いた話であるが、
向日葵は太陽の明かりを目指し、それに向かって、
背丈をぐんぐんと伸ばしていくという。
それとは対面をなし、彼のヒゲは太陽から遠ざかり、
陽光から身を避けているようである。
口元からは数本の歯を覗かせている。
もっとも、数少ない歯の寿命ももう間もなく尽きそうだ。
ただ残念なことに、そのヒゲは大方は白髪ではあるが、
まだ黒いのも多少残っている。
これが雪のように真っ白なヒゲであれば、
仙人として完璧だったのに――。
だから、彼は”ニセ仙人”なんだ!
って――。
だから、ニセ仙人なんだ!
と言い切られても彼にとっては、迷惑な話であろう。
思っているだけでも駄目だ。
彼を見る度に、仙人に見えてきて、目に面白く映り、
強いては、交渉の妨げになるだろう。
などと、ワタシの中の冷静さを司る部分が、
冷静なまま、ツッコミを入れる。
それに対して――。
いや、でも、コイツ、仙人に似てるじゃん!
ってゆーか、仙人じゃん!
仙人そのものじゃん!
似ているものを似ているって言って、
何が悪いだべさ!!
なんて、ワタシの中の思い付きを司る部分が、
思いつくままに、反論をする。
それを発端とし、ワタシの心の住人が、
お互いの主張に聴く耳を持たず、
自分の主張を声高にしていた。
冷静サンは冷静サンで、冷静な判断を理論的に繰り広げ、
思い付き君は思い付き君で、思うがまま、
本能のまま、思う付きを力の限り、叫んでいた。
そんなワタシの心の中で起きている、
他人様には全く関係のない葛藤を他所に、
玄関ドアから顔を覗かせた彼は、
生気の失せた表情で、ワタシの前に姿を晒している……。
……続く。
<おまけ日記>
今日は自分的にとても面白く書けました。
これを読んでいる人が実際のところ、
面白いかどうかは分かりませんが、
多分、これを続けて読んでいる人であったら、
面白いのではないかな、と思います。
冷静サンと思い付き君のキャラは、
その名の通りですので、扱い易そうです。
これはコンビとして、また使いたいなあ、と。
7/2 8時
>ドア開いた!(゜∀゜)そこも競売にかかったと予想したが…
さあ、それはどうなのでしょうか。
まあ、その辺りの展開もありえそうですよね。
7/2 9時
>ボーナスって、自分の成果が、仕事やらん奴にいきそうな!
>いってる!ので%次第では、歩合の方がいいかも!
んでも、仕事が出来る出来ないってのは、
分からんですよね、実際のところ。
7/2 9時
>そのかわり、歩合なら確定申告が
>ボーナスみたいなものですね。
あー、そうなんですか?
7/2 18時
>[すてきな奥さん」「すてきなGさん」
ちょっと笑った。
全然、すてきさんじゃないですよ。
それではこれからも宜しくお願いします。
2004.07.03 土曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第二百十五話−
ただそこにいるだけのニセ仙人…の巻。
ニセ仙人は、何も語ることなく、ただそこにいた。
割と高級そうな靴やサンダル、
下駄が散乱している玄関の三和土(たたき)は、
室内より一段低くなっている。
彼は素足のまま、三和土に降りていた。
……というか、コイツが占有者Yだよな?
ワタシは彼を見る。
さほど背の高くない彼は、
ヨレヨレの作務衣を着込んでいる。
彼は時折、ヒゲ塗れの頬を掻き毟(むし)っていた。
ワタシの方をちらり一目すると、すぐ下を向く。
人と目を合わせるのは、苦手なのであろうか。
彼の瞳はただ一点、
冷たいコンクリートの上に降り立っている、
自らの素足の指先を見つめていた。
……それにしても、年齢はかなりイっているよな。
ワタシと対峙しているというのに、
彼は黙ったままだった。
沈黙を守るがままの彼に、
一体、いくつなのだろう――?
