2004.11.13 土曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第三百一話−
希望の火と野望の闇…の巻。
風船男は茶碗に僅かに残った出がらしをすべて飲み干す。
ふううううう、と大袈裟に息をつくと、
目を瞑り、そのままだんまりを決め込んだ。
今日何度目かの空白の時間。
ワタシはその間、ずっと目頭をこすっていた。
腹の減りはピークを大分過ぎ、
そんなには苦にならなかったが、今度は眠くなってきた。
一難去ってまた一難、だ。
急遽発生した、とてつもない睡魔がワタシを襲う。
……ヤバイ。
こんなゴミの中で寝てたまるか。
それよりもどんな形であれ、
交渉の最中に居眠りをするのは、対面上もマズイだろ。
というか、いろんな部分で普通にマズイだろ。
寝るな、寝たら死ぬぞ。
死なないけど、死ぬってことになるぞ。
ワタシはワタシの中で、自分自身と闘っていた。
そして、一二分の間だったろうが、
自分にとっては長い長い時間の闘いの末、
自分に負けそうになったその時――。
風船男は決断した。
所有者Y
「――ボクはやっぱり彼女には幸せになって貰いたい。
そのためには、これからの幸せを考えるには、
一からやり直すのもいいんじゃないかと思う。
このボロ病院もそのうち、
持って行かれてしまうかもしれないけど、
いつまでかは分からないけれども――。
でも、あともう少しくらいは住めると思う。
彼女と――何だったら彼女の家族も一緒に、
ここに住めばいい。
そしてその後のことはその時になって考えればいい。
ボクはそう思いました。
だから――」
――ボクは彼女をここに連れてきます。
彼はそう断言した。
ワタシの顔を真正面に捉えた彼は「ちょっと電話します」
と言うと、重石をつけたような体を無理矢理立たせた。
その際、足がゴキっという鈍い音を立てていたのを、
ワタシは耳にするのであった。
風船男は、当然のようにゴミだかモノだかに占領されている、
カウンターに重い足取りで向かうと、
ゴミを取り、埃を払い退け、電話の受話器を取った。
そして少し震える人差し指で、
それでも指先は番号を覚えているのだろう、
電話帳やメモの類を見る事無く、ボタンを押していった。
その相手は当然――。
数回のコールの後、留守番電話サービスに繋がったようだ。
風船男はチッっと細かく舌打ちをすると、
電話を切り、また再度掛け直す。
それでも、やはり相手は不在なのか、
相手は電話口に出る事無く――。
所有者Yは今度はまたもや舌打ちをし、受話器を叩き付けた。
小声でブツブツ文句を言いつつ、
また元の低位置に座り直す、彼は困った口ぶりで述べる。
所有者Y
「彼女とは電話が繋がらなかったけれども、
でもボクが責任をもって守ります。
彼女を守ります。
だから、もうあんなマンションにいるんじゃなく。
ボクとボクと一緒に住もうと、言います」
彼の目がギラギラと輝いていた。
それは希望の火なのか、野望の闇なのか、
それとも……。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
眠い。忙しい。歩く。眠い。忙しい。歩く。
ここのところ毎日、この繰り返しです。
11/12 23時
>200の予定が300回突破!このまま行くと・・。
最初の予定では、今回の元アイドル編は大長編だから、
100回くらいのストーリーにしておくか。
と思っていたのですが……。
ただあと20〜30話程度で終わるはずです。
2004.11.19 金曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第三百二話−
帰り道、追い出し屋を呼ぶ声…の巻。
ボクがあのマンションから――。
彼女を――A子を出します。
そして――。
点々とした灯りの下、向かい行く人の流れもなく。
暗い闇の中、ただひとり取り残された街――。
冷たい風がしきりにワタシの頬を鋭くなでつける。
顔中血だらけになるのではないか、と思うくらい痛かった。
しかも足取りは重い。
まるで鉛のようだった。
堅くなった足を引き摺りながら、
それでも駅に続く道をゆっくりではあるが歩き行く。
冷え切った頭でワタシはボンヤリ思い返していた。
ゴミ溜め屋敷の主人の言葉を……。
彼女の幸せのためには――。
ボクと暮らすことが一番であり――。
お母さんの反対なんて関係がない。
ボクが――ボクが彼女を守る。
ボクは彼女の周りに居て――。
いつまでも、いつまでも――。
そのために、ボクは彼女を連れ出すのです。
所有者Yはそう断言していた。
あたかも自らを納得させるように彼は言った。
これ以上、彼女をあそこにおいては居られない。
彼女を連れ出すのだ。
何だったら、彼女の母親だって誰だって、
ボクが責任を持って面倒をみる――。
彼は両の手で握りこぶしを作り、大袈裟に振り下ろした。
そうして、ボクの決意を――。
熱く固い決意をワタシの目前にまじまじと見せつけた。
これも彼女への愛ゆえに、といったところか……。
ワタシは思わず――。
……そうか、愛、か。
ありきたり過ぎて腐り切ったフレーズを口した。
誰かが誰かを愛する。
だがその逆である誰かは誰かを果たして愛しているのか。
彼らの場合は一体どうなんだろう。
それ以前に、愛ってなんだ?
愛について物思うワタシは、
ゴミに埋もれていた彼の決断にこう言った。
ワタシ
「所有者Yさん。
貴方の占有者A子さんを思う気持ちは、分かりました。
ワタシもあのあんなマンションにいるよりかは、
貴方と一緒に過ごせた方が、幸せだと思います」
……心にもないことを言ったもんだ。
でも、この人なんかいい人そうだなんて、
世間にアピールするため、
自分で自分をフォローするつもりはないが、
実際ホンの少しはそう思ったのも事実である。
それだけ彼は彼女のことを思っていた。
ワタシ
「じゃあ、退去の日取りは具体的にいつにしますか」
……それでもここがチャンスだとばかりに話を詰めた。
ワタシの問い掛けに対し、
彼は表情を曇らせることなく言う。
でもいきなり引越しというのは、
物理的に難しいかと思います。
それじゃあ、来週の日曜日の昼の一時にでも、
まずはボクが退去についての段取りを組みますから。
だから、Gさんも来て下さい。
……日曜日休みのワタシの方が表情を曇らせることとなった。
回想の間もワタシは、
依然として重い足を少しずつ前に出していた。
と、そのときだ。
おーい!
ワタシを呼ぶ声が聞こえて来た――ような気がした。
鈍った頭にこだましたその声にワタシは――。
ああ、あれか、あの男か。
久々に登場したか。
あの男――大阪弁を手繰るあの脳内住人かと、思った。
でも悪いが今は、相手をしている暇はない。
いや、正確に言えば暇はあるのだが、
相手をする余裕が無い。
へえへえ、あんさん、そりゃそんなことおまへん――。
例のインチキ臭さ確変中の声がどこかで聞こえた。
ワタシはそれを無視し、ひたすら歩くことに集中した。
おおーい!
先程よりももっと大きく、はっきりした声だった。
最早、幻聴ではない。
確かにワタシを呼ぶ声が後ろからしていた。
ワタシが半身に力を込め、振り向くとそこには――。
――彼が居た。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
目がかゆい。
でも指でこするのはよくないんだよな、と思いつつも、
こすってしまう今日この頃。
11/14 12時
>借金が人を変えるんでしょうか?
何らかの理由があったとしても借金をつくるのは、
人であったりします。
やはりその人その人の問題ではないんでしょうかね。
非常に突き放すような言い方かもしれませんが……。
11/15 18時
>終わっちゃうとそれはそれで寂しくもありますね。
元アイドル編が終わっても、ネタは日々たまっているので、
どこかで発表はしたいと思ってます。
でも書く時間がないんですよねえ。
多分ニーズとして強制執行の風景とか、
皆さん興味あると思うんですが……。
2004.11.20 土曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第三百三話−
追い掛けて来た男…の巻。
ワタシが振り向くと――彼が居た。
ワタシ
「あなたは……」
彼は急いでワタシを追い掛けて来たのだろう。
一時停止の確認用ミラーの柱に体を預けるよう、
もたれ掛かり、息を荒げていた。
暗闇のなか、顔だけボオっとした白さが目立つ。
病的な白色である。
そんなに早く歩いていた訳ではなかったが、
彼にとってはここまで来ることだけで、
かなりの苦行だったようだ。
ワタシ
「……一体」
彼と遭遇したワタシは、少し戸惑いを覚えた。
ワタシの疑問符を他所に、
依然としてミラーの助けを借りながらも、
彼は震える手で手招きする。
ワタシは何故、彼がここに来たのだ?
重い足を翻して、彼のそばに寄った。
間近で見れば見る程、
彼の白さは闇に溶け込むことを拒み、
その色は白痴的でさえあった。
男
「ああ、あのお……。
あのお……」
彼は言葉にならない声を上げ、
しかし懸命に言葉を見つけようとしている。
ワタシもかなり体力的精神的に消耗し切っていたが、
彼もまた同様に、いやワタシ以上に弱っている。
仕方が無い。
表面上の優しさかもしれないが、
ワタシから彼に言葉を掛けた。
ワタシ
「……一体、どうしたんですか、お父さん」
ワタシは彼――ニセ仙人こと所有者Yの父と対面していた。
ニセ仙人のブルブルと自動的にバイブする両手は、
ミラーの柱をかろうじて握っている。
自分ではしっかりと握っているつもりなのだろうが、
しかし手の握りが上に行ったり下に行ったり、
固定することなく、動いていた。
盛んに何か言いたそうなのだが、
やはり言葉に詰まっている。
ニセ仙人はワタシに何かを告げたいのだろう。
その何かは具体的には知る由もないが、
だけれども、何について伝えたいのか、
その程度であれば察しが付く。
当然、あのことについてだ。
しかるに――。
ワタシ
「息子さんについて――。
何かワタシに伝えたいことがあるのですか?」
ワタシが優し気に聞き返すと、
生まれたての子羊のように震える男は、
何度も何度も首を縦に振るのであった……。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
気をつけよう、暗い夜道と甘い言葉。
じゃあ、これからワタシが甘い言葉を出しますから、
騙される人を募集します。
2004.11.25 木曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第三百四話−
アイシの云うことは信じるな…の巻。
ワタシの問い掛けに壊れた操り人形のように、
カクカクしながら何度も頷く彼――所有者Yの父。
よく見ると、その震える手には、白い紙が握られている。
急いで追ってきたためか、強く握り締めていたためか、
紙はぐちゃぐちゃに丸められていた。
彼は何度も何度も首を縦に振りながら、
微動する腕を伸ばし、ワタシにその紙を突きつける。
どうやら、それを読めというらしい。
何かを告げたいのだったら、
自らの口で喋ればいいのに……。
そういや、彼が家から出てきたときも、
空気を吐くような音みたいな声しか出さず、
まともに話したところなんて見たことがなかったな。
もしかしたら、彼は肉体的に喋れない事情というものが、
あるのかもしれない……。
疑問と不審と同情を覚えながらも、
ワタシはニセ仙人からそれを受け取った。
受け取った紙片――大手不動産仲介業者の、
売物件募集のポスティングチラシの裏に、
マジックインクの太い筆の、
やはりミミズののた打ち回った文字で、
このように書かれていた。
――アイシの云うことは信じるな。
紙に落とした視線を上げ、ニセ仙人を見ると、
彼は未だに一生懸命首を上下させていた。
……。
というか、文章以前の問題で、アイシってなんだ?
ワタシは手に持つ紙と同じく、
ヨレヨレになったドドメ色の脳細胞をフル活用して、
その言葉の意を考えた――。
「愛し」?
……誰かを愛しているってことか?
占有者A子を愛する、とかな。
でもそれだと話が繋がらない。
大体、愛している主体は誰なのだ?
ニセ仙人か?
ニセ仙人と占有者A子では年齢差あり過ぎだろう。
それとも愛に年の差なんて関係ないってこと?
「逢いし」?
……誰かと逢いたいってことか?
例えば占有者A子とか。
そりゃあ、風船男は逢いたいだろうが、
その気持ちをニセ仙人がワタシに伝えてどうする。
これは依頼か?
お涙頂戴番組の捜索依頼か?
生き別れになった、お母さんを探してください。
涙を見せつつ、番組に登場する素人(実は仕込み)に――。
分かりました。
実は番組はお母さんを探し当てました。
さあ、お母さんどうぞ!
なんて、島田紳助が司会で出てくるのか、ここに?
「哀史」?
……女工哀史とかな。
まあ、悲しい物語やねん。
大阪の女やねんって感じだな。
やっぱ好っきゃねん、みたいな。
ああ、止めよう、止めよう。
大阪のこととか頭の片隅にでも入れていたら、
突如、関西弁のオッサンとかが出てきそうだ。
……うーむ、やっぱ分からん。
アイシって――。
そんな疑問を思わず口にしてしまったらしい。
ワタシの言葉を踏まえてニセ仙人は――。
ニセ仙人
「……いや、アイツですよ、アイツ」
……。
ってゆーか。
喋れるんだったら、最初から喋れ!!
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
今日みたいな下らない文章を書くのは楽しい。
11/20 19時
>私、ぜひGさんに甘い言葉かけてほしいです!
ワタシ、すげえ甘い人間ですよ。
普段はそれを隠していますけど。
いや、隠されてないかなー。
11/25 15時
>借金まみれでも、
>医師免許あるなら稼ぎようはあるような気がするけど。
>ナマケもの?
この辺りのことは、次辺りで分かりますよ。
もっとも怠け者は怠け者なんでしょうね。
でも、ひとつのことにだけはその熱情のすべてを掛ける。
彼の場合、その対象が占有者A子であった、
と云うことなのでしょうね。
2004.11.26 金曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第三百五話−
ニセ仙人と中華料理屋のジジイ…の巻。
……確かにさ、カタカナの”シ”と”ツ”を
混同している人間ってのはいるけどさ。
特に男女問わず年寄りなんかは、
”シ”を”ツ”と書く度数が異常に高いけどさ。
ふとワタシは自宅の近所にある、
廃屋同然で客の出入りもなさそうな、
ある意味ふたつの意味で今にも潰れる五秒前的な、
中華料理屋の割れた窓ガラスの張り紙を思い出した。
――ココにスクターを置くな! 置いたらモシテイク!
無駄に達筆な毛筆であり、怒りに燃えている。
しかし、ふんだんにカタカナが交じっている割には、
根本的な間違いを犯している文章だった。
ここにスクーターを置くんじゃねえ!
もしここに置いていたら燃すぞ! 燃して行くぞ!
燃やしちまうぞ、このヤロウっ!!
なんて最早、呪詛のレベルに到達していることを、
中華料理屋のジジイは言いたいのだろう。
今まではそう思っていた。
だが考えてみると、これは燃して行くという意ではなく、
モシテイク=モツテイク=持って行く、ではないのか。
大体、店の前でスクーターなんて燃やしてしまったら、
小火(ぼや)どころの騒ぎではない。
爆発したら、大騒動だ。
多分、そうだ。
この中華料理屋のジジイも、
”シ”を”ツ”の区別がつかないのだ。
そういや目の前にいるニセ仙人と同じくらいの年恰好だ。
思えば思う程、ますます似ているように思えてきた。
むしろ、同一人物じゃあなかろうか。
そんなわけはないか。
でも似ている。
それはそうとして――。
だとしたら、中華料理屋のジジイは、
スクーターをどこに持って行くのだろうか。
そして、持って行かれるべきスクーターは、
一体誰のものなのであろうか。
そんな二つの人生にとって意味のない疑問が、
湿った土から湧き上がるように出て来たが、
目の前にいる現実のジジイが、
ワタシに向かって「アイツ、アイツ」と連呼している。
彼に思考を戻した。
ニセ仙人
「……いや、アイツですよ、アイツ」
ワタシは彼の声を遮り、言った。
ワタシ
「あの、アイツっていうと、息子さんのことですよね?」
ワタシは様子見の意味を込めて、控えめに訊いてみた。
一応は、肉親関係にあるのだろうし。
ニセ仙人は頷く。
正解だったようだ。
もっとも選択肢がひとつしかないのだから、
この問題を外す方が難易度が高いだろう。
ニセ仙人
「そうだ、そう!
あの道楽者の馬鹿息子のことだ!!」
今までの無言の男が嘘のように、
大きな声を張り上げ、ワタシに主張する。
……。
ってゆーか。
めちゃめちゃ喋れるじゃんっ!!
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
ごめん、”シ”と”ツ”話を引っ張っちゃった。
次回からはちゃっちゃか、進みますよ。
……多分。
11/25 23時
>うちの上司の字もツとシの区別がつきません。
ついでにアとマの区別がつかない人もいますよね。
2004.11.30 火曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第三百六話−
ニセ仙人、大いに語る!…の巻。
オマエ、喋れるじゃんっ!
むしろ、喋り過ぎじゃんっ!!
ワタシの心の叫びなど、完全に蚊帳の外にしながら、
ニセ仙人はわあわあ喚き立てている。
仙人のような顔面をしているくせに、
自分の年のことなどすっかり忘れているようだ。
そこら辺にいる近所の馬鹿な餓鬼みたいに騒いでいた。
彼の状況を無理矢理良い言葉で表現するとしたら、
童心に返っているといったところか。
……あ、でもそれは違う。
訂正。
ちょっと他の表現に直しておく。
うーむ。
……。
………。
…………。
って、別に良い言葉に変換しなくてもいいし。
こんな下らないことを真剣になって考える暇があるのなら、
まだ偽善者ライクに人類平和について思いを馳せた方が、
ナンボかマシな時間の使い方といったところだろう。
ぐちゃぐちゃになった脳内では、
彼の喚き声をBGMにし、誰かがコサックダンスをしていた。
ニセ仙人
「アイツのせいで、アイツのせいで……」
人間、時としてダムが崩壊した後、
轟々とした濁流が河川沿いの村を襲い呑み込むが如き、
激しい熱を持った勢いを見せる。
流れの勢いたるや、
その場のノリといった軽い言葉では片付けられない。
破壊的であり、破滅的ですらある。
ここにいるニセ仙人は、
まさしくそのようなダム決壊の状況にあり、
退廃的な衝動に駆られているようであった。
その変わり様はある種、異様なまでであって、
例えるのなら、ブラウン管からいきなり、
田原俊彦や山田邦子が消えてしまったかのような、
変わりっぷりが極端過ぎる――。
ああ、時代の流れってのは、
その時折に頂点を極めたものであっても、
表舞台から引き釣り降ろされる、
かくも無残で惨たらしいものなのね的な、
そんなシチュエーションに困惑しながらも、
ワタシは豹変激しさにますます磨きが掛かる彼に尋ねた。
ワタシ
「アイツ――と言いますか息子さんのせいで、
一体何が……起きたんです?」
ワタシの問い掛けが火に油を注ぐ結果になったようだ。
こめかみをひくひく引きつらせながら、
彼は烈火の如き、言葉を噴出す。
ニセ仙人
「……そんなん、分かるだろうがっ!!
この状況見てみろっ!!
どんな暮らしをしているか、見てみろっ!!」
ワタシ
「……はあ」
ちゅうか、アンタとアンタの息子の暮らし様は、
さっき嫌という程見てきたって。
そんなにゴミ溜めをアピールしたいのか?
それともまた、
ゴミ屋敷観戦ツアーにでも参加しなくちゃならんか?
……なんて、直線的に物事を荒んで捉える、
ワタシはワタシで疲労がたまっていたのだと思う。
そしてニセ仙人の話は、
ワタシの徒労感を更に増すものであった。
ニセ仙人
「大体、今こんな生活をしているのも、
アイツのせいだってんだ。
アイツさえ、訳の分からん投資さえしていなければ……。
病院だって、病院だって――」
――そういうと、誰に頼まれたという訳ではないのに、
彼は彼なりの真実を大いに語り始めた。
その話の間中ずっと、ワタシの脳内では――。
相変わらず、誰かがコサックダンスをしていた……。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
ごめん、ワタシの文章の性分で、
あまりちゃっちゃか展開を早めることは出来ないですね。
まあ、ゆっくりと適当に読んでみて下さい。
11/27 9時
>それって『この!アマ』が『この!ママ』ってことですか?
