不動産競売必勝攻略法 追い出す人と追い出される人。
不動産競売の真実の姿とは――?
絶対に競売に関わらない人生を送る。
――あなたはそう断言できますか?

 




対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

堂々完結!


物件: 3LDK(広さ:80u程度)

場所: 東京都港区某町

家賃: 6万円/月? 敷金500万円? 更新期間の期限の定め無し?

占有者: 本件所有者より口頭での賃貸借?

占有認定: 占有者の占有権原は使用借権である



  BACK → 第百五十一話〜第二百話を読む

 

2004.06.15 火曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百一話−

箱庭サイズの地獄絵図…の巻。




彼女の反応は――。

やはりというか、もっともというか、想像通りというか、

ワタシにとって芳(かんば)しいものではなかった。

コンソール越しに聴こえてきた彼女の「はい」という応答は、

夜の突然の訪問者に対し、警戒心に満ちたものであることが、

ありありと分かった。

そして、ワタシの声を聴き、訪問者がワタシ――占有者A子にとっては、

憎き交渉相手であろう――だということを彼女は理解すると、

今までの恐々とした警戒心を解いたものの、

今度は、ありのままの憎悪を彼女はワタシに見せつけたのであった。

その刺々しい憎しみの塊は、直接ではなく、機械を通した後であっても、

ワタシの痛覚を十二分に刺激せんばかりだ。



占有者A子
「……何しに来たの?」



彼女はたった一言で、今の気持ちを吐き捨てた。

他にも何か言いたいことがあるのかもしれないが、

彼女にとっても、そしてワタシにとっても、

その一言で必要十分条件を満たしているのだろう――。

そう言わんばかりの言葉だ。



――彼女の刺々しさに負けてはならない。



そして、彼女との再度の交渉を迎えるのだ。

そのためにも、ここで彼女との線を復活させなければ……。

ワタシはインターフォンに向い、声を掛けた。



ワタシ
「いやいや、今日のことを話し合いに来たのですよ。

今日の、地下室の、あれじゃあ、お互いにとって、

どうしようもない展開じゃないですか。

うん、どうしょうもない――」



ワタシの思いとは裏腹に、

彼女への話はとてもぎこちないものであった。

もっとシンプルに、もっとリラックスして……。

心の中で、ワタシは動揺を抑えるべく、

あたかも呪文のように自分を落ち着かせる言葉を繰り返した。

もっとシンプルに、もっとリラックスして……。



ワタシ
「これは、あれですよ。

お互い不幸――」


占有者A子
「ああああ、もうっ!!」



ワタシはまだ話の途中であったのだが、

彼女は、憎々しげな声を代えることなく、ワタシに言い放った。

それはまさに突然の出来事であり、

ワタシは今までよりも、更なる棘の鋭さを感じた。



占有者A子
「大体、アンタ、今、何時だと思ってるの!?

夜の、夜中に来ちゃってさあ。

迷惑だって、こんな時間に来るだなんて、非常識よ!!

この前も迷惑だって言ったのに、夜中に来て――」



インターフォンから止め処もなく流れてくる彼女の罵声の後ろから、

薄っすらと赤ん坊の泣き声が聞こえていた。

母親の怒りの急変に、子供は子供で不安を感じ取っていたのだろう。

だが、その子供の不安は、親にとっての憎しみを大火とする、

起爆剤の役割を果たすのであった。

彼女の声は不意に遠ざかり、なにやら喚き散らしている。

どうやら、彼女の怒りの矛先は――赤ん坊に向けられているようだ。



……ああああああ、うるさいのよっ!!

うるさい、うるさいっ!!



彼女の声に呼応するかの如く、

赤ん坊の泣き叫ぶ音がリフレインする。

更に血が沸き立ったように、占有者A子の声が――。

火がついた乳飲み子の、阿鼻叫喚の図。

ワタシは箱庭サイズの地獄にいるような気分に陥った……。



……続く。


<おまけ日記>


裁判所のおねえちゃんは可愛い子が多い。

顔で採っているのか?


6/14 22時
>まっ、無料で読めるんだから感謝しますよ。

>その代わり本買う時はGさん所と何か新しい事したら応援しますよ


はっきり言って、アマゾンの広告代は大したことがないのですが、

ここを経由して紹介した本が買われているんだなあ、

と思うと、ちょっと嬉しくなりますね。

6/15 1時
>PHSからでも読めるのかな。


どうなんでしょうか?

試してみてください。

6/15 7時
>思うように書いてくださいな。

>ながけりゃながいほど読みがいがありますよん。

はい、好き勝手に書いていきますです。

読み甲斐がある、といえば、

いつか、不動産営業小説というのを世に出せればいいなあ、と。

今、ちまちまと書いてますがね。

エンターテイメント指数はかなり高いです。

6/15 12時
>携帯(i-mode)のgoogleで検索かけて見ると,

>テキストだけ分割で表示されるんです。

>だから‘無理やり’です。パケ代大分かかります。

>でもいいんです。面白いから。


ほうほう、なんか強引な読み方の技があるのですね。

そこまでして読まなくてもと思いますが、それと同時に、

そこまでして読んで貰えると嬉しいですね、単純に。

6/15 15時
>元アイドル編が一番つまらな(バキッ

>次を楽しみにしています。


多分、ちょっと前までのワタシだったら、

つまらなかったら、時間の無駄だろうし、

読まない方がいいんじゃないの?

とでも言ってたかもしれませんが――。

今作が面白くなければ、次作が面白いとは限りませんよ。

ちなみに次のテーマは……。

まだ、言わなくて、いいか。


それではこれからも宜しくお願いします。

 

2004.06.16 水曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百二話−

 子供嫌いのワタシと子供の親のA子…の巻。




ワタシは、基本的に、子供が好きではない。

大方のところで子供という存在に対して、

ワタシは苦手意識を感じているし、

緩やかな社会的節度を守れない子供に至っては、嫌悪感すら抱く。

特に電車の中で我が物顔に騒いだり、飛び跳ねたり、

シートに土足で上ったりする、

小憎(こにく)たらしい小僧(こぞう)には、

その光景を見て見ぬ振りをする大人

――そんな状況を微笑ましいものとして、

捉えることが出来るのは、馬鹿児の馬鹿親だけだ――共々、

市中引き廻しの上、逆さ磔(はりつけ)にでも処して、

ヒイヒイ言わしたろうか、おんどりゃあ!

程度のことは、思ってしまう――。

無論、実際にそのような虐待チックな行動を取ってしまったら、

それはそれで、新聞の1ページを飾ることになってしまうし、

第一、ワタシは「犬神家の一族」で頸(くび)から噴水の如く、

ざあざあと噴き出す絵の具のような血は当然のこととして、

自分の小指を不注意にも紙で切ってしまった時、

血がぷっくりと玉になっていく情景を見ていただけでも、

自慢じゃないが、ひいいいいとばかりに、

クラクラと眩暈(めまい)を起こしてしまう、貧血体質の人間だ。

虐待やら、残虐非道なことなど、出来るすべがない。

ワタシだけでなく、誰でもそうであろう――。

……そのようなことは、当たり前であり、当然なことだ。

ワタシはそう思った――思いたかった。



だけれども、現実はどうであろうか。

インターフォン越しに遠く聞こえている、

占有者A子の喚き声と、彼女の声の礫(つぶて)を一身に浴びている、

赤ん坊の泣き声は、一体なんなのだろうか。

赤ん坊の火のついた泣き声は尋常ではない。

恐らく、口で言っても泣き止まない乳飲み子に、

彼女は肉体的な暴力を与えていたのではないだろうか。

それこそ、程度の差はあれ、いわゆる幼児虐待ということだ。



虐待……。

これはマズイだろ、単純に……。



依然として、赤ん坊を責め立てるように、

愛情の欠片すら見当たらない、

怒りに身を任せたままの叱り方をしている占有者A子に対し、

ワタシは、彼女を止めるべく、インターフォンに向かって言った。



ワタシ
「あ、あの、占有者A子さん。

子供さんが泣いているようですけど、赤ちゃんだから……。

そう、赤ちゃんだから、多少泣いたって仕方ないじゃないですか。

だから、落ち着いて、落ち着いて――」



ワタシの言葉は変に震えていたかもしれない。

まさか、ワタシが今日、占有者A子を訪問することによって、

そのような虐待の現場に出くわすとは――。

ワタシは社長に怒られたり詰められるのとはまた異なる、

心に粘りつくような不快感を覚えたが、それでも話を続けた。



ワタシ
「あ、あの、確かに赤ちゃん泣いたら、うるさいかもしれないけど、

赤ちゃんっていったら、泣くのが商売みたいなもんですし――」



たどたどしい日本語で、ワタシは彼女に伝えたが、

機械からは、泣き止まない赤ん坊の悲鳴が、

止まることなく、聞こえていたのであった……。



……続く。


<おまけ日記>


今日は、びっくりドンキーのいちごミルク飲み過ぎた。


6/16 14時
>「あーたの方が100万倍迷惑だし非常識」とA子に言いたい。


そりゃ、その通りですね。

でも、彼女には彼女の理由と言うのがあるわけで。

もっとも、その理由が他人にとって、

納得出来るものではないかもしれませんが……。

6/16 14時
>千葉地裁は、イマイチです。おまけに愛想が悪い!+高齢です。


裁判所っていっても、例えば部によっても、

また違いますよね。


それではこれからも宜しくお願いします。

 

2004.06.20 日曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百三話−

 赤ちゃんの泣き声と無言の彼女…の巻。




――あああ、アタシが、アタシが何したってのよ!!



このマンションのエントランスは、

白を基調とした色遣いをしているので、

この季節になるともう、寒々しく思える。

加えて、この状況だ。

ワタシの心も、ついでに財布の状態も寒いものだから、

尚更、そのように感じたのかもしれない――。



コンソールのスピーカーから、

占有者A子の喚き声と赤ん坊の泣き声が、折り重なっていた。

少し遠くの方から聴こえている為、

全体的にはっきりとしない鈍い音であるが、

それゆえ、リアリティさが増されているように感じた。



傍から見ているだけのワタシには、

彼女を物理的に止めることが出来ない。

ワタシに出来ることがあるのなら、それは――。

せいぜい、何かしらの言葉を発するだけだ。

もっとも、その言葉は自分自身に対する、

気休めの言葉であるかもしれないが……。



エントランスにひとり佇むワタシは、

あくまでも傍観者であった。

ワタシは妙に孤独を感じた。

ついで、ワタシの心中は、混乱を覚えていた。

大体、彼女が彼女の子供に対して起こしている悪行は、

今日の交渉結果からであり、そして、ワタシが今、

ここにこうやって彼女を訪ねたことで、

彼女の気持ちが爆発したのではないか――。

その爆発させた先にいたのが、占有者A子の子供である。

それは間違いないであろう。

だが、いずれにせよ、彼女が自身の子に当り散らすのは、

道理が通らないことであろうし、

ましてや、どの程度なのかは分からないが、

まだ小さな赤ん坊に手を上げるというのは、

言語道断である。

それに、彼女には彼女の行動の理由があるのと同様に、

ワタシはワタシなりの故がある。

今日、この時、この場所に来るのは、

ワタシにとって、意味があるものなのだ。



ワタシ
「あ、あの……、いや、A子さん、A子さん!

今のアナタの相手はワタシじゃないですか?」



ワタシは彼女に向けて、言った。

言った通り、今話さなければならない、彼女の相手は、

他でもない、ワタシである。

決して、まだ言葉も話せないであろう、彼女の子ではない。

ワタシは、混乱している場合ではない。

もっとしっかりしなければ――。



ワタシ
「今日、ここに来たのは、アナタが先程、

交渉の席から何も決まる事無く、立ち去ったってこと――。

それが原因なんですよ。

ご自分でもお分かりでしょう?

今のこの状態が、非常に中途半端なモノで、

何ひとつ、そう、まったく何も決まっていない――」



――アナタは、今、何を考えて、ここにいるのですか?



とワタシは続けた。

いつしか、スピーカーからは、彼女の声が聴こえなくなり、

ただ赤ん坊の泣き声だけが流れていた。



……続く。


<おまけ日記>


ファミレスのメニューって、ハンバーグ関係が多いですけど、

なんかもっと、マニアックなメニューを出して貰いたいですよね。

例えば、イカ飯ランチ、とか。


6/16 14時
>最初の頃と比べるとGさんが

>追い出し屋として成長している姿が読み取れて面白いです。


どうでもいいことですが、「追い出し屋」として成長って、

なんだか、嫌な感じの響きですね(笑)

6/16 14時
>つーか何で毎回夜に行くんですか?

>非常識よ!って言われない時間に行けばいいのに。


これは以前に書いた文中にも書いてありますが。


それではこれからも宜しくお願いします。

 

2004.06.21 月曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百四話−

 機械と科学を礼賛するワタシ…の巻。




しばしの間、彼女は無言であった。

あれだけ騒いでいた彼女の声が先程のワタシの言葉を境に、

ぷつりと消えてしまったことが、不思議でならなかった。

ワタシは、はじめてマスウラの事務所で会った占有者A子を想起する。

そういえば、あの時の彼女も、人形のように黙ったままだったな……。

また、ひとつの懸念もワタシの心に過ぎる。

もしや、占有者A子はインターフォンでの会話を遮断してしまったのか?

だけれども、それは杞憂に過ぎなかった。

依然として彼女の子供の泣き声は、遠くではあるものの、

ワタシの耳に聴こえている。

これがワタシの産み出した幻聴でなければ、

会話のシャットダウンはなされていないようだ。

彼女はここにいる。

インターフォンの近くにいる。

まあ、ここで彼女が一言も喋らなくなったら、

強制終了されたものと代わりはないがな……。



ワタシは彼女の返事を待つべく、

エントランスのコンソールを見つめていた。

恐らく、このコンソールと繋がっている彼女の部屋のインターフォンは、

スピーカーをオン出来る、ハンズフリーのそれであろう。

受話器タイプの場合、通話している人の声以外、

あまり聴こえないものであるが、

室内の音を割と多く取り込んでいることからも、

そのことが窺(うかが)える。



それにしても――と、見つめたまま視線を逸らさずに、思う。

見つめる先にある、冷たい殻の着込んだ丸みを帯びた機械。

冷たく光るこの機械も、その内部では、

熱い動作を飽きる間もなく繰り返しているのだ。

彼は、ワタシの声を相手に伝え、相手の声をワタシに伝える。

細く長い線を経由して、声が行き来しているというのは、

考えようによっては、スゴイとしか言いようのないことだ。

まさしく、これは科学の力であり、科学を操る人間の素晴らしさに、

ワタシは胸を熱くする以外に何が出来るのか――。

しかも、更にスゴイことに、このコンソールときたら、時には、

遠隔操作でワタシの前に立ちはだかるエントランスドアを、

自由自在に開閉しているのだ。

どうだ、参ったか、このヤロウ!

これが科学の力というものだ!

ビバ、科学!

ビバビバ、科学!

科学の前にひれ伏せよ、この文系どもがっ――!!



――彼女との会話や、彼女と彼女の子供が織り成すその光景に、

ワタシは、緊張やストレスや不安や混乱を感じていた。

しっかりしろ、と自分で自分を励ましてはいるが、

その効果たるや一時的なものであり、

モルヒネの力はすぐ消える、といったところか。

ワタシの脳内は、明らかに感情の渦に巻き込まれていた。

その結果が、思考の麻痺だ。

痺れた頭は、現実逃避するかのように、目前にある、

コンソールを、インターフォンを、

それらを御している科学を賛美し続けた。

ありとあらゆる言葉を思い浮かんでは消えていった。



ワタシは気が遠くなる程、

長い時間をコンソールやら科学やらの礼賛に費やしていたかと思ったが、

後になって考えると、たかだか数十秒の出来事だったようである。

しかし、永久のように感じた時も、いつしか終わりが来る。



――そして、沈黙が破られた。



……続く。


<おまけ日記>


東京も台風の影響で、すげえ風が強いです。

飛ばされそう。

いや、むしろ、飛ばされたい。

6/21 4時
>子供の泣き声に腹を立てる親って最低ですね。


その通りですね。

だったら、産まなきゃいいのに、と思いますね。

単純な話し。


それではこれからも宜しくお願いします。

 

2004.06.22 火曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百五話−

 沈黙を破った声の主は?…の巻。




沈黙を破ったのは、ワタシではなく、女であった。



だが、コンソールのスピーカーから流れるその声は、

占有者A子の声ではない。

その声は、彼女のそれよりも、明かにしゃがれており、

聴く者に老けを感じさせる声であった。

初老の女性で、この部屋にいてもおかしくない人物。

それはただひとり。

彼女の母親だけだ。

彼女の母親は、少し震え、

懇願に満ちている声でワタシに語り掛けている。



……今夜は――。



その声の主は続けた。



……今夜はもう、帰って下さい。

娘も、今、泣いておりますので。



確かに、よく耳を澄まし、スピーカーに耳を近づけると、

彼女の啜(すす)り泣きが微(かす)かに聴こえていた。

ワタシと同様、沈黙を守っていたかのように思われた

彼女であったが、泣いていたのか――。

初めて顔をあわせた、あの時も、彼女は泣いていた。

今も声を押し殺しつつ、涙に暮れているのであろう。

ワタシは、未だもって続く彼女の咽(むせ)び泣きと、

彼女の子供の泣き声と、それらの涙に追加された、

彼女の母親の哀願――。

エントランスに立ち尽くすワタシは、何をどう答えればいいのか。

ワタシは言葉に詰まっていた。

ますます混乱の度合いが深まり、

自分の取るべき行動が分からなかった。



混乱しているワタシを他所に、

老女はといえば、懇願する。

インターフォンはモニター付きのそれではなかったので、

彼女の表情や姿かたち、身振り手振りを、

目の当たりにすることは出来ないが、

その様子たるや、そしてその顔たるや、

必死の形相であろうことは、彼女の声からも分かる。

その理由は、ひとえに自分の娘の為に、だろう。

占有者A子は母という存在であるが、

彼女の母からすれば、占有者A子は娘ということだ。



……今日は、今日は、もう、駄目ですので。

もうこんな状況ですので――。



母親は幾度となく、「今日はもう帰ってください」

という言葉をワタシに投げる。

そして、「すいません、すいません」と一方的に言い、

それを最後にインターフォンは遮断された。



白いエントランスに、ワタシはただひとり取り残された。



……続く。


<おまけ日記>


今日は暑い。

暑いと言う言葉を書きたくないくらい、暑い。

こんな日は、いちごミルクでカキ氷ですね。

え、ビアガーデンが盛況?

うーむ。

でも、ビアガーデンのつまみってダメじゃないっすか?


6/22 1時
>こゆーケースで時間外手当は付きます?


お近くの不動産業者の営業さんに同じ質問をしてみてください。

多分、ワタシと同じ答えが返ってくると思います。


それではこれからも宜しくお願いします。

 

2004.06.23 水曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百六話−

 自虐的な笑いの行方…の巻。




ワタシは、そこに一人きりでいた。

実際、一人であったのだが、この孤独感は尋常ではない。

月並みな表現であるかもしれないが、

いきなり氷点下の雪原へ裸で放り出されたような――。

ワタシは、心も凍りつくような疎外感を感じずにはいられなかった。



夜のエントランスに佇む男がひとり――。

ワタシは、もう一度、彼女の部屋を呼び出そうという気力もなく、

仮にボタンを押しても、そのまま、呼び鈴が鳴り続けるだけで、

誰も出ないか、それとも、彼女の母親に「帰ってください」

と言われるのがオチだ。

大きな溜め息が自然と出る。

ワタシはもう一度、コンソールを見たが、

それに触れる事無く、黙ってエントランスを出た。

外に出ると、先程ここに来た時より、

一段と寒さが身にしみた。

もう秋というより、冬といった方がよいかもしれない。

心も寒いのに、体も寒い。

散々だとしか思えなかった。

交渉も上手くいかないし、彼女の部屋に行っても、

僅かながらの進展すら見ることは出来ない。



……う、う、うふふ。あはは。



ワタシは、薄く笑った。

今日一日のことを思い返してみると、

自然と自虐的な笑いがこみ上げてくる。

本当に散々としか言いようがない一日だ。

その一日の最後を締めくくるのが、今のこんな状況だ。

心無く、笑うしかないではないか。



薄っすらとした笑いを顔にへばり付けたワタシは、

マンションの外から、占有者A子の部屋を見上げた。

このマンションは、そんな大規模な共同住宅ではないのだが、

この時ばかりは、とてつもなく大きいものに思え、

その存在にワタシは押し潰されそうになった。

周りは、電灯の点々とした灯りだけである。

彼女の部屋から光が漏れていることは、すぐに分かる。

ワタシはそれを見て、思った。

光は、明るさの象徴である。

だがその灯りは、家族の団欒の暖かい彩りではなく、

取調室で刑事が犯人を照らしているような、

そんな寒々しい光に過ぎなかった。



あの光の中、占有者A子の家族は、

何をしているのだろうか――。



ワタシは、部屋を見上げるのを止め、駅へと歩を進めた。

アルコールを呑んだワケでもないのに、

少し足をもたつかせながら歩いていた。

フラフラしながらも道すがら考える。



家族のこと。

彼女の家族のこと。

占有者A子、彼女の子供、彼女の母親――。

三人家族。

たった三人しかいない家族――。

その家族が今は皆、泣いていた。

彼女達には、それぞれ涙を流す理由があったのだろう。

今は――彼女達は何をやっているのだろうか。



ワタシは占有者A子の家族について、

ぐるぐると思いを巡らせ――そして、ワタシはハタと気が付いた。

占有者A子の家族の成り立ちについて大事な要素を。

ここから、自ずと次なる指針が導かれるではないか。

そうだ、そうなんだ――。



駅への足取りもフラフラとか細いものから、

力強いものへと代わった――。

同時に、ワタシの顔から自虐的な笑みは消えた。

そんな笑いなぞ、必要ない――。



……続く。


<おまけ日記>


今日は四組の占有者と会ってきました。

会えなかった人もいましたが、共通して言えることは、

どれもこれも、なかなか簡単には出なさそうだということ。

仕方が無い。

本腰入れてやらねば。

 

2004.06.24 木曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百七話−

 はじめての民事執行センター訪問…の巻。




あくる日の午後――。

ワタシは目黒の裁判所を目前にしていた。

目黒の裁判所――正式名称を、

東京地方裁判所民事執行センターという。

ここは、不動産競売など、民事執行を扱う専門部が、

より多くの民事執行実務をこなせるよう、

霞ヶ関の東京地裁本庁舎より、

分離移転して出来たセンターである。

東急東横線の「学芸大学」駅が最寄り駅であるが、

駅からおおよそ15分ほど歩いた住宅街の中に所在する。

静かな住環境の中、センターはその身をそびえさせていた。



ワタシは、その白い庁舎を前にして、

しばし、呆然と、昨日の成果を振り返っていた。



昨日の――。

昨日のワタシは――何をしたのだ?