ワタシは彼に真っ先に年齢を問う質問したかったが、
見ず知らずのワタシがいきなりそんなことを訊いても、
どうなのだろうか。
第一、他に訊くべきことが、それこそ、沢山ある。
まずは、順当な手続きを踏むべく、
自己紹介を兼ねて、挨拶をした。
そして、彼の前に名刺を差し出した。
彼は、やはり、黙ったままではあったが、
名刺を受け取った。
視線を名刺に走らせると、またもや、俯(うつむ)く。
ワタシ
「あの、ワタシがここに来たのは――」
――所有者Yさんに会うために来たのです。
ワタシは心の中で、ひとりごちる。
そう、所有者Y――ニセ仙人のアンタに会うために、
ワタシはここまで来たのだ。
アンタと会って、あのマンションに巣食う占有者A子を――。
だが、ここで、ワタシはありありとした違和感を感じた。
このニセ千人と、占有者A子には一体、
どんな関係があるのだというのか――。
関係がない、ということはありえないだろう。
確かに占有者A子が主張する通り、
賃貸借契約が結ばれており、
ただの貸主と借主という関係であれば、
別にこの違和感を感じなかったのかもしれない。
しかし、今回のこのケースは賃貸借契約などない。
ただの使用借権だ。
使用借権とは、タダで借りているということ。
このニセ仙人と占有者A子の間には、
一体、どんな関係があるのだというのだ?
……続く。
<おまけ日記>
あー、眠い。
7/3 12時
>確定申告のときに給料の年末調整書と
>歩合の年末調整書があると、
>年間の歩合の1〜2割が戻ってきます。
>申告していなければ、過去5年まで受付してます。
なんか難しそうですが、そうですか。
んでも、これは源泉でないとダメっつうことですね。
それではこれからも宜しくお願いします。
2004.07.04 日曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第二百十六話−
もうひとりのニセ仙人?…の巻。
占有者A子とニセ仙人――。
彼らふたりの関係を訝しがりながら、
彼に話し掛けていた時も、
ニセ仙人は何も言う事無く、呆けた顔をしていた。
ワタシは続けて、言った。
ワタシ
「……それで、アナタが所有者Yさんですよね」
そう問い掛けると、ニセ仙人はまたもや、
ワタシの顔を覗き見るように、一瞥した。
彼の口元は少し、戦慄(わなな)いている。
時折、「へえへえ」と嗚咽のようなものを漏らすばかりだ。
ワタシ
「そうなんですよね?」
ワタシはニセ仙人に、重ねて問うた。
彼の口元はブルブルと震えていた。
しかし、ただそれだけであった。
彼は言葉らしき言葉を発しない。
唇を震わせている、ただの老人然とした男が、
ワタシの目前に立っているだけだった。
それにしても、だ。
リアクションがほとんど見当たらない。
さすがのワタシも苛々(いらいら)が募る。
……オマエが所有者Yだ!
そうなんだろう、ニセ仙人?
そうだったら、そうだったで、
「はい、ワタシが所有者Yです」とか何とか言えよ。
黙って、ボーっと目の前に立ちすくまれているだけでは、
話の展開が前に進まないんだよ――!
ワタシは苛立ちのすべてを隠すことが出来ず、
少々顔色を変え、更に言った。
ワタシ
「あの、だからね、黙ったままじゃ、
一向に話しが進まないっていうものですよ」
強めに言ったものの、
ニセ仙人は「へえへえ」とばかりに、
言葉を曖昧に濁すだけであった。
ワタシ
「だーかーらー、話しがね――」
ニセ仙人に一歩近づき、
もう苛立ちを隠し切れなくなった、その時である。
家の二階から声が聴こえてきた。
ニセ仙人ではない、他の人間の声。
妙に甲高い、男の声であった。
――おーい、いつまで、何やってるんだ?
のんびりと、間の抜けた印象を受ける声である。
なんだ、ニセ仙人以外に、
まだ他に人間がいるっていうのか――?
ニセ仙人と同居している輩が?
まさか、もうひとり、ニセ仙人がいる、
とかそういうことじゃないだろうな?
そして、ギシギシと階段がしなる音が聞こえてきて……。
……続く。
<おまけ日記>
Xファイル8を観ながら、この文章を書いています。
それにしても、ここ数年はレンタルビデオ屋から、
ビデオ借りてないなあ、と。
少しでも観たいと思ったら、DVDを買うのが、
最早、ワタシの習性となっています。
どうでもいいことですがね。
7/4 10時
>初めて読ませていただいてますが、とっても楽しいです。
>にたタイプの人だなと思いました。
そうですか。
んで、にたタイプって、誰と似てるのですか?
ワタシとですか?
それではこれからも宜しくお願いします。
2004.07.05 月曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第二百十七話−
風船男、登場!…の巻。
はあはあはあはあはあ……。
家の中の、ギシギシと階段が軋(きし)む音と共に、
荒い息遣いが、外まで聴こえて来た。
はあはあはあはあはあ……。
開け放たれた玄関ドアを遮るように、
ニセ仙人がおびえ佇んでいるのであるが、
彼の間をぬうようにして、
吐息が外に漏れ出でて来るようだ。
……一体、何だろう、この階段がしなる音と息遣いは?