そういうことですね。
というか、その例題は面白いです。
11/27 16時
>近所のオオタ精肉店でコロッケ買ってきた。ウマー。
>次回は、ちょっと高かったが自家製ソーセージにしよう。
>スーパーのソーセージなんて
>混ぜ物ばっかりで不味いもんね。
肉屋のコロッケは確かに旨いですね。
なんだろう、別に油だってそうは取り替えていないのに。
まあ、食い物に関しても雰囲気というのは重要だ、
ということですかね。
11/29 0時
>明日かあさって電話しる いっしょにしゃべろうぜぇ 中
はいはい、了解です。
2004.12.01 水曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第三百七話−
ニセ仙人、もうひとつの真実…の巻。
ニセ仙人
「アイツが――。
息子が絶対に儲かるだなんて、
投資話に手を出したのは――。
多分、あの女と会い始めた、その時からだと……」
誰かが踊る幻想を垣間見る中、それを片隅にし、
ワタシの目前にいる風船男の父――ニセ仙人。
時々、つっかえひっかえしながらも語る爺の目には、
暗闇の中、強い光が宿っていた。
喋りまくる姿は、とてもじゃないが先程までの、
無言症の振る舞いを晒していた御仁には見えない。
我慢して溜めていた物を吐き出すように、
ブチまけるだけブチまけている。
内なる想いを搾り出すように、何度も何度も吐き出す。
その想いは汚物の如き真実であった。
風船男の語った真実とは違う、
ニセ仙人の視点から見た真実――。
もうひとつの真実だ。
ニセ仙人
「あの女――占有者A子と出会ったあの馬鹿は、
すぐさま、のめり込みました……。
毎日のように会合に参加して、やいのやいの言って、
それでもって、家に帰れば、金がねえ、金がねえ――」
ニセ仙人は少々、べらんめい口調になる。
元は江戸っ子か、はたまたニセ江戸っ子といったところか。
これでちゃんと呂律が回っていれば、
それはそれで形になるというものであるが、
どうにもこうにも回らない。
口に連動されたマブチモーターを新しいのにでも、
交換しておけ、それでもって、ぐるぐる回転させておけ、
といった感じだ。
ニセ仙人
「金がねえ、って口癖はそれこそ、
耳にタコが出来るくらいに――。
あんな女に出会って、あんな会合に入り浸って……。
金がねえ、はなかろうが、金がねえ、は――」
彼は、「会合」という言葉をさも憎々しげに、
吐き捨てるように口にした。
彼曰く「会合」は、どうやら風船男が入れ込んでいた、
アイドル時代の占有者A子ファンクラブの集まりのようだ。
それが分かったのは、この単語を何度目聞いた時だったろう。
とにかく、片手で数え切れないくらいの数だと思う。
会合と聞くと、町内会のオッサンどもの集まり的発想に
到るのが普通であろうし。
もっとも、占有者A子ファンクラブの集まりも、
オッサンどもの集まりには違いないのだろうが……。
ニセ仙人
「――あの会合は金を巻き上げる手段だったんだろう。
結局、あの馬鹿はそれにまんまと引っかかって、
金の無心を今まで以上にするようになっちまった。
アイツ、自分の収入も考えないで――」
ここまで黙って聞いていた、というか、
一心不乱にダンスをしていたのが自分なのか、
それとも他の人間なのだか分からない、
そんな事態に陥っていたのだが、
そんなグダグダな状況であっても、
当たり前に浮かんでくる疑問があった。
ワタシ
「……でも、医者だったんですよね。
だったら、そこそこはいい収入があったんじゃないですか?
それに医師免許があれば、
今でもそこそこは貰えるんじゃないでしょうかね?」
そりゃあ、そうだろう。
何と言っても風船男は医者だというのだから。
当たり前の感想、というか疑問。
でも――。
ワタシが疑問を口にした時、
ニセ仙人はふと間の抜けた、さっきの呆けた顔を見せた。
――と思うと、すぐに発作を起こしたかのように、
全身を揺らして、笑い出した。
笑い茸を食った後の症状みたいに。
ひいひいと涙だか鼻水だか涎だか体液を流し、
苦しそうに笑い――発作も治まらぬ内に、ワタシに告げた。
ニセ仙人
「……アンタ、そんなん信じていたのか?
アイツの、あの馬鹿の言ってることなど、
ほとんど嘘だよ、嘘」
ワタシ
「……えっ、じゃあ医者っていうのは?」
ワタシの問い掛けがダメ押しとなったようだ。
ニセ仙人はひときわ大きな発作を起こした。
笑い声は最後は苦しい喘息に近くなり――。
ニセ仙人
「医者っていうのも――。
嘘に決まってるじゃねえか!」
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
テレビ関係の話をまた頂戴しました。
ありがたい話ですが、ワタシ自身が画面に登場出来るのは、
もうちょっと時間が掛かりそうです。
んでもネタ提供なら、今の段階でもご協力しますよ。
11/30 18時
>肉屋のコロッケがうまいのは、揚げる油の違いです。
>動物性のラードで揚げるからです。
なるほど、だから旨いんですね。
確かにラードは調味料としてはいいよなあ。
あー、肉屋のコロッケ食いたくなりました。
が、今は油モノを控えている身。
我慢しますですー。
2004.12.02 木曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第三百八話−
教えてー、アルムのもみの木よぉ…の巻。
嘘、嘘、嘘……。
風船男の話したことは嘘ばかり。
アイツ、あの馬鹿は嘘つきだ。
アイツの言うことなど信じるな――。
嘘という字がワタシの頭を駆け巡る。
ぐるぐるぐるぐる脳みそを掻き混ぜる。
それこそ、時にはアルプスの山を、
ヤギのユキちゃんと共に駆け回るハイジの軽やかさ、だ。
え、ハイジって、軽やかって――。
それじゃあ、今の気分は軽やかなのか。
重くはないのか。
鉛のように重くはないのか。
そうか、爽やかなのか。
高原の朝靄(あさもや)のように爽やかなのか。
……。
分からん、訳が分からん。
それに、ああ、誰なんだ。
コサック踊っているのは誰なんだ。
教えて、お爺さん。
教えて、お爺さーん。
教えてー、アルムのもみの木よぉぉぉぉ。
――混乱していた。
混乱すると同時に、ワタシはひどい脱力感を得る。
なんだよ、それ。
じゃあ、それじゃあ今まで聞いていた話は一体……。
虚無を掴む徒労感は、計り知れないものがある。
ワタシはその無の空間にただひとり取り残されていた。
ニセ仙人
「……なんか、間の抜けた顔をしているが。
まさか、信じていた?
アイツの発言を信じていた?」
そんな問いをするニセ仙人は、いい大人というより、
すでに老年時代に突入しているのにも関わらず、
心なしか、少々底意地の悪い顔をしていた。
全く持って、大人気ない。
というか、爺気ない。
いや、爺は爺なのだが――。
ニセ仙人の鬱憤晴らしにも似た真実の暴露は、
それだけに留まらなかった。
ワタシ
「はあ、まあ……」
ニセ仙人
「もしかして……。
あんな白々しいのにも騙されてるんじゃねえか?
まさかとは思うけど……な」
この男、いつの間にか先程までの呆け顔から、
悪代官と越後屋を足して二で割ったような、
底に悪意の泉を持つ、悪い顔になっていた。
悪代官は続ける。
ニセ仙人
「アイツの母親のことだけど――。
まだ生きてるぞ」
って、そこも嘘なのかいっ!
そんなツッコミをする気力すら起きず。
ただただ呆然……。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
知らない間に十二月。
師走だし。
とりあえず、走れっ!って感じ。
あー、コメント適当だな。
12/1 20時
>なに?うそだったのぉ…真剣に聞いてたのにねえ。
嘘だったようですが……。
はてさて。
12/2 11時
>展開のテンポがよくなった。果たして結末は?楽しみ!
テンポの悪さには定評のあるワタシの文章ですが、
最後ら辺の展開は面白いと思う。
ってゆーか、そうじゃないのかなー、と思う次第。
2004.12.04 土曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第三百九話−
嘘の分だけ、大人になる…の巻。
全部、嘘さ。
そんなもんさ。
夏の……。
――嘘の分だけ、大人になる。
もしその言葉が正しいとしたら――。
大きな嘘をつかれにつかれまくったワタシは、
今日だけでどれだけ大人になったのだろうか。
大人にされたのだろうか。
きっと、君はまだシンデレラさ、
なんて言ってられないくらい大人の階段を登ったに違いない。
そりゃあ、シンデレラも階段登りすぎて、
白雪姫に毒リンゴを渡す王妃の婆になるっての!
ニセ仙人
「まあ、アイツの母親とは離婚したんだから……。
言っちゃあ死んだも同然だけれども、な」
離婚話などマイナスオーラ漂う話なのにも関わらず、
爺はちょっと得意気になって言ってるのが見え見えで、
本来であれば、そんな態度を示す彼を、
ワタシは非常に疎ましく思うはずだ。
だが、今はそんな爺のことよりも、
風船男の嘘の方ばかり、頭の中でリフレインしていた。
ニセ仙人はニセ仙人で、またも同じ意を繰り返す。
ニセ仙人
「それでもアイツの母親と別れたのは、
五年だかそこら前の話だけれども……。
でも、そんなこと知らなくても、
あの馬鹿の話をフツーに聞いていれば、
如何に支離滅裂なことを言っている程度のことは、
分かるものだと思うけれどもな」
ワタシ
「……」
今回、赤坂のマンション占有者退去交渉に携わってから、
何度目の敗北感を味わう瞬間だったのだろうか。
冷静になって――いや、今この時この場所で、
沈着冷静な自分の姿はあり得ないのであるが――
錯乱した頭で風船男の発した断片を振り返るに、
確かにあの男が汗を掻き言っていた言葉の数々は、
その場限りの説得感を認めたとして、
話の繋がりを考慮してみると、果たして整合性はあるのか。
試しに「母親」というキーワードで当てはめてみる。
風船男は五歳だか小さい頃に、
母親と母系の祖父母を不幸なことではあるが、
交通事故で一瞬にして亡くしたと言った。
だけれども、だ。
ちょっと想い掘り返してみると、
それよりももっと前の会話では、小さい頃どころか、
風船男が成人した段階においても、
母親の存在というのを匂わせられていなかったか――?
やはり――。
風船男は嘘をついていたのか――。
改めて頭に鉄球を直撃したかの衝撃を覚えた。
全身を悪寒が襲う。
ニセ仙人
「アイツは……自分の都合が悪くなるとすぐ嘘をつく。
昔からそうだった。
腹が痛いから学校行かないだの。
大学に落ちたのは――アイツは高校を卒業してから、
マトモに社会に出たことすら、ないんだけれども――
やれ、受験の前の日の豚カツにあたったからだ。
油が悪いんだ。
使い回しにして、新しい油を入れなかったせいだ。
……なんて、そんなことばかり。
馬鹿か、アイツは。
もっとも、あれもこれも嘘も言い訳も、
自分を守るための方法なのかもしれないけれども……」
最後にちょっとしたフォローらしき表現が入ったものの、
地底を流れているのは冷たさであり、
他人事の如き、表現であった。
少なくとも肉親として、自分の息子に対する評ではない。
ワタシ
「……」
ニセ仙人と風船男との関係――父と息子というのが、
一番の嘘なのではないか。
ワタシはそう思わずにはいられなかった……。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
メルマガ、忘れてた。
というか、メルマガの物語をどこまで進めてたかな、と。
しゃーない。
今から読み返してみるかな。
12/3 11時
>フォントサイズ+4の突っ込み文字が出てこない。
>毎日楽しみにしてます。
どうでもいいことですが、ちょっと前までは、
テキスト系を少し気取っていましたので、
フォントいじりを少々使っていたのですが、
今はまあ、文章で直球勝負ってなところですかね。
12/4 3時
>森の木、じゃなくて、もみの木、じゃないっすか?
そうですね、訂正しました。
どうもです。
2004.12.07 火曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第三百十話−
金の色は血の色よりも濃い…の巻。
二人の間に浮遊する空白。
しばしの停滞。
それでも、ワタシは戸惑いを隠すことが出来ず――。
ワタシ
「……全部。
全部、嘘だったんですかね」
徒労感交じりのため息が出る。
風船男との会話は一体何だったのだろう。
ゴミ溜めで過ごした、あの時間は――。
目に見えぬ雲を掴むような話であったのか――。
ガックリと肩を落とし、虚脱感溢れるワタシに対し、
ニセ仙人は息を完全に吹き返したように喋る。
その姿はワタシを打ち倒した勝者のそれであった。
ワタシは、負けたのか。
背筋をぞくぞくさせる程の、この敗北感――。
きっと――きっと、負けたのだろう。
そんな感じがする。
そして、勝者は敗者に告げる。
その様は、冷たい夜風のように冷酷ですらあった。
ニセ仙人
「手っ取り早く言えば……。
その通りってことかな。
こんなこと言うのも親が言うのもなんだけど、
何せ、アイツはその場しのぎの嘘つきな男だから」
「親が言うのもなんだけど……」
ニセ仙人の発言で、この部分だけがいやに耳に残る。
爺の言葉でリフレインするフレーズは多々あったが、
これが一番強く印象に残った。
「親が言うのもなんだけど……」
それはまさしく、先程感じた親子関係の破綻そのもののを、
最も顕著に表している言葉である。
親子関係の破綻。
ニセ仙人は普段から、風船男への不満を持っていた。
だが彼は自分の感じる不満を、
自身の息子にぶつける術を持っていない。
もしかしたら、風船男から受ける、
家庭内暴力的な被害を恐れているのかもしれない。
いや、それとも暴力を受けていたのか。
息子といっても、反抗期の中学生ではなく、
四十を越えているだろう男が、
これまたもう年金暮らしのような老人を相手に、
リアルファイトをする姿は、想像するのも気色悪い。
そういえば、よくよく爺の顔を見れば、
彼の右目の下には青い痣(あざ)のようなものが、
薄っすらと……。
もっともそれが本当に、
息子から受けた暴力のせいかは分からない。
だが、親が息子に相当の不満を感じるに到る原因は分かる。
もちろん金銭だ。
例え血の通った親子であるとはいえ、
金勘定の問題は血の色とは別の問題である。
むしろ、金の色は血の色よりも濃いと言える。
世間で起きている事件を顧(かえり)みるまでもなく、
金は肉親が肉親を殺す陰惨な事件をも引き起こす。
ニセ仙人と風船男のケースでは、
そんな大事にまで陥ってはいなかったが、
しかし、ヨボヨボとした体でワタシを追い掛け、
道端に呼び止めて伝えたい程の、
不満の蓄積はあったのだろう。
だから、風船男と話した人間を捕まえ、
彼のことを言いたい放題に言う。
不満を残らず解消するためだけに、その口は動かされた。
多分、爺にとってはこれが、
最良のストレス発散方法となっているのかも知れない。
爺はたまりにたまった垢を流すべく、
風船男の所業を口汚く言っていた。
爺の思うがまま、言葉が発せられる。
ワタシは黙ってそれを受けていた。
ふらふらに弱っていたワタシに、何が言えるのだろう。
ただ黙って爺の話を聞いていた。
曰く、先物が云々。
曰く、和牛が云々。
曰く、金が云々。
曰く、株が云々。
全部、風船男が失敗して、残ったのは借金の山だけだ。
そうか、借金の山か。
ある意味、一山当てたじゃんっ!
……なんて、呆けた頭の中で上手い事を思ったワタシ。
――たっぷり三十分は経っただろうか、
ニセ仙人はこう言って、言葉を閉めた。
ニセ仙人
「……要するに、アイツの言うことは、
一切信用するな、ということだ」
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
メルマガを久々に発行。
これまた長期シリーズになる?
大体、まだ雑魚のドイガキしか出てないしねえ。
真打の登場は、いつだ?
12/5 0時
>ハイジやH2O、なつかしいです!
H20いいですよね。
って「想い出がいっぱい」しか知らんけど、
それだけで必要十分条件を揃える、みたいな。
12/6 22時
>手に汗握りながら読ませて頂きました
手が汗まみれになると、
キーボードが駄目になっちゃうかもしれませんから。
気をつけて下さいね。
2004.12.11 土曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第三百十一話−
曇よりオーラ発生機…の巻。
それで――。
全部、嘘で――。
そいつら共の話は――。
すべて終わったということか――?
少々間延びした静かな喋り方であったが、
その語尾から与えられるのは、
決して真綿のようにふわふわと軽いものではなく――。
むしろ、ワタシの心臓を抉り取るような、
厳しく鋭い矛先であった。
ワタシは社長の前にいた。
明くる朝、ワタシは社長に昨日の顛末を報告していたのだ。
報告を聞いていた社長の顔つきは、
次第に険しいものとなり――。
それと比例するように報告者は報告者で、
呂律が回らず、しどろもどろになっていくのであった。
身振り手振りを加えた中途で採用した新入社員の、
たどたどしい報告を聞き終えた社長はゆっくりと、
それでいてハッキリと訊いてきた。
社長
「昨日の夜、何て言ったか覚えているか?」
ワタシ
「……」
「いつ」「どこで」「誰が」「誰と」くらいは、
正確に言ってくれないと、
何をどう覚えているかなんて問いに、
答えられる訳がないのであるが……。
でも、だからと言って――。
えーと、5W1Hって言葉知ってますか?
知らない?
あれ、5H1Wだったっけ?
まあ、いいか。
いやあ、そりゃあですねえ。
ワタシもじゃあ、何がWで何がHなのか、
ここで羅列してみろなんて振られても、
分からないですから、それはそれで、あれですね。
お互い様ということで……。
……とりあえず、何がお互い様なのか、
よくは分からないが、少なくとも、
このような軽いトークが出来る雰囲気ではない。
室内には、かなりの曇(どん)よりオーラが蔓延している。
あの脇にある空気清浄機は、
マイナスイオンを発しているのではなく、
マイナスオーラを供給し続けているのではないか、
と思わざるを得ないくらいの曇よりさ加減だ。
ああ、そうだ。
オマエは今日から空気清浄機ではない。
曇よりオーラ発生機だ!
ワタシは、そんな虚しいことを頭の片隅に置きつつ、
依然として黙ったままだった。
社長は通告した。
それは「喋る」という行為には違いないが、
まさに「通告する」という言葉がふさわしかった。
社長
「……時間を無駄にした、ってことだ」
ワタシ
「……」
ワタシは、背中を丸め、肩を落とし、
出来うる限り自分という存在を消したかった。
社長の前から、消えてなくしたかった。
しかし、それころ浅間山のマグマへとダイブしなければ、
現実に消えてなくなる訳がなく――。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
土曜恒例の行事とも云えるのですが、
またまた風邪を引きました。
鼻風邪です。
ちょっと辛いかも。
12/7 22時
>ちょっとひっぱりすぎ?
>もうちょっとチャチャット行けませんカ?
いけないですねえ。
12/8 17時
>誰にもわからないように、そっと教えます。
>冒頭部分、風船男がフネオトコなっています!シーッ
ある意味、船男ってのも、海の男っぽくていいですね。
鳥羽一郎っぽいし。
2004.12.15 水曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第三百十二話−
会社にとって時間とは何か?…の巻。
姿形は在りのままに、そのままに。
無論のことながら、赤いマグマに身を焦がすこともなく――。
ワタシはそこにいた。
しかし、例え肉体的な存在はそこに在ったとしても、
自分という存在を無の空地に変えたい程、
精神的な重苦は筆舌し難いものであった。
ただひたすらに無言の圧力。
眼前に迫る重圧に、
健気なまでに耐えなければならなかった。
一生に一度の御願いが叶えられるのであれば、
その時こそ、祈りはこうだ。
時間よ、早く進め!