占有者A子のマンションに行ったものの、

反応は全くと言っていい程、芳(かんば)しくなく……。

それどころか、逆に占有者A子の家族の関係を、

悪化させただけに終わった。

そこには一片の成果すらない。

ワタシが手にしたのは、散々たる終局だけであった。

それはボロ着のような結果である。

だが、しかし――。

ワタシは彼女のマンションを訪問したおかげで、

そのボロボロの古着の中に、

ワタシは掘り出し物を見つかるかの如く、

僅かに漏れ出でる、一筋の光明を見つけた。

ワタシが目の当たり、いや……、

耳当たりした占有者A子の話から導き出された、

「家族」という名のキーワード。

占有者A子、占有者A子の母親、占有者A子の子供。

家族の肖像に足りぬ者。

占有者A子の、まだ一言の言葉も話しことがない赤ん坊。

それらの存在や不存在に対し、導き出された帰結は、

次にワタシが何をすべきかという、指針を示していた。

煙に舞う光のように、淡く、心細いものであったが、

ワタシには、進むべき道先がある。

確かに、微かかもしれない。

それに、その先にあるのは、にっちもさっちもいかないような、

断崖絶壁の行き止まりなのかもしれない。

だけれども、手探りも出来ないような、

暗闇の中にワタシはひとり取り残されているのではないのだ。

立ち止まり悩んでいる暇などない。

進むべき先を進むだけ、ただそれだけである。

そして、その示された先を進むための、

地図となりうる情報を得るために、

今日、ここに、センターに来たのだ。



ワタシは、「よし」とばかりに、右手をグッと握り締め、

警備員の脇を通り過ぎ、建物の中へと入った。

ここに、ワタシの求めている情報があるはずだ――。



……続く。


<おまけ日記>


眠い。

なんか、こればっかだな。


6/24 12時
>Gサンの心理描写がリアルで好きです。


リアルですか。

傍で読んで、面白いと思うようなものであれば、

いいかなあ、と思いますです。

6/24 13時
>最初はドキュメントDDだったのに、

>いつのまにかドラマに変わってたって感じです。

>小説書く練習ですか?


ドキュメント番組だったら、

ワタシは「ノンフィックス」とかが好きですね。

人生の悲哀をモロに感じるようなモノが特にいいですね。

練習ってよりも、ワタシは好きなように好きなものを書いている、

ってな感じですかね。


それではこれからも宜しくお願いします。

 

2004.06.26 土曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百八話−

 真の主役に会いに行く…の巻。




はたして、センターには、ワタシの求める情報があった――。

裁判所には事件記録――これは、競売に関わる、

今までの履歴や書類が一まとめにされている記録である

――その競売事件の記録を紐解くと、大して探す事無く、

ワタシの探すべき情報は記載されていた。

それは、一通の配達記録であった。

配達記録に不整然と並んでいる、文字列をワタシは指でなぞった。

達筆過ぎて、非常に読みにくい金釘流で住所が書かれている。



――埼玉県K市。



紙に跡がつくほど、幾度と無くなぞった。

まるで、目で知覚するのではなく、

インクの文字を触覚で認識するかのように、何度も何度も。

その文字列をなぞりながら、ワタシの頭では、

占有者A子の家族を思い浮かべていた。

彼女の家族――。

家族の肖像として、そこには足りない存在がある。

その存在こそが、今、混沌とした占有者交渉を紐解く、

たったひとつの鍵なのだ。

その鍵となるべき人物は――。



――ここに、彼がいる。



指でなぞる度にワタシの心は急かされ、

その指先に力強い圧がかかっていく。

ワタシは思った。



――これから、そこへ行く。

彼――マンションの所有者であり、

今回の競売の真の主役たる、所有者Yに会いに行くのだ。



ワタシは、彼に会いに行くべく、センターを後にした。



……続く。


<おまけ日記>


暑いです。

なんだか、最近、暑いか、眠いかのどちらかしか、

言っていないような……。

まあ、それは事実だから仕方ないんですけどね。

とりあえず、今日の仕事は午後の早いうちで終了。

なにはともあれ、インドア派のワタシとしては、

家の中でゴロゴロとDVD鑑賞でもしてるのが一番です。


6/25 2時
>仕事の依頼は、ケイバイアット追い出し屋コムで良いのかな?

>それで良ければ、早速お願いしたいのだ!


それで結構です。

仕事はまあ、今夏から本格的にお受けする予定です。

詳しくは、近々サイトで発表しますです。


それではこれからも宜しくお願いします。

 

2004.06.27 日曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百九話−

 嵐の前!本屋での闘争と敗北…の巻。




――埼玉県K市。



学芸大学の駅より、私鉄とJR、次いで私鉄を乗り継ぎ、

K市の駅に着いた時には、日は大分、翳(かげ)っていた

目的地に向かって、脇目も振らず、

真っ直ぐ進んできたが、やはり移動には時間が掛かる。



ワタシは私鉄の駅を後にすると、

真っ先に駅前の本屋に立ち寄った。

ワタシは、その小さな本屋で片隅に陳列してあった、

地図を立ち読みした。

K市の詳細地図だ。

地図と、センターで得た所有者Yの住所を照らし合わせる。

どうやら、そこは駅前から、さほど遠くないところにあるようだ。

時間にして、駅より徒歩10分程度といったところか。

ワタシは、地図で駅からのルートを網膜に焼付けた。

センターで住所の文字列を指でなぞったように、

今度は目で幾度と無くなぞった。

――よし、覚えた。

ワタシが地図を閉じて、陳列棚にそれを戻し、

さあ、行くぞとばかりに店を出ようとした時に、

店のオヤジと目が合った。

オヤジの目は、燃えていた。

それは怒りの眼差し、というところか。



オヤジは、この立ち読み野郎が! 

しかも、地図の立ち読みかよ――。

立ち読みは、ようは記事の読み逃げ。

いわば、無銭飲食と同様。

ちゃんと金を払えよ、おらあああああああああ!!



オヤジの目は明らかにそう物語っていた。

ねっとりとした、嫌な眼差しである。

ワタシは、非常に居心地の悪い、非常に嫌な気分になった。

と同時に、罪悪感も感じる。

本来、ワタシは対人恐怖症の小心者である。

このような商売を行ってから、

時間が経過している今であっても、

小心者のクセ、というか、習性は抜け切れていない。

しかも、この本屋の構造上、外に出るには、

このオヤジが陣取るレジの前――30センチにも満たない、

それほど狭い通路をすり抜ける様に通らなければならない。

ワタシは、オヤジの視線を無視し、素通りすることが出来るか。



……いや、出来ないかも。



ワタシは思わず、レジ前にあった雑誌をよく見もせず、

レジに突き出した。



こ、これ……下さい。



あたふたと財布を取り出し、金を支払う。

オヤジは、この時になって、表情を和らげ――。

って、和らげてない。

全く和らげられていない。

オヤジの顔は、客商売にも関わらず、不機嫌そうな顔のままだ。

しまった――。

このオヤジ、デフォルトの顔がこのような、

「この読み逃げヤロウ!」と威嚇する顔だったのか。

ワタシが地図を立ち読みしていた時も、

ただ単に見ていただけなのか。

ワタシは、かなりの敗北感を感じつつ、

店のオヤジから手渡された雑誌入りの紙袋を受け取り、

本屋を出た。

これから、所有者Yと対面しなければならないのに――。

この負けっぷりたるや、いかがなものか。

ワタシは誰かに問い掛けたかったが、

道行く人に、敗戦投手のようなワタシを紹介しても、

仕方ないと思い、それは止めておいた。



それにしても――。

吟味すらしなかったが、何の雑誌を買ったのだろう。

ワタシは紙袋を乱暴に破り、一冊の雑誌を取り出した。



……雑誌『すてきな奥さん』。



それがワタシの敗北感を更に増幅させるのであった。



……続く。


<おまけ日記>


今日、ひさびさにゲームやってます。

これはハマる。

詳細は、あとでBlogにでも書いておきますです。

 

2004.06.28 月曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百十話−

 所有者Yの住所にあった建物は?…の巻。




見知らぬ街の、見知らぬ道を歩く。

勝手知ったる道を歩くのと比べて、

知らない道を歩くのは疲れる。

それも今、歩いているような、きちんとした完全舗装でなく、

砂利の飛び出た簡易舗装の道路だと、

歩き疲れも倍増するといったものだ。

まだ季節的に、秋が深まっているとはいえ、

痺れるような寒さを感じる時期の手前だったことが、

外を歩く上での、たったひとつの救いであるといえよう。



駅前の商店街を五分ほど歩き、脇道に入って住宅街を進む。

住宅街は、古い住宅とまだ真新しい住宅が混在している。

道幅はさほど広くはないが、車通りは激しい。

郊外というのは、交通機関としての自動車の重要度というのが、

都内と比べると、比較するべくもない程、高いのであろう。

そして、ほとんどの車は躊躇(ちゅうちょ)することなく、

人や自転車の間を、大してスピードを落とすさず、走っていた。

あたかも、それは車社会に生きるものとしては、

スピード第一、それが命だ、と言わんばかりである。

逆に交通規則を守り、慎重に走るような車には、

容赦ないパッシングの嵐が浴びせかけられていた。

その様子たるや、ここには皆が皆、

車を早く走らせなければならないという掟があり、

その掟を守れぬ者は即座に排除される、というところか。

とりあえず、これらの車が事故を起こすにしても、

ワタシへのボディアタックは回避されますように――。

そんな風に心の片隅で祈りつつ、

ワタシは所有者Yの住居地へと向かった。



また更に歩を進ませ、デコボコした簡易舗装の道を抜けると、

今度はまた商店街にぶつかった。

とはいえ、駅前の商店街とは比べ物にならない程、

小規模であり、肉屋と魚屋、名前も知らない、

独立系であろう小さなスーパーの他は、

まだ夕方だというのに、店のシャッターを下ろしていた。

この商店街の風景。

陳腐な言葉で言うならば、不況の煽りを受けた、ということか。

シャッター街と化している店々の前を歩くと、

季節的な寒さとはまた違った、寒々しさをワタシは感じた。



しばらく、周りを観察しつつ歩いていたワタシであったが、

シャッターの閉まった店舗と店舗の間に挟まれた、

こじんまりとした二階建の建物の前で、ふいに足を止めた。



……ここが、所有者Yがいるであろう住所、か。



過去、真っ白に塗られていたであろう、その壁は、

今はもう、くすんだ灰色になっている。

ワタシは、軒先から出ている看板をじっと見つめていた。



――その建物は病院であった。



……続く。


<おまけ日記>


最近、ユンケル消費量が激しいです。

んでも、あんまり飲み過ぎると効果が低下しそうだな、

と思いつつも、今日もがぶ飲み。


6/27 13時
>「すてきな奥さん」にワロた。

>でも、読み逃げ(利益窃盗)は犯罪じゃないよね。


笑ってもらえれば、幸い。

立ち読みは、どうでしょうか。

んでもやっぱ、本は買ってから読むのが筋だと思いますよん。

6/28 14時
>その雑誌はどうしたんですか(笑)?


「すてきな奥さん」はまた後で登場します(笑)


それではこれからも宜しくお願いします。

 

2004.06.29 火曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百十一話−

 所有者Yと病院との関係は?…の巻。




その灰色の建物には、外科医院と看板が出ていた。

寂れた商店街の外れに鎮座する、小さな病院であった。

病院というより、医者ひとりでやっているような、

こじんまりとした診療所といった方が適切かもしれない。

外観から見て、一階に受付と診療室があって、

二階が住居部分になっている――そのような造りである。



ワタシは、この建物が病院であると分かった時、

所有者Yは、ここに入院でもしているのかと思った。

ベットの上で、息も絶え絶え、折れそうなくらい、

細くなったその身を横たわらせている。

そんな所有者Yがワタシの脳裡に浮かび上がった。

もしかしたら……とワタシは思う。

入院後、看護の甲斐なく、亡くなられました。

簡単に言えば、死んじゃいました――。

――なんて、この病院の看護婦あたりから、

言われてしまったら。

ううむ、彼に会えない、それだとまた一歩後退だ。

どうしよう……。



ワタシは一瞬ではあったが、心の動揺を感じた。

――だが、それは杞憂に終わった。



この病院の名前は、Y外科医院といった。

所有者Yの苗字と同じ冠がついた病院名だ。

彼はベットに寝ている患者ではなく、

この個人病院の医者であり、経営者であるのだろう。

もっとも、所有者Yとは赤の他人の、

同姓の人間が経営している病院という可能性も、

無きにしも非ずであるが、その確率は低いだろう。

まったくのゼロとまでは言えないが……。



何はともあれ、だ。

彼――あのマンションの所有者Yは、ここにいる。

ワタシは断定した。

そうでなければ、話も続かないし。

ワタシは、彼に会うべく、こじんまりとした建物に似合っている、

これまた形ばかりの門扉をくぐり、敷地内に立ち入った。



建物には、出入り口が二箇所あった。

ひとつは、病院の玄関――引き戸には、

赤文字で「休診中」とプリントされたプラスティック製の、

白く、細長い札が掛かっていた。

脇には、診療時間と診療曜日が書かれたプレートも

備え付けられている。

今日の曜日と、今の時間――。

まだ、診療が行われているべき時間帯であるのだが……。

周りをじろじろと見ていたワタシであったが、

ん――? とひとつ気が付いたことがあった。

休診中の札であるが、よくよく見ると、

それは埃(ほこり)にまみれていたのだ。

その汚れ具合から推測するに、

かなり長い間、掛かったままになっているようだ。

一階の窓ガラスもカーテンが閉め切ったままで、

診療室に人がいる気配がない。



また、もうひとつの出入り口――病院への引き戸が、

目立つ位置にあるのと対照的に、

建物の影に隠れるようにして、木製のドアがついている。

ドアの脇には「Y」と苗字だけの表札が出ていた。

こちらが住居部分への玄関ドアなのだろう。



ワタシは、建物の影になっているドアに向かった。



――彼は、いる。

間違いなく、ここにいる。



そう断定的に思い、自分を自分で鼓舞しながら、

ワタシは呼び鈴を押した。



そうだ、彼はここにいる――。



……続く。


<おまけ日記>


世の中、嫌なことばかりですね。

少しくらい、世の中が明るくなるくらいの、

景気がいいことが起きればいいのに。

あ、でも、ワタシはオリンピックとかで、

日本人が金メダル取ったとしても、

浮かれるほど嬉しいかって言ったら、

それは微妙なところですので、念の為。

って、誰に言ってるんだか……。

6/29 12時
>なんだか寒々とした情景が目に浮かびます。

>で病院て。さらに寒い…ひゅるる〜(T▽T)

多分、この物語の最後辺りは、

痛快なものではなく、寒い状況が描かれるかも(^^;

6/29 21時
>いやね、買って読むのが筋なのは当たり前なんだけど、

>立ち読みしたのはGさんじゃないの。笑


だからこそ、罪滅ぼし的なところで、

「すてきな奥さん」を購入したというワケです。

もっとも、好き好んでこれを手に入れた

ワケではないのですが(^^;


それではこれからも宜しくお願いします。

 

2004.06.30 水曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百十二話−

 「言い切る」ことと「言いっ放し」の違い…の巻。




呼び鈴を鳴らしたワタシはしばらく、

扉の前で立ちすくんでいたものの、

一向に玄関ドアが開く気配がなかった。



彼はここにいる――なんて断言してしまった以上、

ワタシの気持ち的にも、

所有者Yがここで登場してもらわなければ困る。

いや――、気持ちの問題以上に、東京から時間を掛けて、

埼玉のそこそこ奥の方まで訪ねて来たんだ。

居てもらわなければ困る。

そして、ワタシと対面してもらわなければ困るのだ。

彼と会うことが出来ないなんて、

ワタシにとっていい結果が出る出ない以前の問題だ。

彼と会わなければならない……。



ワタシは、目黒の民事執行センターから、

ここに来るまでの間、

会社に一本、電話を掛けたことを思い出した。

その時のワタシは、所有者Yの居場所が分かったということで、

少々興奮気味であったかもしれない。

今となれば、そんなこと程度で、喜びをあらわに出来る、

そんな自分が非常に愛おしく思えるのだが、

それはそれ、これはこれ、

ということで脇に置いておいて……。

電話口に出た社長に、ワタシは息継ぐこともなく、

一息にこう言った。



――社長! 恐らくなんですけれども、

例のマンションの所有者Yが住んでいるであろう、

住所が分かりました。

その場所なのですが、埼玉のK市みたいです。

今からそこに行って、

占有者A子を速やかに退去させるような、

その糸口を見つけてきます!



これに対して、社長はワタシの言葉を聴くや否や、

次のように言い返す。

思いもかけぬほど、不機嫌な声だった。



――馬鹿モン!

「恐らく」とか「あろう」とか「みたい」とか、

そういった懐疑的な言葉を使うな!

そんな報告の仕方があるか!?

ある訳ないだろう!?

だったら、上に報告するときは、断定しろ、断定!!

断定ってのは、「言い切る」ことだ!

不確定なことを言うってのは、

結局、「言いっ放し」になる!

「言い切る」ことと、「言いっ放し」ということは違うんだぞ!!



語尾荒く、社長の話す言葉のすべてに「!」が、

おまけとして、漏れなくついてきます、といったようだった。

またもや、と言うべきか、いつものこと、と言うべきか。

電話での報告時においても、

いきなりのカウンターパンチを喰らうワタシであった。

これから、相手方のところに行こうってのに、

単純に、テンションが下がる……。

社長も社長で、社員がほんの少し前までは、

意気揚々と喋っていたのにも関わらず、

今、「は、はぁ……」と生返事で返答した、

社員の態度に気が付いたのだろう。

ワタシをフォローし、発破を掛けるように、付け加えた。

先程の口調とはうってかわって、穏やかなそれであった。

大方、これから所有者のところに向かうワタシの気を、

全面的に削ぐのは愚策だ、とでも思ったのだろう。

今の現在のワタシであれば、それくらいの読みが出来るが、

その時点のワタシには、そこまでの頭はなく、

ただただ社長の話に身を任せるままであった。



――もっとも、アレだ。

オマエが自分で考えて行動したってことでもあるからな。

気張って、成果だしてみろや。

答えを待ってるからな。

……頑張れよ。



急激な社長の言葉の変化に戸惑いながらも、

受話器を握り締めたまま、

「分かりました」と社長に見える訳もないのに、

大きく頷きながらワタシは答えた。

それはそれは、力強く……。



……ワタシは答えてしまったのだ。

だから、ワタシは所有者Yに会わなければならない。



――しかし、ワタシの目の前にある、

扉は堅く閉ざされたままであった。



すでに陽が落ちた中、ワタシは呆然と立っていた。

電話での社長との会話を回想していたが、

ふと、嫌な結論が思い浮かんだ。

社長の言葉は、フォローでも、ましてや激励でもなく、

単に「成果を出すまでは、会社に戻ってくるな」

という強い命令なのか――。

いや、きっとそうだ、そうなんだ。

実際のところ、電話での社長の話には、

そこまでの真意はなかったのであったが、

ワタシは裏を読み過ぎる程、過剰なまでに読んでしまっていた。



だとすると――。

尚更、引けない。

絶対に所有者Yと会わなければならない――。



ワタシは暑さなど微塵もないのに、嫌な汗を背中に感じた。

祈る気持ちで、再度、呼び鈴を鳴らした……。

出て来い、所有者Y!



……続く。


<おまけ日記>


今日はボーナス支給日ですね。

皆さん、どうでした?

 

2004.07.01 木曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百十三話−
 
 コガネムシを押し潰したワタシ…の巻。




――しかし、ワタシの思いとは裏腹に、

扉が開け放たれることはなかった。

それほどまでに、この扉は重いのか――?



再び、呼び鈴を鳴らす。

一度押す――反応なし。

もう一度押す――反応なし。

ワタシは舌打ちをすると、堰を切るかの如く、

扉の脇に取り付けられている呼び出しボタンを、

何度も何度も押した。

インターフォン機能のついていない、

その呼び出しブザーは、

なんだかコガネムシに似ていた。

玄関ドアの傍らの壁に、へばりついているコガネムシ。

ワタシはコガネムシを押し潰す勢いで、

ボタンを連射した――。



……出て来いよ、所有者Y!

オマエが登場しないことには、物語が進まないんだ!



ワタシは心で念じ、それだけでは飽き足らず、

ぶつぶつと所有者Yに対する恨み言を呟きながら、

ボタンを押し続けた。

だが、最早、コガネムシは息が絶えてしまったか。

いつしか、羽ばたくことすら、叶わなくなっていた。



背中を流れる汗が、一層冷たさを増してくる。

――と同時に、心の中には、暗雲が広がっていった。



先程、電話口で受けた社長の最後の言葉だが……。

実はそれは、ワタシに対するフォローでもなんでもなく、

単に「成果を挙げろ!答えを出すまで戻ってくるな!」

という内容を若干、温和に告げた――。

ただそれだけだったのではないか――?



そう思えば思うほど、悪い気は増幅し、

ワタシという器は、暗闇で溢れんばかりに、

満たされていくのであった……。



それでは、実際のところ、

社長が「気張って、成果だしてみろや。

答えを待ってるからな」と言ったのは、

ワタシに占有者交渉を早くまとめろと、

いわば最後通牒を突きつけたのであろうか――?