誰かがここに向かって来ている、というのか。
ワタシ
「……あの、誰ですか?」
ワタシはニセ仙人に家人について尋ねたが、
彼は「へえへえ」と言った切り、黙ったままで、俯いていた。
はあはあはあはあはあ……。
見知らぬ誰かが、息を吸い、息を吐く行為は、
絶え間なく続いていた。
はあはあはあはあはあ……。
荒い息は、近づいている。
苦しそうな喘ぎのようにも聴こえるその声が……。
そう思った矢先である――。
バタンと扉が開いた。
この扉は、家の玄関と廊下の間にあるもので、
家に訪ねてきた外来者――特に、
こちらから頼んだワケでもないのに、
勝手に押し掛けて来たセールスマンや押し売り――
が玄関先に現れた時、
彼らに家の中を見渡されないようにする為のものである。
その目隠しの扉を開け、彼はワタシの前にやって来た。
彼は大柄といえば大柄だったし、小柄といえば小柄であった。
言うなれば、風船体質とでもいうべき存在である。
もし彼が「太陽にほえろ」の刑事役で登場したら、
迷わずこう呼ばれるであろう――風船刑事(デカ)と。
一見すると、丸く、大きく見えるが、身長はさほどない。
彼は今の今まで、寝ていたのであろうか。
寝巻き姿のままで、
黒々とした髪はボサボサに逆立っていた。
そんな彼の寝巻きはユニクロである。
ユニクロのTシャツと、
薄くテラテラになっているナイロン製の黒ジャージを、
肌になじむほど着込んでいた。
もっとも、彼の場合、肌になじむというよりも、
肌に同化しているといった方が適切かもしれない。
接着剤でくっついているみたいだ。
眼光を細めながら、彼はニセ仙人にぼそりと言う。
「この人、誰?」
この人とは、ワタシのことだ。
ニセ仙人は風船男に、ワタシが先程差し出した名刺を、
黙って差し出す。
風船はそれを受け取った。
ワタシはその名刺に付け加えるように言った。
ワタシ
「ワタシは、所有者Yさんに会いに来た者です。
東京のマンションについて、
ちょっと困ったことがありまして。
でも、ここでも所有者Yさんが黙ったままなので、
困っているんですよ――」
「困っている」という点を強調しつつ、
ワタシはニセ仙人の方を見た。
ニセ仙人は足の指をモジモジとさせている。
……この男、ワタシはこのニセ仙人こと、
所有者Yに会いに来たのだ。
さっさと、話し合いが出来るような、
そんな状況を作り出せ――!!
今度は、風船男の方を向き、続けた。
ワタシ
「だから、多分、息子さんだと思うんですけど。
息子さんの方からも何とか言ってくださいよ。
お願いします」
ワタシは、ニセ仙人こと所有者Yの息子であろう、
風船男に、懇願する。
心なしか、風船男は、より一層、息遣いが荒くなった。
はあはあはあはあはあ……。
……続く。
<おまけ日記>
おお、WEB拍手の反応が薄い。
これって、幾ら押してもらったところで、
別にワタシが得することなんかないのに、
何のリアクションもなかったらなかったで、
結構悲しいものがありますね。
んでも、これに捉われ過ぎるのもなんだかなあ、
って感じだな。
2004.07.06 火曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第二百十八話−
風船男に語るワタシ…の巻。
はあはあはあはあはあ……。
彼は苦しそうに息継ぎを繰り返す。
その度に、胸の肉が上下に揺れていた。
生きている為には息をしなければならない。
そんな基本的動作すら、
彼にとってみたら苦行であるようだ。
はあはあはあはあはあ……。
ワタシの言葉の後、しばらくの間、ニセ仙人はもとより、
風船男もまた、ワタシの名刺を見るばかりで、
無言を保っていた。
だが、風船男は名刺をぞんざいに、
ジャージの尻ポケットに突っ込んだ。
風船はふう、と一息、ため息をつく。
玄関の三和土(たたき)にいた老人の肩をむんずと掴み、