社長
「……なあ、オマエ。
会社にとって時間とは何か、分かっているのか?」
社長は問う。
いやに耳障りのよい話し方であったが、
だが、問い掛ける言葉は厳しく――。
なまじっか優しげなオブラートに包まれているものだから、
その内蔵するものを逆に想像してしまい――恐ろしい。
ワタシはやはり、あうあう、いえいえと、
おろおろとするばかりであった。
社長はワタシの答えなど期待することなく、
自らその答えを突き付けた。
答えは変化球ではない、ストレートなものであった。
社長
「会社にとって時間は――まさに金だ。
金なんだよ、金。金。金。
オマエ、まさか金の大切さは分かっているよな?」
相も変わらず、優しげな喋り口調ではあるが、
これまたキャッチャーミットに、
ズバンと収まる程の直球な発言である。
社長
「オマエが昨日、やってたのは、分かるよな。
就業時間中にそんな行動をして――」
ってゆーか。
もう帰る時間の後に、ワタシが個人的に自主的に、
所有者宅に訪問したのだから、
それは就業時間じゃなく、
むしろプライベートな時間じゃんっ!!
とも思ったし、それは当たり前なことであるが、
そんなことをいえる程、余裕なんてなく――。
社長
「無駄だよ、無駄――」
またも静寂。
でも――。
ワタシの中でむくりと起き上がる衝動。
それはじわじわと形を成していく。
でも――。
本当に無駄だったのか?
確かに風船男は嘘つきであり、
ニセ仙人もちょっとおかしかった。
でも、その二人と会って話すことは、
本当に無駄な、意味も無いことだったのか?
――いや、それは違う。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
軽石で足の裏をこすると丈夫になるという、
豆知識を得た今日この頃。
ということで、軽石でゴシゴシこすってます。
12/11 18時
>最終回は、この社長に抱きしめてもらうのですね。
はい、そうです。
その後、濃厚なラブシーンが待っています。
2004.12.20 月曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第三百十三話−
キラウエア火山、噴火…の巻。
――そうだ、違うのだ。
意味がない、ということはない。
世の中にやってやらない意味はない。
そんな在り来たりのフレーズを引き摺り出すまでもなく。
ワタシは風船男から占有者A子を退去させるという、
話を引き出したではないか。
ワタシが行かなければ、彼に会いに戻らなければ、
そのような話など全く出なかったではないか。
大体、あの後だって……。
昨夜、ニセ仙人の最後通牒的な断言を聞いた後、
ワタシは風船男の住むあの廃病院を再々度、訪れたのだ。
風船男の言葉はすべて嘘。
経歴も嘘。
医者も嘘。
母親が死んだという話も嘘。
何から何まで、すべて嘘嘘嘘。
実の父であるニセ仙人の語った言葉は衝撃的であった。
ワタシに動揺をもたらした。
実際、目の前が真っ白になった。
ふわふわとした空虚感とは斯くの如きか――。
そんな虚しさを感じた時、
しかし、ワタシのどこかで声がした。
それで終わりやあらへんで。
事実はひとつ。
だけれども、それぞれの中に真実はあるんやで。
その言葉の意図するところを、
ワタシの疲れてへたっている脳味噌では、
多分に理解できなかったが、
でも、ただひとつ行動を起こそうという気持ちになった。
渋々というか嫌々というか、
明らかに抵抗しているニセ仙人を引き連れて。
じゃあ、その辺りをはっきりさせましょう。
そのためには、風船男――いや、所有者Yさんの話も、
当然聞かないと――。
対するニセ仙人は、「いや、それは困る」。
明らかに言い過ぎてしまったという、
絶妙な表情で示した彼は、頑強に嫌だと言い張る。
それはそうだろう。
ワタシが爺から聞いた有りのままを、
風船男が聞いたらどう思うか。
恐らく家庭内暴力だかなんだかの原因で、
直接息子にいえないからこそ、その不満の捌け口として
汚物のような言葉をワタシにぶちまけたのに、
それを掻き集めて、
そっくりそのまま息子に持っていったら……。
考えるまでもなく、ただでさえ自分の危うい立場が、
ますます悪化することこの上ないのは間違いない。
でもワタシは――そんな爺を説き伏せ。
いやいや、貴方のことは黙っていますよ。
ただ重要なところだけを再度確認しに戻る。
ただそれだけですよ。
それでも爺は「すんません、すんません、勘弁して下さい」
の一点張り。
でもワタシがそれで納得して帰るはずもなく。
いいから、いいから。
ワタシも確かめたいことがあるから、行くだけなんで――。
社長
「……」
だけれどもそれを言葉にすることが出来ず、
それこそ悶々としていた。
眉間の皺は恐らく、深かったことだろう。
社長はひとつ息をつくと、締めの言葉を吐いた。
社長
「……もう、いい。
いいから、次の準備をしろ」
……。
時間が止まった。
意味がまともに受け取れなかった。
次の準備とは――。
一体なんだろう。
更に眉間の皺を寄せたのが、
あまり気に入らなかったのだろう。
社長もまた、眉間の谷をグランドキャニオン並みに厳しくし、
突き放すのであった。
社長
「……オマエ、意味が分かってないのか?」
意味が分かっていない、か。
その意味――。
次の準備って何の準備だ?
分からない。
確かに、分からない。
ワタシが疑問の山に埋もれ窒息するかの如く黙っていると、
社長は機嫌が悪くなったのだろう。
見る見る間に顔が赤くなり――。
そして、キラウエア火山のように噴火するのであった……。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
先日、ねずみーランドに行ってきました。
久々だったんで、かなり浮かれてました。
土産買ったので、金も結構落としたなあ、と。
えーと、確実に資本主義の毒牙に掛かってますね。
12/17 15時
>それでGさんご飯食べられたん?かわいそうで…
大丈夫ですよ。
心配ありがとうございます。
2004.12.21 火曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第三百十四話−
再々度、所有者Y宅への訪問…の巻。
社長
「オレがこれだけ言っても、
オマエ、まだ分かっていないのかっ!?」
マグマの代わりに口から泡の飛沫を飛ばし飛ばし、
社長、一気に大噴火。
しかも今日は超特大級の怒りの様子だ。
こんな様子を垣間見たら――。
いつもだったら、生まれたての小鹿のように、
ひいいいと身をすくめ、ブルブルと震えながら、
早く早くと嵐が去るのをじっと待つのが常であるが、
だがこの時ばかりは違った。
ワタシは俯きがちの面を上げ、社長の目を逸らさず見据える。
――そうだ、違ったのだ。
社長
「……そんな変な顔しやがって!
オマエ、自分がやって来たことがどれだけ無駄か、
そんなことすら分かっていないのかっ!?」
……変な顔っていっても、これは元々だ。
今から、高須クリニックにでも行って整形してこい、
とでも言うのか?
はあ、もし整形費用くれるっていうんだったら、
それはそれでいいぞ。
鼻を高くするなり、脂肪吸引するなり、脱毛するなり、
なんなりしてやるっ!!
そう思う、ワタシの顔には更に険しいものが映っただろう。
そんなワタシの脳裏に、
彼――風船男との再々度の対面シーンが再生された。
そのシーンを一言で表すれば――。
それは涙であった。
渋るというよりも明らかに嫌がるニセ仙人を引き連れ、
ワタシは所有者Yの、
まるで田舎のヤンキーの溜り場にでも使われそうな、
廃屋一歩手前の自宅にワタシは舞い戻ってきた。
爺は家に近づけば近づく程、
嫌々とただでさえ震える手を更に大袈裟に震わす。
わざとらしさまで感じさせるその仕草であったが、
しかしそれは心の底からの叫びなのかもしれなかった。
「勘弁してください、勘弁してください」
そこまでに到る恐怖を駆り立てられるのは、
ひとえに風船男の存在に尽きるのであろうが――。
でも、だとしたら、例えそれが真実であったとしても、
わざわざワタシを追ってまで、
風船男の悪口を言わなければよかったのでは?
言葉が正しいかどうかは分からないが、
ある意味、自業自得という部分もある。
ワタシは「余計なことは言わないから大丈夫」と繰り返す。
もっとも何が余計で何が余計でないのか、
そんなことを判断する余裕や余地はない。
まあ、その時になったらその時。
ワタシの話しひとつにより、
彼ら親子の間に深刻な事態が訪れても、これもまた運命だ。
そう、諦めてもらおう。
ワタシはひとり納得し、家の呼び鈴を鳴らした。
しばし待つ。
……誰も出てこない。
試しに扉をガチャガチャと開けようとしたが、
鍵が掛かっているようで、開かない。
その時、ひと辻の風が舞い、
冷たい空気が余計、ひんやりと感じた。
ワタシは寒さのせいか、
それとも他の恐怖に怯えているのか。
ああ、そうだ――とワタシは思った。
別に隣に家人がいるのだから、
ここでこの男を連れ、入ってしまえば、
別に不法侵入やら違法行為にはならないだろう。
むしろこの老体の身に冷たい夜風は厳しいだろうし。
大体、何でこの爺さんは中に入らないのだ?
鍵を持っていないのか、それとも……。
よし――。
ワタシはニセ仙人に声を掛けた。
「じゃあ、家の中へどうぞ」
ワタシの急に振られた言葉に、非常に驚いたように、
背筋をびくりとさせたニセ仙人。
いやあ、あのお、ええと……と言葉を濁す。
「いやいや、もう寒いでしょ。外にいる意味がないでしょ。
ワタシもあなたの息子さんに会わなければならないし。
だったら家の中に入るしか、ないでしょ」
ワタシが少し強く言うと、ニセ仙人は、ううむ、ううむと、
考える真似をして、ボソリと呟くのであった。
「あの……。開けなきゃ、駄目?」
ワタシは力強く頷く。
落胆の色を見せるニセ仙人。
こいつは――。
それだけ、ワタシを風船男に会わせたくないのか……。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
最近、怒鳴ることが多い。
でもストレス解消するどころか、
ストレスがますますたまっていくばかりであり……。
うーむ、なんだかなあ、と。
12/21 9時
>おっ!て事は、Gさん彼女出来た!
出来てないです。
友達と行きましたです。
彼女様は、年中無休で大募集中です。
2004.12.24 金曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第三百十五話−
変なテンション、あがりまくり…の巻。
社長が何か言いた気な表情――。
いや、実際には言いたそうと云う表現では追い付かなくて、
活火山の大噴火、真っ最中。
マグマが出るわ出るわの、そりゃあもう大騒ぎさ!
と云った体であったが、いずれにせよ、
自分の世界の中で怒りを増大させているに過ぎない。
社長の目には怒りしか見えておらず、
ワタシのことなど、逆に近すぎて視界に入っていないようだ。
それだったら、ワタシはワタシであの昨夜のことを、
もう少し思い返してみよう――。
――そうだ。
爺は頑強に嫌がっていたっけ。
震える身と手を、更にブルブルと震わせて――。
でもそんな彼を脇目にし、ワタシは強く言い切った。
……まあまあ、大丈夫だから。
さっきから云っての通り、
息子さんに余計なことは云わないから。
云わない、云わない。
ワタシを信じなさいって。
強い眼差しで爺を見据え、ワタシはそう伝えた。
心の中では――もっともその場のノリで、
喋ってしまうかもしれないけどね。
ポロリしちゃうかもしれないけどね……。
ってポロリなんて、あれか。
♪じゃじゃまる ぴっころ〜 ぽ〜ろり〜
どきど〜き あっちむいて ぷーん! か。
それとも「ドキッ!丸ごと水着女だらけの水泳大会」での、
AV女優の果たす最も偉大な役割、おっぱいポロリか。
どうだ、どうなのだ?
爺は――相変わらず、駄々っ子のように嫌々していたが、
その間もずっと目に力を入れていると、
諦めたのか、ふうと一気に肩の力を抜き、うな垂れた。
――風が冷たい。
冷たいんじゃ、こんちくしょう!
冷たいか、臭いがきついかの二者選択だったら、
ううむ、仕方がない。
後者を選択しよう。
さあ、中に入るぞ爺!
ワタシは「さあさ」と促すと、
ニセ仙人は大人しく扉の鍵を開けた。
いざ、中へ行かん!
風船男に会いに行かん!!
……なんだか、疲れがたまりにたまって、
思わずテンションが変に昂ぶるワタシだった。
さあ、風船男よ、どこだ!?
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
清しこの夜、クリスマスイブ。
皆様、いかがお過ごしでしょうか?
って、こんなイブだってのに、
こんな文章を手繰っているワタシ。
ええ、クリスマスなんかなんぼのもんじゃーい!!
と云ってみる今宵ひととき。
とりあえず、メリークリスマス!
2004.12.27 月曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第三百十六話−
風船男の涙は何色に輝る?…の巻。
彼は――。
そうだったのだ。
あの部屋でうずくまるようにして。
そして――。
疲れで吹っ切れたせいか、
テンションは上がり調子であった。
この人は何かクスリでも打ってしまったのですか?
なんて、それこそ問い掛けたくなるくらい、
無駄に高いテンションであった。
ニセ仙人が鍵を開けるのと同時に、
ワタシは勢い勇んで、ゴミ屋敷に雪崩れ込んだ。
その家の本来の主人はオレだと主張するかの如く、
到る所に不燃物可燃物が鎮座する室内。
外と同じく土足で踏み込みたいところをグッと堪えて、
「お邪魔します」といつまで経っても履き慣れない、
茶色の革靴を急いで脱ぐと、
そのまま二階へと繋がる階段をバタバタと駆け上った。
後からはヨタヨタとニセ仙人が続く。
ワタシと同じように階段を駆け登ってしまった、
ニセ仙人の絶え間ない息切れを微かに耳にしたが、
だからどうした。
それがどうした。
爺を気遣う心配りなど、
その時の自分には微塵もあろうはずもなく。
ええい、そんなことよりも爺よりも、
風船男に会うのが先決だ。
二階へ到着すると、念の為もう一度、
形を繕うように扉の先にいる風船男に声を掛けた。
ワタシ
「ええと、ワタシ、先程お会いした追い出し屋Gですが――。
所有者Yさん、またお邪魔してますよ。
確認したいことがありまして……」
そう言いながら、
二階の、昔はリビングだかダイニングであったろう、
これまたゴミだらけの部屋へと続く扉を開けた。
ワタシ
「ええと、入りますよ、所有者Yさん……」
問い掛けに対する返答を待たずして、
部屋に入ったワタシ。
そこを見渡すまでもなく、そこに彼は――いた。
ゴミの中に埋もれるようにして、彼はうずくまっていた。
そして、彼は――。
ワタシ
「所有者Yさん、貴方……」
所有者Y
「……」
彼は涙を流していた。
果たして彼の涙は何色だっただろうか。
まだ昨夜の記憶であり、色鮮やかとはいえないが、
それでもまだ彩色された記憶であるはずなのに。
その部分だけは靄(もや)が掛かったように、
深く白く濁っていて――。
ワタシは思い出すことが出来なかった。
一体、何色だったのだろうか――?
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
歯医者行ってきました。
歯医者の一言は結構強烈なものでした。
2004.12.31 金曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第三百十七話−
男が泣いている理由…の巻。
男が泣いている。
その密閉されたゴミ空間で、泣いている。
もっとも男が泣くと云う行為自体、
珍しいものではないかもしれない。
老いも若きも男も女も、人間泣くときは泣く。
理由がどうであれ、他人からみて重かろうが軽かろうが、
例えそんなことは泣く理由に足るものか、
なんて思われるものであっても、
それは本人がどのように感じたのかが重要なことである。
だとしたらワタシが必要以上の動揺を感じているのは、
誠に不思議なことではないか。
泣くなんて感情の吐露なんて、珍しくも何ともないのに。
でも、ワタシはゴミの中に埋まる風船男を見て、
言葉も普通に掛けられずに、立ちすくんでいる。
彼は何だか萎(しぼ)んでいるようにも見えた。
それこそ、ガスの抜けた風船のように……。
ワタシ
「あ、の……」
意を決するかの意気込みでワタシは彼に話し掛けた。
彼は、呆けたように泣き続ける。
その時のその状況で、
まだワタシと話している状況の時に、
思わず涙を見せてしまったと云うことならば、まだ分かる。
相手と対峙したことにより感情が昂ぶり、
その勢い余って涙が出るのは普通であろう。
彼自身は住んでいないとはいえ、
家を巡っての争いである。
涙腺を開放するだけの理由はある。
しかし彼はワタシがここに戻ってくる前から、
泣いていたのだ。
……。
何も――だ。
その時、瞬時に感情が噴出すとは限らない。
時を隔て泡盛が旨味を増すかのように、
思いも又、時間が置かれて熟成されたのかもしれない。
ワタシとの話を終え、
彼は彼なりに色々と――。
――そうか。
色々と思うところがあったのだ……。
依然として彼はこちらの方など一顧だにせず。
……。
これ以上、言葉はいらない。
ワタシは黙って、二階のその部屋から出た。
後ろに控えていたニセ仙人は、
心なしかホッとしたようで、
「これで終わりですね、終わりですね」
と一人繰り返していたが、
ワタシはその言葉も無視し、
「お邪魔しました」とだけ言って帰路に着いた。
――夜風はやはり冷たかった。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
今年も後わずか数時間です。
思い起こせば……。
って別に思い起こさなくてもいいですね。
とりあえず、前に向かって歩くのみ、です。
2005.01.03 月曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第三百十八話−
果て無き沼の主への反抗…の巻。
――夜風の冷たさとはまた違う悪寒に襲われた。
そして、夜風と同様、
冷たい言葉がワタシの眼前にあるのに気が付いた。
無論、身内から唱えられたその言葉に、
気が付かない訳はなく――。
むしろ気が付いたと云うより、
目前の人物を再認識し始めた、と云う方が適切であろう。
ワタシはようやく自分の世界から、脱したようだ。
しかし、回想の泥沼から這いずり出たとしても、
現実の世界も汚泥の深き底無し沼の如きものである。
そこにいるのは、果て無き沼の主か――。
社長
「……おいっ。
ちゃんと話を聞いているのか?」
社長の言葉は疑問を口にしたのではなく、
不満を伝えたものであった。
実際、ワタシには社長の言葉など耳に入っておらず、
回想のモードに入り込んでいたのだから。
それはそれは心ここにあらず感を遺憾なく発揮し、
さぞや気の抜けた顔をしていたのだろう。
社長もそんな部下の姿を、
いつまでも見過ごす訳にはいかない、と云うことだ。
社長
「多分、オマエは昨日、
会った奴等のことを考えているのだろうが。
所有者だろうが、賃借人だろうが、
いずれにせよ、そんな嘘だか虚言癖だか被害妄想だかに
蝕まれた奴等にこちらが付き合う必要はない!」
ええい、看過出来ぬ。
無駄なことを考える暇があるんだったら。
いいや、無駄なことを考えるまでもなく。
オマエはただひとつの行動だけおこせばいい。
そうだ。
オマエは労働者階級の人間なのだから、
無駄なことを考えず、無駄口を叩かず、
ただひたすら、ひたすら、
働け働け働け働け働け働け……。
事実、会社の代表者の顔には、そう書いてあった。
ああ、それが経営者の真理。
果て無き沼の主の意思。
労働者とは相容れることは決してない。
ワタシは黙ったままであった。
沈黙の時間など、
数えるに両手の指が余る程だと思われたが、
主にとっては永久の時に感じられたのだろう。
すぐさま、停滞する時を劈(つんざ)いた。
社長
「……もう、いい!