その真意に関しては、

ワタシは社長ではないので、知る由もない。

ただ、冷静に振り返ってみるに、

社長は単純に部下の行動を励まし、

鼓舞するために付け加えたのだ、と思う。

普段、褒めることも、励ますことも、

その手の分野に関してのボキャブラリーが

貧困というよりも、枯れ果ててしまったのではないか、

と思わざるを得ないほど、言葉がない、

あの社長が、「頑張れ」という稀有な言葉を掛けたのだ。

普段、励ましの言葉のひとつも掛けない社長が、

放つ言葉だからこそ、その意味は重い。

決して、最後通牒を突きつけた訳ではないのだ――。



しかし、考えというものは、ひとたび悪い方向へ進み出すと、

坂道を転がり落ちるように、加速度を増す。

ワタシの疑心暗鬼もまた、同様であった。

次から次へ、粗悪で粗末な考えが浮かびあがる。

一連の悪循環を止めることは出来なかった。



闇の熱に浮かされてたワタシの恨み言は、

秒単位で大きくなっていき、

ハッキリと声に出して言っていた。



……なんで、なんで、オマエは出てこないんだ?

いないのか、いないんじゃないだろう?

いるんだろ、そこにいるんだろう?



ワタシは押し潰されたコガネムシではなく、

扉を叩きながら、恨み言を連ねた。

手が痺れるほど痛くなるほど、扉を叩いた。殴った。



…・・・今日、ここには、いないのか。



恨み言の山を重ね、疲れもピークに達していたワタシ。

所有者Yと会うことを諦めかけた――その時である。



扉の内側から、ドアチェーンが外れる金属音がし、

かくして、開かずの扉は、開いたのであった――。



……続く。


<おまけ日記>


いやあ、少し重いですね。

面白い文章だけを書いてればいいのでしょうが、

こーゆー部分も書きたいと思う、

ワガママなワタシだったりします。

それにしても、ようやく、扉が開きました。

んで、どうなるのでしょうか。

それはまた次回の話。


6/30 23時
>おおっと 展開がいいぞお!


前回のいくぜえええ!!という展開を、

今回、ブルーな感じに反転しました(^^;

7/1 2時
>ボーナスのある業界が羨ましい。


ワタシもボーナスではなく、歩合なので、

ボーナスが出る人は羨ましいですね。

つーか、パーセンテージもっと上げろ!

とここで、歩合について愚痴ってみる(笑)


それではこれからも宜しくお願いします。

 

2004.07.02 金曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百十四話−
 
 冷静サンと思いつき君、そしてニセ仙人…の巻。




開かずの扉が開き、彼が姿を現した――。



ただそれだけのことであったが、

ワタシは今日の目的を達成したかのような思いを得た。

恨みも悲痛も吹き飛んだ。

無論、それは錯覚であって、

彼と会おうかどうしようが、何らかの形で、

今回のマンションの占有者立退き交渉についての、

前進を見なければ、全く意味を成さない。

しかし、彼と会えたという、その事実だけで、

ワタシはここに来た甲斐があった、と実感した。

しかし、その達成感も一瞬にして、立ち去ることとなる。

何故ならば、他の感情を消し去る程、

彼の容貌は、ワタシに大きなインパクトを与えたからだ。

いや、彼を見た誰もが衝撃を与えられるだろう。

彼は、あだ名を”にせ仙人”に決定せざるを得ない程、

髪とヒゲに覆われていた――。



髪の毛はぼうぼうに、生えるがままに任せ、

口、頬、顎、喉仏など場所を問わず、

顔と首を隠すかの如く、ヒゲが伸びきっている。

小学生の頃、聞いた話であるが、

向日葵は太陽の明かりを目指し、それに向かって、

背丈をぐんぐんと伸ばしていくという。

それとは対面をなし、彼のヒゲは太陽から遠ざかり、

陽光から身を避けているようである。

口元からは数本の歯を覗かせている。

もっとも、数少ない歯の寿命ももう間もなく尽きそうだ。

ただ残念なことに、そのヒゲは大方は白髪ではあるが、

まだ黒いのも多少残っている。

これが雪のように真っ白なヒゲであれば、

仙人として完璧だったのに――。

だから、彼は”ニセ仙人”なんだ!



って――。

だから、ニセ仙人なんだ!

と言い切られても彼にとっては、迷惑な話であろう。

思っているだけでも駄目だ。

彼を見る度に、仙人に見えてきて、目に面白く映り、

強いては、交渉の妨げになるだろう。



などと、ワタシの中の冷静さを司る部分が、

冷静なまま、ツッコミを入れる。

それに対して――。



いや、でも、コイツ、仙人に似てるじゃん!

ってゆーか、仙人じゃん!

仙人そのものじゃん!

似ているものを似ているって言って、

何が悪いだべさ!!



なんて、ワタシの中の思い付きを司る部分が、

思いつくままに、反論をする。

それを発端とし、ワタシの心の住人が、

お互いの主張に聴く耳を持たず、

自分の主張を声高にしていた。

冷静サンは冷静サンで、冷静な判断を理論的に繰り広げ、

思い付き君は思い付き君で、思うがまま、

本能のまま、思う付きを力の限り、叫んでいた。



そんなワタシの心の中で起きている、

他人様には全く関係のない葛藤を他所に、

玄関ドアから顔を覗かせた彼は、

生気の失せた表情で、ワタシの前に姿を晒している……。



……続く。


<おまけ日記>


今日は自分的にとても面白く書けました。

これを読んでいる人が実際のところ、

面白いかどうかは分かりませんが、

多分、これを続けて読んでいる人であったら、

面白いのではないかな、と思います。

冷静サンと思い付き君のキャラは、

その名の通りですので、扱い易そうです。

これはコンビとして、また使いたいなあ、と。

7/2 8時
>ドア開いた!(゜∀゜)そこも競売にかかったと予想したが…


さあ、それはどうなのでしょうか。

まあ、その辺りの展開もありえそうですよね。

7/2 9時
>ボーナスって、自分の成果が、仕事やらん奴にいきそうな!

>いってる!ので%次第では、歩合の方がいいかも!


んでも、仕事が出来る出来ないってのは、

分からんですよね、実際のところ。

7/2 9時
>そのかわり、歩合なら確定申告が

>ボーナスみたいなものですね。


あー、そうなんですか?

7/2 18時
>[すてきな奥さん」「すてきなGさん」


ちょっと笑った。

全然、すてきさんじゃないですよ。


それではこれからも宜しくお願いします。

 

2004.07.03 土曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百十五話−
 
 ただそこにいるだけのニセ仙人…の巻。




ニセ仙人は、何も語ることなく、ただそこにいた。

割と高級そうな靴やサンダル、

下駄が散乱している玄関の三和土(たたき)は、

室内より一段低くなっている。

彼は素足のまま、三和土に降りていた。



……というか、コイツが占有者Yだよな?



ワタシは彼を見る。

さほど背の高くない彼は、

ヨレヨレの作務衣を着込んでいる。

彼は時折、ヒゲ塗れの頬を掻き毟(むし)っていた。

ワタシの方をちらり一目すると、すぐ下を向く。

人と目を合わせるのは、苦手なのであろうか。

彼の瞳はただ一点、

冷たいコンクリートの上に降り立っている、

自らの素足の指先を見つめていた。



……それにしても、年齢はかなりイっているよな。



ワタシと対峙しているというのに、

彼は黙ったままだった。



沈黙を守るがままの彼に、

一体、いくつなのだろう――?

ワタシは彼に真っ先に年齢を問う質問したかったが、

見ず知らずのワタシがいきなりそんなことを訊いても、

どうなのだろうか。

第一、他に訊くべきことが、それこそ、沢山ある。

まずは、順当な手続きを踏むべく、

自己紹介を兼ねて、挨拶をした。

そして、彼の前に名刺を差し出した。

彼は、やはり、黙ったままではあったが、

名刺を受け取った。

視線を名刺に走らせると、またもや、俯(うつむ)く。



ワタシ
「あの、ワタシがここに来たのは――」



――所有者Yさんに会うために来たのです。



ワタシは心の中で、ひとりごちる。

そう、所有者Y――ニセ仙人のアンタに会うために、

ワタシはここまで来たのだ。

アンタと会って、あのマンションに巣食う占有者A子を――。



だが、ここで、ワタシはありありとした違和感を感じた。



このニセ千人と、占有者A子には一体、

どんな関係があるのだというのか――。

関係がない、ということはありえないだろう。

確かに占有者A子が主張する通り、

賃貸借契約が結ばれており、

ただの貸主と借主という関係であれば、

別にこの違和感を感じなかったのかもしれない。

しかし、今回のこのケースは賃貸借契約などない。

ただの使用借権だ。

使用借権とは、タダで借りているということ。



このニセ仙人と占有者A子の間には、

一体、どんな関係があるのだというのだ?



……続く。


<おまけ日記>


あー、眠い。


7/3 12時
>確定申告のときに給料の年末調整書と

>歩合の年末調整書があると、

>年間の歩合の1〜2割が戻ってきます。

>申告していなければ、過去5年まで受付してます。


なんか難しそうですが、そうですか。

んでも、これは源泉でないとダメっつうことですね。


それではこれからも宜しくお願いします。

 

2004.07.04 日曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百十六話−
 
 もうひとりのニセ仙人?…の巻。




占有者A子とニセ仙人――。

彼らふたりの関係を訝しがりながら、

彼に話し掛けていた時も、

ニセ仙人は何も言う事無く、呆けた顔をしていた。

ワタシは続けて、言った。



ワタシ
「……それで、アナタが所有者Yさんですよね」



そう問い掛けると、ニセ仙人はまたもや、

ワタシの顔を覗き見るように、一瞥した。

彼の口元は少し、戦慄(わなな)いている。

時折、「へえへえ」と嗚咽のようなものを漏らすばかりだ。



ワタシ
「そうなんですよね?」



ワタシはニセ仙人に、重ねて問うた。

彼の口元はブルブルと震えていた。

しかし、ただそれだけであった。

彼は言葉らしき言葉を発しない。

唇を震わせている、ただの老人然とした男が、

ワタシの目前に立っているだけだった。



それにしても、だ。

リアクションがほとんど見当たらない。

さすがのワタシも苛々(いらいら)が募る。



……オマエが所有者Yだ!

そうなんだろう、ニセ仙人?

そうだったら、そうだったで、

「はい、ワタシが所有者Yです」とか何とか言えよ。

黙って、ボーっと目の前に立ちすくまれているだけでは、

話の展開が前に進まないんだよ――!



ワタシは苛立ちのすべてを隠すことが出来ず、

少々顔色を変え、更に言った。



ワタシ
「あの、だからね、黙ったままじゃ、

一向に話しが進まないっていうものですよ」



強めに言ったものの、

ニセ仙人は「へえへえ」とばかりに、

言葉を曖昧に濁すだけであった。



ワタシ
「だーかーらー、話しがね――」



ニセ仙人に一歩近づき、

もう苛立ちを隠し切れなくなった、その時である。

家の二階から声が聴こえてきた。

ニセ仙人ではない、他の人間の声。

妙に甲高い、男の声であった。



――おーい、いつまで、何やってるんだ?



のんびりと、間の抜けた印象を受ける声である。



なんだ、ニセ仙人以外に、

まだ他に人間がいるっていうのか――?

ニセ仙人と同居している輩が?

まさか、もうひとり、ニセ仙人がいる、

とかそういうことじゃないだろうな?



そして、ギシギシと階段がしなる音が聞こえてきて……。



……続く。


<おまけ日記>


Xファイル8を観ながら、この文章を書いています。

それにしても、ここ数年はレンタルビデオ屋から、

ビデオ借りてないなあ、と。

少しでも観たいと思ったら、DVDを買うのが、

最早、ワタシの習性となっています。

どうでもいいことですがね。

7/4 10時
>初めて読ませていただいてますが、とっても楽しいです。

>にたタイプの人だなと思いました。


そうですか。

んで、にたタイプって、誰と似てるのですか?

ワタシとですか?


それではこれからも宜しくお願いします。

 

2004.07.05 月曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百十七話−
 
 風船男、登場!…の巻。




はあはあはあはあはあ……。



家の中の、ギシギシと階段が軋(きし)む音と共に、

荒い息遣いが、外まで聴こえて来た。



はあはあはあはあはあ……。



開け放たれた玄関ドアを遮るように、

ニセ仙人がおびえ佇んでいるのであるが、

彼の間をぬうようにして、

吐息が外に漏れ出でて来るようだ。



……一体、何だろう、この階段がしなる音と息遣いは?

誰かがここに向かって来ている、というのか。



ワタシ
「……あの、誰ですか?」



ワタシはニセ仙人に家人について尋ねたが、

彼は「へえへえ」と言った切り、黙ったままで、俯いていた。



はあはあはあはあはあ……。



見知らぬ誰かが、息を吸い、息を吐く行為は、

絶え間なく続いていた。



はあはあはあはあはあ……。



荒い息は、近づいている。

苦しそうな喘ぎのようにも聴こえるその声が……。

そう思った矢先である――。



バタンと扉が開いた。

この扉は、家の玄関と廊下の間にあるもので、

家に訪ねてきた外来者――特に、

こちらから頼んだワケでもないのに、

勝手に押し掛けて来たセールスマンや押し売り――

が玄関先に現れた時、

彼らに家の中を見渡されないようにする為のものである。

その目隠しの扉を開け、彼はワタシの前にやって来た。



彼は大柄といえば大柄だったし、小柄といえば小柄であった。

言うなれば、風船体質とでもいうべき存在である。

もし彼が「太陽にほえろ」の刑事役で登場したら、

迷わずこう呼ばれるであろう――風船刑事(デカ)と。



一見すると、丸く、大きく見えるが、身長はさほどない。

彼は今の今まで、寝ていたのであろうか。

寝巻き姿のままで、

黒々とした髪はボサボサに逆立っていた。

そんな彼の寝巻きはユニクロである。

ユニクロのTシャツと、

薄くテラテラになっているナイロン製の黒ジャージを、

肌になじむほど着込んでいた。

もっとも、彼の場合、肌になじむというよりも、

肌に同化しているといった方が適切かもしれない。

接着剤でくっついているみたいだ。



眼光を細めながら、彼はニセ仙人にぼそりと言う。

「この人、誰?」



この人とは、ワタシのことだ。

ニセ仙人は風船男に、ワタシが先程差し出した名刺を、

黙って差し出す。

風船はそれを受け取った。

ワタシはその名刺に付け加えるように言った。



ワタシ
「ワタシは、所有者Yさんに会いに来た者です。

東京のマンションについて、

ちょっと困ったことがありまして。

でも、ここでも所有者Yさんが黙ったままなので、

困っているんですよ――」



「困っている」という点を強調しつつ、

ワタシはニセ仙人の方を見た。

ニセ仙人は足の指をモジモジとさせている。



……この男、ワタシはこのニセ仙人こと、

所有者Yに会いに来たのだ。

さっさと、話し合いが出来るような、

そんな状況を作り出せ――!!



今度は、風船男の方を向き、続けた。



ワタシ
「だから、多分、息子さんだと思うんですけど。

息子さんの方からも何とか言ってくださいよ。

お願いします」



ワタシは、ニセ仙人こと所有者Yの息子であろう、

風船男に、懇願する。



心なしか、風船男は、より一層、息遣いが荒くなった。



はあはあはあはあはあ……。



……続く。


<おまけ日記>


おお、WEB拍手の反応が薄い。

これって、幾ら押してもらったところで、

別にワタシが得することなんかないのに、

何のリアクションもなかったらなかったで、

結構悲しいものがありますね。

んでも、これに捉われ過ぎるのもなんだかなあ、

って感じだな。

 

2004.07.06 火曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百十八話−
 
 風船男に語るワタシ…の巻。




はあはあはあはあはあ……。



彼は苦しそうに息継ぎを繰り返す。

その度に、胸の肉が上下に揺れていた。

生きている為には息をしなければならない。

そんな基本的動作すら、

彼にとってみたら苦行であるようだ。



はあはあはあはあはあ……。



ワタシの言葉の後、しばらくの間、ニセ仙人はもとより、

風船男もまた、ワタシの名刺を見るばかりで、

無言を保っていた。

だが、風船男は名刺をぞんざいに、

ジャージの尻ポケットに突っ込んだ。

風船はふう、と一息、ため息をつく。

玄関の三和土(たたき)にいた老人の肩をむんずと掴み、

脇に避ける様、促した。



風船男
「……おい、親父。そこにいたら、邪魔だろう」



風船の言葉に呼応する如く、

ニセ仙人は黙って、三和土から玄関の上にあがり、

すごすごと道をあけた。



……ワタシの思った通り、

風船男はニセ仙人の息子であるようだ。

彼らの力関係は、推測するに、

親父よりも息子の方が強そうだ。

だとすると、用件はニセ仙人にあったとしても、

息子を通じて、話を伝えるというのも、

ひとつの手ではあるな――。



風船男はワタシに声を掛け、家に入るよう、促した。



風船男
「……多少、汚れてはいるかもしれないけど。まあ、どうぞ」



ワタシは「お邪魔します」と一言、靴を脱いだ。

風船男は、「多少」と言ったが、

「かなり」の間違いではないか――。

そう思われるほど、室内はゴミが散乱していた。

本当だったら、欧米人よろしく靴のまま、

土足で入り込みたかったが、彼らの手前、仕方がない。

昔テレビで見た、ゴミ・ゴミ・ゴミで溢れかえる、

ゴミ屋敷ほどの荒廃の様ではない。

この程度はなんだ、大したことはない。

だから我慢しろ――と、

無理矢理な理屈で自分で自分を納得させた。



風船男に促されるまま、彼を先頭にして、

急な階段を登る。

ギシギシと音が鳴る。

二階には三、四室あって、

その内の一番大きな部屋に通された。

おそらく、そこはリビングなのだろう。

少なくとも、昔はそう呼ばれていたはずの空間だ。

それが今となっては――、どうだ。

ゴミ保管庫とばかりに、ゴミがバラ撒かれていた。



風船男
「……ちょっと汚いかもしれないけど。

まあ、座ってよ」



――と、ゴミとゴミの間から引き摺り出して来たような、

へたりにへたった座布団をワタシの前に敷いた。

無数に毛玉の付いた、センベイ座布団。

どうやら、ここに座れということらしい。

ワタシは、「どうぞ、お構いなく」と座布団を脇に避けた。

心の中では、「こんなモンの上、座ったら、

スーツが毛玉だらけになるわっ!!」

と絶叫していたが、表情はあくまでも、

ポーカーフェイスを気取っていた。

物をどかし、座れるくらいの空間を作り出した。

この部屋には、テーブルが椅子があるのだが、

そこの上にはモノが置いてあり、使えない状態だ。



風船男はワタシの前で、ゴミの上にドカッと腰を下ろす。

ニセ仙人も、その近くに陣取り、体育座りをしていた。

ワタシもモノをどかしたところに座った。

最初は正座だったが、すぐ「失礼します」と足を崩し、

彼に話し掛けた。



ワタシ
「それで、お父さんのことなんですけど、

東京の港区にマンションを持ってますよね。

そこが競売になって――」



ワタシは今の状況をかいつまんで説明し、

こちらの要望を伝えた。

要は、アナタのお父さんである、

ニセ仙人が所有していたマンションを占有している、

占有者A子を何とかしてくれ、という旨である。



ワタシ
「中にいる、占有者A子さんとは、

通常の貸し借りの関係にないと思われますが――」



ワタシが喋っている間も、風船男は、

ふうふうはあはあ、と息を漏らしていた……。



……続く。


<おまけ日記>


話の流れも、ペースも含めて、ワタシが好きなように書く。

ただそれだけですね。

それにしても、暑い。

外を一時間くらい歩いただけで、

死ぬかと思いましたよ、まったく。

7/5 23時
>毎日楽しみに読ましているものの、

>何か突っ込みを入れる材料が乏しくなりました。


毎日、楽しく読んでればいいんじゃないですかね。

7/6 1時
>しゃ〜ないなぁ! パチパチ!パチパチ飽きた!

>もっとこう・・・スポーツ観戦みたいな、

>ウワァ〜パチパチ!ガオォー!

>みたいなん無いのン?? (毎日見てるよ!)


じゃあ、WEB拍手のボタン押さなくていいので、

ここを読んだら、必ず、ワーワー叫んでください。

7/6 6時
>はよ、話を進めてくだされ。


話、進んでますよ。

7/6 12時
>風船男、生理的にイヤ!


生理的に嫌といわれちゃあ、可哀想です。

んでも、風船男には秘密があって……。

7/6 20時
>針でついちゃえ!パンッ、て。


破裂します。


それではこれからも宜しくお願いします。

 

2004.07.07 水曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百十九話−
 
 置物のニセ仙人と気の無い風船男…の巻。




風船男
「――あー、はあ、そう」



状況経過の説明を一通りしたワタシに、

彼は興味なさそうな口ぶりで言った。

だから、何だ、と言わんばかりである。

彼は、すべての動作が面倒くさいのだろう。

他人の話を聴くことすら、億劫だ――。

そんなマイナスのオーラをプンプンと感じさせる、風船男。



ワタシ
「まあ、そういったところなんですけれども。

結局、話が前に進んでいない、ということなんですよ。

今日の段階で、それで、この、滞っている状態をですね――」



――解決させるべく、ワタシはここに来たのですよ。



とワタシは力を込め、言った。

話を続ける。



ワタシ
「……先程から、お父様が黙ってらっしゃる。

何の話合いにもならない。

だから、所有者Yさんの息子さん。

アナタからも、お父さんに言ってもらいたいのです。

占有者A子を何とかしてくれ、と――」



風船男は、ワタシの熱弁にも、我関せず、

といった態度であった。

時折、「ふんふん」と軽く頷いてみたり、

そうでなければ「はあはあ」と苦しそうな息遣いをしていた。

彼は、真剣に話を聞いていない――。

傍らにいるニセ仙人は、置物のように、ただそこにいた。



ワタシ
「……あの、話、聞いてます?」



ワタシは風船男に問う。

腑抜けたニセ仙人ではない。

今は、風船男、オマエだけが頼りなのだ――!