脇に避ける様、促した。
風船男
「……おい、親父。そこにいたら、邪魔だろう」
風船の言葉に呼応する如く、
ニセ仙人は黙って、三和土から玄関の上にあがり、
すごすごと道をあけた。
……ワタシの思った通り、
風船男はニセ仙人の息子であるようだ。
彼らの力関係は、推測するに、
親父よりも息子の方が強そうだ。
だとすると、用件はニセ仙人にあったとしても、
息子を通じて、話を伝えるというのも、
ひとつの手ではあるな――。
風船男はワタシに声を掛け、家に入るよう、促した。
風船男
「……多少、汚れてはいるかもしれないけど。まあ、どうぞ」
ワタシは「お邪魔します」と一言、靴を脱いだ。
風船男は、「多少」と言ったが、
「かなり」の間違いではないか――。
そう思われるほど、室内はゴミが散乱していた。
本当だったら、欧米人よろしく靴のまま、
土足で入り込みたかったが、彼らの手前、仕方がない。
昔テレビで見た、ゴミ・ゴミ・ゴミで溢れかえる、
ゴミ屋敷ほどの荒廃の様ではない。
この程度はなんだ、大したことはない。
だから我慢しろ――と、
無理矢理な理屈で自分で自分を納得させた。
風船男に促されるまま、彼を先頭にして、
急な階段を登る。
ギシギシと音が鳴る。
二階には三、四室あって、
その内の一番大きな部屋に通された。
おそらく、そこはリビングなのだろう。
少なくとも、昔はそう呼ばれていたはずの空間だ。
それが今となっては――、どうだ。
ゴミ保管庫とばかりに、ゴミがバラ撒かれていた。
風船男
「……ちょっと汚いかもしれないけど。
まあ、座ってよ」
――と、ゴミとゴミの間から引き摺り出して来たような、
へたりにへたった座布団をワタシの前に敷いた。
無数に毛玉の付いた、センベイ座布団。
どうやら、ここに座れということらしい。
ワタシは、「どうぞ、お構いなく」と座布団を脇に避けた。
心の中では、「こんなモンの上、座ったら、
スーツが毛玉だらけになるわっ!!」
と絶叫していたが、表情はあくまでも、
ポーカーフェイスを気取っていた。
物をどかし、座れるくらいの空間を作り出した。
この部屋には、テーブルが椅子があるのだが、
そこの上にはモノが置いてあり、使えない状態だ。
風船男はワタシの前で、ゴミの上にドカッと腰を下ろす。
ニセ仙人も、その近くに陣取り、体育座りをしていた。
ワタシもモノをどかしたところに座った。
最初は正座だったが、すぐ「失礼します」と足を崩し、
彼に話し掛けた。
ワタシ
「それで、お父さんのことなんですけど、
東京の港区にマンションを持ってますよね。
そこが競売になって――」
ワタシは今の状況をかいつまんで説明し、
こちらの要望を伝えた。
要は、アナタのお父さんである、
ニセ仙人が所有していたマンションを占有している、
占有者A子を何とかしてくれ、という旨である。
ワタシ
「中にいる、占有者A子さんとは、
通常の貸し借りの関係にないと思われますが――」
ワタシが喋っている間も、風船男は、
ふうふうはあはあ、と息を漏らしていた……。
……続く。
<おまけ日記>
話の流れも、ペースも含めて、ワタシが好きなように書く。
ただそれだけですね。
それにしても、暑い。
外を一時間くらい歩いただけで、
死ぬかと思いましたよ、まったく。
7/5 23時
>毎日楽しみに読ましているものの、
>何か突っ込みを入れる材料が乏しくなりました。
毎日、楽しく読んでればいいんじゃないですかね。
7/6 1時
>しゃ〜ないなぁ! パチパチ!パチパチ飽きた!
>もっとこう・・・スポーツ観戦みたいな、
>ウワァ〜パチパチ!ガオォー!
>みたいなん無いのン?? (毎日見てるよ!)
じゃあ、WEB拍手のボタン押さなくていいので、
ここを読んだら、必ず、ワーワー叫んでください。
7/6 6時
>はよ、話を進めてくだされ。
話、進んでますよ。
7/6 12時
>風船男、生理的にイヤ!