この件は他の奴に引き継げ!」
主は、ワタシの同僚の名を挙げ、
彼にこの立ち退き案件の引継ぎをしろと言った。
命じる社長の顔には、諦めの色が出ていた。
……。
それは不良社員に対する諦め?
ワタシは出来損ない、か?
でも、ワタシは何も、それこそ、
一言も発してはいないのだけれども……。
社長は「もういいから下がれ、他の仕事をしろ」と言い、
手を振り、ワタシを部屋から追い出そうとした。
追い出そうとした……。
ワタシはモヤモヤとした感情を消化し切れずに、
それでも「失礼します」と残し、退室しようとした。
……。
しようとしたのだが、出来なかった。
廊下へ踏み出す一歩が出なかった。
ドアノブに手を掛けたまま、また振り返り……。
ワタシは――。
ワタシ
「……だけれども、ワタシは彼を信じたいと思ってます」
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
なんて、月並みな挨拶ですね。
それもまあ、いいか。
お約束だし。
2005.01.07 金曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第三百十九話−
鳩が豆鉄砲を喰らった顔の社長…の巻。
――その後のことは、ぼんやりとしか覚えていない。
社長に面と向かって吐いてしまった、あの言葉。
思いがけぬ言葉を喰らって、面食らった顔をする社長。
鳩が豆鉄砲を喰らった顔と云うのは、この顔か。
これまでそのフレーズを聞いたとき、
そんな顔ってどんな顔だよっ!!
と思うことしばしばであったが、ああ、この顔か。
そうだ、この顔なんだ――。
鳩豆の顔なんだ――。
――ここで鮮明な記憶が止まる。
社長室から戻って来た後、
ワタシは自席の古い事務椅子に座っていた。
背もたれにもたれ掛かる度に、
その骨董品はキイキイと悲鳴を立てる。
ワタシは目を瞑(つむ)った。
瞼(まぶた)の裏に残った風景は、
靄(もや)掛かり、薄ら寒々とした灰色の空。
その霧中にひとり残されたワタシ。
ワタシの発言に社長は何か云い……、
そして、ワタシは社長に何かを答えた。
それの繰り返し繰り返し……だと思う。
何かを云った。
何を云ったのだろう。
詳しくは覚えていない、が……。
社長室から出た後、顔が火照(ほて)っていた。
顔が熱かった。
それで目が覚めたのだ。
抜け落ちた記憶はここから再開する。
それで、薄っすらとした記憶の答えは――。
その熱さが物語っているだろう。
顔を赤くする程、ワタシは激昂したのか。
感情が面に出たのか。
「ワタシは彼を信じたいと思っています」
フレーズがリフレインされる。
「ワタシは彼を信じたいと思っています」
……その言葉のつながりを受けて、
社長は何か云った。
云った、と云うよりも……。
叫んだ?
怒鳴った?
分からないが、でもワタシが顔を赤くして答えたくらいだ。
それを踏まえたら、恐らく社長も……。
ため息をつき、椅子に深くもたれる。
顔の熱さが残っていたのは、
まだ数分前だと云うのに、
それはもう、遥か昔のように思える。
熱は、急速に冷めていった。
急速冷凍だった。
その時のワタシの心に飛来する想いはただひとつ……。
……ああ、やってもうたあ。
熱くなりすぎてしもうたあ。
ひたすら、後悔の二文字のみであった……。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
知らない間にサイト開設二年目突入です。
これからもごひいきに。
それはそうと。
年明け早々、正月ボケしてくれないくらい、
仕事をこなしています。
頑張っているぞ、オレ!!
と云いたい位、仕事してます。
いや、自分なりにですけど。
明日も頑張れ、オレ!!
1/6 19時
う〜ん・・・心が揺れるわ。
♪揺れる想い〜 体中感じて〜 ですね。
って、何が「ですね」なのかは分かりませんが。
それにしても――。
心の動きを表現するのは、とても難しいことです、はい。
2005.01.08 土曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第三百二十話−
迷い迷いてどこへ行く?…の巻。
何をここまで熱くしてたんだろう。
何がここまで熱くさせたんだろう。
何でここまで熱くなっていたんだろう……。
顔の火照りは泡沫の末に消え、
思いを占領しているのは氷水に漬かったトマトのように、
隅々まで冷え切った心であった。
熱し易く冷め易いの言葉通り、
ワタシは冷めていた。
後悔していた。
自分にとって、縁もゆかりも弱みも強みもメリットもない、
あの男――風船男を信じてみよう。
いや、信じるんだ!
なんて、そんな一念を重んじ、
挙句の果てには社長相手に啖呵を切った。
……実際、啖呵を切ったかどうかは、
ぽっかりと空いた狭間の中での出来事であるので、
明確なまでに定かではない。
だけれども、先程の激昂による顔の熱さから判断するに、
相当のことを言ってしまったのは間違いないだろう。
「ワタシは彼を信じたいと思っています」
ああ……。
何故、こんな台詞を吹いてしまったんだ?
このフロアーにはワタシ以外、誰もいない。
ワタシは背もたれに全身の体重を預ける。
すると、椅子が悲鳴を上げた。
本当に……。
本当に自分自身で追い込んでどうするよ……。
大体、ワタシは……求道者だったか。
苦難辛苦を自らの枷(かせ)とし、真実の道を求め、
そして人間としての道を究める。
そんな世捨て人のような、人間だったか?
…・・・そんな訳がない。
それともただのマゾヒスティックか?
……うーむ、それはあるかもしれないが、
だけれども、オッサンに精神的に追い込まれて、
嬌声を上げるような、ハードな趣味は持ち合わせていない。
……多分。
って、いやいや、ちゃんと否定しろよっ!!
何故、あんな男のために、
自分で自分を追い込まなければならないのだ?
何故……。
……涙。
そうだ、ワタシは彼の流していた涙に拘(こだわ)っていた。
あの場でひとり、男が流した涙の理由。
だから、ワタシは彼を信じた――。
確かに彼は嘘つきかもしれない。
学歴も嘘、職歴も嘘、今までの生い立ちに関すること、
家族のことですら、そのすべてが嘘であった。
でも、自分の最愛の女である占有者A子を退去させる、
ワタシと交わしたこの約束は、必ず守る。
そう確信したのだ。
でも……。
退去を確信するには、弱い材料だよなあ……。
ワタシの心の迷宮は果てしなく続き――。
迷い迷いてどこへ行くのだろうか……。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
拙いですが、ホント、拙いですが、
こーゆー心理描写と云うか、
本題とは掛け離れたディテールを描いていくのが、
ホント好きなんだなあ、と思った次第であり。
はよ、物語すすめろやーっ!!
ってな人には、焦れったいこと、この上ないでしょうが、
もうしばし我慢して付き合って下さい。
1/8 12時
あけましておめでとうございます。
頑張って下さい日記を
あけましておめでとうございます。
今年も宜しく、ごひいきに。
この物語は今年中には完結しますよ。
…・・・多分。
2005.01.15 土曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第三百二十一話−
信じるモノは救われぬ?…の巻。
結局、心の迷宮に取り残されたまま――。
心の中が晴れぬまま、日曜日になった。
所有者Yとの約束――。
占有者A子との話し合いを行う、その日である。
麗らかな冬晴れの午後一番。
ワタシは、占有者のいるマンションから、
程近い地下鉄駅の改札で、彼の到着を待っていた。
本来、休日なのであるが、
交渉となれば致し方がない。
それにしても……。
約束は確かに、した。
次の日曜日の午後一時、彼女と会いに行く――約束。
しかし、午後一時半を過ぎても、
まだ彼は姿を見せていない。
ワタシは午後一時の十分前から、
改札口で仁王立ちしていた。
時間が刻々と過ぎ行くのと比例するように、
自身の内を押し潰す程の焦燥感が膨れ上がる。
未だ現れぬ、風船男。
油脂など摂っていないのに、
じりじりと胸焼けを起こした。
油脂どころか、今日は何一つ口にしてない。
でも、この嘔吐感は一体なんなのだ?
何を吐き出したいのだ?
待ち合わせ場所を間違えたのか・・・…?
とも思ったが、だがこの駅の改札はここだけである。
もしかして、改札口といっても地上出口付近で、
待っているかもしれない。
ワタシは思い立ってすぐ、地上へと続く階段を
ダッシュで上ってみたが、
風船の如き人間はどこにもいなかった。
また改札口に戻り、しばらく後、
見落としたかもしれないと胸騒ぎがし、
再度、長い長い階段を駆け上がり――。
でも、誰もいない。
いや、人は幾らでも、それこそ腐る程いるが、
風船男はいなかった。
落胆の様相で、ワタシはトボトボと階段を下りる。
長い階段を二往復した後に残ったのは、
疲弊感だけであった。
昨日、彼に電話したものの、
電話は通じることなく――。
そして、徒労の中、ワタシは最悪の予感を感じた。
果たして。
果たして……だ。
そもそもの問題として、あいつは来るのか?
そんな根源的な疑問で、ワタシは焦る。
そうなのだ。
あの夜、風船男の方から、
ワタシに話を持ち掛けて来たのだが……。
彼は親公認の嘘つきであった。
だけれども、ワタシは信じた。
嘘つき男を信じた。
あの、涙。
風船男の涙。
ワタシはここ数日、そればかりを後悔していた。
あの涙を見たばかりに……。
所詮、この世は信じるモノは救われぬ、のだ。
信じて、馬鹿を見て、それで終わり。
今回のケースに限ったことではない。
今までも乏しい人生経験の中でも、
多かれ少なかれ、人を信じて、
裏切られたなんてことがなかったか。
あるに決まっていよう。
なのに、なのに……。
風船男は、やはり来ない。
来るわけがない。
そんな約束など、微塵の価値もない。
社長に刃向かったあの日から、
数日来続く、後悔の念はここで絶頂となる。
時間はすでに、二時を過ぎている。
ここで一時間以上待っている。
ワタシは、もう何も感じることすら、出来なくなっていた。
……。
これで終わりだ。
ゲームオーバー。
社長の云う通り、法律的な対処で。
ドライに物事を進めることに。
その通りにしよう。
失意の内に、ワタシは叩き落され。
しかし、虚ろになったワタシの目に――。
あいつが映った。
風船男が、来たのだ……。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
最近、人に酔うことがわかった。
1/14 15時
信じても、たぶん、もののみごとに裏切るんだろうなぁ。
誰が誰をモノの見事に裏切るのか?
それは物語の展開を見てもらえれば、
分かると思います。
2005.01.17 月曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第三百二十二話−
風船男は、やって来た…の巻。
風船男は、やって来た。
約束の時間から、一時間以上遅れて、
約束の場所へとやって来たのだ。
所有者Yは風船のような体を揺らし、
こちらへ向かっている。
彼はそのはち切れんばかりの巨体を、
カーキ色なのか、単に薄汚れているのか、
ヨレヨレのダブルのスーツに押し込み――。
ボタンを留めることは最早、不可能であった。
――そうだった。
風船男のまさに体をスーツで包み込む、と云うより、
オバちゃんがスーパーの買い物袋に、
パンやら肉やら野菜やらを、
ギュウギュウにして、いっぱいいっぱい詰め込む。
まさに、そんな様子に似ていた――。
ハアハアと息を切らせ、歩いている。
風船男にとってみたら、
ここまで歩いてくる、電車に乗ってくる、
ただそれだけでも大冒険なのであろう。
高橋名人の冒険島くらいの勢いの、大冒険だ。
それにしても、よくこんな調子で、毎日毎日、
ファンクラブ活動に精を出すことが出来たと云うものだ。
もしかしたら――。
彼も、彼の父親も口には出していないが、
ここまで丸々と太ってしまったのは、
この数ヶ月、長くても一年程度の出来事なのではないか。
そうワタシは思った。
今となっては、どんな姿だったかまでは分からないが、
以前は少なくとも、普通程度には活動できる位の、
そんな姿であったのだろう。
そう思うと、ちょっと心臓が痛くなった。
何故、痛くなる?
彼の身を考えて?
いや、それとも――?
ワタシが思いの狭間に落ちていたさなか、
ようやく、彼はワタシの目の前に立ち止まった。
彼は――これまたヨレヨレの白のワイシャツの、
首に締めた赤いネクタイが、何故だか痛々しい。
なんだか、血にぬれた首輪のようだった。
ワタシは、視線を彼の首から顔に移す。
冬だと云うのに、額から、じわじわ汗がにじみ出て、
彼の息は荒く激しいものであった。
まるで、エベレスト山頂でも制覇したかのように……。
ワタシ
「……所有者Yさん。
よくぞ、いらっしゃいましたね」
着の身着のまま――。
どこから這う這うの体で逃げ出してきたかのような、
彼の姿を見ると、ワタシは大遅刻をしてきた彼に、
強い言葉をぶつける意欲がなかった。
もっとも着の身着のまま、
と云う言葉の部分は間違ってるかもしれない。
彼にしてみたら、それがヨレヨレであろうと、
着古しであろうと、クリーニングされてなかろうと、
一張羅であることには違いない。
まだ一度しか会ったことがないが、
彼の部屋着と比べたら、
それでも十分、フォーマルである。
彼は彼なりに、今日と云う日を意識しているのだろう。
もちろんワタシと会う、と云うよりも、
占有者A子と会う、と云う、その一点に掛けて。
そんな風船男は息を整え整え――。
ふうふうと息を収めると、
ワタシに言ったのであった……。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
先日、カラオケ行って、その後、血ヘド吐きました。
1/17 9時
来た!
来ました(笑)
2005.01.20 木曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第三百二十三話−
彼女が、待っています…の巻。
所有者Y
「ちょ、ちょ、ちょっとばっかし遅れてしまい……」
改札口の前で、彼は掌(てのひら)で、
額の汗を拭いながら言った。
彼はハンカチは持っていないのだろうか。
もっとも持っていたとしても、
着ているスーツやワイシャツと同様、
ヨレヨレのグシャグシャだろう。
それだったら、手を使って拭うのも、
同じか――なんてワタシは思った。
所有者Y
「……ぼ、ぼ、ボクは、
こんなに遠出するのは、ひさびさ、で。
大変でした。
ええ、途中、体が動かなくなっちゃって――。
彼は自分がここまで来るのに、如何に大変だったか。
彼曰く埼玉の奥の方から、
東京の都心の都心に出ることは、
大冒険――やはり、高橋名人の冒険島並みの、
野生テイスト溢るる大冒険――だと、
どもりながらも、くどくどと言葉を連ねる。
所有者Y
「急いで急いで来たんですけど、
本当に急いで来たんですけど。
でも、半日――本当に半日掛かりました。」
彼のいる自宅の駅から、
東京都心のこの駅の改札まで、
移動時間は二時間弱と云ったところだ。
しかし、彼のこの巨体をみると、
なるほど人よりも移動時間が掛かるのも頷ける。
頷けるのだが――。
その一方で、苛立ちの想いが芽生えてきた。
風船男への苛々感だ。
所有者Y
「だから、しょ、しょーがないですね。
でも、ボクはここに来ましたから。
だから、大丈夫です。
だいじょーぶなんです……」
彼の口からは言い訳の言葉の数々が、
スーパーの特売たまご大安売り、らっしゃっい!!
早く買わないとなくなっちゃうよっ! らっしゃいっ!!
みたいに、ズラズラと並べられていたが、
しかし、最後の最後まで詫びの言葉は出てこなかった。
彼がここに来た――たったそれだけの事実で、
ワタシが得ていた、
ちょっとした安堵感が段々と薄れ行く中、
今度は不躾な彼に対する不満と不安が、
ワタシの心中を覆っていく。
彼に対する思いは――不信感。
たったひとつのこの言葉に集約されている。
不信感。
――その通りだ。
ワタシの得ていた安堵の気持ちなど、
空を掴むような、幻想に過ぎない。
夢幻(ゆめまぼろし)に過ぎないのだ。
風船男への不安からなる、
彼を信じることが出来ぬ心は、高まっていく。
それはワタシの視力にも作用していた。
本当に――。
ワタシの目前にいる、この風船の如きこの男は、
なんて醜悪なのだろう。
彼の背中から湯気のようなオーラが立つ。
嫌悪すべき灰色のオーラだ。
ワタシの顔は露骨にゆがんでいただろう。
だが、風船男はそれに気付いているのかいないのか、
気に留めるそぶりすら見せず、
彼なりのテンションをあげて、声を出すのであった。
所有者Y
「さあさ、行きましょう。
彼女のところへ、行きましょう。
彼女が、待っています」
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
さあさ、週末に向かって、具合が悪くなっています。
1/17 21時
読んでいて面白いと思った
でも長すぎて中だるみした
仕様です。
だらだら書いてますんで、
読んでる方も気持ちがだらだらするのは、
当然なのかもしれません。
1/19 5時
最初から一気に読みました。おもしろかったです。
続き頑張ってください!
はい、とりあえず、今書いてるモノに関しては、
この連載にしろメルマガ連載にせよ、
早々に完結させますっ!
多分。
2005.01.21 金曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第三百二十四話−
固まる風船男…の巻。
……彼女が、待っています、か。
心なしか、自信有り気に云う風船男に、
先程までの挙動不信感はなくなったのか――。
それどころか、彼のどす黒い唇の端には、
余裕の笑みすら浮かんでいる。
その姿に、ワタシは彼の醜悪さを如実に感じた。
実際、今の彼が、ちょっと前の彼と比べて、
精神的ないしは外面的に変化を来たし、
別の物に変化したと云うことはないだろう。
彼は、彼――だ。
しかし、ワタシは風船男に対して、
妙なまでに腹立たしさを得、
それはなかなか治まらなかった。
微妙に微熱の如き、彼に対する嫌悪を持ちつつ、
ワタシは彼と彼女の住むマンションへ向かった。
彼女の占有するマンションは、
改札口を出て、少し歩いたところにあった。
まだ真新しさの残る、タイル張りの外壁。
太陽が照り返されているその様は、
幾ばくかの神々しさまで感じる。
あの、築浅のマンションだ――。
冬晴れの陽差しの中、
ワタシはふと、このマンションまで来て、
占有者A子に門前払い同様、追い返された、
先日の出来事を思い出した。
――話すことはないから、帰ってください。
どんな言葉だったか。
詳細は忘れてしまったが、彼女から、
この手の、拒否の言葉をぶつけられた。
ぐるぐると占有者A子の顔が、
ワタシの脳裏を巡った。
女のことが頭に過ぎると云うのは、
ある意味、男としては当然の生き様、
本能とも云える事象なのかもしれない。
だが、その女が物件を占拠している人間だと、
また話は別だ。
如何なる顔、如何なる仕草であったとしても、
仮にアイドルのような、
顔や体を売り物にしている女であっても、
そこには憎々しさしか残らない。
ワタシは風船男を横目にした。
隣にいるこの男も、かなり憎々しいけどな。
プラス肉々しいけどな。
……。
まあ、いい。
そんなこと考えても、それこそ、仕方がない。
早いところ、仕事を片付けて、
切り上げるか――。
ワタシは彼に、マンションに入りましょうか、
と声を掛けた。
しかし――。
エントランス前の植え込みには、
マンション名が刻まれた、
銅のプレートが鎮座していたのだが、
彼はそのプレートに手を掛けたまま――。
じっと固まっていた。
ワタシ
「あの、所有者Yさん、入りましょうか――」
彼の顔には――。
改札口で見せていた自信の姿が消え去っている。
体は動かない。
額には、流れる汗が陽に照らされて、光っている。
ワタシ
「……あの、所有者Yさん。
所有者Yさん?」
ワタシの呼び掛けに彼は――。
無反応だった……。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
今までのフリがどうに生かされるのか。
次回、話は急展開を迎える!