しかし、唯一の頼みの綱である風船男は、

爪の伸び切った右の小指で、

耳の穴を掻いていた。

そして、その爪に挟まった耳カスを、

ふうと息で吹き飛ばした。

カスがひらひらと舞い――。

そんな光景を細い目に映しつつ、彼は、言った。



風船男
「……あんね、えーと、追い出し屋Gさん、だっけ?

あのね、Gさん。

さっきから、色々と話をしているけれども。

アナタ、ひとつ勘違いしているところがある」



風船男は、ふうふうと息を吐きながら、言う。

それに対して、ワタシ。

……ワタシが何を勘違いしているというのだ?



彼はワタシの怪訝そうな顔を楽しむかの如く、

少しニヤリとしたように見えた。

もっとも、彼の目は肉に埋もれるかのように、

細いので、デフォルトがニヤリ顔という風にも、

捉えることが出来るのであるが……。



風船男
「あんね、Gさん。

僕のことなんだけど――」



……続く。


<おまけ日記>


今日は七夕。

織姫と彦星的にはよかったんじゃないでしょうかね。

んでも、ワタシ的には、暑くて外歩くだけで、

死にそうになり――。

ホント、イヤーンです、はい。

7/6 23時
>自分も昔、猫屋敷に商談に行って

>鼻水が止まらないHA〜HA♪思い出したわ〜!


ワタシもアレルギー体質ですので、

猫の毛とかはダメですね。


それではこれからも宜しくお願いします。

 

2004.07.08 木曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百二十話−
 
 風船男の正体…の巻。




風船男
「あんね、Gさん。

僕のことなんだけど――」



大体にして、ワタシが、

何を勘違いしているというのだ――?



ワタシの頭は、疑問符で溢れ返った。

表情も、うーんと顔をしかめていたかもしれない。

風船男は、そんなワタシの様を見ながら話し続ける。



風船男
「所有者Yってのは、ボクのことだ」



――は?

ワタシはしかめ面から、少々間の抜けた顔になった。



風船男
「だから、あのマンションの所有者は、ボクだ」



――は、はあ?

ますます間の抜けた顔になっただろう。



……すっかり、だ。

すっかり勘違いしていた。

ワタシは風船男の親父であるところの、

ニセ仙人を所有者Yだと思い込んでいた。

そうではなく、風船男が所有者Yだったのか。

この、時々、苦しそうに喘ぐ男が、

今日会うべき人物だったのか――。



ワタシは、ニセ仙人の方向を振り返った。

ニセ仙人は、天を仰ぎ、口を開けていた。

まさしく、呆けた顔を具現化した、といってもいいだろう。

この男に幾ら、アンタが所有者Yだろうとか、

港区のマンションだとか言ったところで、

分からないはずである。

もっとも、この老人の呆けっぷりから考えると、

仮にニセ仙人が所有者Yであったところで、

マトモな反応がされるかどうかについては、

疑問が残るところであるが――。



兎にも角にも、目の前に座っている、

風船のような男が、所有者Yだということだ。

思い込みというのは、ある意味、怖いものである。

ワタシは、咳払いをひとつし、気を落ち着け、

風船男――所有者Yに言葉をぶつけた。



ワタシ
「アナタが……。

そうか、そうですか。

でも、それだったら、話が早い。

ワタシの今日来た理由も、先程話した通りです。

それで、どうなさるつもりですか――?」



ワタシの詰問に対し、

所有者Yは、しばし無言のままであったが――。



……続く。


<おまけ日記>


暑い。

エアコンがないと死にますね。

文明、最高!


7/8 18時
>キャラの濃い人ばかりですね。現実でもそんなですか?


現実の方がキャラの濃い人が多いです。


それではこれからも宜しくお願いします。

 

2004.07.10 土曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百二十一話−
 
 風船男の理解と不理解…の巻。




ワタシの詰問に対し、

所有者Yは、しばし無言のままであったが――。

またもや、「はあはあ」と息を荒げながら、

風船のような面を膨らませ、ぽつりと言った。



所有者Y
「……まあ、それは分かる」



彼は、それだけを言うと、また黙りこくってしまった。

あまりにも言葉が短過ぎる、彼の発言だ。

風船の口は言葉を発するためには、動かない。

それが稼動するのは、苦しそうな息を吐き出す時だけだ。

ワタシは、彼に尋ねた。

――彼のいう「それ」とは一体、どんなことなのか?

ワタシの話の内容の全部が分かるというのか、

そのうちの一部だけが分かるというのか。

それとも、ワタシの気持ちが分かるというのか。



ワタシ
「分かるって、何が分かるってことですか?」


所有者Y
「アナタが話したこと、すべてについて」



彼はひとつだけ、大きな息をついた。



所有者Y
「アナタが言いたいことは、分かる」



彼はワタシの言ったことが分かる、とのことだ。

それだったら、話は早いではないか。

彼に噛んで含めるかのように、彼に訊いた。



ワタシ
「なるほど、ワタシの言ってることが、

全部、分かるって仰ってるんですよね?」



目の前の風船は、小さく頷いた。

ワタシは、彼の頷きに即応する。

風船男の喘ぎに負けない程、強く息巻いて、話し続けた。

今、畳み掛けなくて、

いつ畳み掛けるチャンスがあるというのだ。



ワタシ
「それだったら、何とかして下さいよ。

何とかして下さいって、あれですよ。

占有者A子さんのこと、ですよ。

あのマンションの占有を解いてくれるよう、

所有者の方からも、言って下さいよ」



ワタシの畳み掛ける言葉に対し、

所有者Yは、同意するかの如く、頷いたのであるが――。

次の発言は、彼の頷きと相反するものであった。



所有者Y
「……それは出来ない話、だ」



……続く。


<おまけ日記>


最近、健康に気遣っている訳ではないのですが、

各種サプリメントをコンビニで買っては、

それを無駄に飲んでいます。

んで、ひとつ疑問が――。

こーゆーのって、薬と同じで、

ただ飲み込むだけでいいんですよね?

噛み砕かなくてもいいんですよね?


7/9 18時
>ほんと暑いですよね。外回りが多いかと思いますが、

>日射病等、体調には気を付けて下さいね☆


はい、ありがとうございますです。

とりあえず、死なない程度に水分補給はしています。

夏場の中学生の部活動の時みたいに、

部活中は水を飲むな、といわれて、

脱水症状やらで倒れる心配はありません。

7/9 18時
>その風船男、夏に会いたくない人ランキングがあるなら

>かなり上位に食い込めそうですが、いかがですか?


会いたくないでしょうね。

確かに、その通りです。

んでも、相手にしても、ワタシと会いたくないでしょうから、

まあ、これはお互い様ということで。

7/10 0時
>本日、函館⇔東京、日帰りしました。東京暑すぎ!

>マラソン選手の様になって目立った函館人より。


いやあ、本当に暑いですね。

これまた、どうなっちゃったの? みたいな。

ちなみに、マラソン選手のようになったって、

汗すげえダラダラ状態になってしまったって、

ことでいいんですかねえ?

それとも、函館出張行ったおかげで、

ガリガリに痩せましたよ、みたいな感じです?

って、それだと意味わからんですよね。


それではこれからも宜しくお願いします。

 

2004.07.11 日曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百二十二話−
 
 ワタシの空回りする説得…の巻。




所有者Y
「……それは出来ない話、だ」



彼は自分で自分を納得させるかのように、言った。

しかし、それはあくまでも所有者Yの納得事項であって、

それを聞いているワタシが了解すべきことではない。

「そうですか、はい、分かりました」だなんて、言える訳がない。



ワタシ
「いやいやいや、それこそ、ありえない話ですよ。

まったくもって、ありえない。

言ってることがオカシイじゃないですか」



ワタシは必死に彼を説得する。

ここで引き下がったら、今日この時この場にいる意味がない。

何一つ掴めず、何一つ状況の進展がなければ――。

ワタシはそんな結果が恐ろしかった。

無意味に終わる、怖さだ。

もちろん、行動のすべてがすべて、

自分の思い通りにはならない。

それらの動きや思いが全部、叶うのであれば、

この世の中で、不幸な人間など出る訳がない――。

でも、この時ばかりは、結果を出したかった。

あのマンションから、占有者A子を追い出す、という成果を、だ。

だから、ワタシの説得には熱が篭っていた。

暑過ぎて、それはそれは、空回りするかのように――。



ワタシ
「だって、ご理解頂いているんでしょう?

今の状況がどんなだって。

その状況が、そりゃあもう、異常なんですよ、異常。

これ、分かりますよね?」



風船男は、微動だにしなかった。

その丸い身を縮めたままであった。

その姿がまた、ワタシの心を荒立たせ、苛立たせ、焦らせた。



ワタシ
「いや、黙ったままじゃ、分からないですよ。

この状況を、にっちもさっちもいかない、

今を何とかしなければ――。

そうじゃないですか?

それは、所有者Yさん、

アナタもそう思っていたのではないですか?」



所有者Yは、依然として身を動じさせなかった。

ワタシは喋り続ける。

この閉塞の状況を打破するために――。



ワタシ
「絶対にそう思っていたはずだ。

あなたもこの状況は間違っていると思っている。

そんなはずなんですよ。

だからこそ――」



――ワタシを家の中まで招き入れたんでしょう?



それは、そうだろう。

何故ならば、彼も事態の進展を望んでいなければ、

最初から、ワタシを家に入れる必要性がない。

ワタシが玄関先で所有者Yに会いたいと面会を求めた時も、

「そんなもん、知らん」と、無慈悲なばかりに、

玄関ドアを閉め切ってしまえばいい。

門前払いを食らわせばいいだけだ。

だが、彼はここに招き入れた訳だ――。



所有者Y
「……」



ワタシは懸命に言葉を尽くす。

けれども、所有者Yは身を強張らせたままであった。



……続く。


<おまけ日記>


今日は参議院選挙です。

選挙行ってきました。

景気が悪いと思ったら、政治が悪いと思ったら、

新しい変革を求めなければならないと思います。

大体、この選挙というシステムでしか、

合法的に政治を変えることなど出来ませんからね。

むろん、現状維持がいいということならば、

現政権を支持すればいいだけです。

いずれにせよ、札を投じにいかなきゃならんですね。

7/10 15時
>正解!汗がダラダラポタポタ。

>この人どうしたの?って感じの視線でした。

>函館に別荘買わないGさん?


別荘買うより、当地のホテルやら旅館に泊まった方が、

面倒なくて良くないですかね?

7/11 0時
>サプリは噛まずとも普通に飲めばええんですよ。


ありがとうです。

ひとつ疑問が解決しました。


それではこれからも宜しくお願いします。

 

2004.07.12 月曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百二十三話−
 
 占有者A子と所有者Yの関係…の巻。




所有者Y

「……」



所有者Yは、口を閉ざしたままであった。

かつてリビングだった、現ゴミだめに沈黙が訪れる。

聞こえるのは――彼の苦しそうな息を吐く音だけだ。

彼とワタシとの距離は少なからずあるワケだが、

風船から吐き出される、ねっとりとした空気は、

やがてワタシの顔を撫でるかのように、通り過ぎる。

そんな感じがした。



――いやな、ポジションだ。

そう思ったワタシは、新たに足を崩し直す振りをして、

風船の彼から顔を背け、ワタシは言った。



ワタシ
「……いやあ、ねえ、所有者Yさん。

黙っちゃったら、よく分かりませんよ。

理由が分からない。

ねえ、そうでしょう?」



ワタシの問い掛けに反応もせず、黙ったままだ。

正攻法から攻めて行っても、元の木阿弥になりそうだ。

だから、喋りに少し変化を加えて――。



ワタシ
「……あ、それでも黙ったまま、ですか。

はいはい、そうですか。

んー、それじゃあ、こうしましょうか。

ひとつ質問させて下さい」



ワタシは彼に訊いた。

アナタが今の状況を理解していても、

何も手を下すことが出来ない。

あのマンションの占有者であるA子とは、

一体どんな関係にあるのですか、と。



彼はもう秋も深まっているのにも関わらず、

うっすらじわりと、額に汗を滲(にじ)ませていた。

暖房を付けていないので、室温は外温度よりも、

若干高い程度であり、肌寒いばかりなのであるが――。

占有者Yは、自分の脇に無造作に放置されている、

いつ選択したのか非常に疑問であるタオルをむんずと掴み、

額と零れ落ちる汗をゴシゴシと拭いた。

ついでにチンと鼻をかむと、

ちり紙よろしく丸めて遠くへ放り投げた。

ふう、と大きく息を吐き出すと――。

彼はようやく口を開いたのだ。



所有者Y

「……あの子は、なあ。

あの子は、アイツは、あれだ。

アレなんだよ……」



ワタシ
「……アレって言いますと?」



所有者Y
「……いわゆる、アレだ。女だ」



彼はそう言うと、また黙ってしまった。



女――?



……続く。


<おまけ日記>


月曜日はなんだか重いですよね。

気分が重いです。

それにしても、梅雨はどうしたんでしょうか?


7/11 22時
>イヤー、民主党大勝で喜んでいる。

>へいぞーなんて最低やね。


次の衆議院選挙がどうなるか。

二大政党制になるのか、はたまた――。

って感じですね。

7/12 14時
>沈黙は金、ですなぁ(*_*)


沈黙は金となるか。

でも、沈黙を保ったままって、

損することもあるんですよね。


それではこれからも宜しくお願いします。

 

2004.07.14 水曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百二十四話−
 
 どの口で、女なんて言ってるんだ?…の巻。




女――?



占有者A子は女である。

ワタシはその言葉を聞いた時、

まず最初に連想したのは、

占有者A子が性別上、女に分類される。

すなわち雌である、ということだ。

それにしても、そんな誰の目にも明らかなことを、

どうだ、参ったか! と言わんばかりに言われても、

ワタシはどのようにリアクションを取ればいいのだ?

うひょー、女だ、女。

占有者A子を女なんだー!!

やっと分かったぞー、うっひょー!!

とでも言えばいいのか?

そうか、そうなんか? 

なんて、鶴光ボイスで言うべきなのか――?



――などと、思ったのだが、目の前にいる男は、

そこまで文字通りのアホなことを言っているわけではない。

むしろ、愚鈍なのは自分の方だと気が付いた。

その間、10秒足らずではあるが、

我ながら、間の抜けた時間を過ごしたと思う。



彼の発言の、本来の意味が分かったのは、

そんな頭の悪い発想をしていた10秒足らず後のことだ。

少し、驚きの入り混じった声で言う。



ワタシ
「…・・・えっ、女ってそのおぅ」



ワタシは目前の、所有者Yをまじまじと見る。

どこからどう見ても、立派な中年男。

中年男といっても、ガウンにブランデーが似合う、

紳士から180度かけ離れている。

そこにいるのは、汗かきの風船男、だ。

こんな彼に、まさか「女」だなんて、

そんな言葉を吐かれるとは、全く思わなかった。

しかも、シチュエーションは、ゴミだめ。

これほど、似つかわしくない言葉はないだろう。

例えるのなら、フセインが、

「アメリカってのも、ありって言えばありだよね」

なんて言うくらい、ありえない。

どの口で、女だなんて言ってるんだ?

ワタシはそう声高に言いたかった。

物申したかった。

だが――。



ワタシ
「……はあ、そうですか」



ワタシはそんな言葉を口にするだけで、

精一杯であった。

彼も、黙っている。

彼の顔は、微妙な顔つきだ。

笑っているようにも見えるし、

神妙な顔をしているようにも捉えることが出来る。



この場に、今日、何度目かの気まずい時間が流れた。



……続く。


<おまけ日記>


なんか、こーゆー展開だと、ネタ切れとか言われそうですが、

こーゆー心理状況を書く方が、大変だったりするわけで。

以前の日記の様に、競売のシーンを断片的に、

切り取って取り出すのも、イイのかもしれませんが、

ワタシはひとつの事柄をじっくりと描いていくことに、

今は重点を置こうかなー、と。


それにしても、最近、本業も副業も忙しいです。

調査依頼も数多く頂き、ありがとうございますです。

今月は今までで一番多くのご依頼を頂戴しています。

しかしながら、質は落とさず、お届けは迅速に、みたいな。

ご依頼者の皆さんの、ご参考になれば、幸いです。


7/12 22時
>羨ましいなぁ、もとアイドルをアレに出来るなんて。


アレって、何でしょうか?

なんて言ってみたり。

7/13 22時
>早く続きがよみたいな〜


楽しみにしてもらえれば、

それはそれで嬉しいですね。

7/13 23時
>そりゃ男じゃなかろう(違)。


それはネタじゃなく、ホントに思った次第。

もっとも、一瞬だけですけど(^^;

7/14 17時
>G契ー


暗号書かれても、分からないです。


それではこれからも宜しくお願いします。

 

2004.07.15 木曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百二十五話−
 
 ボクのマンション、ボクのA子…の巻。




ワタシはうわ言のように、呟く。



――女、ねえ。



先程から幾度となくひとりごちてきたフレーズであるが、

何度も見ても、この風船男と、

占有者A子との関係が理解できない。

そりゃあ、男女の仲だ。

他人には不可解であったとしても、

本人達にとって、単純にシアワセであったり、

利害が一致したりしていれば、

それはそれでアリなことなのだろう。

赤の他人が、とやかく言う事柄ではない、ということだ。



とはいえ――、それでもねえ。

ワタシは訝しげに言った。



ワタシ
「……そうですか。

ああ、ねえ。

それで、女というのは、

所有者Yさんとお付き合いされている方だと……」



ワタシがそう言うと、所有者Yは心なしか、

その細い目を細め、口元をほころばせたように見えた。



所有者Y
「まあ、まあ、そうだな、うん。

付き合いか――そうだな、付き合っているんだな。

ボクらは、つ、付き合っているんだ」



彼は、ついさっきまでの気まずい瞬間など、

なかったかのように、嬉々と語った。

なんだろう、この心変わりは、

とワタシは心の中で思ったが、

もしかしたら、先程の気まずさも、

ワタシだけが感じたものであって、

彼はそのような感情など持ち合わせていなかった、

ということか――。



所有者Y
「付き合っているからこそ、

ボクは、彼女に――A子に、彼女の家族に、

あそこを貸しているんだ。

あそこはボクのマンションだからね」



占有者A子の話になると、今までの陰々としか顔に、

光が差したかの如く、生き生きとした表情となった。

彼は繰り返す。



所有者Y
「そうだ、あそこはボクのマンションなんだ――」



彼の口調は力強い。

さも、自分の口にした言葉に納得したかの如く、

頷きながら、彼は断定した。



所有者Y
「あそこには、ボクのA子がいるんだ――」



……続く。


<おまけ日記>


段々と、この話の人間関係が明らかにされます。

それぞれの、それぞれに対する思いが重なって――。


どうでもいいことですが、

ファンタはやはり、オレンジが最高です。

時点で、グレープ。

これがもう定番ですね、はい。


7/15 2時
>つるこーでおま、がんばりやー。


がんばったるわー。

7/13 22時
>忙しくてかなり儲かってますね〜?

>衝動買いしないで貯金しなさいよ〜!(~_~)


いやいや、これは儲かるほどの金額じゃないですんで。

あくまでもワタシを信用される方への、

サービスとしての位置づけです。

んでも、これも期間限定ですが、ね(少し意味深)。


それではこれからも宜しくお願いします。

 

2004.07.17 土曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百二十六話−
 
 蛍の光は、流せない…の巻。




彼の細い目は僅かながらではあったが、見開かれた。

糸のような目に、光が灯っている。

その眼差しは、大家族の食卓に供するため、

大量に天ぷらが揚げられた後の油に似ていた。

それとも油は油でも、食用油というよりも、

工業用重油というべきか。

彼は、ギラギラと脂ぎった目をワタシに向け、

依然と息を荒げていた。

心なしか、同じ空間で呼吸しているワタシまで、

息苦しさを感じていた。



ワタシ
「……そうですか。

まあ、そういう関係だと、

そういう事情があるってことですよね。

それは、はい、分かりました。

分かりましたよ、なんとなく――」



――本当に、なんとなく、だ。

もっとも、なんとなくはなんとなくでも、

かなりレベルの低い程度の、なんとなく、ではあるが――。



ワタシの曖昧な喋りを受けて、彼は断言した。



所有者Y
「ボクが、ボクがさっき言った通りで、

それは出来ない話だっていうこと、だな」



彼は言った。

それは出来ない話、と。

ただ、それについて、こちらとしても、

全面的に納得出来ることでもないし、

一部的であったとしても、無理である。

ワタシにはワタシの事情があるのだ。

ここで帰って、はい、終わり。

貴重なお時間を作って頂き、

誠にありがとうございました、だなんて、

心の中に「蛍の光」を流せないし、流せるワケがない。

交渉の閉店時間を迎えてはならないのだ。



ワタシ
「いやいやいやいや。

ワタシが納得した……これもほんの僅かの、

蟻んこ程の小さい納得さ加減なんですけどね。

最早、ほとんど納得していないというか、なんというか。

だから、だからですよ、所有者Yさん。

こちらとしても、はい、そうですか、とは言えません」



所有者Yの腸(はらわた)に喰らい付くべく、説得を試みた。

ここで最後の灯火(ともしび)を消してはならない。

これが、事態を解決するための、

唯一の足がかりである。

ワタシは必死だったのだ。



ワタシ
「だから、もう一度、よく考えてもらえませんか」



――何故、ワタシが必死なのか。

その理由は、ひとえに――、

社内的なポジションをこれ以上悪くしないため、だ。

社内といっても、小さな会社であるから、

当然、それは会社=社長である。

別に社長に取り入って、ゴマをすって……、

だなんてことは一切考えないが、

それでも自分のポジションを多少なりともより良くしないと、

正直言って、遣り辛いこと、この上ない。

だから、ワタシは仕事としてこれを出来る限り、

迅速かつ、スマートに解決しなければならないのだ。



だが、所有者Yの返事は――。



……続く。


<おまけ日記>


おそらく、ちょっと競売を知っている人ならば、

かったるい話をしているなあ、

とっとと、強制執行すればいいじゃん!

と思われることこの上ない展開ですが、

それにはそれ相当の理由があって……。

まあ、その辺りも徐々に明かされていきます。

7/16 9時
>風船男ってもしかして悲しいヤツ?