生理的に嫌といわれちゃあ、可哀想です。
んでも、風船男には秘密があって……。
7/6 20時
>針でついちゃえ!パンッ、て。
破裂します。
それではこれからも宜しくお願いします。
2004.07.07 水曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第二百十九話−
置物のニセ仙人と気の無い風船男…の巻。
風船男
「――あー、はあ、そう」
状況経過の説明を一通りしたワタシに、
彼は興味なさそうな口ぶりで言った。
だから、何だ、と言わんばかりである。
彼は、すべての動作が面倒くさいのだろう。
他人の話を聴くことすら、億劫だ――。
そんなマイナスのオーラをプンプンと感じさせる、風船男。
ワタシ
「まあ、そういったところなんですけれども。
結局、話が前に進んでいない、ということなんですよ。
今日の段階で、それで、この、滞っている状態をですね――」
――解決させるべく、ワタシはここに来たのですよ。
とワタシは力を込め、言った。
話を続ける。
ワタシ
「……先程から、お父様が黙ってらっしゃる。
何の話合いにもならない。
だから、所有者Yさんの息子さん。
アナタからも、お父さんに言ってもらいたいのです。
占有者A子を何とかしてくれ、と――」
風船男は、ワタシの熱弁にも、我関せず、
といった態度であった。
時折、「ふんふん」と軽く頷いてみたり、
そうでなければ「はあはあ」と苦しそうな息遣いをしていた。
彼は、真剣に話を聞いていない――。
傍らにいるニセ仙人は、置物のように、ただそこにいた。
ワタシ
「……あの、話、聞いてます?」
ワタシは風船男に問う。
腑抜けたニセ仙人ではない。
今は、風船男、オマエだけが頼りなのだ――!
しかし、唯一の頼みの綱である風船男は、
爪の伸び切った右の小指で、
耳の穴を掻いていた。
そして、その爪に挟まった耳カスを、
ふうと息で吹き飛ばした。
カスがひらひらと舞い――。
そんな光景を細い目に映しつつ、彼は、言った。
風船男
「……あんね、えーと、追い出し屋Gさん、だっけ?
あのね、Gさん。
さっきから、色々と話をしているけれども。
アナタ、ひとつ勘違いしているところがある」
風船男は、ふうふうと息を吐きながら、言う。
それに対して、ワタシ。
……ワタシが何を勘違いしているというのだ?
彼はワタシの怪訝そうな顔を楽しむかの如く、
少しニヤリとしたように見えた。
もっとも、彼の目は肉に埋もれるかのように、
細いので、デフォルトがニヤリ顔という風にも、
捉えることが出来るのであるが……。
風船男
「あんね、Gさん。
僕のことなんだけど――」
……続く。
<おまけ日記>
今日は七夕。
織姫と彦星的にはよかったんじゃないでしょうかね。
んでも、ワタシ的には、暑くて外歩くだけで、
死にそうになり――。
ホント、イヤーンです、はい。
7/6 23時
>自分も昔、猫屋敷に商談に行って
>鼻水が止まらないHA〜HA♪思い出したわ〜!
ワタシもアレルギー体質ですので、
猫の毛とかはダメですね。
それではこれからも宜しくお願いします。
2004.07.08 木曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第二百二十話−
風船男の正体…の巻。
風船男
「あんね、Gさん。
僕のことなんだけど――」
大体にして、ワタシが、
何を勘違いしているというのだ――?
ワタシの頭は、疑問符で溢れ返った。
表情も、うーんと顔をしかめていたかもしれない。
風船男は、そんなワタシの様を見ながら話し続ける。
風船男
「所有者Yってのは、ボクのことだ」
――は?
ワタシはしかめ面から、少々間の抜けた顔になった。
風船男
「だから、あのマンションの所有者は、ボクだ」
――は、はあ?
ますます間の抜けた顔になっただろう。
……すっかり、だ。
すっかり勘違いしていた。
ワタシは風船男の親父であるところの、
ニセ仙人を所有者Yだと思い込んでいた。
そうではなく、風船男が所有者Yだったのか。
この、時々、苦しそうに喘ぐ男が、
今日会うべき人物だったのか――。
ワタシは、ニセ仙人の方向を振り返った。
ニセ仙人は、天を仰ぎ、口を開けていた。
まさしく、呆けた顔を具現化した、といってもいいだろう。
この男に幾ら、アンタが所有者Yだろうとか、
港区のマンションだとか言ったところで、
分からないはずである。
もっとも、この老人の呆けっぷりから考えると、
仮にニセ仙人が所有者Yであったところで、
マトモな反応がされるかどうかについては、
疑問が残るところであるが――。
兎にも角にも、目の前に座っている、
風船のような男が、所有者Yだということだ。
思い込みというのは、ある意味、怖いものである。
ワタシは、咳払いをひとつし、気を落ち着け、
風船男――所有者Yに言葉をぶつけた。
ワタシ
「アナタが……。
そうか、そうですか。
でも、それだったら、話が早い。
ワタシの今日来た理由も、先程話した通りです。
それで、どうなさるつもりですか――?」
ワタシの詰問に対し、
所有者Yは、しばし無言のままであったが――。
……続く。
<おまけ日記>
暑い。
エアコンがないと死にますね。
文明、最高!