1/21 16時
高橋名人はまだ名人なのかと、ふと思った
高橋名人は、職業:名人なので、
まだ名人なのでしょう、きっと(笑)
2005.01.22 土曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第三百二十五話−
風船男の思いも寄らぬ言葉…の巻。
依然として、銅版に手を掛けたまま――。
風船男は、自らの重みに耐え切れなくなった足が、
底無し沼にハマり込むように、地中にズブズブと、
埋もれ行く――だから、彼は動けないのだ。
彼は、ワタシにそんな印象を与えていた。
微動だにしなかった。
ただ額からは汗が流れ落ちている。
その様子から察するに、
彼は彼で、テンションを上げなければ、
ここまで来れなかった、と云うことだろう。
彼は、どれくらいの期間かは分からないが、
確実に占有者A子と会うのは、久しいのだろう。
そう思われた。
そんな様子を傍目にし、
彼に対する苛立ちは消えたが、
今度はまた不安感が飛来するのであった。
……ここまで来たのはいいけど、
ちゃんと占有者A子はいるんだろうな?
悪い疑念が渦巻く。
念のため、その旨を彼に確認するが、
彼は、首を振ることなく、ノーリアクション。
ワタシは思った。
……多分、アポは取っていないだろう。
取ろうとしたけれども、取れなかったのか。
それとも、連絡すらしていないのか。
どちらかは分からないけれども、
この様子だと、出たとこ勝負に出ている、
と云うところか。
彼と彼女の関係――。
今、どのように構築されているものなのか、
その事実のところは、ワタシに知る由もない。
良好な関係のようには、到底、見えない。
それでも、この固まっている男は、それでも所有者だ。
ここはひとつ、彼にはビシっと言って貰って……。
正直云って、彼が占有者A子に対し、
何故、家を提供する、
と云った大きな施しを今までしてきたのか、
その真意は分からない。
占有者A子への、自分が惚れた女への、愛情が故?
自分と彼女との間に生まれた赤ん坊のため?
赤ん坊……。
……。
……そうだ。
赤ん坊、だ。
そこにいたのは、まだよちよち歩きすら危うい、
赤ん坊の泣き声だったのだ。
ワタシは、今更ながらひとつ、
事実のミステイクに気が付いた。
占有者A子に子供がいる、
そのこと自体については、嘘ではないだろう。
事実、ワタシが目の前に聳(そび)え立つ、
このマンションを訪問した際、
赤ん坊の声がしていたのだから……。
しかし、ワタシはあのゴミ屋敷での、
彼の言い分を思い出した。
彼曰く――。
このマンションを買った、五、六年前の段階で、
占有者A子は身重だった。
そうなのだ。
ワタシが聴いた赤ん坊の泣き声は、
五歳の子供のそれではなかったのだ。
したがって、少なくとも、
マンション購入時に占有者A子が、
身篭り、出産したであろう、その子供は、
この赤ん坊とイコールではない。
そんな単純な事実を、ようやく思い付くに至った、
自分の間抜けさに、思わず苦笑する。
でも、だとすると――。
ここまでまた新たな疑問が生まれる。
だとすると、五歳くらいの子供はどうしたのだろうか。
……。
もっとも、ワタシはあの時、夜の遅くに訪問したので、
その子は部屋の寝室で寝ていたのかもしれない。
まあ、そうしよう。
それがスマートな考え方だ。
それでは――と次なる疑問。
あの赤ん坊の父親は誰だ?
目の前の、固まっている風船男か?
ただただ銅像のようになっているこの男が、
赤ん坊の父親か――?
ワタシは直感的に違うと思った。
根拠はないが、しかし、彼の今の態度を見ていると、
ここに通い慣れている風ではない。
いや、それどころか、彼女と話すことすら、
相当の期間、なかったのではないか――。
そんな状態で、子作りなど出来るか?
他の、誰かか――。
そのことについて、風船男に問おうと思ったが、
止めておいた。
それは当人同士の問題だ。
そこまでワタシが関わる事など、出来ない。
ワタシはもう一度、彼に声を掛けた。
風船男にマンションの中へ入るよう、促した。
ワタシ
「さあ、もう行きましょう。
ここまで来たのですから。
アナタは頑張って、ここまで来たのですから――」
風船男は、ようやく意を決したかのように、
手を銅のプレートから離したかと思うと、
拳を握り、軽く頷いた。
そして、重い足取りでマンションのエントランスに入る。
ワタシも彼に続いた。
よろよろとマンションの呼び出しのコンソールに近づく。
そこでも彼は固まり掛けたが、
ワタシが彼女の部屋を呼び出すよう示唆すると、
今度はすぐ頷き、震える指でキー操作をした。
占有者A子のいる部屋に呼び出しが鳴る。
すぐ、相手は出た。
若い女の声だ。
聴き間違えることもなく、マスウラの事務所で出会った、
あの女――占有者A子の声だった。
彼女は、「はい?」と答えた。
彼は――何も答えようとしない。
風船男の脇を少しこづいたりしたが、
何の反応も示さない。
ワタシは思わず、隣からコンソールに向かって言う。
ワタシ
「あの、占有者A子さん?
ワタシですよ、ワタシ。
この前、退去についてマスウラさんの事務所で、
お会いした者ですけど――」
占有者A子は、あからさまに嫌悪の含む声で、
「ああ……」とだけ言った。
ワタシ
「ああ、じゃないですよ、占有者A子さん。
今日はね、もう知ってるか知らないかは、
分からないですけど、一緒に来ましたからね。
ここのオーナーと。
隣にいるのは所有者Yさんですよっ!
知ってるでしょう、Yさん。
今日はね、Yさんを交えて、今後の話をしましょう、
と云うことでこちらまで来たんですからね。
そうですよね、Yさん?」
ワタシは彼に話を振った。
彼は、何か言いたげであったが、
なかなか言葉が出てこない。
「あの、所有者Yさん?」とワタシがもう一度、
脇をこづくと、彼は無理やりひねり出す様に、
苦しげに言葉を吐いた。
その言葉は、思いも寄らぬ言葉であった。
所有者Y
「……そこにいる、オマエは誰だ?」
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
手先が割とかじかんでいて、
キーボードを打つのがちょっと大変だったり。
今回は、少し長めに話を進めてみました。
はてさて、どのような結末を迎えるのか?
それは神のみぞ、知る?
1/22 14時
ページ内に不適切な単語があると、
せっかくのgoogleの広告も
0円の公共広告になっちゃいますよ。
あ、そうなんですか。
んでも、不適切な単語ってなんでしょうかね?
ワタシのサイトには、そんな単語が、
いっぱいありそうです(^^;
2005.01.24 月曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第三百二十六話−
そこにいる、オマエは誰だ?…の巻。
所有者Y
「……そこにいる、オマエは誰だ?」
一瞬、風船男はワタシに対して、誰だ?
と云っているかと思ったが、
だが、やはり彼の矛先は、
インターフォンのその先に向けられていた。
……。
こいつは……こいつは、何を言ってるんだ?
ワタシは風船男の一言に、
戸惑いと云うよりも、咄嗟のことで、
彼が何を言っているのか、判断できなかった。
しばし、呆然。
風船男、占有者A子、そしてワタシ――。
”ガマ”、”ヘビ”、”ナメクジ”の三すくみ関係のように、
三者が三者ともお互いに、
睨み合ったまま黙っている。
――沈黙。
その成り行きに従うが如く、
ワタシは意識が遠のき――。
だが、そのまま気を遠くしていられる訳がなく。
ワタシは微かに残滓(ざんし)していた理性で、
どうにか正気を呼び戻した。
もっとも正気を戻したといっても、
それで冷静には判断できない。
依然として、彼の言葉への疑問だけが残存する。
……この男の意味が分からない。
意味と云うより――真意か。
仮にこのインターフォンの声の主が、
占有者A子ではなく、一緒に同居している母親だったら。
彼の言葉に一理も二理もある。
だが、短い言葉ではあったが、
その可能性は万に一つも無く。
間違いなく、あのふてぶてしさの残る声は、
歌舞伎町の古ぼけたビルの地下室で聞いた、
あの女の声だった。
これを間違えるようだったら、
余程のモノマネ四天王が占有者だと云うことだ。
彼は納得のいかない顔をしている。
誰かに頭でもぶん殴られて、
その勢い凄まじく、記憶喪失にでもなったのか。
それとも、インターフォン越しとはいえ、
占有者A子と久々の久々の会話をした風船男が、
緊張のあまり、テンパってしまったのだろうか。
まるで女子と話をしただけで鼻血を出してしまう、
中学二年生男子みたいに。
そういえば、隣にいるかの男も、
いつの間にやら、顔が真っ赤だ。
今にも鼻血を出さん、と云った体である。
もしや、風船男は、エロ妄想モード全開か?
占有者A子の声を聞いただけで、
顔を真っ赤にして、意味不明な言葉を吐いて。
こんな状況下において、か。
しかし――。
この場合、状況が違うようだ。
彼の場合は、
女子に対する淫らな妄想故ではなさそうだ。
それとは違う。
その顔は肉欲に対する願望ではなく、
ふるふると唇を戦慄(わなな)かせている――。
彼女に対して、だ。
そうだ――。
これは断言するのならば、怒りなのだ。
彼は彼女に対して、怒っている。
彼は憎しみのこもった声で、再び糾弾した。
所有者Y
「……一体、誰なんだ?」
押し殺した彼の問い掛けに、彼女は答えなかった。
かといって、インターフォンの回線を切ることもしていない。
そこにあるのは、無であり――。
コンソールの通話口から、
微かに、空気の漏れる音がするだけであった。
またもや、だ。
彼も、彼女も、ワタシも、言葉を失い、
白い空白の時が過ぎようとする――。
その時、その空間をビリビリと引き裂いたのは、
風船男だった。
ふと、すべてを悟ったかのように風船男は、
顔をくしゃくしゃにさせて、言った。
風船男は彼女に突きつけたそれは、
ナイフの刃先のような、鋭い言葉であった。
所有者Y
「分かった、アンタは・・・…」
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
急ぎの仕事を多数抱えています。
さあ、ここからがワタシの本領発揮です。
仕事こなすぞーっ!!
1/23 14時
フレディVSジェーソン・プレデターVSエイリアンみたいに
ドイガキVS風船男みたいな展開はどう?
どっちも雑魚なんですが、
それはそれで面白いかもしれませんね(笑)
1/23 16時
おぉ!珍しく急展開!また、もつれるの?
最後の山場はもうまもなくです。
さてさて、どうなることやら……。
2005.01.31 月曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第三百二十七話−
ニューカマー光臨!?…の巻。
所有者Y
「分かった、アンタは……」
風船男は、即座に断言した。
その様はあたかも、
死刑を宣告する判事のようでもあった。
所有者Y
「アンタは……。
アンタは……A子の姉か」
……!
占有者A子の姉……って!
新たなるキャラ登場!?
ニューカマー光臨!?
ワタシの脳中では、ステージの上、
スポットライトを浴び、
ドライアイスのスモークが沸き立つ中、
ゴンドラから降りてくる――今時、
恥ずかし過ぎるシアワセ結婚式の挙式カップルか、
はたまたアイドル全盛期の松田聖子か、
と云った演出みたいだ――そんな光景が、
色鮮やかなイメージとして浮かんだ。
残念ながら、スポットライトと下から照らすライトの光が、
あまりにも強過ぎ、逆光となり、またスモークのせいで、
彼女の顔はよく見えない。
誰なんだ、オマエってヤツは……。
姉ってなんだ?
誰なんだ……?
あっ!
そう云えば……。
一筋の閃光。
そして、ワタシは思い出す。
ゴミ屋敷での風船男との話の中で、
そんな話題が出たか――。
確か、心の病を患っている姉と云う存在。
その話題が出たときは、
あっさりと聞き流しており、
気にも留めなかったが……。
ここで、こんな風に、登場するとは……。
ただ――、ともワタシは思う。
彼はその姉の存在を認知していても、
実際に会ったことはないと云っていたが、
しかし、彼の憎しみのこもった言葉は、
また同時に確信に満ちていた。
そうだ、オマエは占有者A子の姉だ。
姉に違いない。
姉に決まっている。
オマエだ。
オマエは……占有者A子の姉だ!
彼の心の内にある思いは、
あたかも背中から煙立つオーラのように、
黒々としており――。
エントランス内が、一気に負の気で蔓延し、
ワタシは圧迫されそうになった。
潰されそうだった。
そんな重い重い空気を相手も感じているのか、
対するインターフォンの女は……。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
更新すごい遅くなりました。
最近、めちゃめちゃ忙しいです。
仕事に忙殺されるとは、このことですね。
いやはや、にんともかんとも、にんにん。
1/24 23時
旦那は〜ん 面白うなってきましたなぁ〜・・・。
面白くなって来ました?
よかった、よかった。
1/25 15時
おもしろくなってキター(゜∀゜)ーー!
ですかー。
おもしろいと云われるのは嬉しいですねー。
1/26 16時
疲れた後の一服タイムに見ています。頑張りや〜
ほどほどに頑張らない程度に頑張ります。
ワタシも一服しながら読めるような、
気軽なテイストを目指しています。
1/28 12時
更新マーダー?チンチン
仕事がきつくなると、
更新はどうしても遅くなっちゃいます。
これから、いろんな仕事やらイベントやらが入りますので、
まあ、ほどほどのペースで更新していく予定です。
1/29 11時
お前は誰だ、誰だ、誰だ、
あれはデビル、デビルまーん、デビルっま〜ん
ある意味、悪魔なのかもしれませんねー。
1/31 10時
なんだもう止めたのか。
何を止めたんでしょうかね?
2005.02.01 火曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第三百二十八話−
彼と彼女の心の扉は開くのか?…の巻。
そんな重い重い空気を相手も感じているのか、
対するインターフォンの女は……。
無言を貫いていた。
だが、彼女が発言をしないことは、
風船男にとって、非常に許し難いことであり――。
所有者Y
「……だから、そうなんだろ?
彼女――A子じゃないんだろ?
じゃないんだろ、じゃなくて、ないんだ!
違うんだ、A子じゃないんだ!」
風船男の声のボルテージは、
彼女の沈黙と反比例するように、
飛躍的に高まっていく。
彼の場合、声がキンキンと甲高くなっていくことが、
激昂している証と云えよう。
その額には、血管が浮き上がり、
流れ落ちる汗はヨレヨレのジャケットの肩に、
染みを作っていった。
ダークなオーラが支配する場で、
ただでさえ息苦しさを感じていると云うのに、
ワタシは風船男の肩に出来つつある染みから、
あの背広のなかのワイシャツは、冬だと云うのに、
もっと深刻な染みの被害にあってるのだろうな、
などと余計なことに気を取られた。
またその大災害にあっているであろう、
これまた、ただでさえぐちゃぐちゃによれた、
彼のワイシャツの惨状を思い描き、
その様、その色、その臭い……が容易に想像され、
ワタシは勝手に気分が悪くなっていた。
むろん、ワタシの具合さ加減など、
当人にとってみたら、検討に値するものではなく、
彼のヒートアップは、頂点を迎える。
所有者Y
「……違うんだよ。
そうじゃない、そうじゃないんだよ!
彼女じゃ、か、か、彼女じゃないんだよ!
オマエは、ボクの、ぼ、ぼ、ぼ、ボクの……」
絶頂に至った彼の叫びは、
最後の言葉を告げるまでも無く、
途中で途切れた。
オマエは……。
オマエのことなんか、どうでもいい。
ああ、A子。
ボクのA子……。
ボクのA子は今、いずこに……。
彼の声にならない声は、
まごうことなく、彼女――占有者A子に向けられていた。
インターフォン越しの女ではない。
ワタシは言葉がなくなり、
ただ呆然の体の風船男を押しのけ、
彼の代わりを務めるように、
コンソールに向かって話し掛けた。
ワタシ
「あの、ちょっとワタシは……。
理解は出来ないのですが。
まあ、いずれにせよ、ここで立ち話というのも、
アレですし……」
その女は、ふううとひとつ大きな息をつく。
女のため息が、コンソールから聞こえてきた。
また一瞬の沈黙。
すると、この状況に女も観念したのか、
ワタシと風船男の前に門番よろしく立ちはだかっていた、
エントランスのオートロックのガラス扉が開いたのであった。
目前を遮る、ガラスの扉は開いた。
しかし、オートロックが開くように、
彼の心の扉、そして彼女の心の扉が、
そう簡単に開くようには、到底思えなかった。
その後……。
女は、一言、「入ればいいじゃないの」とだけ言い、
インターフォンの回線が切断される音だけ、
ぷつりと小さく響いた……。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
あいもかわらず、忙しいです。
今日はパソコンで会社のパンフレットなんぞを作りました。
硬い文章はやっぱり苦手です。
2/1 12時
うお〜〜はやく続きを!!!
(ドラマの台本になりません?この話。オムニバスで。)
面白いネタはいっぱいあるのですが、
それを文章化する時間がなかなか取れませんねえ。
2005.02.03 木曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第三百二十九話−
オートロックの惨劇…の巻。
風船男はその場に留まり、
なかなか動こうとしなかった。
しかし、せっかくオートロックが開錠されても、
しばしの時間で自然に閉まってしまう。
だから、ワタシはオートロックのガラス戸を遮ろうと、
半身を乗り出し、片手で風船男の肩をさすった。
ワタシ
「ほら、所有者Yさん、
行くよ、ほら。
彼女のところに行かないと。
もう、扉、閉まっちゃうよ……」
扉、閉まっちゃうよ……。
そんなワタシの発言に刺激されたのは、
風船男ではなかったようだ。
ワタシがそう言うや否や、
オートロックの冷たい自動扉は、
予想以上に動きは俊敏にして、
ターゲットロックオン!
狙った獲物は逃がさない、と云った体で、
その身に喰らいつくかのように閉まり、
ワタシを挟むのであった。
激痛とまではいかないが、
ガラス扉がワタシの痛覚のツボにジャストフィットする。
こんな時だけ、鮮やかなまでのクリーンヒット。
……い、痛っ!
ああ、人間の五感のひとつ、
触覚機能の鋭さを痛切に感じる、
今日この時、この一瞬である。
自動ドアは、ワタシに喰らいついたことで満足したのか、
またもやその口をあけるかの如く、
扉は開いたのであった。
実際に声に出した言葉は、
人の手前でるし、第一ワタシもいい大人であるから、
この程度だったが、ワタシは心の中で絶叫していた。
……い、い、い、痛いっ!
マジ、痛いっちゅうの!
ホント、単純に痛いぞー!
ちゅうか、この自動ドアは、
セイフティーみたいなのはないのか!?
閉まる扉の軌道上に、人がいるんだから、
それをセンサーが自動で感知して、
自動的に寸止めするのがフツーじゃないか?
――人として。
って、自動ドアは人じゃないけれども。
それでも、人の造りあげしモノとして、
そーゆー安全機能をつけておけってんだっ!!
朝までぐっすり、動いても漏れない、
横漏れ防止機能みたいな、さー!
……。
ワタシは「扉が閉まる」と言っており、
現実、その通りになっただけなのだから、
誰かに――仮にそれがオートロックであったとしても、
怒りをブツけるいわれなどないのであるが、
人間と云う動物は、その事象に対して、
何らかの帰結を求める存在であり――。
むろん、ワタシも、だって人間だもの、
と云わんばかりにそんな動物であるのは、
云うまでも無く――。
心の内で展開発展する怒りの矛先は、
所詮は無機質のガラス扉から、
ワタシがそれに挟まれるに至る、
大元の原因に向かった。
その元凶は――。
むろん、風船のような男、所有者Yである。
ワタシ
「ほらほら、そこでぼけっと突っ立っても、
何も始まらないだろ!?
ほら、こーやって、
オレがいないとまたこの扉は、閉まっちゃうんだからさ。
さあさ、早く行くよ!
彼女のところへ!!
彼女に会いに着たんだろ!?