悲しいのか、それともシアワセなのか。

それは読んでの通り、

自分が感じた通りだということですね。

それではこれからも宜しくお願いします。

 

2004.07.18 日曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百二十七話−
 
 あそこにボクとA子の子供がいる…の巻。




所有者Y

「ボ、ボクの言うことはさっきと代わらない。

代わらない、よ?」



薄ら笑みを浮かべながら、彼は言った。

言葉は多少どもってはいるが、

感情の振れは、それ程でもない。

逆に、攻め手であるワタシの方が、

この状況をどうにか打破しようと足掻き、

苦しんでいたのは誰の目にも明らかであった。



ワタシ
「まあ、ま、そうだとしても、ですね――。

色々な思いがあったとしても、

さっきから言っての通りじゃないですか。

こちらの方が言い分があり、

それについて、そちらも納得してるのだから、

なんとか、ご協力を――」



ワタシの懇願を跳ね除け、彼はワタシに斬り返す。



所有者Y
「だから、代わらないって。

だ、だってそうだろう?

あのマンションは、ボクのもので、

あそこには、ボクのA子がいて、

そして――あそこには、ボクとA子の子供がいる。

あれは、ボクの子供、だ。

ボクの子供がいるんだ――!」


ワタシ
「……子供」



占有者A子が占有するマンションを訪問した際、

インターフォン越しに聴いた、赤ん坊の泣き声。

その赤ん坊は、所有者Yと占有者A子だというのか。

風船のような中年の彼と、まだ若い占有者A子を考えると、

そんなことは、一見とっぴなことだと思ったが、

当然の帰結というヤツとすぐ思い直した。

それはそうだろう。

男と女がいれば、そりゃあ子供も作るという次第、である。

しかし、それにしても……。



所有者Y
「そう、ボクらの子供。

ボクとA子の子供」



彼は少し、唄うように言った。

ワタシとは対照的に満足そうであった。



それにしても、だ。

彼と占有者A子の間に子供が居るのならば……。

何故、彼と彼女が離れ離れに住んでいて、

彼はこんなゴミだめみたいなところにいるのだ?



……続く。


<おまけ日記>


暑いとまあ、動きたくないですね。

考えるのもおっくうというか、なんというか。

7/17 22時
>今週このHPの存在知りました。とても面白いですね。


面白かったら、それでいいんじゃないですかね。

それはいいことです、はい。


それではこれからも宜しくお願いします。

 

2004.07.19 月曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百二十八話−

 話はこれで終わり、だ。…の巻。




ゴミだめと化した部屋の中、男同士の話は進む。

所有者Yとの話をするにつれてワタシが分かったことは、

要するに、彼と彼女には、男と女の事情がある、ということだ。

彼と彼女が別々の場所にいる、というのも、

何らかの理由があるということだろう。

だが、今はそんな詮索をしている場合ではない。

この現状を何とか打破しなければ――。

ワタシは所有者Yに何とか、本当に何とかならないか、

という願いを求める。

占有者A子を退去させてくれないか、

もしくは、彼女ともう一度話をさせてくれないか。

これはお願いというよりも、最早、哀願であった。



しかし、ワタシの思いだけが空回りし――。

彼はワタシのたった一つの願いすら、

聞き届けることなく、拒否するのであった――。

ワタシは暗い溜め息をついた。



ワタシ

「……結局、何も出来ないし、しない、

ということです、か?」



ワタシは彼に尋ねた。

彼は、それはさも当たり前である、

といった風に、ニヤリ顔で軽く頷いた。

ワタシとのこの状況を楽しんでいるかのようだった。



……絶望的な気分である。

いつの間にか、ニセ仙人があぐらをかいたまま、

大口を開けて、少々よだれを垂らしながら、

眠り込んでいる風景が、

ワタシを更なる絶望の淵に追い立てた。

ワタシから、言葉が消えた――。

所有者Yは意気消沈するワタシを見て、

止めを刺すばかりの言葉を吐いた。



所有者Y
「……まあ、ね。

これで、ここに来た意味はなかった、と。

そういうこと、かな」


ワタシ
「……」


所有者Y
「まあ、話はこれで終わり、だ。

それじゃあ、ここらでお帰りになられて――」



風船男は、話を切り上げようとしている。

彼は余裕の表情である。

その余裕の意味は、

ワタシを存分に遣り込めた、

ということから生まれ出でたものだろうか。

だが、彼のそのような声に対して、

ワタシは対応が出来なかった。



ワタシ
「……」



彼は、よいしょと言いながら、

その重い図体を無理矢理引き上げるように、

立ち上がった。

座っているワタシを卑下するかの如く、

見下しながら言った。



所有者Y
「まあ、さ。

これでサヨナラっていうのも、なんだし……。

そうだ、いいもん、見せてあげるよ」



……いいもん、って一体?



……続く。


<おまけ日記>


休みの日って、仕事の日とはまた違った意味で、

疲れますね。

すでに夏バテしてるかも。


7/19 1時
>風船男ってそんなにぶちゃいくだったんですか。

>それなら俺でも・・・・


そうですね、可能ではないでしょうか?

多分。


それではこれからも宜しくお願いします。

 

2004.07.20 火曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百二十九話−

 所有者Yのいいもんの正体…の巻。




……いいもん、って一体?



所有者Yは、小声で「いいもの、いいもの」と呟きながら、

ドスドスと奥の部屋へと向かった。

その際、襖を開けて、奥へ行ったのだが、

開け放たれた襖の先も、やはり、ゴミだめであった。

ゴミだめはゴミだめにしか過ぎない。

この家はゴミの棲家なのだ――。

そう思うと、ゴミやら埃(ほこり)やら臭いやらが、

途端に気になりだしてくる。

今までの気を張った状態から、絶望により、

緊張感が解き放たれた、今だからこそ、

ゴミ屋敷とまでは言わないが、

ゴミの乱雑する、この部屋の異常さにようやく、

目を向けるに至ったということか。

大体、ワタシの座っているこの場所だって、

ゴミやゴミらしき物体を雪掻きのように、脇に掻き出して、

ようやく作ったスペースである。

今更ながら、この部屋の汚さを思い知らされた。

ワタシは、ステーキに添える甘いニンジン煮よろしく、

絶望感に付け合わされた、

嫌悪の感情を味わあずにはいられなかった。



心身ともに打ちひしがれ、うな垂れているワタシを尻目に、

彼は風船のような体をゆさゆさと揺らしながら、

奥の部屋のタンスを漁っていた。

そして、目的の物を見つけたのであろう。

彼は「これだ、これだ」と言いながら、

これまたのしのしと音を立てて、戻ってきた。

この間、一、二分足らずの出来事だったのだが、

彼にとってはかなりの重労働だったようだ。

彼はふうふうとすっかり息を切らせていた。

やはり、息を吸うだけでも一仕事の彼にとってみたら、

部屋から部屋へと歩くこと自体、かなりの労働だといえよう。

これじゃあ、二階にインターフォンの受話器がないこの家で、

幾ら呼び鈴を鳴らしたところで、

玄関先に出るために、一階に下りるのが億劫になり、

なかなか二階から降りてこなかったのも、分かる気がする。

彼にとってみても、重要な話ならまだしも、

新聞や宗教の勧誘程度で、二階から一階へと赴くのは、

たまったものじゃない、といったところだろう。



走ってもいないのに、息を切らした彼が戻ってきた。

その手に抱えるようにして持っているのは、

一冊のアルバムであった。

白を基調にしたアルバムであったが、多少黄ばんでいる。

彼は、今まで陣取っていたポジションにドカッと腰を降ろし、

それを得意気な表情で、ワタシに見せた。



所有者Y
「これは、ボクの、いや、ボクらの想い出だよ」


ワタシ
「……はあ。

想い出、ですか?」



一体、想い出とは何なのだ?

この期に及んで、昔話にでも、

花を咲かせようとしているのか?

だが、その時のワタシは、

すでに言い返す言葉を失っていた。

そのまま、黙って、彼の言葉に耳を傾けていた。



所有者Y
「だから、ボクとあの子の想い出、だよ」



表紙に、流暢な筆記体で”My Diary”と綴ってあるそれを、

彼はワタシの目の前に広げた。



って、”My Diary”って言われても……。

これって、日記じゃなくて、アルバムじゃんっ!!



などと、心の中でツッコミを入れる気力すら、

ワタシには残っていなかった――。



……続く。


<おまけ日記>


今日、ワタシの書いた報告書を見た、

ウチの社長から、一言。


「あれだな、Gくんの文章は固くてツマランな!」


……はあ。

まさか、ワタシがネットでこんな頭の悪い文章を、

無駄にアップしているとは思わないのだろうなあ。

そう思うと、ちょっと笑いがこみ上げてくる、

今日この頃だったりします。

7/20 17時
>きーっ!!風船ヤロー超ムカつく!!

>もうお前のんちゃうねん!はよ出ていさんかいゴルァ!

>取り乱しました。失礼。つい感情の赴くまま発言を…。!


正確に言うと、実はこの段階での所有者は、

風船男こと所有者Yだったりします。

まあ、この辺りの話も、後で出てくると思いますです。


それではこれからも宜しくお願いします。

 

2004.07.21 水曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百三十話−

 占有者A子の正体とは?…の巻。




所有者Yは、広げたアルバムをワタシの方に差し出した。

彼は顔をより一層ワタシに近づけ――。



所有者Y
「これはねえ、あんまり人に見せないんだけど。

今日は、ここまで来たんだから、特別だから。

ホント、特別なんだから、ね」



と、得意満面な笑顔を浮かべながら、言う。

彼が差し出した、”My Diary”なるアルバムには、

数々の写真が収められていた。

広げられたアルバムをよく見ると、

このゴミゴミとした乱雑な部屋とは対照的に、

等分の間隔を狂わすことなく、

写真が整然と並べられているのであるが、

その隙間隙間にびっしりと文字が書き込まれている。

書いた日付も入っているので、

なるほど、これが日記の部分なのだろう。

あながち、”My Diary”という表記は間違っていない。

あまりにも文字がのた打ち回っているので、

それを読みこなす事は非常に難儀ではあるが。

このアルバム兼日記をまじまじと見せ付けられた

ワタシは、思った。



――彼のアルバムの中だけは、世界が異なっている。



ワタシはそう感じたのは、

このゴミの溢れる部屋と対照的に、

写真がきちんと整列されているからという理由だけではない。

このアルバムに鎮座している写真が、

すべて、ひとりの女性だけを写し取っていたのだ。

若い女だった。

まだ少女だ、と言っても過言ではないかもしれない。

その長い髪を上げたり下ろしていたりいる。

どの写真も、単純に可愛かった。

他に写されているのは、何もいない。



彼女は、一体誰……。



ワタシ
「これは……」



ワタシのあまりに素っ気無い返事に納得しないのか、

もっと反応が欲しかったのか、

先程までの得意気な顔色は陰り、

少し不満そうに鼻を鳴らした。

もっと、驚いたり、可愛いと賞賛したり、

それこそ、口笛を吹くようなパフォーマンスでもしろと、

いったところか。

まあ、可愛いと言ってもいいのだが……。



所有者Y
「分かるだろう?

彼女だよ――ボクのA子だよ」



数々の写真に写し出されているのは、

たったひとりの女――占有者A子だった。

つい先日見た彼女のスタイルとは、

若干というか、大分異なっていたのであるが、

だが、言われてみれば、彼女なのであろう。

面影は十二分にあった。



所有者Yはささくれ立った指で、

次々とアルバムのページを開いていく。

どのページにも、占有者A子ひとりだけが、

様々なシチュエーションで、

色々な角度からその姿、その表情が切り取られている。

しかも、普通のスナップ写真というワケではないようだ。

その証拠に、どの写真においても、彼女の目線が、

カメラの方に向いていない。

大方の写真において、

彼女はあらぬ方向で、誰に向けているのか、

笑顔を振り撒いている。

それに、普段着とは到底言いがたい、

煌びやか過ぎる程、煌びやかな、

ピンク色のフリルのミニスカートを身につけていた。

そして、片手には、写真に写る際、

あまり持つ者がいないであろうモノを握っていた。

――それはマイクである。



彼女はもしかして……。



ようやく、彼女の存在が、

普通ではないということに気が付いたのか――。

ワタシの顔色が変わったことを、彼は察知したのだろう。

風船男は、鼻息も荒く、興奮したかのように言った。



所有者Y
「そうだよ。

そうなんだよ。

彼女はね、アイドル。

ボクだけのアイドルなんだ――!」



……続く。


<おまけ日記>


はいはいはい。

今回やっと、タイトルに登場する、

「アイドル」という言葉が出てきましたよ。

連載230回目にしてようやく、です。

そりゃあ、引っ張り過ぎとか言われるよな、

と我ながら思う次第。

まあ、あれです。

これを読むのが苦痛だったり、

単純につまらなかったら、

無理しないで読まない方がいいぞっと。

7/20 23時
>某社員の写真ってGさんなの?(*^_^*)

違います。

某社員は某社員です。

7/21 2時
>人参を食べないと体が丈夫に成らないよ。

>俺は週に5,6本は食べてて10年くらい風邪引いた事無い。


そんなに人参好きではありませんが、

別に嫌いではありません。

ただパセリは食えません。

7/21 9時
>社長もここを毎日見てたりして(笑)


それはないでしょう、多分。

もし見てたら、リアルで言われてるでしょう。

7/21 10時
>Gさん、暑いよねぇ。また曜日間違ってるよ。

>東京39.5℃だって・・


間違い指摘、どうも。

暑かったから間違ったのでしょう。

そういうことにしておいて下さい。

7/21 10時
>実は、Gさまの社長知らずに

>このサイトにハマっていたら尚更笑えません


いやあ、それだったら、笑えますよ。

笑っちゃいます。

感想聞いてみたいという気もあります(笑)

一種の怖いもの見たさ、というヤツですかね。


それではこれからも宜しくお願いします。

 

2004.07.22 木曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百三十一話−

 なんてたってアイドル!…の巻。




彼は繰り返した。



所有者Y
「ボクだけの、ボクだけのアイドルなんだ――!」



熱病に冒されるが如き熱さを秘めた、

まさしく心の叫び、というものであろう。

熱さのあまり、熱膨張でもして、風船は張り裂けんばかりだ。



自分の彼女ないしは気になる女性を指して曰く、

ボクの天使だの、ボクのベイビーだの、

ボクの可愛い子猫ちゃんだの、

特に欧米人あたりだったら、そのように表すことが多々ある。



……いやいや、そうなんだ。

外人さんはしばしばそのようなことを言うのだ。

そういうことにしておくんだ、ということで話を続ける。



それと同様に、所有者Yは、占有者A子を表現する方法として、

”アイドル”という言葉を使ったのかと、まずは思った。

だが、この一連の写真に写っている彼女の衣装や表情、

シチュエーション等を総合してみると、これは本当の意味での、

”アイドル”的な存在ではないかと思い至った。

大体、これでもか、と言わんばかりのフリフリの衣装――

しかも、写真ごとに異なり、かなりのバリエーションだ――

を趣味で着ています、という女は、そうはいないだろう。

いたとしても、コスプレ女くらいなものだ。

それ故に、所有者Yのいうアイドルとは、

形容詞としてのそれではなく、

芸能人としてのアイドルなのだ――。



もっとも、芸能人としてのアイドルといっても、

それこそ、ピンからキリまである。

ワタシは、さほどテレビ番組ついては詳しくない。

それを差っ引いたとしても、

以前テレビや雑誌で見たことがある、

と断言出来るまでには至らなかった。

ただ、可愛い娘だな、と思う程度だ。

また、恐らく、写真の彼女からして、

燦燦たる芸能界に身を置いていたのは、

何年前だかまでは分からないが、過去の話であり、

現在は芸能界にはいないのだろう、といったことか。



それでも、それにしても……、とワタシ。

名前が売れている売れていないに関わらず、

仮に芸能界にいたというのが過去の栄光であったとしても、

占有者A子が”アイドル”だとは……。

そして、目前の風船男にそんなアイドルの彼女がいる、

という事実に、ワタシの絶望感はますます色濃くなり、

濃厚な敗北感が募るばかりであった。



所有者Y
「それで、彼女はねえ、あそこにいたんだ。

○○○○なんだけど。

知ってる? ○○○○」



……そんなに芸能界には詳しくないワタシであったが、

名前程度は聞いたことがあった。

昔の、アイドルグループだ。



モーニング娘。よりも以前の話、おにゃんこクラブという、

アイドル集団があった。

それこそ、アイドルをダース単位でユニットにするという、

玉石混合の、下手な鉄砲数撃ちゃ当たる、ということわざを、

まさに具現化した手法で、

世の中高生男子の心を席捲(せっけん)した、

アイドルグループである。

彼の口にした、○○○○というグループ名は、

おにゃんこクラブ以後、雨後のタケノコのように、

数多く生まれ、そして消えていった、

アイドル集団のひとつである。



何も答えないワタシに、もはや興味がないようだ。

彼は急に声を落とすと、人差し指を口に近づけ、

シーっと、言った。



所有者Y
「あ、そうそう。

これは、誰にも秘密だからね。

誰にも言っちゃ駄目だからね」



……って、だったら、

今日会ったばかりのワタシに言うなよ!

とも思ったのだが、言葉には出さなかった。

彼の場合、初対面の人間にはこれを見せ、

悦に浸るというのが、いわゆるお約束なのであろう。



風船男のこの態度に対し、

絶望と敗北感と、それに何とも言いがたい、

腹立たしさが入り混じるワタシであった……。



……続く。


<おまけ日記>


いちおう、文中の○○○○については、

お答えしませんので、そんな感じで。

あと、○は適当につけました。


7/21 23時
>やっぱり脳内彼女だったのかっ!?

>子供も風船の脳内子供。間違いない!


どうなんでしょうか?

それは物語が更に進めば、自ずと分かります。

7/22 0時
>苦痛だけど読みます読みま〜す!

>Gさん大好き〜!チュッ!!


苦痛なのに読むのですか?

マゾっぽくて、大変ですね。

7/22 15時
>いろんな意味を含めて!

>引っ張りすぎてイク瞬間を逃さないよう

>今後の執筆活動応援しています!


まあ、どうなんでしょうかね。

自分が楽しければそれでいいので。


それではこれからも宜しくお願いします。

 

2004.07.23 土曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百三十二話−

 負け犬、追い出し屋G…の巻。




このアルバム――というよりも、

自作のフォトエッセイ集と言う方が適切かもしれない。

彼の撮った占有者A子のアイドル写真と、

彼女への愛を綴っているのだろう、

彼直筆の日記やポエムだけで構成された、

この世に一冊しかない写真集だ――は、

彼の心の拠り所であるようだ。

さかんに、ページを愛おしそうに指でなぞっている。

風船男はうっとりとした表情で、アルバムを見つめていた。

ワタシはといえば呆然と、

そんな彼を見ているしか術を持たなかった。



しばし、夢心地の境地にいた所有者Yであったが、

はたと夢から醒めたように、

「さあさ、さあさ」などと掛け声を掛けると、

ワタシの前で開いていたアルバムを自分の元へ引き寄せ、

それをパタンと音を立てて閉じた。



所有者Y
「これで、終わり。

終わりだ、ね。

じゃ、それじゃあ――」



所有者Yは丸い体から短い手腕を突き出し、

ワタシの奥の方へ差し出した。



――それじゃあ、もう用はないよ、ね。



話すことも話したし、それで、もう十分だろう。

おまけに見せるものの見せたと言いたげな表情で、言った。

ワタシに帰るよう、促していたのは明らかであった。



もう、時間もかなり経過した。

これ以上、ワタシに何が出来るというのだ――。



打ちひしがれていたワタシは、無言のまま、スッと立ち上がった。

しかも、スペースで、少し変則的に足を崩していたものだから、

立つや否や、ジンジンと足の痺れを感じ、身をよろけさせる。

思わず、脇のテーブルに片手を付き、体勢の安定を保った。

その姿は、まさしく、負け犬のそれであった。



ここには、もういられない――。



ワタシは「分かりました……」とたった一言残すと、

まだ痺れの残る足を引き摺り、ワタシは風船男に背を向けた。

その際、ニセ仙人と目が合った。

ニセ仙人は、霞でも食って腹がいっぱいなのだろうか。

少々目がとろんとした状態で、いい意味でいえば、

無の境地にいる、悪い意味で言えば、

単に呆けている、と言ったところだ。

ワタシは玄関先へと向かった。



所有者Y
「……まあ、さ。

ボクの言い分も分かってもらえて、嬉しいよ」



後ろの方で、所有者Yが続けて何事か言っている。

だが、ワタシの右耳に入ったその声は、

すぐさま左の耳から抜けて出て消え、欠片すら残らなかった。



……続く。


<おまけ日記>


歯が痛い。

やばい、歯医者行かないといけないか。

嫌いなんだよなあ、歯医者……。


7/24 18時
>その写真集を人が来る度見せていたのでしょうね。


そうなんでしょうね。

それが楽しかったのでしょう。

7/24 18時
>久し振りに見たけどちっともすすんでないね。


読まない方がいいんじゃないですかね?


それではこれからも宜しくお願いします。

 

2004.07.25 日曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百三十三話−

 違和感の彷徨う夜…の巻。




……ああ。



ワタシは、駅へと向かう道端にあった公園のベンチに座っていた。

遊具が滑り台とシーソーしかない、小さな児童公園だ。

ベンチは、薄明かりの電灯に、照らされている。

夜風がより一層の冷たさを帯びていた。

徒労感の身に、この風はこたえる。

ワタシは身震いをした。



意気込み勇んで臨んだ所有者Yとの直接対決。

ワタシのシナリオ通りに、所有者Yと会い、

こちらの要求――占有者A子を出してくれ――

を伝えたまではそれ以降がてんで話にならない。

話の展開があったとするならば、それは、

所有者Yと占有者A子との関係が分かっただけだ。

彼と彼女は付き合っている、という。

だが、それ以上の進展には至らなかった。



あの家――所有者Yの病院――は、

ねっとりと湿気の多く暑かった。

しかも、文字通りゴミゴミしていて、埃っぽい家だった。

そこを離れ、こうやって夜風の冷たさに当たっていると、

寒さによる身震いと疲労感を煽られる一方で、

冷静になっていく自分を感じた。

まるで、熱暴走したワタシの脳みそが、

冷やされていくようだ。

ワタシは、冷静さを取り戻していった。



彼と彼女の関係、か――。

だが、この違和感は何なのだろう……。



埃が取れ、クリアになった頭に、

次々と疑問が浮かび上がる。

その最たるものが、彼らの関係への違和感であった。



……何故、所有者Yと占有者A子は、

一緒に暮らしていないのだ?