7/8 18時
>キャラの濃い人ばかりですね。現実でもそんなですか?
現実の方がキャラの濃い人が多いです。
それではこれからも宜しくお願いします。
2004.07.10 土曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第二百二十一話−
風船男の理解と不理解…の巻。
ワタシの詰問に対し、
所有者Yは、しばし無言のままであったが――。
またもや、「はあはあ」と息を荒げながら、
風船のような面を膨らませ、ぽつりと言った。
所有者Y
「……まあ、それは分かる」
彼は、それだけを言うと、また黙りこくってしまった。
あまりにも言葉が短過ぎる、彼の発言だ。
風船の口は言葉を発するためには、動かない。
それが稼動するのは、苦しそうな息を吐き出す時だけだ。
ワタシは、彼に尋ねた。
――彼のいう「それ」とは一体、どんなことなのか?
ワタシの話の内容の全部が分かるというのか、
そのうちの一部だけが分かるというのか。
それとも、ワタシの気持ちが分かるというのか。
ワタシ
「分かるって、何が分かるってことですか?」
所有者Y
「アナタが話したこと、すべてについて」
彼はひとつだけ、大きな息をついた。
所有者Y
「アナタが言いたいことは、分かる」
彼はワタシの言ったことが分かる、とのことだ。
それだったら、話は早いではないか。
彼に噛んで含めるかのように、彼に訊いた。
ワタシ
「なるほど、ワタシの言ってることが、
全部、分かるって仰ってるんですよね?」
目の前の風船は、小さく頷いた。
ワタシは、彼の頷きに即応する。
風船男の喘ぎに負けない程、強く息巻いて、話し続けた。
今、畳み掛けなくて、
いつ畳み掛けるチャンスがあるというのだ。
ワタシ
「それだったら、何とかして下さいよ。
何とかして下さいって、あれですよ。
占有者A子さんのこと、ですよ。
あのマンションの占有を解いてくれるよう、
所有者の方からも、言って下さいよ」
ワタシの畳み掛ける言葉に対し、
所有者Yは、同意するかの如く、頷いたのであるが――。
次の発言は、彼の頷きと相反するものであった。
所有者Y
「……それは出来ない話、だ」
……続く。
<おまけ日記>
最近、健康に気遣っている訳ではないのですが、
各種サプリメントをコンビニで買っては、
それを無駄に飲んでいます。
んで、ひとつ疑問が――。
こーゆーのって、薬と同じで、
ただ飲み込むだけでいいんですよね?
噛み砕かなくてもいいんですよね?
7/9 18時
>ほんと暑いですよね。外回りが多いかと思いますが、
>日射病等、体調には気を付けて下さいね☆
はい、ありがとうございますです。
とりあえず、死なない程度に水分補給はしています。
夏場の中学生の部活動の時みたいに、
部活中は水を飲むな、といわれて、
脱水症状やらで倒れる心配はありません。
7/9 18時
>その風船男、夏に会いたくない人ランキングがあるなら
>かなり上位に食い込めそうですが、いかがですか?
会いたくないでしょうね。
確かに、その通りです。
んでも、相手にしても、ワタシと会いたくないでしょうから、
まあ、これはお互い様ということで。
7/10 0時
>本日、函館⇔東京、日帰りしました。東京暑すぎ!
>マラソン選手の様になって目立った函館人より。
いやあ、本当に暑いですね。
これまた、どうなっちゃったの? みたいな。
ちなみに、マラソン選手のようになったって、
汗すげえダラダラ状態になってしまったって、
ことでいいんですかねえ?
それとも、函館出張行ったおかげで、
ガリガリに痩せましたよ、みたいな感じです?