だから、とっとと歩け!!」
少々言葉が荒めになる。
それも仕方の無いことであろう。
風船男はワタシの言葉――それも、
彼女の存在を示唆した言葉に、
ぴくりと反応したのだろう。
ようやく、重い腰を上げ、うな垂れながらも、
オートロック扉の軌道を越えた。
その奥にある、エレベーターへと向かっている。
……やれやれ。
世話の焼けるオッサンだこと。
なんだか、頭が痛くなったワタシであったが、
またもや、オートロックに挟まれ、
再度、体までが痛くなるのであった……。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
我ながら、小ネタが好きなんだなー、
と思うワタシだったり。
オートロックとかエレベーターとか電車とか、
割とよく挟まれています。
なんか、駄目な臭いが漂いまくりですね。
2/2 10時
いよいよ佳境に入ってきましたね!
またどんでん返しあるのかな?
いつも楽しみにしてます
楽しみにしてもらえると、単純に嬉しいですね。
どんでん返しは、どうでしょうか?(笑)
2/2 16時
あれ?てことは、
Gさんは元アイドルには会っていない?
……いいところに気がつきましたね(笑)
さてさて、どうなるんでしょうか。
2/3 0時
仕事終わって毎日夜中に見てます!次の日寝不足です!
それはそれは、どうもです。
毎日更新できなくて、すいません。
出来るだけ更新してますんで、よろしくです。
2005.02.04 金曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第三百三十話−
後ろぴったり横漏れ防止ガード大作戦!…の巻。
どうにか、だ。
どうにかこうにか、風船男は鉛で出来た体を、
これまた引き摺るようにして、重い足取りを運び、
エレベーターに乗り込んだ。
ワタシは彼の背を追うようにして、
後ろにぴったりとついている。
ワタシの目線の先にある、顔と同じく、丸い背中――。
じっとりと汗に塗れてよう、その背中に、
今日の、立ち退き交渉の成果が掛かっている。
この男は、重要なキーを握っているのだ。
万一、この男が逃げようとしたら、
その対処をしなければならない。
彼が逃亡を図っても、
見す見す取り逃すことなんてないとは思う。
だがワタシが後ろにいれば、
彼をブロックすることが出来るであろう。
まさしく備えあれば憂いなしの精神であり、
そのためのワタシなりに思いついた策がこれである。
ワタシの考えた策――。
題して、後ろぴったり横漏れ防止ガード大作戦だ!!
いや、別にびっくりマークをつける程、
大層な作戦じゃあないんだけど、実際。
……とは云え、重石のような体を持つ彼が、
普段の動きとは全く異なり、
物凄い勢いでこちらに向かってきたら――。
火事場の馬鹿力とか、窮鼠猫を噛む、
と云った言葉があるように、
人間、何らかの急場には、
思い掛けない力を発揮するやもしれぬ。
今日のこの場は――。
彼にとって、立派な急場であり、
人生の一大事といっても、差支えが無いだろう。
彼がいつも以上に、尋常ならぬ力を発揮し、
猛突進で体当たりを食らわされたら、
吹っ飛び、跳ね飛ばされること必至だ。
不測の事態を想定したワタシは、
少し、前屈(まえかが)みに身構えつつ、
彼の鈍(のろ)き行進に、後追いしていくのであった。
しかし、幸いにして彼は逃亡者になることなく。
かくして、問題の部屋の前に立ったのだった。
彼女の――占有者A子の住処である。
その部屋に来たのだ――。
……。
あと、もう少し、だ。
ここが、完全な形でウチの会社のものになる。
それまで、あと間もなく、だ……。
ワタシは、少し感慨深くなった。
今までの苦労が、走馬灯のように思い浮かぶ。
あんなこと、こんなこと、そんなこと、どんなこと。
思い起こす顔は、マスウラやルリカワ、
ニセ仙人、そして風船男――。
ああ、なんだ、このメンツ。
一癖も二癖も三癖もある、
フツーじゃないオッサンやジジイどもの顔ばかり浮かぶ。
そんなワタシのケーバイデビュー。
競売に参加している人たちは皆、
こんな薄ら寒い男どもと対峙しているのか――!
ああっ!!
思わず、心の中で叫んだ。
心の叫びは、荒い鼻息の音に掻き消される。
その鼻息の主――。
ドアの前に仁王立ちする、風船男。
顔が、どす黒く変色していく。
またもや、怒り沸々と沸き立つ、
と云った感であった……。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
今回の元アイドル編が終わったら、
次なる「対決!占有者」シーズン・フォーは、
レフォルマの本体サイトで連載しようと思っています。
……となると、ここはどうしようかなー、と。
んー。
同時にここでもシーズン・ファイブを連載する?(笑)
って、その前にサード・シーズンの、
メルマガも話を進めないとですねー。
2005.02.06 日曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第三百三十一話−
そして、彼女は現れた…の巻。
風船男は、ふるふると怒りに震える指で、
インターフォンのボタンを押した。
何度も何度も押す。
ちくしょう、ちくしょう、と呟(つぶや)きながら。
ワタシは、まあまあ、と彼をなだめた。
まだ占有者A子――彼は違うと云っているが、
彼女と対面していないと云うのに、
すでに負のパワー全開である。
先程、石像のように固まっていた
その反動もあるのだろう。
怒りを蓄積させ充電させていた分、
その放電の凄まじさたるや、相当のものである。
実際に、彼女が出てきた時、どうなるのか――。
大体にして、ワタシは事態があまり飲み込めてない。
彼の思い、彼女の考え――。
それ以前に、今、この部屋にいる彼女は誰だ?
占有者A子は、彼のA子そのものなのか、
それとも、彼の云うA子の姉という存在か……。
だが、極端な話、彼女が誰であるなんてことは、
そんな重要な問題ではない。
それよりも何よりも、早いところ、話をまとめて、
立ち退きを完了させたいし、
それこそが根本的な目的である。
要するに、終わりよければ全て良しの精神だ。
結果が、見事に完結すれば、
その過程は、どうであってもいいのだ。
しかし、結果がこちらの思い通りにならないといけない、
と云うのは、それはそれで相当のプレッシャーであり、
その過程がどうでもいいと云っても、
上手く終わらせる方向――そのレールに、
話の流れを乗せなければならない。
それがワタシの役目である。
だから、いろいろ思うところは多々あるが、
ここは状況を冷静に見つめる目が必要なのだ。
そんなことくらい、まだ交渉経験が薄いワタシですら、
分かるようなことであり、自明の理である。
ワタシまで熱くなってはならないのだ。
自身の熱を冷ますように、ワタシは深呼吸をした。
冷たい外気を吸って、内から冷却して――。
ただ深呼吸をした際、
風船男から発せられている、
つーんと目に来る、
饐(す)えた臭いも一緒に吸い込んでしまい、
少々、咽(むせ)るのであった。
ワタシ
「そんなに、ボタン押さなくても、
彼女は出てきますって――」
執拗にボタンを押す風船男に対し、
そのような言葉を掛け、制した。
冷静に、冷静に――。
感情的な状況にあっては、
話しは絶対まとまらない。
所有者Y
「でも、でも、彼女は、あの女は……」
ワタシ
「実際に会って、そして話してみて、
はじめてその状況が分かるんじゃないですか。
勝手な想像や憶測だけで、
判断出来るものではありませんよ」
所有者Y
「……」
ワタシの言葉を受けて、
風船男は、渋々ながらもボタンから指を離した。
果たして、カチャと玄関ドアの開く音が聞こえ――。
そして、彼女は現れたのであった……。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
冬はやっぱりおでんですね。
ちくわぶ最高!
んでも、関東圏以外だとちくわぶって云っても、
それってなに?
ちくわの間違いじゃないの?
と云われること、多々だったりするみたいで。
2/4 23時
ウェーン、斬られちゃったよー。
斬られちゃいました?
って、誰に?(笑)
2005.02.07 月曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第三百三十二話−
やっぱりオマエか?…の巻。
ドアの隙間から覗く彼女は――。
物憂げな表情と云うよりも、
ただ単に腫れぼったい顔をしていた。
彼女は、ドアの内側を片手の肘で抑えながら、
ああ……とだけ言った。
その声のトーンからして、ウザったそうだった。
風船男とワタシは、ようやく彼女と対面したのだ。
彼女の虚ろにぼんやりとした眼差しは、
風船男やワタシに向けられるものではなく、
そこに何もない空の先を見つめていた。
彼女の着ているものは薄手のパジャマと云った塩梅で、
真っ白な顔は、ノーメイクのスッピンだった。
空いた片手で充電式のホットカーラーを持ち、
さかんに右側の髪を撫で付けている。
真昼はとうに過ぎていると云うのに、
起きたばかりといった寝癖直しのようだ。
それにしても……とワタシは思う。
なんだろう、この色気の無さは――。
幾らスッピンで腫れぼったい顔だとは云え、
彼女はまだ若い女であるし、
また下着は見えないものの、
その胸元は無駄に開いている。
第一、顔立ちが少々キツイ点を除けば、
十人並み以上の彼女。
そんな女を見たら、まあ、それはそれ、これはこれ。
どんなに嫌な相手であっても、
綺麗な、もしくは可愛い女に対して、
男としては多少なりの女の色香を感じるのは、
男の摂理として当然のことであろう。
だが、その時のワタシには、
微塵もそんな気分に陥る事無く、
ただただ早いところ、仕事が終わらないか。
ワタシの思いは、その一点のみに集中していた。
もっとも、彼女に性的なものを感じなかったのは、
その状況下における、
特殊性ゆえと判断出来るかもしれない。
彼女は使っていたホットカーラーの電気を消し、
靴箱の上にそれを置くと、
ゆっくりと髪の毛を撫で付けていた右手を下ろし――。
女
「……話って何?」
彼女はやはり、視線を逸らし続け、
誰にともなく聞いた。
ワタシは「話って何だ、
と聞くどころの騒ぎじゃないだろう」
と思ったが、それを口にすることはなかった。
彼女の顔をじっと見つめていた風船男は、
すべてを理解したかのように、その口を開いた。
所有者Y
「……やっぱり、オマエか?」
しかし、彼女は、彼の言葉に対応するでもなく、
いつまでも虚ろな目をしていた……。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
コンタクトやら目が乾くー。
と云うことでもうまもなく、花粉症の季節到来ですね。
今年は物凄い花粉が飛ぶとか。
非常に迷惑なことこの上ないです。
ホント、例年以上にツライ季節になりそうで、
今からトホホな感じです。
2/6 14時
彼女は一体誰だったのでしょうか・・・気になります!
彼女の正体は……。
次回分かります。
2/6 14時
「Yahoo! Internet Guide」見ました!
載ってましたねえ。
やっぱ多少でも載ってると嬉しいですね(笑)。
2005.02.08 火曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第三百三十三話−
ふーん…の巻。
所有者Y
「……やっぱりA子じゃない!
オマエはA子じゃない!
ぼ、ボクのA子じゃない!
そ、そ、そ、そう、じゃないんだっ!!」
風船男は非常に強い口調で言い放った。
誰かを攻めて立てるそんな口ぶり。
その攻撃の矛先は、無論――。
依然としてウザったそうな表情を見せている、
この女に相違ない。
風船男の怒りはもう沸点を超えていそうだった。
そんな彼の隣に突っ立っていたワタシはと言えば
吹きさらしの外廊下ではないのに、
心なしか寒風吹きすさむ。
そんな寒さを心の内に感じる中、ワタシは――。
ワタシ
「……!」
そうだ――そうなのだ。
心の中が大寒波に見舞われているワタシだったが、
今更ながら、分かったのだ。
彼がA子ではないと云っているこの目前の女。
――そうなのだ。
ワタシは、すべての仕草がだるそうな様を見せる、
この女と会ったことがある。
それは、どこで?
もちろん歌舞伎町のマスウラの事務所で、だ。
エントランスのインターフォン越しに聞いた、
その声の感じからして、あの女だとは思っていたが……。
これで想像は確信に代わった。
間違いない。
この目前の女は、占有者A子と名乗っていたあの女だ。
そして涙を見せていたあの女だ。
何はなくとも、
彼女のセックスアピールがどうこうと評するよりも、
まずはその点にハッとしなければならないのに……。
自分の間抜けさを呪った。
所有者Y
「オマエは……彼女に似ているけど、
彼女じゃない!
A子じゃない!」
――だが、どうだ。
あの時、自分が占有者A子だと名乗った女を、
この部屋の所有者たる風船男は、
こんな女に貸した覚えは無い!
オレがここに住んでもいいと部屋の鍵を渡したのは、
占有者A子である、と糾弾している。
対して攻撃の的たる彼女は――。
風船男の言葉など意に留めることなく、
手持ちぶたさになったのだろうか。
右手を後頭部にもっていき、
盛んに少し跳ね上った髪を撫で付けていた。
所有者Y
「……ぼ、ボクはあったことはないけど、
ボクには分かるんだ。
彼女に似ている、オマエ。
お、お、お、オマエは誰だ?
そんなのに対する……。
こ、答えは、タダ一つじゃないか!」
風船男は発汗し、発奮し、
ついでに発糞までしているのではないか。
そして、その顔色のドス黒さたるや、
もはや倒れんばかりの勢いである。
彼はその女を見据えている。
しかし、その瞳はどこか遠くにいるであろう、
占有者A子を追い求めているようであった。
所有者Y
「……オマエは、オマエはA子の姉だ!!
それ以外、ありえない!!」
玄関ドアにチェーンを掛けたまま開く、
その隙間から覗く彼女は、
だんまりを決め込んでいた。
三者三様の沈黙――。
その重く静かな時間は破られた。
かくして、やはり面倒臭そうな表情をしたまま、
髪を撫で付けていた手で、
こんどは荒々しく髪の毛を掻き毟ると――。
女はやっと、口を開いた。
女
「……ふーん……で?」
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
最近、パスタブームがワタシのなかで到来しました。
毎日、パスタばっかりです。
特に明太スパ最高っ!!
ということで、食生活がめちゃめちゃ偏っている、
今日この頃だったりするわけで。
2/8 11時
Gさんってとてつもなくいい人のような
気がしてきたのはわたしだけ?
いい人なんですかねえ。
最近、いい人ってのを褒め言葉として感じとることが
出来るようになりました。
ワタシも大人になったと云うことですかね(笑)。
2/8 13時
花粉、今年は凄いらしいですね。
Gさん頑張ってください。
今年の花粉大変ですー。
死なない程度に頑張りますっ!!
2005.02.10 木曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第三百三十四話−
弱者を下に見る強者の発想…の巻。
女
「……ふーん……で?」
彼女は動じる事無く言った。
その彼女の様は、動揺を抑えるため、
演技をしている風でもなく、ごくごく自然体であり――。
そして彼女の表情は不自然なまでに、
投げやりであった。
彼女は言葉を吐き捨てる。
女
「だから……何?」
ワタシは思わず、唖然とした。
いやいや、「だから……何?」じゃないだろう。
なんだ、このふてぶてしさは――。
光を放たぬその目を虚空に向けて、
ある意味、弱者を下に見る強者の発想、
と受け止められるような発言をしている彼女。
この女は一体、自分の立場や分といったものを
弁(わきま)えているのだろうか?
ワタシは怒りに打ち震える風船男を差し置き、
彼女に話し掛けた。
根本的な質問を投げ掛けたのだ。
ワタシ
「……で、何じゃないですよ?
それよりも何よりも……。
あの、占有者A子さんですよね?」
ワタシに対して彼女は、
占有者A子と名乗っていた。
それに、あの事務所で、マスウラもルリカワも、
彼女の事をA子だと言っていた。
――A子さんがかわいそうだ。
マスウラのねちっこいダミ声がどこからともなく、
聞こえて来る。
確かにあのダミ声の男は、そんなことを言っていた。
彼女はA子さんです、と。
ワタシ
「……どうなんですか?」
一向に答えようとしない彼女へ、
ワタシは答えをするよう促した。
それでも、無言。
彼女はワタシの言葉を受けても、
これまで通りと云うべきか、
気だるい表情で固まっている顔をしていた。
だが、しばしの後、
彼女はその口元を薄く開き――。
女
「……違うよ。
アタシはA子じゃないよ」
すると、今まであらぬ方向を見ていた彼女の視線が、
ワタシの隣――そう、風船男に向けられた。
彼女は毒でも吐き出すかのように、続ける。
女
「……この人が言ってるのが正解。
アタシはA子じゃないよ。
A子はアタシの妹。
ただそれだけの話よ」
彼女――占有者A子姉は、
事も無げにあっさりと言うのであった……。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
インフルエンザに注意です!
風邪やら花粉症やらインフルエンザやら、
病原菌やら花粉やらが舞いに舞っている、
今日この頃。
体にはくれぐれもご注意を。
2/9 11時
占有者A子改め、A子姉は
自分のおかれている立場がわかっていませんね〜!
立場と分を弁えていない、
オレ流的発想が、次回炸裂します(笑)。
2/10 0時
パスタかぁ。西原理恵子だったかな、
”イタ飯は糖尿飯”と言ってたの。
やばい、イタ飯大好きだったり。
サイゼリヤ万歳!!なのにい。
2/10 0時
職場で「報道ステーション」を観たら
「日本、北朝鮮に快勝!」とテロップが。
家に帰って北海道新聞のウェブページを観たら
「日本、北朝鮮に辛勝」。どっちなんだ。
私はサッカーに興味がないから、
どっちが勝っても何とも思わんけどね。
昨日の日朝戦は、ギリギリの辛勝でしたねえ。
まあ、勝ちは勝ちですが。
ワタシの場合、お祭りサッカーのみ、
テレビで見る、バリバリのにわかサポーターです(笑)
2/10 0時
Gさん、糖尿に気をつけてね。
はい、気をつけます。
2/10 0時
Gさん、北海道に来ればいいっしょ。
スギが生えてないから、花粉症になりにくいよ。
スープカレーオイシイよ
スープカレー、旨いですね!!
ちゅうか、基本的に北海道好きですよ。
食べ物旨いところはいいです。
2/10 15時
ローンの承認おりませんでした。
社長!私をそこまで怒らなくても・・・
それは買主さんのローンの承認ですか?
物担か、属性か分からないですが、
担当者としては、たまったもんじゃないですねえ。
2/10 15時
来週 執行に立ち会います
占有者なんか嫌いだ!!!
まあ、強制執行まで行わざるを得ない、
そんな占有者に対して、叫びたくなるのは、
分からないではないですねえ。
2005.02.12 土曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第三百三十五話−
間近で見る、リアルホラー…の巻。
彼女が自分の正体をあっさりと口に途端、
風船男は、矢継ぎ早に囃(はや)し立てた。
所有者Y
「……じゃあ、じゃあ、じゃあ!
彼女はどこにいるんだ!?
A子はどこにいるんだ!?
だ、大体……大体だな!
こ、こ、ここは、A子に貸したんだぞっ!」
口から泡を飛ばし、その目に見える大きさの飛沫は、
グレー色のドアと隣にいる、ワタシの服と顔を汚染する。
単純に嫌な感じではあったが、
やはりこの場の空気の方が格段に嫌だった。
隙間から見せる彼女の顔は、
それでも平然としていて――。
占有者A子姉
「・・・…ここにはいないわよ」
泰然とした体で、彼の主張を遮断するのであった。
むろん、その答えに風船男が納得する訳もなく、
所有者Yは、ますます赤い風船に変化し、
まくしたてた。
所有者Y
「……い、い、いない?
いないだって!?
じゃあ、じゃあ、じゃあ、なんで、
オマエがいるんだ!?