所有者Yは盛んに言っていた。

彼女はボクのものだ、と。

そして、彼女の子供は、自分の子供である、と。



所有者Yはまさしく、あのマンションの所有者であり、

彼が住むのに、何ら弊害がない――とはいえ、

所有者Yはあのマンションの残債を支払い切れず、

競売にかかってしまったという次第である。

それゆえに、全く弊害がない、とは言えないが――。

それにも関わらず、実際はどうだ。

あのマンションに住んでいるのは、

占有者A子と子供、彼女の母親だけだ。

所有者Yの姿は片鱗すらなかった。



それに、彼が得意気に見せた、

あのアルバムにしても、おかしいところが数多くある。

彼は、どうだと言わんばかりに、

最初から最後のページまで、

パラパラめくって見せてきたのだが、

あれに収められた写真は、

彼女だけ、彼女一色という点だけであった。

しかも、愛を思い描いた詩だかエッセイが、

所狭しと書かれている。

それだけでもかなり変ではあるが、

アルバムにあるのは、昔の占有者A子の姿だけで、

今の彼女の写真というのが、一枚もなかった。

所有者Yと占有者A子が一緒に写っている写真、

というのも、当然の如く、なかった。

彼のことなら、ツーショットの写真があるものなら、

間違いなく、見せ付けてくることだろうに……。



大体、彼の存在は、今までの交渉中、

話にすら出てこなかった。



そうだ、今までの交渉といえば――。

ワタシは記憶の底から、

引き釣りだすようにして、思い出した。

彼らの存在――。

彼らとは――マスウラとルリカワ、だ。



今思う。

彼らは何故、登場したのだ?



……続く。


<おまけ日記>


当方多忙により、

更新ペースが遅くなるかもしれません。

考えることとか、忙し過ぎです。

時間が欲しい……。

7/25 1時
>ううう、クセになる・・・

>一日何回サイトを開けば気が済むんだろう?


そこまで気になってくれると、

こちらも書いている甲斐があるというものです。


それではこれからも宜しくお願いします。

 

2004.07.26 月曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百三十四話−

 マスウラとルリカワと所有者Yの関係…の巻。




彼らの存在――マスウラとルリカワの存在とは、

一体何なのだろう。



彼ら二人のことなんて、思い出したくもないが、

そんな思いとは裏腹に、

脳内では、自動的に彼らの姿かたちが形成されていった。

どちらも、脂ぎったオッサンどもで、おまけに胡散臭い。

彼らは、占有者A子の知り合いという、

触れ込みで登場し、彼女とウチの会社との交渉に割り込んできた。

あることないことを、オッサン二人でべらべらと喋っていたが、

最終的には彼らと占有者A子とは、

いわば内部分裂するという、外野からしてみると、

訳の分からない結末で終わった。

ワタシという肝心の交渉相手をそっちのけで、仲間割れである。

決裂の際、ルリカワは粘つく声で彼女にこう言った。



「……でも、アンタ、依頼人ぶるなよ」



この言葉からも、

彼女はマスウラやルリカワの依頼人ではない、

ということが如実に分かる。

依頼人は他にいるのだ。

だとすると、真の依頼人は――。

その問いに対する答えは、ひとつしかありえない。

答えはもちろん、所有者Yである。

彼が占有者A子とウチの会社との退去交渉に、

彼らのような胡散臭い人間どもを介入させたのだ。

もっとも、所有者Yにとってみたら、

彼らを間に割り込ませたのは、

決して仲間同士で争うためではなく、

一致団結し、占有者A子にとって、

一番いい方向性で事態を解決させるためだ。

だけれども、そんな彼の思惑とは異なり、

現段階で彼らと彼女がお互い合いまみれない状態にある、

ということを、所有者Yは知っているのだろうか。

もう、マスウラとルリカワはこの件を放り出してしまったことを、

彼は知っているのだろうか。

その点も疑問であった。



ベンチで冷たい夜風に吹かれていると、

今回の占有についての疑問点が次々と思い浮かんでくる。

それだけ冷静になった、ということだろう。



しかし――。

ワタシはこれから、あることをしなければならない。

したくはないことであるが、避けることは出来ないことだ。

それは、先程の所有者Yとの話の一部始終を、

社長に電話で報告しなければならない、ということだ。

結局、所有者Yと会っても、目立った進展はほとんどなかった。

時間を使って、何も進まなかったことを、

報告するということは、非常に辛い。

特に、仕事における功を焦っていたワタシにとって、

その辛さは、半端なものではなかった。

ワタシは、一挙に憂鬱な思いで満たされ、

心理的な苦しさに胸が痛くなってきた。



風が一層強くなった。

鬱蒼とした気分で、ワタシはベンチに座り続けている。

とにかく寒いし、それ以上に腹も減っていた。

こんなにも落ち込んでいたとしても、

腹が減る時は減る。

生理現象だから仕方がない。

こんな気分だからこそ――今日は、カツ丼を食おう。

カツ丼をドーンと食って、暗い気分に打ち勝つんだ。

トンカツ食って、ブタ勝ったって奴だな。

ウマ勝った、か。

まあ、どちらでもいいや。

いずれにせよ、ワタシは、

受験前日の浪人生のようなことを思った。



確か、駅前の本屋の隣の隣あたりに、

トンカツ屋があったはずだ。

今日の夕飯は、そこにしよう。

そこで、カツ丼だ。

ついでにトン汁もつけたる。

ああ、それと、コーラも飲むか。

瓶のコーラな。

ブタをコーラと怒ってみる、みたいな感じで。

……最早、オヤジギャグにもなっていないけどな。

でも、飯を食う、その前に――。



ワタシは空き腹を抱えて、立ち上がると、

公園の出口の横にある、公衆電話のブースに向かった。

覚悟を決めて、社長に電話をするために……。



……続く。


<おまけ日記>


昨日の夜から、奥歯が死ぬほど痛くなり、

今日、歯医者へと行ってきました。

久々、半年とちょっとぶりです。

とりあえず応急処置的に、歯の被せものをとって、

溜まっていた膿を削り出したという次第。

いやあ、歯が痛いのって嫌ですね、ホント。

どうでもいいですが、歯が痛くなってから、

一時間くらい歯を磨いてみたんですけど、

意味のない行為だったです(^^;


7/26 20時
>おぉ(゜∀゜)!久々マスウラルリカワ!

>関西弁オッサンも出してぇな〜。


さて、実際に再登場するシーンはあるのでしょうか、

それともないのでしょうか?<マスウラ&ルリカワ。

関西弁のオッサンは、とりあえず、今はお休み。


それではこれからも宜しくお願いします。

 

2004.07.28 水曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百三十五話−

 強制執行するか?…の巻。




電話のコール音とは、斯くも長いものか……。



公衆電話の受話器を握り締めたワタシは、

時間の流れの遅さを感じていた。

掌(てのひら)に汗が滲(にじ)む。

電話のコールは永遠に続くかとも思ったが、

それでも、始まりがあれば、いつかは終わりが来る。

電話のコールは、会社の事務員が受話器を取ることで、

鳴り止むこととなる。

その間、四コールであった。

そのたった四回のコールが、

非常に長く感じられたのは、

これからの電話で話す相手のせいか――。

「ありがとうございます。××です」と、

会社名と感謝の言葉を相手に述べる彼に対し、

もうフツーの会社だったら、

アフターファイブだか、何だかとか言って、

酒でも呑んで、上司の悪口でも言っている頃だろうに……。

お疲れ様なこった、などと、しみじみ思った。

が、それも束の間のことで、

会社にいる彼よりも、

外で退去交渉に走り回っているワタシの方が、

大変なはずだと思い直し、

彼に対し、お疲れの意を表することを止めた。



そうだ、大変度数で言えば、事務員よりも、

ワタシの方が大変なのだ――!



「お疲れ様です」とも言わず、ワタシは自分の名前だけを述べ、

社長に電話を回すよう、彼に伝えた。

事務員は、はいはいと気のない返事で、

社長への内線を繋ぐ。



またもや、永遠ともいえるような、

数秒間が過ぎ――そして、社長が電話口に出た。



――社長は黙ってワタシの報告を聞いていた。

疲れだろうか、それとも外にいる寒さのせいだろうか、

言葉を発しようにも、あまり呂律が回らない。

たどたどしいながらも、

ワタシはこれまであった出来事について、

多少の前後はあったかもしれないが、すべて話した。

この期に及んで隠し立てや、

自分にとって有利であるようなことを言っても仕方がない。

包み隠さず、すべてを語った。

所有者Yとの経過報告は、佳境に入る。



ワタシ
「……ということですので、あの、

結局、所有者Yの線も難しい、と。

ワタシは、そう、感じました、はい。

い、以上です――」



社長への報告はとかく緊張する。

電話だというのに、顔が強張ったままのワタシは、

その言葉の端々に至るまで、

たどたどしさが禁じえなかった。

ワタシの報告が終わった途端、

社長は大きく、息を吸い込んだ。



これは、怒鳴られる――。

怒られる――。

その前兆だ――。



ワタシは咄嗟の判断か、

身構えるように、体中に力を張った。

社長から何を言われても動揺しないように、だ。

しかし、身構えていること自体が、

ワタシの心の動揺を示しているとも言えた。

動揺をしているワタシを知ってか知らぬか、

社長は、ポツリと言った。



社長
「……それで、終わりか?」



その言葉は、怒るでもなく、平常のままの言葉だ。

それが逆にワタシの背筋を凍らした。

社長は、またもや、うーんと考え込んだ。

しばしの、永遠とも言える沈黙が続く。

その間、息が出来ぬ程、苦しかった。

心臓が止まりそうな緊迫感。

堪らない。

沈黙よ、早く終わってくれ――。



そんなささやかな願いがやっと受け入れられたようだ。

社長が作り出した沈黙は、社長によって破られた。

今までの思考を吐露するかの如く、静かに言った。



社長
「これはもう――。

強制執行するしかないか?」



……続く。


<おまけ日記>


どうでもいいことですが、

交渉も疲れますが、会議も疲れますね。

いや、会議の方が疲れますです。

会議、長いっての!


7/26 23時
>虫歯お大事に(森本)


あ、ご心配には及びません。

どうもです。

7/26 23時
>私もカツ丼食べたい(森本)

カツ丼はあまり濃くない方がいいですね。

薄味の方がいいです。

7/27 0時
>数ヶ月ぶりに読みますが・・ちっとも話進んでないですな


ジェットコースタームービー的展開を

今回の作品に求めちゃあいけませんね。

7/28 14時
>電話→社長に怒られる→次の行動を閃く→急展開


まあ、お約束の展開ですね。


それではこれからも宜しくお願いします。

 

2004.07.29 木曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百三十六話−

 強制執行とは何か?…の巻。




社長
「これはもう――。

強制執行するしかないか?」



怒るでもなく、社長は言った。

それもまた、仕方なし――。

その言葉には、寂寥感すら漂っていた。



社長
「強制執行するしかないよな?」



社長は疑問形のように語尾を強調しているが

決して、ワタシに問い掛けている訳ではなく、

決定事項としてワタシに伝えているのだ。

その際、どう答えれば良いのだろう――。

ワタシは最適な返答を思いつくこともなく、

「はあ……」とだけ、曖昧に答えた。



――強制執行とは、簡単に言ってしまえば、その名の通り、

強制的に占有者を退去させる執行手続きのことである。

執行官が占有が行われている当該物件を訪れ、

占有者を排除するべく、有無を言わせることなく、

家財道具等動産と占有者を室外に出す。

一旦、強制執行が開始されれば、泣こうが喚こうが、

執行は止まらずに行われる。

まさしく、競売における最終奥義――

ケンシロウの北斗百裂拳みたいなものだ。

これを喰らった占有者は、

「ひでぶ」か「あべし」としか言いようがない。

もしくは、全身に灯油でも被って、

文字通り体を張って止めようとするか――。

だけれども、そんなことをやっても、

駆けつけた警察官に公務執行妨害で、

逮捕されるのがオチである。



むろん、強制執行は最終的なものであり、

それ以前に法的に厳正に行われる。

それゆえに、慎重には慎重を重ねた、

面倒臭い手続きを踏まなければならない。

まず大前提として、執行を行うためには、

強制執行を行ってもよいとする、根拠が必要となる。

それが、いわゆる「債務名義」である。



――債務名義は、大きく二つに分けられる。

裁判官による勝訴の判決や和解調書等と、

公証人による公正証書だ。

裁判官や公証人といった、法を重んじ、

完全に利害関係のない第三者が作成したものしか、

債務名義となり得ない。

仮に私人間で強制執行を行ってもよい、

という条文を入れた合意書を締結し、

相手方が合意内容を遵守しなくても、

その合意書は裁判を有利に進める上での、

証拠のひとつにはなると思うが、

それだけで強制執行を行う根拠とはならない。

あくまでも、公文書でなければお話にもならないのだ。

こういった債務名義を手に入れるためには、

裁判に勝たなければならなかったり、

最初から相手方と合意した公文書を作成しなければならない。

だがしかし、裁判に訴えるにしても、

時間的にもコスト的にも負担が大きく、

また、相手側が余程のお人よしでなければ、

一緒に公証人役場に行って、

公文書を作成するのは難しいだろう。

債務名義ひとつ取るのも、なかなか骨が折れることなのだ。



だが、その債務名義を取得するための煩雑な手続きを

簡素化するためのシステムが、競売には備わっている。

それがすなわち、「引渡命令」と呼ばれる裁判である――。



……続く。


<おまけ日記>


今日は説明っぽくなってしまいました。

次回もちょっと説明が続きます。

まあ、競売を知らない人に向けても書いてますので、

知ってる人は読み飛ばしてちょうだいな。

7/28 22時
>虫歯よくなりました?(森本)


よくならないです。

悲しいです。

7/28 23時
>しかし暑いですなー。


暑いですよ。

なんですかね、このまとわりつくような暑さは。

7/29 10時
>強制執行をしぶってるようですが、

>時間とかお金とかかかるんですか?


掛かりますね。

まあ、この物語において、強制執行を渋る本当の理由は、

他にあるのですが……。

まあ、それはすぐ分かるでしょう。


それではこれからも宜しくお願いします。

 

2004.07.31 土曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百三十七話−

 引渡命令とは?…の巻。




――「引渡命令」とは、簡易な裁判である。



裁判というと、兎角、弁護士や検事といった人間が、

法廷に立ち、尋問やら弁論やら証人喚問をする

――時にはバーンと机でも叩き、「意義あり!」だなんて、

どこぞのゲームばりに大声を張り上げたりもする――

ようなイメージを持ってしまうが、

広義で言えば、裁判とは、

”裁判所や裁判官が行う法的な行為のすべて”

という意味なのである。

ちなみに裁判という言葉を調べると

「形式的意義においては、そのうちで、

司法機関としての裁判所又は裁判官がする法的な行為(訴訟行為)

という形で行うものを指す」[株式会社有斐閣 法律学小辞典第3版]

とある。

そして、引渡命令はそのような裁判上の面倒臭いプロセスを、

書面上だけで迅速にクリアしようとする裁判手続きなのだ。



要は、占有者に対する強制執行を行う際は、

面倒臭い手続きを踏んで、

債務名義を得なければならないが、

占有者が買受人に対抗出来ない場合、基本的には、

割と簡易かつ迅速に対応可能な引渡命令の申立が出来る、

ということなのである。



それでは、今回の場合、強制執行の事前段階とも言える、

引渡命令の申立が出来るか否か。

また、申立が受理されるかされないか――。

それについては、裁判官が作成した「物件明細書」という書類で、

どのような占有認定が成されているのかで、

可否に関する、大方の予測が立てられる。

それでは今回の不動産競売事件における物件明細書で、

裁判官は以下の通りの占有認定を行っている。

それは――。



「占有者の占有権原は使用借権である」



ここで言う、占有者とはもちろん、占有者A子のことである。

彼女の占有権原――「権原」とは法律上、

権利の発生する原因の意である――について、

「使用借権」とあるが、これは簡単に言ってしまえば、

タダで物件を借りている状態にある、ということだ。

占有者A子が敷金だとか家賃だとかを、

払っているとか、何やかんやと屁理屈をつけて、

騒ぎ立てても、裁判所の見解としては、

そんなことはあからさまにアヤシイ主張だから、認めない、

ということだ。

もっとも、物件明細書とは前にも書いている通り、

裁判官が執行裁判所として、

「一応の」見解を述べているだけなので、

占有者A子の主張が裁判を通じて、

彼女の言い分の正当性が認められた場合、

「物件明細書」に記された一応の見解が、

ひっくり返される可能性もないわけではない。

しかし、今回の件で言えば、

彼女が自分の主張を通すのは難しいであろうし、

第一、裁判に訴えるというのは金も時間も力も使う。

そう一筋縄ではいかないことだ。

だからこそ、彼女――占有者A子――に対する、

引渡命令申立が裁判所によって受け付けられるのは、

間違いないところだろう。



それだったら、最初から占有者退去交渉が、

上手く行かなかったら、引渡命令でも申し立てて、

強制執行の手続きを進めればいいではないか、

と思うかもしれないが、

実際のところ、それを簡単に実行に移すことが出来ない。

それには理由があって――。



……続く。


<おまけ日記>


説明の文ばっかりですね。

次回も少し説明文みたいな。

分かってる人は、引き続き読み飛ばしてください。


7/29 21時
>やすらぎ、函館に上陸!ぶっちぎりで落札してます。

>力あるわ。(ーー;)

融資受けるのにも、買い続けないといけないんでしょう。

大変ですよね。

7/30 2時
>うんうん勉強になる。


勉強出来てよかったですね。

7/30 2時
>渋る理由は相手が有名人だったら

>マイナスイメージが付くから?


違います。

7/30 8時
>昨日、大雨降りました。


雨も気をつけないとですね。

特に川沿いとか崖の近くだとかの場合は。

7/30 8時
>こうゆう説明っぽい話、好きですよ。

それはよかったですね。

7/30 10時
>風船男の口からA子から

>敷金を受け取ったのかどうか聞きたかった。


これはあとで分かりますよ。


それではこれからも宜しくお願いします。

 

2004.08.02 月曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百三十八話−

 代金納付と所有権移転はいつ?…の巻。




強制執行手続きがなかなか簡単には出来ない、

そんな理由があって――。



その最たるものが、強制執行を行うには、

かなりの費用と時間が掛かる、という点であろう。

申し立てて、執行官を現地に向かわせる程度だったら、

手数料と実費くらいだ。

それ程、さほどのものではないと言える。

ただ、実際に強制執行を断行するとなると、

状況が変わり、さほどとは言えない金額となる。

断行に至った途端、それに必要な費用は、

跳び箱の踏み台を踏み込み飛ぶが如く、

跳ね上がるのだ。

また金額もさるものだが、時間もそれ相当に掛かる。

金も掛かるし、時間も掛かる――。

それが強制執行を行うのを嫌う、大きな理由である。

ちなみに強制執行の費用に関していえば、

民事執行法上では、申立を行う債権者(買受人)ではなく、

債務者(占有者)が支払わなければならない。

しかし実務において、債務者から金を回収するのは、

非常に難しいのも事実だ。

もっとも難しいとは言え、

債権回収の方法がない訳ではない。

回収方法については、別の機会にでも。



だが、今回の件において、

強制執行に掛かる金と時間以上に大きな理由がある。

別に考え込まなければ分からないような、

難しい理由ではない。

それは何か――。



引渡命令申立を行うには、

大前提として、買受人に所有権が移転していないといけない。

要は、その物件の代金納付をした後にしか、

申立を受け付けてもらえないのだ。



――代金すべてを支払わなければ、

権利を享受出来ない。

よって所有権移転後でなければ、

引渡命令申立を行う権利も生じないという訳だ。

当たり前過ぎる程、当たり前である。

もしかしたら、この理由が理由であると、

理解出来ない人もいるかもしれない。

それでは、この理由が何を意味するのか。



――実は、ウチの会社は、

マンションの代金納付をまだ行っていない。

所有権を移転していないのだ。



代金を納付する期限についてであるが、

売却許可決定がおり、その確定が成された後、

「代金納付期限通知書」という通知が裁判所より送達される。

この書面には、代金を納付するべく、

裁判所へ出頭する日が記載されているのだ。

なお、この時点で、

代金納付通知書はすでに会社に送達されている。

最終期限日まで、あと三週間程度は残っていた。

期限日は通知書さえ届けば、

前倒しして納付することは可能であるが、

前もって代金を納めることはしなかった。



むろん、いつかは所有権を移転しなければならない。

その時期が早いか遅いか、ただそれだけの話だ。

だけれども、「時は金なり」という言葉もある通り、

時間は金でもあるのだ。

所有権が移転する時期が遅くなればなる程、

そして、代金納付期限日以前に、

占有者を退去させ、

買受人自身で占有を行う開始時期が早ければ早い程、

時間的アドバンテージが生まれる。

特に、この時間的アドバンテージのメリットであるが、

ウチの会社のような転売業者にとっては尚更だ。

早く退去させば、リフォームに着手する時間が早くなり、

販売活動が可能な時期も早くなる。

販売活動が早まれば、実際に売れる時期も早くなるし、

代金納付したことにより、

会社の金が寝る時間が、それだけ減るということだ。

まさに「時は金なり」だろう。



だからこそ、ウチの会社は、

代金納付前のこの時期の交渉に血道を上げているのだ。

出来る限り早く、占有者を退去させ、

時間を有効に使うために――。



しかし、社長は電話口で繰り返している。



社長
「……そうだな、強制執行するしかないよな?」



会社としてはもう、時間的メリットを捨ててまで、

強制執行の手続きを踏もうとしているのだ――。



……続く。


<おまけ日記>


あー、引渡命令と強制執行の手続きについて、

割と分かりやすく書いていると思います。

なお更新時期は微妙に不定期になるかもしれないけど、

更新頻度について、文句や注文は受け付けません。

読みたい人だけが読めばいいんじゃないですかね?