って、それだと意味わからんですよね。
それではこれからも宜しくお願いします。
2004.07.11 日曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第二百二十二話−
ワタシの空回りする説得…の巻。
所有者Y
「……それは出来ない話、だ」
彼は自分で自分を納得させるかのように、言った。
しかし、それはあくまでも所有者Yの納得事項であって、
それを聞いているワタシが了解すべきことではない。
「そうですか、はい、分かりました」だなんて、言える訳がない。
ワタシ
「いやいやいや、それこそ、ありえない話ですよ。
まったくもって、ありえない。
言ってることがオカシイじゃないですか」
ワタシは必死に彼を説得する。
ここで引き下がったら、今日この時この場にいる意味がない。
何一つ掴めず、何一つ状況の進展がなければ――。
ワタシはそんな結果が恐ろしかった。
無意味に終わる、怖さだ。
もちろん、行動のすべてがすべて、
自分の思い通りにはならない。
それらの動きや思いが全部、叶うのであれば、
この世の中で、不幸な人間など出る訳がない――。
でも、この時ばかりは、結果を出したかった。
あのマンションから、占有者A子を追い出す、という成果を、だ。
だから、ワタシの説得には熱が篭っていた。
暑過ぎて、それはそれは、空回りするかのように――。
ワタシ
「だって、ご理解頂いているんでしょう?
今の状況がどんなだって。
その状況が、そりゃあもう、異常なんですよ、異常。
これ、分かりますよね?」
風船男は、微動だにしなかった。
その丸い身を縮めたままであった。
その姿がまた、ワタシの心を荒立たせ、苛立たせ、焦らせた。
ワタシ
「いや、黙ったままじゃ、分からないですよ。
この状況を、にっちもさっちもいかない、
今を何とかしなければ――。
そうじゃないですか?
それは、所有者Yさん、
アナタもそう思っていたのではないですか?」
所有者Yは、依然として身を動じさせなかった。
ワタシは喋り続ける。
この閉塞の状況を打破するために――。
ワタシ
「絶対にそう思っていたはずだ。
あなたもこの状況は間違っていると思っている。
そんなはずなんですよ。
だからこそ――」
――ワタシを家の中まで招き入れたんでしょう?
それは、そうだろう。
何故ならば、彼も事態の進展を望んでいなければ、
最初から、ワタシを家に入れる必要性がない。
ワタシが玄関先で所有者Yに会いたいと面会を求めた時も、
「そんなもん、知らん」と、無慈悲なばかりに、
玄関ドアを閉め切ってしまえばいい。
門前払いを食らわせばいいだけだ。
だが、彼はここに招き入れた訳だ――。
所有者Y
「……」
ワタシは懸命に言葉を尽くす。
けれども、所有者Yは身を強張らせたままであった。
……続く。
<おまけ日記>
今日は参議院選挙です。
選挙行ってきました。
景気が悪いと思ったら、政治が悪いと思ったら、
新しい変革を求めなければならないと思います。
大体、この選挙というシステムでしか、
合法的に政治を変えることなど出来ませんからね。
むろん、現状維持がいいということならば、
現政権を支持すればいいだけです。
いずれにせよ、札を投じにいかなきゃならんですね。
7/10 15時
>正解!汗がダラダラポタポタ。
>この人どうしたの?って感じの視線でした。
>函館に別荘買わないGさん?
別荘買うより、当地のホテルやら旅館に泊まった方が、
面倒なくて良くないですかね?
7/11 0時
>サプリは噛まずとも普通に飲めばええんですよ。
ありがとうです。
ひとつ疑問が解決しました。
それではこれからも宜しくお願いします。
2004.07.12 月曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第二百二十三話−
占有者A子と所有者Yの関係…の巻。
所有者Y
「……」
所有者Yは、口を閉ざしたままであった。
かつてリビングだった、現ゴミだめに沈黙が訪れる。
聞こえるのは――彼の苦しそうな息を吐く音だけだ。
彼とワタシとの距離は少なからずあるワケだが、
風船から吐き出される、ねっとりとした空気は、
やがてワタシの顔を撫でるかのように、通り過ぎる。
そんな感じがした。
――いやな、ポジションだ。
そう思ったワタシは、新たに足を崩し直す振りをして、
風船の彼から顔を背け、ワタシは言った。
ワタシ
「……いやあ、ねえ、所有者Yさん。
黙っちゃったら、よく分かりませんよ。
理由が分からない。
ねえ、そうでしょう?」
ワタシの問い掛けに反応もせず、黙ったままだ。
正攻法から攻めて行っても、元の木阿弥になりそうだ。
だから、喋りに少し変化を加えて――。
ワタシ
「……あ、それでも黙ったまま、ですか。
はいはい、そうですか。
んー、それじゃあ、こうしましょうか。
ひとつ質問させて下さい」
ワタシは彼に訊いた。
アナタが今の状況を理解していても、
何も手を下すことが出来ない。
あのマンションの占有者であるA子とは、
一体どんな関係にあるのですか、と。
彼はもう秋も深まっているのにも関わらず、
うっすらじわりと、額に汗を滲(にじ)ませていた。
暖房を付けていないので、室温は外温度よりも、
若干高い程度であり、肌寒いばかりなのであるが――。
占有者Yは、自分の脇に無造作に放置されている、
いつ選択したのか非常に疑問であるタオルをむんずと掴み、
額と零れ落ちる汗をゴシゴシと拭いた。
ついでにチンと鼻をかむと、
ちり紙よろしく丸めて遠くへ放り投げた。
ふう、と大きく息を吐き出すと――。
彼はようやく口を開いたのだ。
所有者Y
「……あの子は、なあ。
あの子は、アイツは、あれだ。
アレなんだよ……」
ワタシ
「……アレって言いますと?」
所有者Y
「……いわゆる、アレだ。女だ」
彼はそう言うと、また黙ってしまった。
女――?