な、な、何の権利があって、
ここにいられるんだっ!?」
空気が足りなくなったのだろう。
最後のあたりはもはや声というよりも、
かすれた風の音、といった方がよいかもしれない。
彼は苦しそうにハアハアと酸素を体に取り込んでいた。
この場の空気が一気に薄まる。
ワタシまで呼吸困難に陥りそうになる、
そんな思いがした。
占有者A子姉
「……って言っても、いない者はいないし。
それ以上、何を言えるわけ?」
彼女は努めて感情などこもっていない、
そんな言葉で応酬した。
風船男はそんな占有者A子姉の言葉に、
これ以上、彼女に口で応戦することもせず、
この場にある酸素をすべて吸い切り、
二酸化炭素に変えてしまうかのように、
ハアハアハアハアと苦しそうな息をしていた。
二酸化炭素製造機と化した風船男は、
時折、「A子、A子……」とうわ言のように呟きながら、
扉をドンドン叩き始めた。
流石にこれはマズイ状況だと思ったワタシは、
彼の手を取り押さえようとしたが、
風船男は思いも寄らぬまでの力で、
その制止の手すら振り払い、今度は、
玄関ドアを開いて、中へ進入しようと思ったのか、
彼は扉の端をむんずと掴むと、
勢いに任せて、思いっきり外側にひぱった。
ドアチェーンが伸び切り、
なんだか、悲鳴に近い声を立てた。
しかし、開かない。
それにもめげず、
彼はドアチェーンを引き千切らんばかりに、
何度も何度もガチャガチャと音を立てさせた。
所有者Y
「A子ぉ、そこにいるんだろぉ?
そこに、いるんだろぉ?
今から、今から行くからさぁ。
迎えに行くからさぁ……」
彼の目は死人のようだったのに、
黒目の部分だけ、腐った魚の如く、
ギラギラと輝いていた。
所有者Y
「……いるんだろぉ?
いるんだろぉ?」
オレには彼を止められない。
ある意味、ホラー映画みたいだ。
ワタシは背筋に寒いものが走った。
作り物ではない、本物の、リアルホラーじゃん!!
こんなモノを間近で見せられている、
ワタシの立場ってのも、
風船男にはちょっとでも弁(わきま)えてもらいたい。
だが、そんな配慮など微塵も見せる事無く、
彼はドンドンと扉を叩き、
ガチャガチャとドアチェーンを引っ張っていた。
占有者A子姉
「……」
今までの厚顔無恥なまでの平静さも、
流石に失ったのだろうか。
それとも埒が明かないこの状況に、
流石に嫌気を刺したのだろうか。
もしかしたら、単純に恐怖を感じた?
その可能性が非常に高いのであろうが。
いずれの理由にせよ、
彼女は、風船男が叩くドアを、
無言のまま、閉じたのであった……。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
昨日は久々映画を観ました。
ええ、つまらなかったですよ、はい。
2/11 1時
A子はどこにいるんだろう?
A子姉に対するGさん節炸裂、楽しみにしてます。
A子姉へどのように対処するのでしょうか?
そして話の行方は?
2005.02.21 月曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第三百三十六話−
正義は我にあり!…の巻。
風船男は、勢いよく吸い口から空気を漏らす風船の如く、
「ちくしょう、ちくしょう」と言葉を漏らしていた。
もっとも本物の風船だったら、
自分の中に溜め込んだ空気を吐き出したら、
それで終わり、ちゃんちゃん!
となるのであるが、彼の場合、
次から次へと言葉を吐き出すたびに、
次第に語気が荒くなっている。
ドアを叩く拳にも力がこもる。
それは草木も眠る丑三つ時、
白装束を着た鬼面の女が己の持つ力すべて、
全身全霊をかけて打ち込む五寸釘。
この恨み晴らさで置くべきか――と云った感じか。
彼はまさに、そうだ、まさに――。
怒りの頂点に向かって走り続けているようだった。
その憤怒の頂きの先に、
彼はまた燃え尽き、力尽きるのだろうか。
所有者Y
「A子〜、A子〜!」
風船男は彼女の名前を呼びながら、
額から汗を流し流し、ドアを叩き続けていた。
ワタシは何もすることが出来ず、
鬼面の彼のままの成り行きを見つめていた。
人間の深く冷たい奥底に流るる海流の動きに、
ワタシはただただ恐怖感を覚えた。
彼女が完全にドアを閉じて、
まだ数分の時しか経っていないのであろうが、
ひどく長い時間の経過を感じる。
勢いあまり、ドンドンとドアを叩く風船男であったが、
徐々にその音の間隔がひらいていく。
怒りの次にやってくる感情は――
諦めの情のようだった。
開かないドア、立ちはだかる姉、
そして会えない占有者A子。
一連の流れが、彼の、そしてワタシの目前に、
城壁のように、高く聳(そび)え立つ。
雲を突き、目も眩むような高度のある、
障壁を制覇することなど出来ない。
登頂など、登る前から諦めざるを得ない。
その前には、所有者だろうが、
買受人だろうが、無力なのだ。
無力――?
――果たして、そうか?
無力なのか、こちら側は無力なのか?
力がなにもない男どもなのだろうか?
――いや、違う。
無力なわけがないだろう。
社会的にも、法律的にも、こちら側に理がある。
この女が、無情にもドアを固く閉ざす、
正当な理由はない。
正義は我にあり、だ。
ワタシの中でギラギラと、
熱く燃え滾(たぎ)るものがあった。
小さな種火から、火の勢いは急速に増して行く。
風船男を怖いだなんて云ってられない。
リアルホラーだなんて、
そんなことも云っている余裕もある訳がない。
それよりも何よりも、
この目の前に立つ、壁を登り切らなければならない。
登ることが躊躇(ため)らわれる程の高さだったら、
その壁を登らずとも、破壊して、突き進めばいい!
さあ、行け!
行くんだ、ワタシ!!
ワタシはいつしか、叩くことを止め、
固く閉ざされたドアの前で、
ガクンとうな垂れている風船男――やっぱり、
この男、怒りの限界点を超え、
急速にメルトダウンしているようだった――
の肩を掴み、無言の内に脇に寄せた。
「正義は我にあり」モードにアクセル全開状態、
になったワタシは、一気に攻め入る。
さあ、まずはこれから、
ドアを叩きっ放しにしてやろうか。
そう思った矢先のことだ。
部屋の中で、ガチャリと鍵の廻る音がした。
すると、ドアが開いた。
さっきまで掛けてあったドアチェーンも外されているので、
フルオープンである。
占有者A子の姉と称する女の顔が見えたのだったが、
彼女は部屋着であろうスウェットに着替え、
一応だが薄っすらと化粧もしているようだった。
そうか、化粧していたのか――。
女はワタシと俯いている風船男を一瞥すると、
悪気もなく、言った。
占有者A子姉
「……ったく、ドンドンドンドン、うるさいわね。
最初から開ける気でいたわよ。
アンタら、女のこと、分からないの?
ちったあ、気ぃ利かせなさいよ」
そして、姉はドアの前に、
仁王立ちしているワタシの顔を見つめ、
余計な一言を付け加えるのであった。
占有者A子姉
「……だから、アンタ、女にもてないのよ!」
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
最近、風邪と花粉症のダブルパンチに見舞われ、
いやはや、ツライ毎日を送っていました。
まだ本調子ではないのですが、
それでもまだ前と比べたら、マシだったり。
徐々にいつも通りのペースに戻していきます。
2/13 5時
風船男が少しかわいそうに思えてきた・・・
かわいそうに思えます?
それもまた、ひとつの見方だとワタシも思います。
2/15 9時
A子って母親と赤ちゃんいませんでした?
(所有者じゃない男性との子??)
いましたよ。
さあさ、どう絡んでくるのか?
2/20 16時
更新やめたのか、つまんないな。
仕事をきっちりとこなすだけで、
正直ここまで手が廻らないほどの、辛さでした。
すいませんねえ。
2/21 3時
最近、忙しいのでしょうか?お仕事が優先ですもんね…。
ゆっくりでいいので、更新、楽しみにしています。
仕事が忙しいとかツライというよりも、
単純に体がきつかったということです。
お待たせしちゃって、ごめんなさい。
2005.02.22 火曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第三百三十七話−
直球ストレートの言葉に続くのは…の巻。
ワタシと風船男は、
キティちゃんのぬいぐるみやらグッズやらで満たされた、
ピンク系彩色のリビングに通された。
南向きワイドスパンのバルコニーに面したこの部屋には、
薄暗い雲の隙間を縫うようにして、
やわらかな冬の陽差しが隅々まで溢れている。
寒々しいだけの下界とは、
まさしく別天地といえるくらい異なっていた。
実際、この身で知る体感温度も、
上と下では大分違っている。
ワタシと風船男は隣り合いに、
クッションの弾力が失われたソファに腰掛けた。
風船男の重みで、ソファが沈み、
隣に座るワタシが必然的に彼の方に傾いた。
目に刺すような彼の臭いが必要以上に近づき、
やはり嫌な気分になる。
隣りに陣取る彼は、フウフウと息を上気させ、
焦点の定まらない、落ち着きの無い視線は、
あらぬ方向にフラフラと泳いでいた。
閉まりの無い彼の口からは、
最早内容が聞き取れない程の小声で、
絶え間なくブツブツと、呪詛が呟かれている。
すでにスプリングがヘタっているソファーに、
うーんと深く腰を降ろしたワタシは、
今現在の状況を得るべく、
部屋の中をぐるりと見渡した。
キティちゃんが所狭しと並ぶリビング。
そして、ぐちゃぐちゃに丸められた洋服が、
至る所に散乱されている。
とても整理整頓が行き届いた空間とは云えない。
だが、先日入った風船男宅は、
ゴミ屋敷と云える代物だったので、
それと比べたら、レベルの差は歴然としている。
動物園とサバンナの違いだ。
それでもソファーセットの辺りだけは、
落ちているモノがなかったのは、
その部分だけは、
彼女が急いで片付けたからだろう。
そんな彼女――占有者A子の姉は、
ワタシ達をソファに通した後、
一旦、自室へ下がっていたが、
それも少しの間だけで、またもや姿を現した。
占有者A子姉
「……子供が、ちょっと具合悪いのよ。
昨日からグズっちゃってねえ……」
彼女は、ワタシの対面に座り、
やおらタバコを吸い始める。
メンソールのロング。
心なしか、心配げな表情で誰にともなく語る様は、
何だか母親らしい一面も覗かせているのであるが、
しかし、彼女の思いがけない部分に焦点を当てる、
今はそんなシーンではない。
あくまでも、ワタシにとって見れば、
実際のところ、誰が占有していようが、
早いところ、ここから――この別天地から、
退去し、引渡して貰うことが、
最優先であり最重要課題なのだ。
占有者A子姉
「……で、何?」
彼女は大きく煙を吐き出しながら、言った。
そこには微塵の躊躇(ためら)いもない。
彼女の底にあるのは、諦めの境地。
それとも達観か――?
いずれにせよ、この時点において、
彼女の表情に乱れはない。
依然としてブツブツと念じている風船男を無視し、
ワタシは本題に入る。
ワタシ
「……で、何?
じゃないですよ。
ここまで来て、話をすることはただひとつ――」
速球ストレート、だ。
ワタシはじっと彼女を見据えて、続けた。
ワタシ
「アナタに早いところ出てもらう。
ただそれだけですよ」
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
ティッシュの消費量がかなり激しいです。
一日一パックは使い切ります。
何だか、一日一善くらいの勢いです。
いやはや、にんともかんとも。
2/22 18時
おお〜やっと更新!
ドラゴンボールの元気玉をつくる回くらい
引っ張りましたね(古い?^^)
みんなの力を、オラに分けてくれ!
ってなくらいの勢いです(笑)
2/22 18時
お仕事大変でしょうが、ぼちぼち更新してください!
いつも楽しみにしてます^^
はーい、倒れないくらいに、
ぼちぼち更新しておきますね。
2005.02.23 水曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第三百三十八話−
実際、アンタ、モテないでしょ?…の巻。
ワタシ
「アナタに早いところ出てもらう。
ただそれだけですよ」
ワタシは彼女に直球を投げた。
ワタシからのボールを、受け止めた彼女は、
くわえていたロングを灰皿代わりの、
缶コーヒーの空き缶の口に押し込み、
素っ気無く答える。
微かに笑っているようだった。
占有者A子姉
「……アンタ、話がせっかちね。
この前も、そう思ったんだけど。
話が急過ぎるし、無理過ぎる。
だから、女にモテなさそうだし、
実際、アンタ、モテないでしょ?」
ワタシ
「……」
さっきも言われたが……。
女にもてなさそう、なんて言葉は蛇足であり、
まったくもって、大きなお世話だ!
ダイレクトでストレートな言葉の矢が、
あまりにも的の真ん中を射過ぎて、
痛いところを突かれ過ぎて、
無論、ワタシはかなりご立腹となった。
ワタシ
「……いや、ワタシが女にもてないだとか、
女にもてる(そんなことは微塵も言われてないが)
だとかは、ここでは問題となるべきポイントでは、
ありませんよ。
今、ここで話し合い、実行されるべき事柄は、
ただひとつ。
ここにいる部屋を明け渡してもらう。
その一点だけです」
ワタシは彼女の目を見ながら、
ちょっと睨みながらといった方がよいかもしれないが、
彼女に言った。
ワタシ
「アナタに早いところ、
退去して貰わなければならないのです。
だから、再度聞きますが、
具体的にいつだったら出られるのですか?」
ワタシの問い掛けに彼女は、
ガラス製のテーブルの上に無造作に置かれていた、
メンソールのロングをひとつ摘み取ると、
また口に持っていった。
火を点けて、深く吸い込む。
そして、白い煙を吐き出すと――。
占有者A子姉
「……さあ、ね」
彼女はボソリと言った。
こんな彼女の言い草程度で、
物事の動き、流れが止められるか?
――いや、止められる訳がない。
ワタシは止め処もなく流れる思いを、
堰き止めることなど出来ず、
思わず、荒い言葉を言い放った。
ワタシ
「いや、さあね、じゃないでしょ!
他人事じゃないんだよ、他人事じゃ!
さっきから聞いてれば、
あくまでも自分のことじゃない、
赤の他人のようなこととして、
受け取っているみたいだけど。
そうじゃないだろ!?」
声を荒げるワタシと対比するように、
彼女は黙ってメンソールの煙を出し続けていたのだが、
残りが少なくなっていくと、
吸殻をまた、缶コーヒーの口に投げ入れた。
ワタシ
「……どうなんですか!?
占有者A子さん!
いや、そのお姉さん!」
彼女はワタシの問いに答えようと、
微かに口を開いた。
その時だった――。
その時、実際に声を発したのは、
占有者A子の姉ではなく、
彼――風船男だった。
所有者Y
「A子、A子は一体どこなんだ?
彼女はどこにいるんだ?」
先程までブツブツと自分だけが理解出来る
呪詛を呟いていた風船男であったが、
今、彼は身を乗り出し、
地を這うような、震える声で言った。
その声は切実であり、
また圧迫感のあるものだった。
所有者Y
「ほら、早く、早く教えてくれ!
早く言ってくれ!」
彼は立ち上がり、彼女へ迫ろうと……。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
今日は久々にあったかい東京地方でした。
ちょっと強い風が吹いて、
ああ、これってば春一番?
春の足音がそろそろ聞こえてくる季節となって来ました。
2005.02.27 日曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第三百三十九話−
当然、権利があるのよ!…の巻。
占有者A子姉に迫り行く、風船男。
流石の彼女も引き気味になり、
少し逃げ腰になっていた。
所有者Y
「……A子は、どこだ?
A子を隠すな!」
占有者A子の姉は、
目前に迫る所有者Yから逃れるように、
手を前に差し出し、ブロックの形を取る。
ボールと化した風船男のアタックを防御だ。
占有者A子姉
「……A子なんて、いないわよ。
ここにはいないわよ」
所有者Y
「嘘だ!
ここにいなけりゃ、どこにいるんだ?」
彼女に触れることまではしないが、
代わりに彼は、
必死の形相を彼女へと突き付ける。
荒々しく湿り気を帯びた息と、
汗と唾(つばき)が彼女を襲う。
占有者A子姉は風船男から顔を背けた。
占有者A子姉
「知らないわよ。
あの子がどこにいるかなんて……。
所有者Y
「じゃあ、じゃあ……。
なんで、ここに関係のない、
アンタがいるんだ!?
こ、ここは、ここは……。
アンタじゃなく、A子に貸したんだぞ!」
風船男は、ますます顔を近づける。
彼女は、座っていたソファの席をずらし、
僅かな距離であっても、
彼から離れようとした。
占有者A子姉
「……」
彼女はフルフルと手を振り、いやいやをする。
だが、男は黙る彼女を許さない。
更に迫り行く。
熱い吐息が彼女を包む。
所有者Y
「黙ってて、分かるか!
A子がいないで、
アンタが、なんで、ここにいるんだ!?」
彼女は、心底嫌そうな顔を露骨に現し、
風船男の顔を見ずに、
ワタシの顔を捉え、言った。
手は前に突き出したままだ。
占有者A子姉
「……その話。
分かったから、まずはこの男をなんとかしてよ。
ねえ!」
ワタシはふうふうと意気立つ風船男の肩をなだめた。
彼は意外と大人しくワタシに従い、
ワタシの隣に座った。
やはり彼が座ると重みでソファが沈み、
ワタシは彼の方へと傾いた。
相変わらず、嫌な臭いが近づいた。
ふうふうふう……。
占有者A子姉は、
自分の心を落ち着けようとさせているのか、
タバコを手に取ると、一服する。
煙を吹かし、ようやく、
彼女に本来の調子が戻ったようだ。
占有者A子姉
「……今ね、彼女がどこにいるか。
それよりもなによりも。
アタシがここにいるのには、
当然、権利があるのよ!」
彼女は、言い切ったのであった……。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
久々、寝ました。
寝過ぎました。
十時間以上寝て、流石に気持ち悪くなりました。
2/23 23時
日記も熱いけど、堀江さんも熱いね〜。
競売やれば…やらないっか。。…
儲かると分かれば、やるんじゃないでしょうかね?
2/24 3時
最近嚔(くしゃみ)がよく出るけど誰か噂してるのかな。
噂されるうちが華ですね。
2/27 9時
僕は先日チョッとキ印の女に『デブ、馬鹿〜覚えてろよ』
と退去の話し合いの最中に言われました。
↑あんちゃんです。
その後走って階段を三段飛びで逃げ
なおかつ信号無視してました(笑)
あはははっ。
ちゅうか、あんちゃんさんに暴言とは、
かなりフザケタ占有者ですね。
ワタシだったら、怖くて何もいえないでしょうに(笑)。
2005.02.28 月曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第三百四十話−
A子から借りているのよ!…の巻。
ワタシ
「……権利、ですか?」
権利って何だ?
何の権利があるというのだ?
権利を主張する彼女は、少々自慢げな態度を示す。
どこをどう考慮すれば、
そんな自信有り気な表情が出来るのだ?
彼女はワタシの反復を受け、
余裕の笑みを浮かべ、言った。
占有者A子姉
「……そうよ、権利よ!
アタシには権利があるのよ!」
ワタシ
「……はあ。
で、どんな権利を主張されるのですか?」
少し気圧され気味のワタシ。
対する占有者A子姉は、
ますます勢いを増し――。
占有者A子姉
「アタシはね、ここを、あの子から、
A子から借りてるのよ!」
ワタシ
「……A子から、借りてる?
それは――又借りを主張されているのですか?」
又借り。
要するに賃借人であるA子から、
この部屋の賃貸の権利を更に又借りしたとして、
転貸借の権利を言い張る占有者A子の姉。
彼女はソファの片隅に置いてあったクッキーの缶――
これはさっき、部屋の奥から彼女が出てきた際、
大事そうに抱えて持ってきたものだ――を開けると、
中から薄い紙を取り出した。
トレース紙のようなぺらぺらのその紙には、
「賃貸借契約書」とタイトルが付いていた。
所々の空白をいかにも急いで適当に埋め込みました、
と云わんばかりの賃貸借契約書――。
彼女はそれをワタシの前に開いて寄越した。
ワタシ
「……これは?」
ワタシがそう尋ねると、
彼女は余裕の表情で答える。
占有者A子姉
「見ての通りの、契約書よ。
ほら、貸主が彼女で、
アタシが借主になってるでしょ。
家族間であったとしても、
こういう契約ごとはきちんとしなくちゃね」
……彼女は何を言っているのだろう。
ワタシには意味がよく分からなかった。
何でここで、契約書が出て来るのだ?