 

2004.08.04 水曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百三十九話−

 この程度がお前の実力ってヤツだ!…の巻。




だけれども――。

その時のワタシには、強制執行を行う、

という意味は、現実味を帯びたものではなく、

単に付け焼刃の知識として知っている程度のものである。

社長の言葉にワタシは、

ただただ生返事を繰り返すばかりであった。

電話口の先で、社長は言う。



社長
「時間はもったいないが、仕方ない。

代金納付にはまだ時間があるが、もうここまでだ。

強制執行を掛けるぞ。

そうだ――」



――強制執行だ!



ワタシの頭の中で、社長の声がリフレインする。

強制執行、強制執行、強制執行……。

まだ見ぬ強制執行。

知らぬもの、漠然としたものであるが、

その言葉の響きに寒々しさを感じた。

ワタシは思わず、声に出した。

小さな、溜め息のような声である。



ワタシ
「強制執行、ですか」



未知のものと遭遇した時のように、弱々しかった。

心の動揺が思わず音に漏れたという感じだ。

その弱さを社長は敏感に嗅ぎ取ったのだろう。

社長は気の抜けた言葉を上げたワタシに対し、

怒ったように答えた。



社長
「それしかないだろう?

だったら、他になにか、いい方法はあるか?」



激怒とまではいかないが、

やはりというか何と言うか、最後には怒られるワタシ。

社長は吐き捨てるように言った。



社長
「第一、お前が占有者達と話して、そうなったんだろう?

違うか? 違うと言えるか?

結局――。

この程度がお前の実力ってヤツだ!」



……何だか、ワタシのせいになっている。

確かに、今までワタシの行った交渉は、

成果となって実り花咲くこと無く――。

占有者A子やマスウラ、ルリカワ、そして所有者Y……。

彼ら彼女たちに会って、ワタシは話したが、

それでどうだったのだ。

結果としてどうだったのだ。

果たして交渉として、形になったものだったろうか。

誰一人、物件から退去するという言葉は出なかった。

例えそんな言葉が出たとしても、条件がついていた。

アホみたいな敷金返還や立ち退き料といった、

途方もない条件だ。

最後の最後、意気込み勇んで行った所有者Yのところでも、

この体たらくである。

そして、こんな幕引きで終わってしまい……。



ここで、ふと、思った。

怒られながらも、思った。



……終わった?

これで終わったのか?

終わってしまったのか?



……続く。


<おまけ日記>


今日のひとこと。

ドリンクバーがないファミレスは、

ファミレスじゃないですね。


8/2 10時
>へーへーなるほど!勉強になりました。


勉強は勉強になるような本を買って、

それを読み込むことをオススメします。

この連載はあくまでも初歩的なところしか、

書いていないので。

8/2 18時
>ふぅ、2日間かけてようやく最初からここまでたどり着けた。

>毎日チェックしますんで、これからもよろしく。へ


よく読みましたね。

ワタシだったら、こんな長い連載、

最初から読めないかもしれません。

8/2 22時
>う〜ん、奥が深い、というよりやっかいな人もいるものですねぇ


本当に厄介な人っていうのは、

まだこの連載に出ている人じゃないんですよ。

まあ、そういった話は追々やるかもしれません。

8/2 23時
>めちゃめちゃリアルタイムで参考にしてます(も)


割と参考に出来るところはあるのではないかと思いますが、

だからといって、キャラ的な問題もありますので、

あくまでも参考程度に留めていた方がいいかもしれません。

8/2 23時
>読みたい人が読めば…といいつつ

>どんどん宣伝して下さいってのも変ですね。


どこがどう変なのか、よう分からんのですが、

クローズの会員制にでもした方がいいという提案ですかね?

ワタシとしては趣味で書いているものの、

これを読むギャラリーが増えればいいと思っています。

でも、当たり前ですが読め読めと強制する気もないし、

そんなことも出来ないから、

読みたい人が読めばいいんじゃない?

と書いたまでです、はい。


それではこれからも宜しくお願いします。

 

2004.08.05 木曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百四十話−

 そして、ひとつの決断…の巻。




――このまま、終わってしまっていいのか?



社長もワタシの能力の無さについて、

吐き捨てたように言っていたが、

ワタシは自分の実力など、十二分に自覚している。

何らかの才能やスキルがあるだなんて、

これっぽっちも思っちゃいない。

確かに、この競売業界に入ったばかりだとか、

交渉経験がないに等しいということは現にある。

事実、ワタシは心の中で思うだけではなく、

幾度となく、叫びたかった。

自分は、まだ何ら知識のない素人だ。

素人にこのような大役を任せるから、

結果として上手いこと話がまとまらないのだ――と。



だが、経験や知識があろうがなかろうが、

業界に一歩足を踏み入れてしまったら、

一旦、会社に属してしまったら、

その道のプロに成りきらなければならない。

少なくとも給料を貰うということは、

自分が正真正銘のプロである証なのだ。

普段はちゃらんぽらんな人間なワタシであるが、

過去にあったら傷ともいえる過ちから、

それだけは自覚していた。

その過ちについては――。

今後語ることがあるかもしれない。



だからこそ、だ。

自分はただの仕事においてただの素人だ。

もしくは素人に毛の生えたようなものだ。

……なんてことを公言するのであったら、

単に仕事を教えて貰うという部分で、

金を貰うどころか、授業料でも支払わねばならぬだろう。



ワタシは心の中だけに叫びたい気持ちを思い留めた。

ぐっと堪えた。

もっとも、時にはそれでも堪えられないこともあるのだが、

この時のワタシは、受話器を握る手を堅くしただけに留め、

代わりに思考を巡らせていた。



――このまま、終わってしまっていいのか?



ワタシの頭の髄まで、疑問が浸透する。

終わってしまっていいのか――と。

そんな疑問が溢れかえるワタシになど知らず、

社長の説教は、佳境に入っていた。



社長
「……だから、もういいんだ。

この物件は仕方が無い。

代金納付をする。

今後はもっと精進して、交渉に当たれ!

それじゃあ、もう今日はそのまま帰っていい!!」



そう言うと社長は電話を一方的にガチャ切りした。

受話器を耳にしているワタシに残ったのは、

不通の音だけだった。

しばし受話器を当てたまま、

無慈悲なまでの音を聞いていた。



――このまま、終わってしまっていいのか?



そして、ワタシはひとつの決断をした。

その決断とは――。



……続く。


<おまけ日記>


今日のひとこと。

アメリカの偉大な発明は、

ディズニーランドとバーガーキングだけだ。


8/3 10時
>強制執行すれば債権回収の為、又?

>強制執行、迷路の入口の様な気がします。


仮に強制執行の手続きに着手したとしても、

そこからどうやって最低限の負担にて、

退去させるのかも、交渉人の腕の見せ所だったりします。


それではこれからも宜しくお願いします。

 

2004.08.06 金曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百四十一話−

 羽虫とワタシ―再び所有者Y宅へ…の巻。




ワタシは病院の前に立っていた。

あと五年もすれば立派な廃墟と化し、

地元のヤンキー達の溜まり場にでもなっていそうな、

小さな診療所――所有者Yの自宅だ。

古ぼけた二階建ての建物は、

恐らく、患者で賑わうことは、二度とあるまい。

老人達の憩いの場所になることも、ないだろう。



夜の帳(とばり)はすっかり降りていた。

敷地に立つ門扉を照らす裸電球の外灯は、

とても心もとない。

だが、闇の暗さの為、眼が慣れないためか、

それでも、不思議と眩しく感じた。

眼を細めながらも、ワタシは灯りを見つめる。

秋も深まっているというのに、その灯りには、

小さな羽虫が幾数も集(たか)り、飛んでいた。

羽虫は灯りの周りに集っているが、

彼らは直接、光に触ることは出来ない。

キャンプファイヤーでもしているかのように、

ただ周りを囲み、飛んでいた。



――羽虫は、飛んでいるだけだった。



彼らは灯りの周りを飛び、それで満足している。

裸電球の灯りとはいえ、

こんな小さな体躯で触れてしまったら最後、

その身が焼けただれてしまうからだろう。

だから、彼らは灯りを近くにし、

飛び回るだけで満足するのだ。

びゅんびゅんと、灯りを求め、飛ぶ。

灯りを見つけたものは、

それに飛び込む事無く、辺りを飛び回る。

ただ、それだけ。

後は何もない。

それで、終わりだ。



――終わりなんだ。



ワタシも羽虫と同じだ。

灯りを巡り、飛び回るだけで、満足すればいいんだ。



確かに、公園の公衆電話で、受話器を握り締め、

ワタシは決断した。

社長の言葉には反するが、もう一度、所有者Yと会う。

彼と会って、もう一度、話す。

彼に現実を突き付ける。

出来る限りのことはやろう。

そう思い至ったからこそ、ワタシは駅への道を背にし、

彼の自宅病院まで戻って来た。



しかし――。

所有者Yに会う前に、ワタシのその気力が失せていた。

所詮はワタシも羽虫と同じなのではないか。

灯りを求めて、飛んでいるだけで――。

それで終わりだ。

所有者Yと会ったところで、だから、何だというのだ。

ただ占有者退去という灯りの周りを、

羽音を立て、煩(うるさ)く飛んでいるだけで、

何が残るというのだ。

何の意味があるというのだ――。



脱力感と徒労感、それに空腹感も加わる。

やはり、帰ろう。

家に帰ろう。

社長の意見に反してまで、所有者Yのところに行こう、

と思ったこと自体が間違いだったのだ。

大体、所有者Yとまた会うといっても、

彼がまたワタシと話す確証など、どこにもない。

時間帯も時間帯であるし。

家に帰ろう――。



その時だった。

他よりも少し大きめの蛾が、

ふわふわと灯りの周囲を飛んでいたと思ったら、

いきなり全速力ともいえる速さで、

灯りの中に飛び込んで行ったのだ。

あっという間の出来事だった。

蛾は光に包まれたかと思ったら、

重力に逆らうことなく、そのまま、地上へと落ちていった。

その蛾は、光を求め、自分のものにしたかったのだろう。

でも、蛾は光をものにするどころか、命を落とした。



この光景を目にする誰もが、

蛾は馬鹿な行為をしたと思うだろう。

まるで、蝋の羽で太陽に向かって飛んだ、

イカロスであるようだ。

太陽の怒りを買い、羽を溶かされ、

結局は、深い海に沈んだ、

馬鹿で愚かなイカロスなのだ、と。

ワタシも馬鹿だと思う。

我慢が出来ない痴れ者だ。

光に触れるのは、命に関わることだなんて、

虫の埃みたいな頭でも分かりそうなものなのに。



だけれども、ワタシはどこかでこうも感じたのだ。

馬鹿は馬鹿だが――。

それでも、蛾は幸せだったのではないか。



何故ならば――。

彼は光に包まれたからだ。

誰もが欲して止まない、暖かな光を。

溢れんばかりの光を、その手の中に収めたのだ――。



蛾は下に落ちて、暗闇に消えた。

一旦は帰る方向で向けた踵を返す。

ワタシは目を瞑り、少し考えた後、

右足で、アスファルトを強く踏みつけた。

そうだ――。



俺は――。

これで終わりになんかしない。

俺も、灯りの中に飛び込むんだ――。



……続く。


<おまけ日記>


今日のひとこと。

土下座営業でも、売れれば官軍。

 

2004.08.07 土曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百四十二話−

 馬鹿で結構!…の巻。




再び所有者Y宅前に来たワタシは、扉を叩き、彼の名を呼んだ。

最初はやはりというか、音沙汰もなかったのであるが、

扉を叩き続ける音が、止まないことに根を上げたのであろう。

しばらくすると、玄関ドアが開き、ニセ仙人が現れたのである。



爺はふがふがと忙(せわ)しなく口元を動かし、

言葉にならない言葉を発している。

多分、爺は普通の人には見えないガムを噛んでいるのだろう。

あんまりにも噛み過ぎて、味はとうになくなっていそうだ。

それでも噛み続けるものだから、爺の唇は、

涎(よだれ)でてらてらと光っていた。

ワタシは爺に言う。



ワタシ
「あのね、おじいちゃん。

さっきね、所有者Yさんに言い忘れたことがあって、

こちらに戻ってきたんだけどね。

Yさんはいるよね?」



爺は、「はい」とも「いいえ」とも取れぬまま、

やはり、もごもごと口を動かし続けていた。

その表情からは、夜の再訪問に怒っているのか、

それとも嫌がっているのか―。

どのような感情を抱いているのか、分からなかった。

だが、幾ら間の抜けた顔をしているからといって、

表情と内心は違うはずだ。

単純に、見ず知らずの人間が、

それも夜間に二度も訪ねて来ることは、嫌なことだろう。

ワタシだったら、嫌だ。

嫌というよりも、そんな人間が訪問してきたら、

それこそ「フザケルな!」と声を荒げて追い返すだろう。

ついでに昔かたぎのオヤジよろしく「カアちゃん、塩持ってこい!」

とばかりに、塩でも撒いてやるかもしれない。

ワタシと彼らのように、どちらかと言えば、

敵対している関係であれば尚更である。

しかし、今のワタシは訪問される側ではなく、

訪問する方だ――。



――こんなところで、追い返されてたまるか。



電話報告の最後、社長は今日はもう家に帰れと言った。

帰れと言われたからには、今はもう就業時間ではない。

仕事の時間ではない、ワタシのプライベートな時間なのである。

その時間を費やしてまで、ワタシはここにいるのだ。

所有者Yに再び、会いに来たのだ。

これはもう、ワタシのプライドの問題である。

馬鹿な蛾にも意地はある、ということだ。

今の季節、夏ではないが、

「飛んで火にいる夏の虫」で何が悪い?

火にいる虫は、危険があろうがなかろうが、

指を銜(くわ)えて、周りをうろうろする虫よりも、

断然意地を持っている。

馬鹿で結構!



幸いにして、玄関前に陣取っているのは、

見えないガムだけを主食にしているニセ仙人ただ一人だ。

恐らく、ニセ仙人がふがふがしているのは、

上手い事言葉にならないが、

ワタシに早く帰るよう促す言葉を発しているつもりなのだろう。

ただ残念ながら、何を言っているのか、分からない。

事実、誰が聞いてもその内容を理解するのは、

出来ない、もしくは暗号解読作業の如き、

非常に難儀な作業になるだろう。

人間は主に言葉でコミュニケーションをする動物だ。

よって、ワタシとニセ仙人とのコンタクトは、

お互い相成らず、ということを結論付けた。

その結果を踏まえた上で、

この後、ワタシの取るべき方針は二つ。

尻尾を巻いて退くか、それとも突入するか、だ。



ワタシはもちろん――。



……続く。


<おまけ日記>


今、ふと、新しい競売基本書のネタを思いつきました。

別に、手法的として新しく画期的なものではないのですが、

とはいえ、競売にこの手法を取り入れたものはないはず。

応用を利かせれば、非常に面白いものになり、

勉強になるものを作ることが出来るのではないかな、と。

ただこれを作る時間がない……。

小説書きも、止まっちゃってるしなあ。

ううむ、今現在の連載が終わったら、そちらに力を入れよう。

そのためには、まず、これを連載終わらせないとね。

予定よりも、大幅にオーバーし過ぎちゃってるし。

8/7 12時
>今日のひとこと。

>土下座・・ 日本政府対北朝鮮関連は官軍ですか?


土下座しても、商品を買ってもらえれば、その響きと同様、

勝つに繋がり、「勝てば官軍」といえるのですが、

日本と北朝鮮との一連の流れは、

土下座の上、モノやカネまで渡しているので、

官軍ではなく、明らかに賊軍ですね。


それではこれからも宜しくお願いします。

 

2004.08.08 日曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百四十三話−

 強行突破!…の巻。




ワタシはもちろん――。



答えは決まっている。

引き退くなんてことはありえない。

ここでの結論はひとつ、強行突破あるのみ、だ。

なあに、相手はニセ仙人ただひとり。

爺を押し退け、中に入る!

兎にも角にも、所有者Yとまた会わなければ、

話が少しも前に進みやしない。

彼に会えなかったら、

それこそ、引渡命令は確実だ――。

ここまでやって来て、それでいいのか?

――いい訳がない。

いい訳があるはずがない。

ワタシは、早口でニセ仙人に訊いた。



ワタシ
「所有者Yさんは中にいるよね?」



爺は何も答えない。

分かった。

何も答えない、ということが答えだ。

――所有者Yは中にいる。

多分、二階のゴミ置き場と化した、

リビングらしきところにいるんだ。

大体、夜遊びに行くというタイプでもなかろう。



ワタシ
「――所有者Yさんは中にいるんだね?

とそれじゃあ、玄関先に呼んでも貰うのも、

あの巨体じゃ大変そうだから、

じゃあ、ワタシから出向きますよ。

いいですよね、それがいいですよね」



ワタシはそう言いながら、玄関先に立ち塞がり、

依然として口をふがふが動かしている、

ニセ仙人を両手で払い除け、家の中に入り込んだ。

爺は一度だけ、「マズイ」と言ったような気がしたが、

相手の答えなど、最早どうでもいい。



ワタシ
「所有者Yさん、お邪魔しますよー!」



二階へと続く階段へ向かって、

ワタシは一際大きな声を掛けた。

ゴミ溜めの家に、靴を脱いで上がるのは嫌だったが、

仕方がない。

靴を脱ぎ、そのままドタドタと階段を上る。

一度だけ、後を振り返ってみたのだが、

玄関の土間に裸足で立っているニセ仙人は、

やはりというか何というか、

見えないガムを噛み続けていた。

より一層動作が激しくなったように見えた。



そして、二階に上がり切るとそこには――。



……続く。


<おまけ日記>


今日のひとこと。

ラーメンにマヨネーズ入れても、

上手い事、混ぜ合わらない。

 

2004.08.09 月曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百四十四話−

 ゴミ溜めとなる原因…の巻。




二階への階段を上り切り、内ドアを開くと、

そこにはゴミ溜めの中、カップラーメンに貪り付いている、

ひとつの塊があった。



――所有者Yである。



巨体が床に座り、背を丸くしているものだから、

ますます岩の塊のようにしか思えない。

その塊が、一心不乱にカップラーメンをすすっているのだ。

滝の流れを逆回転させているかのように、

彼はラーメンをかなりの速度で吸い上げていた。

麺を吸い上げ、汁を残らず飲み込むと、

空となった発泡スチロールの器を、

彼は造作もなく、投げ捨てた。

食べたもの、飲んだもの、読んだもの――。

それらが無造作に放っぽり出す。

この積み重ねによって、部屋はゴミ溜めと化したのだろう。

ゴミ溜めとなる原因である。

彼がそれを投げ捨てた辺りには、まだ少し汁が残っている、

ラーメンカップが三つ程、打ち捨てられている。

彼は幾つものカップラーメンを食べ、

やっと一息ついたのだろう。

うーんとひとつ背伸びをして――。

ワタシが傍にいることに気が付いたのであった。



所有者Y

「……。

一体……、全体、何なんだ?」



とても驚いたように、目をぱちくりさせていた。

彼としてみたら、一時間前に帰った人間が、

再び、扉を叩いたというところまでは分かっていたのだろう。

だが、ニセ仙人が玄関先まで降りていき、

その人間を体よく追い返した、と思っていた矢先――。



所有者Y
「……何で、アンタがここにいるんだ?」



彼は素で驚いており、それを隠せなかった。

その時、ドアがパタンと開き、ニセ仙人が部屋に入って来た。

申し訳無さそうにパクパクと口を開く爺の方をチラリと向き、

彼はようやくのことで、事態を飲み込んだようである。

ワタシは答える。



ワタシ
「ひとつ、言い忘れたことがあって――。

それで戻って来たんですよ」


所有者Y
「……こ、こっちにはもう何も話すことはない。

大体、アンタを家に入れるなんてことはしない。

だから、何で、家に入っているんだ?」


ワタシ
「何でもかんでも、ここにワタシがいるということは、

家に招き入れられたからじゃないですか。

――そこにいる、アナタのお父さんに、ね」



ワタシは部屋の隅にいるニセ仙人を掌で示した。

別に快く招き入れられたワケでもなく、

爺を押し退け、家に入り込んだというのが

正解なのかもしれないが……。

ワタシに指し示されたニセ仙人は、

その言葉を否定するかのように、首を少し横に振った。



所有者Y
「……ち、違うって言ってるじゃないか。

大体にして、無理矢理、ここに入ったんだろ?

そんなことしていいのか?

そんな権利、アンタにあるのか?」


ワタシ
「権利とかそういうことはどうでもよくて。

アナタに話に言い忘れたことを伝えに来ただけですよ」



それとこれとは話が別だ、ということは自覚していたが、

自分でそんなことを言ってしまったら身も蓋も無いので、

強引に持論を押し通しておくことにする。

所有者Yは声を荒立てる。



所有者Y
「だから、こっちには話すことはないんだから――。

もう帰ってくれ!」



所有者Yは立ち上がった――。



……続く。


<おまけ日記>


今日のひとこと。

年を取れば取る程、一年が経つのを早く感じる。

 

2004.08.10 火曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百四十五話−

 男と男の真剣勝負、はじまる!…の巻。




立ち上がった所有者Yは、つかつかと、

内ドアの前で佇んでいるワタシの方へと向かってきた。

イースト菌が膨らんだかのような彼の風船顔は、

赤く染まっている。

それこそ、赤風船といわずして、何と言おう。

彼はワタシにずいと顔を近づける。

「はあはあ」という荒い息と共に、荒い声を上げた。



所有者Y
「こ、こっちには話すことなんて、これっぽちもない!

そんなもん、ないんだ!

そ、それに、勝手に家の中に入って来て、

ど、ど、ど、どういうつもりだ!?」



声はどもり、唾が四方に飛んでいた。

彼は身の丈こそ、小柄に属するのだろうが、

だが、幅は丸く、巨体というべき人間だ。

そんな彼が怒るように喋りたてると、

そこそこの威圧感を感じずにはいられなかった。

しかし、ワタシもここまで来た身。

ここで退いたら、強行突破した甲斐がないというものだ。

素より、退く気もない。

ワタシは「まあまあ」と迫り来る彼の肩を両の手で押し戻した。

押し戻した際、もう秋も深いところにあるというのに、

彼のTシャツに染み込んでいる汗を両手で感じ、

ますます嫌な気分が天井知らずに上がっていく。



所有者Yは興奮のまま、

両手で押さえ込まれた両肩をそのままにし、

ワタシに食って掛かるように、続けた。



所有者Y
「こ、これは不法侵入だ!