……続く。
<おまけ日記>
月曜日はなんだか重いですよね。
気分が重いです。
それにしても、梅雨はどうしたんでしょうか?
7/11 22時
>イヤー、民主党大勝で喜んでいる。
>へいぞーなんて最低やね。
次の衆議院選挙がどうなるか。
二大政党制になるのか、はたまた――。
って感じですね。
7/12 14時
>沈黙は金、ですなぁ(*_*)
沈黙は金となるか。
でも、沈黙を保ったままって、
損することもあるんですよね。
それではこれからも宜しくお願いします。
2004.07.14 水曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第二百二十四話−
どの口で、女なんて言ってるんだ?…の巻。
女――?
占有者A子は女である。
ワタシはその言葉を聞いた時、
まず最初に連想したのは、
占有者A子が性別上、女に分類される。
すなわち雌である、ということだ。
それにしても、そんな誰の目にも明らかなことを、
どうだ、参ったか! と言わんばかりに言われても、
ワタシはどのようにリアクションを取ればいいのだ?
うひょー、女だ、女。
占有者A子を女なんだー!!
やっと分かったぞー、うっひょー!!
とでも言えばいいのか?
そうか、そうなんか?
なんて、鶴光ボイスで言うべきなのか――?
――などと、思ったのだが、目の前にいる男は、
そこまで文字通りのアホなことを言っているわけではない。
むしろ、愚鈍なのは自分の方だと気が付いた。
その間、10秒足らずではあるが、
我ながら、間の抜けた時間を過ごしたと思う。
彼の発言の、本来の意味が分かったのは、
そんな頭の悪い発想をしていた10秒足らず後のことだ。
少し、驚きの入り混じった声で言う。
ワタシ
「…・・・えっ、女ってそのおぅ」
ワタシは目前の、所有者Yをまじまじと見る。
どこからどう見ても、立派な中年男。
中年男といっても、ガウンにブランデーが似合う、
紳士から180度かけ離れている。
そこにいるのは、汗かきの風船男、だ。
こんな彼に、まさか「女」だなんて、
そんな言葉を吐かれるとは、全く思わなかった。
しかも、シチュエーションは、ゴミだめ。
これほど、似つかわしくない言葉はないだろう。
例えるのなら、フセインが、
「アメリカってのも、ありって言えばありだよね」
なんて言うくらい、ありえない。
どの口で、女だなんて言ってるんだ?
ワタシはそう声高に言いたかった。
物申したかった。
だが――。
ワタシ
「……はあ、そうですか」
ワタシはそんな言葉を口にするだけで、
精一杯であった。
彼も、黙っている。
彼の顔は、微妙な顔つきだ。
笑っているようにも見えるし、
神妙な顔をしているようにも捉えることが出来る。
この場に、今日、何度目かの気まずい時間が流れた。
……続く。
<おまけ日記>
なんか、こーゆー展開だと、ネタ切れとか言われそうですが、
こーゆー心理状況を書く方が、大変だったりするわけで。
以前の日記の様に、競売のシーンを断片的に、
切り取って取り出すのも、イイのかもしれませんが、
ワタシはひとつの事柄をじっくりと描いていくことに、
今は重点を置こうかなー、と。
それにしても、最近、本業も副業も忙しいです。
調査依頼も数多く頂き、ありがとうございますです。
今月は今までで一番多くのご依頼を頂戴しています。
しかしながら、質は落とさず、お届けは迅速に、みたいな。
ご依頼者の皆さんの、ご参考になれば、幸いです。
7/12 22時
>羨ましいなぁ、もとアイドルを