け、警察呼ぶぞ、ケーサツだ!!

おい、ケーサツ呼べ、ケーサツ!!」



彼は部屋の傍らで、

体育座りのような格好をしていたニセ仙人へと、

命令口調で怒鳴った。

彼に怒鳴られたニセ仙人は、いきなり命令を振られたので、

咄嗟の対応が出来ないようだ。

「あうあう」と声を上げ、立ち上がったものの、

長い髭を掻きむしるばかりであった。



こんな状況でワタシはどうすればいいのだ?

ワタシは、ワタシは…・・・。

所有者Yの汗ばみじっとりとした肩に手を当てていたワタシは、

更に掌に力を入れ、言った。



ワタシ
「警察呼ぶというのなら、呼びなさい!

だけれども、ワタシの話を聞いてからでも遅くはないでしょう?」



興奮した彼に煽られるようにして、

ワタシの声も裏返っていたように思える。

所有者Yが感情も高らかに言葉を浴びせてくるのなら、

こちらもこちらで同じように対処する。

でも、内容まで感情に流されたことを言っては駄目だ。



所有者Y
「だから、こっちは話し合うことなんて――」



ワタシは、彼の言葉を閉ざすように言い放った。



ワタシ
「話し合うじゃないんですよ!

ワタシはね、言い忘れたことを伝えに来た、

ただそれだけなんですよ!

それに、そのことは他でもない、

アナタの大切な人に関することだ!

だから――。

だから、ワタシの話を聞いてから、すべて判断しなさい!」



所有者Yは、「大切な人」という言葉に反応したようだ。

彼の両肩に置かれたワタシの手を、彼は払い除け、

またさっきまでラーメンをすすっていた場所へと戻った。

どかっとその巨体の腰を下ろすと、彼は言う。



所有者Y
「……とりあえず、話だけは聞く。

でも、ボクが納得出来ないような、どうでもいい話だったら、

その時は警察呼ぶぞ!!」


ワタシ
「その時は、どうぞ、ご自由に」



ワタシも腹を決めている。

そうでなかったら、こんなゴミ溜めになんか来ない。

こちらも意地だということだ。

その勝負受けてやろうじゃないか――。



ワタシと所有者Y――。

男と男の真剣勝負がここに、始まろうとしている。



と――。

所有者Yから、警察を呼べと命令されたニセ仙人であるが、

この時になってようやく、彼なりにまともな言葉を発した。


……で、警察は?



爺の言葉に、ワタシと所有者Yは一時顔を見合わせ、

――うるさい!

と同時に答えた。



……続く。


<おまけ日記>


今日のひとこと。

夜寝る前に食べるから太るんじゃない。

人より食う量が多いから、太るんだ。

 

2004.08.12 木曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百四十六話−

 アナタの大切な人が不幸になる…の巻。




ワタシと所有者Yは――。

お互い胡坐(あぐら)をかき、対峙している。

ゴミばかりの部屋ではあるが、

それらを掻き分けスペースを作り、ワタシは座っていた。

即席で掘ったゴミ中の陣地だけに、

スーツがゴミやら埃やらに塗(まみ)れるのは、

否応ないことである。

仕方がない。

この部屋汚いので、座るのは結構です――。

これから始まる真剣勝負の前に、

そのような言葉を吐くことは出来ない。



所有者Y
「……あのさ、あの、お茶貰える?」



所有者Yはワタシが名付けた「風船男」というあだ名を恥じず、

風船のような腹を揺らし、

これまた風船のように膨らんだ指をニセ仙人に振り、言った。

言葉を掛けるというより、命令をしたという方が正しい。

自分の親だというのに……。

風船のような所有者Yとニセ仙人のような髭面の親父。

彼らの織り成す、ゴミ箱の中での、

屈折した親子関係といったところか――。

親に命令した後、所有者Yはワタシをじっと見据え、

油でべたついた髪の毛を掻きあげた。



所有者Y
「それで――。

ボクに言い忘れたこと、って何?」



立ち上がっていた時と比べたら、

言葉の口調こそ穏やかであったが、

言い方には棘(とげ)があった。

非常に挑戦的でもある。

ワタシは負けじと彼に言った。



ワタシ
「……簡単な話ですよ。

アナタの大切な人が――人だけじゃないか、

人達が不幸になるということです」


所有者Y
「……不幸になる?」



彼は不満気な顔で、繰り返した。

はあはあ、と息を荒立たせる。



ワタシ
「そう――このまま行ったら、本当に不幸になりますよ。

アナタの大切な人達――。

占有者A子さんとその子供が、です」


所有者Y
「……」


ワタシ
「いいですか、先程も言いましたけど、

占有者A子さんが占有している――今のところ、

アナタのマンションですが――いずれにせよ、

そのマンションを退去しないといけないことは、

当然の話です。

当たり前のことです。

それについては、所有者Yさん――アナタも、

納得し、分かっている点ですよね」



ワタシは言葉を振ったが、風船男は答えない。

ただ髪の毛を幾度も掻きあげていた。



ワタシ
「まあ、いいです。

アナタは確かに、その点は理解できる、と言った――」



――アナタはそう言いましたよ、ね?



そう問うと、風船男はより一層、髪の毛を掻き毟り、

フケを飛ばした。

ニセ仙人は髭だったが、風船男はといえば、

髪の毛を掻き毟るのが癖のようだ。

なんだか、金田一耕介みたいである。

もっとも古き良き時代の探偵小説の主人公は、

こんなにも巨大化している男ではなかろうが――。



所有者Y
「……まあ、それは言ったかもしれないけど。

でも、だからといって、それこそ、

そちらの言っていることに従うとか、

そういうことは言ってないよ」


ワタシ
「まあ、確かにその通りですね。

所有者Yさん、アナタはそれについては分かっている、

とは言ったものの、確かにそれ以上のことは、

知らぬ存ぜぬ分からぬやらぬ、とそう言っていましたね」



ワタシはしばし置き、言葉を繋げた。



ワタシ
「結論から言えば、自分は占有者A子に物件を貸している、と。

でも、彼女達を退去させることは出来ない、と。

そういうことですよね?」



所有者Yはすぐさま答えた。

あたかもワタシに罵声を浴びせかける如く、だ。




所有者Y

「……だーかーらー!

そんなことはさっきアンタと初めて会った時から、

何度も言ってる!

答えている!

そうだって!

何度言われても、そうだとしか言えないって!

そんなことを言いに来たのか?

大層なこと言っておきながら、結局はそんなことか?」



所有者Yは自分の言葉に輪を掛ける様に付け加える。

最早、あからさまな悪意に満ち満ちているとしか言えなかった。



所有者Y
「――もういい!

そんなに下らないことを言いに来たのなら、

すぐさま帰れ!

そうでなければ警察を呼ぶ!」


ワタシ
「まあまあ、落ち着いて」


所有者Y
「これが、落ち着いていられるか?

勝手に上がりこんでこられて、

それがすごい重要なことだといわんばかりで、

でも、とどのつまりは先程の繰り返しで、

何の進展も減った暮れもない!

これが落ち着いていられるかってんだ!」



彼の怒りの言葉は止まるところを知らない。

しばしの間、ワタシは聞き手に回らざるを得なかった。

だが、人間どんなことをやっていても、

それを持続させていれば、やがて疲れがやってくる。

彼の言葉は次第に少なくなり、

はあはあと荒げる声だけが大きくなった。

彼から言葉を吐き出させるほどに、吐き出させて――。

その後、ワタシは静かにこう言ったのだ。



ワタシ
「それだったら、好きなだけいさせればいいじゃないですか。

あのマンションにそれこそ、好きなだけ――」



……続く。


<おまけ日記>


今日のひとこと。

最近、ジャズが好きだということが分かった。

 

2004.08.13 金曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百四十七話−

 好きなだけいさせればいいじゃないか…の巻。




ワタシ
「それだったら、好きなだけいさせればいいじゃないですか。

あのマンションにそれこそ、好きなだけ――」



――好きなだけ、いればいいじゃないか。



ワタシの発言に、所有者Yは驚いていた。

自分がワタシにキツイ言葉を投げ付けたことから、

当然、相手からも反撃よろしく、

厳しい言葉を掛けられると思ったのだろう。

故に、すぐさま反論出来るよう身を堅くし、

風船男は一際険しい顔付きでワタシを睨むようにして、

細い目をしていたのだが――。

ワタシからの思いも寄らぬ、静かな言葉に、

彼は目を見開き、口をあんぐりと開けた。

応戦しようとした矢先に、腰を折られたかのように――。



所有者Y
「……」


ワタシ
「いいですよ、もう。

いればいいじゃないですか、彼女も彼女の子供も。

アナタが望むように、いればいい。

好きなように、すればいい」


所有者Y
「……」



彼はといえば予想外の展開に一時、たじろいだようだった。

それもそうだろう。

自分は相手に矛先を向け、いざ行かんとしているのに、

対する相手側はどうぞ刺して下さいと、

白旗を揚げ、鎧を脱いでいるようなものだから。

しばし彼は無言であったが、

彼はようやく相手を完膚なきままに叩きのめした

とでも思ったのだろう。

胡坐を掻き直し、体勢を立て直すが如く、彼は言った。



所有者Y
「……それじゃあ、それでいいんじゃないの?

そんなことだったら、尚更、そんな話しなくても……。

最初からこちらとしては、A子に貸しているんだから。

出て行かせるワケにはいかないんだから」



自分が勝利したという実感と同時に、

それでは何を話に来たのだ、と言わんばかりの話ぶりである。

確かに、字面通り受け取れば、彼の反応というのは、

あながち間違ったものではないだろう。

彼はワタシが占有者A子を出すことを諦めたのか、

それとも自暴自棄になっているのか、

とでも思っているのだろう。

無論、あくまでもワタシの言葉を

字面通り受け取ればの話であるが……。



所有者Y
「……今まで通り、A子はあのマンションに住める。

それでいい。

話すまでもなく、それでいい。

なんだ、そうなんだ。

そんな単純な話なんだよな。

それでいいんだよな」



そう言うと彼は、笑い出した。

さも面白そうに、声を上げて笑っていた。

だが、笑っていられるのもこの時が最後だということに、

彼自身知る由もなく――。



……続く。


<おまけ日記>


今日のひとこと。

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ってこれじゃあ、ひとことじゃないな。


8/12 21時
>Gさん夏季休暇は?帰省しないの〜?


夏休みはあってないようなものです。

最早、サイトの更新も仕事の一環のようになってきました。

まあ、趣味と実益を兼ねて、ってな感じですかね。

いい意味で言うと。


それではこれからも宜しくお願いします。

 

2004.08.15 日曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百四十八話−

 嵐の前の静けさ―嵐はやってくる!…の巻。




ニセ仙人の爺は、無言でお茶を差し出した。

お茶を出すといっても、あたり一面ゴミばかり。

大体にして、それを掻き分け座っているものだから、

テーブルなんて大層なものはなく――。

まずは佐賀みかんの段ボール箱をどこからか引っ張り出し、

そのボロボロの箱をワタシと所有者Yの横端に添えた。

即席のちゃぶ台代わりだ。

ダンボールのちゃぶ台の上に淹れたばかりだろう、

もうもうと湯気の立つ茶碗を無言のまま、置いた。

茶碗の熱い液体は、茶の色なのか、

それとも茶碗にこびりついた茶渋なのか、

出がらしのくせに、妙に色が濃く見える。

爺は茶を置き終わると、また自分の定位置であろう、

部屋の片隅に戻り、また体育座りのような姿勢で、

ゴミに埋もれるようにうずくまった。

ニセ仙人の茶を出す、その一連の姿は、

ある意味、ロボットのようでもある。

壊れかけのお茶汲みのからくり仕掛けだ。

そりゃあもう、平賀源内もびっくり。

発明王エジソンもびっくり、だ。



――所有者Yは、ひとしきり笑いに笑い、

声が出なくなるまで笑った。

勝利の高笑いである、

あまりにも笑ったので、喉が渇いた男は、

まだ湯気が立つ茶碗をむんずと掴み、

平気な顔で、一口で半分くらい飲み込んだ。

ふうと一息つくと、心なしか彼の顔はすっきりしたように見えた。

見た目からして、一年中、汗をダラダラ垂れ流すであろう、

風船男が爽やかに思えた一瞬である。

いずれにせよ、猫舌のワタシには信じられない光景だった。



所有者Y
「とりあえず、さ。

お互いのこれからの方針というか、

考え方がようやく一致したということで。

……まあ、粗茶だけど飲んでってよ」



風船男は、ダンボール箱のちゃぶ台に置かれた、

お茶を勧めた。

だけれども……。

見れば見るほど、緑の絵の具を溶かしたような色である。

しかも、お茶が湛えられた茶碗自体、

いつ洗ったのか、汚い代物であったし、

当たり前のように、縁が欠けている。

よくよく見ると、茶の表面には、

細かく白いものが浮かんでいて……。

これ以上、粗茶という言葉が似合う粗茶は

ないのではなかろうか。

そう思わざるを得ないくらい、

粗茶っぷりを如何なく発揮していた。

要するに、ひとことで言ってしまえば、

……こんなもの飲めるか、ボケっ!!

である。

ワタシは茶の誘いを断るかのように話を続けた。

静かに――相手に斬り込むが如く。

嵐の前の静けさ、といったところか。



ワタシ
「……所有者Yさん。

仮にワタシと話が合ったとしても、

ウチの会社とは依然として話が違うところにある。

そういうことです……」


所有者Y
「……は? はい?」



風船男の顔色が変わった。

怪訝な顔である。

いきなり何をとち狂ったことを言っているのだ。

彼の表情はそう物語っていた。



そして、彼は顔だけで物語るだけではなく――。



……続く。


<おまけ日記>


今日のひとこと。

またもや宣伝。

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も忘れてはいません。

予定よりかは遅れましたが、今日発行します。

ってこれじゃあ、またまたひとことじゃないな。

 

2004.08.16 月曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百四十九話−

 警察呼ぶぞ!…の巻。




赤い風船の如き顔を、歪めたかと思うと、

唾でも吐き出さん勢いで喋り始めた。

実際、彼が喋っている時、

かなりの量の唾が彼の口から飛び立っていた。

唾が飛び出る度に、トムキャット、レディ・ゴー! 

とでも言いたいくらいに。

フライ・アウェー!



所有者Y
「……さっきから、何ころころ話変えてるの?

ころころころころ転がして、

それで話題をどっかに持っていこうとしている?

論点ずらして、どうするの?

……それとも、何か。

ボクを戸惑わせようとしているの?」



???ばかりだ。

疑問符だらけであるが、

だけれども、彼はワタシに質問をしている訳ではない。

彼はワタシの言葉に抗議をしているのだ。

言っている意味が分からない上に、

話が変わっている、と。

とどのつまり、彼にはまだ、

ワタシの言いたい伝わっていないということだ



所有者Y
「……ボクはね、戸惑わないし。

そっちが何言ったところで、もう動揺することもないよ。

もっとも、さっきから何を口走っているのか、

ボクは理解出来ないのだけれども……」



風船男はそこまでいうと、急に言葉が詰まり、

赤い顔をますます赤くさせ、息が荒くなった。

彼は、夏の日、庭に放し飼いにされている犬のように、

はあはあと、口を開けていた。

発作がまた始まったようだ。

動悸を抑えるかのように、彼は半分程度残っていた、

茶碗のお茶を一気に胃の中に流し込んだ――。



――と。

ここでワタシは、ハタと気が付いた。

気が付いてしまった。

彼は茶碗でお茶を飲んでいる。

それが湯飲み茶碗だったら、

特段、何の不思議さもおかしさもない。

何一つ、気が付く必要がないだろう。

だが、彼がお茶を飲んでいるのは、

湯飲みに使う本来的な茶碗ではなく、

その形その大きさからして、

明らかにご飯を盛り付けましょう、というそれであった。

確かに当初、茶碗とはその名の通り、茶器として使われた。

それがご飯用の食器として使われだしたのは、

茶器として利用されるよりもずっと後世の話である。

したがって、用途としてはあながち間違っていないのかな、

とも思うのだが、しかし――。

ワタシは自分のために出された茶碗を見た。

やはり、茶が入っているよりかは、

ご飯が入っている方が普通にしっくりくる姿かたちである。

そこに、茶だけが無駄になみなみと注がれている。

しかも、ダンボール箱のちゃぶ台の上に、

無造作に置かれているものだから、

表面には何か白く細かいものが、ゆらゆらと揺れていた。

罰ゲームかよ、おいっ!!

……とこれを淹れて来たニセ仙人と、

少しの疑問を持つことなく、茶を飲んでいる風船男に、

ツッコミを入れたかった。



かくしてワタシが茶碗への想いを、

遠く宇宙の彼方に飛ばしている間に、

彼の息切れはどうにか収まったようだ。

彼は胸を押さえながら、続ける。



所有者Y
「そっちが言いたいことは、ボクは全部聞いた。

もういいだろう?

これで何も思い残すことはないだろう?

だから、これで帰ってくれ――」



彼は繰り返した。



所有者Y
「帰ってくれ。

そうじゃなきゃ――。

それこそ、警察を呼ぶぞ!」



頑と言い放つ所有者Yに対し、

ワタシはやはり、静かにこう返すのであった――。



……続く。


<おまけ日記>


今日のひとこと。

松岡修造は無駄に熱い。

2004.08.17 火曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第二百五十話−

 困るのはアナタとアナタの大切な人だ!…の巻。




ワタシ

「警察ですか。

別に呼んで貰ってもいいですよ。

110番でも119番でもお好きなように。

でもね、電話掛ける前に、人の話はちゃんと聞きなさい。

アナタも大人なんだから」



ワタシは静かにそう答えたものの――。

内心はかなりの程度、ビクビクしていた。

それはそうだろう。

風船男が呼ぼうとしているのは、警察である。

一応、この国の治安を守るための組織だ。

したがって、誰からであっても、

一旦、110番通報を受けたら、

余程のことがない限り、

ここに飛ぶようにしてやって来るだろう。

そして、駆けつけて来た警官を前にして、

この風船男がワタシを指差し、

やれ不法侵入だ、脅迫だ、なんぞと騒がれたら、

たまったものではない。

たまったものではない、とか困ったことだ、

とか思うくらいで済むのだったら、まだいいのであるが、

じゃあ、とりあえず、署まで同行してくれ、

なんてお約束の台詞を言われたりしたら、どうするんだ?

最終的に、捕まるかどうかなんてことまでは分からないが、

面倒臭い状況になることくらいは、容易に想像出来る。

第一、警察なんて代物には、

車で対物事故を起こした時に会って以来、

ロクな印象がない。

少し、ああ、今日はおとなしく帰った方が得策だったか、

とも心の片隅で思ったりもしたが、

まあ、そんなことを今更考えても、仕方がない。

死んだ子の年を数えても、どうしようもないのだ。



所有者Y
「な、な、な……何を偉そうに?」



所有者Yはわなわなと震える声で答えた。

こぶしを強く握っている。

ワタシは彼を見据え、言った。

頭で思った言葉が、

考えるスキームを与えられることなく、

そのまま口から飛ぶ出すように――。



ワタシ
「偉そうとかそういう問題じゃないですよ。

アナタ、ここでワタシの話を聞かなかったら、

一生後悔するって。

これは間違いない。

断定します。

後悔する、と――」


所有者Y
「……さ、さっきから、何を言ってるのか、

ちっとも分からん。

おうおうにして、後悔すると、何故断言出来るのか?

何を後悔するんだ?

訳が分からない」



ワタシの言葉を受けた所有者Yは、

もう、オマエは聞きたくないとばかりに、立ち上がった。



所有者Y
「……もう、いい!

おんなじことの繰り返しで、時間の無駄だ!

早く帰れ!

帰らないと――」



立ちはだかる彼の怒号に、

胸の動揺を抑えながらも……。

ここが勝負どころだ――。

そう自分を奮い立たせたワタシは、彼の言葉を遮り、

出来るだけ、上ずった声を出さないようにして言った。



ワタシ
「……警察を呼ぶぞ、ですか?

あのね、所有者Yさん。

最初からワタシは話しているでしょう。

この話は、アナタ自身の話をしに来た訳ではなく、

アナタの大切な人の話をしに来たんだって。

もう、忘れたのですか?」


所有者Y
「……そ、それは」



彼は握ったこぶしを震わしていた。

これは怒りのせいなのであろうか。

もう、どうでもいい。

今、ワタシがすべきことは、

自分の話を相手に伝えるだけだ。



ワタシ
「さっきから言っての通り、警察を呼んで、

どうこうしたいというのなら、それはそれで結構。

でもね、それでワタシも困ることになるかもしれないけれど、

一番困るのは――アナタと、

アナタの大切な人たちなんですよ!!」


所有者Y
「だから、何が困るってんだ?」


ワタシ
「だからっていうのはワタシの台詞ですよ。

それを説明しようって時に、さっきからアナタは、

繰り返しだなんだ、って話の腰を折ってるのですから」


所有者Y
「……」


ワタシ
「まあ、いいです。

……とりあえず、こちらが説明する前に。

そんなところに突っ立ってるんじゃなくて、

元の場所にちゃんと座りなさいよ。

あと――」



ワタシは部屋の隅で体育座りの格好をしている、

ニセ仙人を指名し、言った。



ワタシ
「悪いんですけど。

所有者Yさんに、お茶をもう一杯持って来て下さい」



……続く。


<おまけ日記>


今日のひとこと。

そこまでして、飲みたいか。

ドクタッペッパー・ライト。

……というか、二百五十話を迎えてしまいました。

一体、何話まで続くのでしょうかね?

8/17 0時
>やっぱり競売物件の所有者って部屋汚い方多いですよね〜。

>無気力になるのでしょうか?


それもあるでしょうし、元からズボラな人もいます。


それではこれからも宜しくお願いします。



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