例えば、ワタシの隣に座る所有者Yと
占有者A子の間に結ばれた、
賃貸借契約書を提示されるというのなら、
まだ分かる。
しかし、そうではなく――恐らく、今の今まで、
そんな話が出て来ないと云うことは、
所有者Yと占有者A子の間で締結された
賃貸借契約書はない、と云うことなのだろう――
占有者A子とその姉の間に結ばれた、
契約書なんぞを見せ付けられて、
一体どんなリアクションを取ればよいのだろう。
ワタシは思わず、隣に陣取る風船男を覗き見た。
彼の荒い息は、最早絶頂を向かえる。
彼が、彼女に食いつくのも、
当然と云えようか……。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
歯を抜歯しました。
いやあ、歯を抜くって、ペンチでやるんですね。
思いっきり圧力を掛けられて、
麻酔が切れた後、すげえ痛かったです。
っていうか、未だに痛さが続いていたり。
いやあ、虫歯って怖いですね。
2005.03.03 木曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第三百四十一話−
占有者A子の姉の豹変…の巻。
所有者Y
「……け、け、け、権利って!
誰がそんな権利を認めたんだ!?
ボ、ボ、ボ、ボクはそんな権利なんて、
そんなの知らない!」
真っ赤を通り越して、最早ドス黒い、
彼のその表情――。
ワタシが競売業界に片足を突っ込んでから、
何度この手の顔を見てきただろう。
黒々とした闇のマントをまとっているような、
圧倒的なまでの憎悪の塊。
如何ともしがたい、その憤怒の面。
憎しみを隠し切れない、その様に、
ワタシの背筋にゾクリと悪寒が走った。
所有者Y
「……そ、そんなの聞いてないし、
ボ、ボ、ボ、ボクは認めないぞ!
み、み、認められる訳がない!!」
風船男は、またもガバっと立ち上がる。
ヨレヨレのジャケットの背中から、
シュウシュウと音を立てながら、
湯気が吹き出ているのが見えるようだ。
所有者Y
「……そんなの、認めない!!」
彼は、一目したら忘れようがない、
異形の相で絶叫した。
彼の口撃をマトモに喰らったであろう、
彼女はと云えば――。
無理をしてポーカーフェイスを気取っているのか、
それとも、元々の面の皮が厚いのか、
割合、平然とした体でソファに座っていた。
ああ……。
ワタシはふと、マスウラの事務所で会った、
占有者A子姉を思い出す。
薄暗い地下の一室で、
固く冷たい椅子にこじんまりと座り、
ただただ見せていた彼女の涙。
その時の彼女――自分を占有者A子本人だ、
と自称していた――は、
目の前の女と、果たして同一人物なのか。
非常に疑問を持たざるを得ない程、
彼女の様子は変わっていた。
――豹変していた。
占有者A子の姉は、平然としていた。
風船男の咆哮は、彼女にではなく、
むしろ、隣にいるワタシの方が、
ダメージを与えられたようだった。
いや、与えられた。
ワタシは、思わず身をすくめた。
その様に、風船男は納得するはずもなく、
憤懣(ふんまん)やるかたない、
自身の意思表示を示すためか、
彼はまたもや、
占有者A子姉ににじり寄りそうになった。
彼女の向きへ、と――。
でも、その行為については、
彼女は露骨に嫌そうな表情を見せた。
彼がどんな言葉を吐いたとしても、
彼自身が近寄ってくるのは、NGだと。
彼女はありありと態度で表現しているのだろう。
……そんな彼女の思考は、分からないでもない。
所有者Y
「……お、おい!
ボ、ボ、ボ、ボクの話を聞いているのか!?
ちゃ、ちゃんと!!」
ワタシとしては、これ以上、
話をこじらせても仕方ない――もっとも、
これ以上、話がこじれることもないと、
頭の片隅で思ってみたりもしたが――
と判断し、最低限のやる気を振り絞って、
ワタシも立ち上がり、
風船男の肩を掴み、なだめた。
こんなシチュエーションも何回目だろう。
渋面の風船男は、叫びにならない叫びを堪え、
ワタシのなだめに応じた。
憤りながらも、ソファに身を沈める。
心なしか、ソファの皮からじんわりと、
それでいて、じっとりとした、
サウナに入るオヤジの汗の如き熱さを感じた。
それはまさに――。
風船男の怒りの行方を失った行き先が、
ソファへと伝わっているようであった……。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
東京地方は、今夜、大雪だとか。
今、雨が降っていますが、
今後、雪に変わっていくのでしょう。
ああ、交通機関は明日、麻痺しちゃうんでしょうかね。
2005.03.06 日曜日
対決!追い出し屋G 対 元アイドル!
−第三百四十二話−
逃げ出したい!…の巻。
嫌な、熱さだった。
それがソファーを伝導してワタシに伝わり――。
風船男の恨みつらみ、悪寒が入り込んでくる。
ワタシはそのソファに座りたくなくなり、
思わず尻をあげ、半腰になった。
我ながら意味のない体勢――。
それどころか、端から見れば、
色気がムンムンとした女とすれ違った、
ただそれだけなのに、
淫らな妄想が脳内をすべて支配し、
自分の想像力をコントロール出来ない、
そんな中学生二年生男子の図、みたいな
風船男はブツブツとひとりごち、
こちらをチラリともしようとしないが、
占有者A子姉はこちらを見つめている。
胡散臭そうなモノをみるような目つき。
それとも、汚物をみるような目――?
自分の胸元を腕で抱きしめるようにして、
占有者A子姉は、隠した。
――いや、違う!
ワタシはそんな男じゃない!
全面的に違うとまでは云わないが、
こっちはアンタを見て、
どうこうとか思っちゃいない。
確かに、アンタは今、
胸かなんかざっくり開いてるかもしれないけど。
でも、それを見てたところ、どうだ?
いや、見てないぞ。
まあ、見たけど。
それでも、平常時じゃあないんだから。
ああ、そうだ、考えるな、考えるな。
ワタシは、今日この時、この場所で、
そんな中坊みたいな思いを抱いちゃいない!
それでも、ますますいやらしいモノを
見下げるような目でワタシを見る彼女。
違う、違う――!
変に思われないためには。
変に思われないためには……。
ワタシの中で、何かが弾けた。
……いいや、別に。
どうせ、どう思われようが何に考えられようが、
この場の人間関係なんて、
継続するべきものではない。
続けたくもない。
そうだ、そうだ。
それよりも何よりも……。
むしろ、はやいところ、脱出したい。
この場から逃げ出したい。
そのためには……。
ワタシは、中腰のまま、彼女に言った。
ワタシ
「……さて。
今日は、ここまでにしましょうか」
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
寒いし、眠いです。
3/4 0時
Gさんは風船男のなだめ役になってますね(笑)
なだめ役になっていますが、
単純なそれではないみたいです。
2005.03.08 火曜日
対決! 追い出し屋G 対 元アイドル 編
−第三百四十三話−
その場に連れて来て下さい…の巻。
ワタシは交渉を打ち切った。
理由は――。
その場から逃げ去りたかったから。
占有者A子姉の前から逃げたくなったから。
風船男の前から逃げたくなったから。
ただそれだけだ。
それだけで、この場から逃げ出したい思いが
満たされるのは、必要にして十分だった。
この場の雰囲気。
彼と彼女から与えられるプレッシャー。
彼と彼女、互いの憎しみ。
彼と彼女、互いの恨み。
彼と彼女、互いの悲しみ。
彼と彼女、互いの疑い。
黒々とした、どす黒い雲気が渦巻くその部屋は、
燦々(さんさん)と入り込む陽射しをも凍らせていた。
暖かな冬の陽射しを感じる自分はいなかった。
暗雲は、ワタシの体を押し潰してゆく。
メキメキと肉を、骨をゆっくりと砕いてゆく。
メキメキ、メキメキ……。
それでも耐えていた。
だが限界点は、いきなり訪れた。
今の今まで、耐え切っていたものが、
ピンと張っていた緊張感の糸がプツリと切れる。
ダムが決壊し、貯められていた水が、
一気に襲いかかる。
穏やかな川の流れが、
急転、濁流渦巻く、大波が荒い狂う。
その顔の渦は、
占有者A子姉の顔を形作り、
そして、風船男の顔を浮かび上がらせていた。
陽のやわらかな明るいリビングは、
阿鼻叫喚の地獄絵と化し、
無論の事ながら、
ここにいること自体が苦痛であった。
苦しみそのものであった。
それを通り越していた。
相変わらず、占有者A子姉は、
中腰のワタシを、風船男を、
穢れた汚物でも見るような、
そんな冷ややかな目で見据えていた。
相変わらず、風船男は、
占有者A子を睨みつけ、
自分にしか分からない、
呪いの言葉をブツブツと吐き続けていた。
……駄目、だ。
……もう駄目、だ。
彼女に交渉の終わりを告げたワタシは、
やはり中腰のまま、彼女に続けた。
ワタシ
「……今日は、もう。
あの、お互いの話がまとまることは、
ないみたいで。
いや、はっきり云って、まとまらないでしょう。
だから、今日はこれまでにして――」
ズタズタに引き裂かれた精神。
早く逃げ出したい。
逃亡したい。
しかし、ボロボロになっていたものの、
僅かに残っていたワタシの理性が、
最後に台詞をひとつ付け加えさせたのであった。
ワタシ
「……ただ。
あの、ただ、なのですが。
このままの状態で、
事態の進展と云うものはありえません。
その事態を打開するためには。
関係者全員が揃わなければ、
全員が一箇所に集まって、
話し合いをせねばならないでしょう」
ワタシは占有者A子――やはり、
嫌悪の表情をしている――を、
真っ直ぐに見据え、云った。
ワタシ
「お姉さん――。
妹さんを――A子さんをその場に連れて来て下さい」
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
疲れました。
眠いよ、パトラッシュ……。
2005.03.09 水曜日
対決! 追い出し屋G 対 元アイドル 編
−第三百四十四話−
拒否する占有者A子姉…の巻。
古ぼけたクッションソファに座り込むと、
ワタシは大きく息をついた。
ここは、占有者A子――ではなく、
占有者A子姉が占有している
マンションから程近い喫茶店だ。
あともう一、二分歩けば地下鉄の駅
と云う好立地ながら、
奥の細まった道沿いにあるため、
割と静かな環境にある。
カランコロンと鐘の音を響かせ、
禁煙・喫煙構わず、
手前にあった席に腰を降ろしたのであった。
タバコを吸う気力さえもないから、
どうでもいいなんて、投げやり気味であった。
とにかく……。
終わった、とりあえず、開放された……。
そう思うと、もう一度、
大きなため息にも似たそれが自然に出た。
無駄に腰を振りあげ、
水とおしぼりを持ってきた店員は、
相当に年季の入った、昔おねえさんであった。
ふと、気付く。
足りない、栄養が足りない。
とにかく、今は、カルシウムだ。
喫茶店で摂れる栄養素と云えば、カルシウムだ。
それは牛乳で摂れる。
牛乳を飲まなければならぬ。
強迫観念に至る妄念に取り入られたように、
ワタシは、昔おねえさんにアイスミルクを注文した。
牛乳は、冷に限る……。
そんな妄想に絡め取られ、
疲れ果てた表情のワタシを気に留める事無く、
彼女はやはり、無駄に腰をフリフリ、
カウンターに向かって行くのであった。
店内に一歩入れば、インテリアも照明も、
白と黒のシックな内装で統一されており、
落ち着いた雰囲気に包まれている。
全体的に大人の空間と云えよう。
だが、それもパッと見の話であり、
よくよく見ると、そこかしこ大分痛んでいた。
間接照明の傘には、
薄っすら、ごま塩のような埃が被っているし、
足元の木目調のクッションフロアも、
ところどころ、繋ぎ目がパックリと大きく開き、
そこを突破口として、いざ剥げん、としている。
そして、今にもスプリングが飛び出しそうな、
このソファだ。
ワタシは、つい十分前に座っていた、
どよどよと暗雲渦巻く、あの部屋のソファを連想した。
ああ、あのソファの座り心地の悪さは、悪かった。
古かったから――?
いや、それだけではない。
それだけであるまい。
縫い目の細い隙間から、綿が覗いている。
覗いている-――?
そこから覗いているのは、それだけか。
覗き見ているのは、
もう白くは戻らない、薄ら汚れた木綿だけなのか?
否。
そこにあるのは――占有者A子姉の目だ。
嫌悪の眼差しが、覗いていた。
ワタシを、見ていた。
あの時と同じ目、同じ視線――。
ワタシの申出への回答は、
彼女は嫌悪の表情そのままに、
回答することさえ億劫だとばかりに、
全面的に拒否するのであった。
占有者A子姉
「……うんん、嫌よ。
そんなの、めんどいし。
とにかく、嫌よ」
彼女は、鬱陶しそうに、首を振った……。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
花粉症、大放出中!
それとともに、確定申告の季節ですね。
早いところ、申請用紙の枡の目を埋めなくちゃ。
2005.03.11 金曜日
対決! 追い出し屋G 対 元アイドル 編
−第三百四十五話−
ヤニ色のキャンバスに浮かぶその顔は…の巻。
ワタシ
「いや、面倒臭いとか、
そういったことではなくて……」
こちらからの申出が、一言で片付けられてたまるか。
しかも、「面倒臭い」だなんて言葉で、
一蹴されてどうする。
中腰で固まっていたワタシは、
その形を崩すことなく、後ろに倒れるようにして、
ソファにへたり込んだ。
その際、勢いよく腰を下ろしたため、
スプリングの固い部分にモロに当たって、
じんわりした痛さが広がった。
そんな痛みを我慢し、大袈裟に天井を見上げると、
ワタシは、後ろ髪を掻いた。
ああ、一刻も早く、脱出したい。
偽りの明るさの中、真の暗闇を見せる、
この場所から、逃げ出したい。
逃げなければ、この黒々しい魔気に、
ぐにりと押し潰されてしまう。
それこそ、蟻のように、だ。
でも、そんな何も残さずして、ここを立ち去ったら……。
このまま終わってしまったら……。
以前、社長が「これで終わりだ」と切り捨てたように、
最終的に法的処置で解決――強制執行の段取りとなる。
強制的に占有者を退去する手はずを取るのだ。
まだこの業界に飛び込んで、数ヶ月。
競売の実務は乏しいものだし、
自分が手に掛けている案件と云えば、
これだけしかなかったから、
実際上、よくは分からなかったが、
法律の概念から照らし合わせれば、
恐らく、占有者は退去させられるのだろう。
仰ぎ見る天井。
タバコのヤニで薄黄色に染まっているキャンバスに、
社長の輪郭がぼんやり描かれた。
その表情は怒りに満ちたものではなく――。
むしろ、真逆。
穏やかさすら漂うその顔には、
呆れの様すら、見え隠れしていた。
背もたれの高い回転椅子に、
深くどっしりと鎮座する我らが社長。
そして、直立不動するワタシに向かい、
会社の主はこう云うのだ。
相変わらず、オマエは無駄なことをやってるんだな?
無為な時間を過ごす位だったら、
もっと会社のためになることをしろ。
それが、勤め人としての使命じゃないか……。
……ここから逃げ出したい。
だが、社長から怒られる――それ以上に、
呆れられるのが嫌だった。
自分を否定されるのが、怖かった。
自分のやっていることは、無為無策なことだろうか。
ワタシは……。
ワタシ
「ワタシは、真面目にそう云ってるのですよ」
そうだ、オマエはこちらの話を聞くだけでいい。
ここから逃げ出し、それだけで終わるのではなく、
社長から見下されないようにする為にも、
早いところ、この話に道筋を立てなければならないのだ。
ワタシ
「だから、占有者A子さんに来て貰わなければ」
ワタシが再度、云うや否や。
彼女の答えは……。
占有者A子姉
「……それでも嫌よ。
あの子を呼ぶのは、嫌よ。
それがあの子との約束でもあるし」
先程と変わらぬ、拒絶の回答であった……。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
最近、ペットボトルの景品で、
精巧なフィギュアがついていたりとかしますが、
アレってのはすべて集めるには、
かなりの金を掛けなければなりませんね。
中には、自分の人生までを掛けて、
コンプリートを目指す人もいるのだとか。
苦労もひとしおだと思われますが、
あの投資額と労力を別のことに費やせば、
また違った成果があがるのではないかなあ、
と「はじめ」の農園フィギュアみたいなのを見て思う訳で。
3/11 12時
A子の登場まだ〜〜??
もしかしたら超悲惨なことになってたってことの伏線??
GさんとA子ちゃんとは果たしてあえるのでしょうか?
悲惨になってるのか、どうか。
それは読んで頂ければと思います。
2005.03.14 月曜日
対決! 追い出し屋G 対 元アイドル 編
−第三百四十六話−
使えるものは、廃人でも使え…の巻。
……この女、拒否ばかりだ。
取り付く島が無い、とはこのことを云うのだろう。
こちらの建設的な申出を断固として否定する。
拒絶するその様は、
まさにワタシを見る目――嫌悪の目と同じくらい、冷たい。
まるで箸にも棒にも引っかからない、
生きていく上で微塵も役に立たない、
世にも下らない見世物を見せつけられたかのように。
それどころか、こんな気色の悪いものを見せやがって、
逆に時間と金を返しやがれ――なんて風だ。
沈黙――。
それで、ワタシはどうすればいいのだ?
文字盤が右斜めにずれて掛けられている、
安物の壁時計の針の音が、耳障りだ。
心なしか、段々と大きく聞こえてくる。
コチコチコチ……。
帰れ、そのまま、帰ってしまえ、と云うのか?
その選択肢しか、残っていないのか。
コチコチコチ……。
このまま、黙ったままでも、時は進む。
時間の流れは、無常であり、
人の状況がどんなであれ、
あくまでも無関心を貫いていた。
占有者A子姉
「……じゃあ、これで終わりでいい?」
彼女もまた、話に無関心であるように、
言葉少なげに、舞台の幕を降ろそうとした。
これで、終わりだ。
……それで終わりだ、と思ったんだよな。
喫茶店のワタシは、遅れ馳せながら、
テーブルにおかれたおしぼりで、手を拭いた。
出された時は、湯気を立てていたが、
大分冷たくなっていた。
それでも、ひんやりとした感触が心地よい。
丸まったおしぼりを広げ、手を拭き、
そして自然と額に当てていた。
じんわりとではあるが、汗がにじんでいた。
冬なのに掻くその汗は、
冷や汗以外の何物でもなかった。
あの場――暗雲渦巻き寒気のする中――でも、
ワタシは冷や汗をにじませていたのだろうか。
それは分からない。
だけれども、ワタシと同じく、
あの場で汗を掻いていた人間は、いた。
――風船男、その人である。
……彼は、ふうふうと鼻息荒く、
いつまで経ってもひとには聞き取り難い声で、
ブツブツと呪詛を唱えていた。
顔色悪く――死人の顔をしているのに、
目だけはランランとしていた。
彼女の言葉を聞いているのか、
それとも耳に届かないのか。
彼はただひたすらに、唱えていた。
対する、彼女は当然の如く、冷ややかであり――。
その姿を垣間見るだけで、ますます、終わってもいい。
もう、この場さえ、終わってしまえばいい。
そう思ったが――。
声に掻き消されそうになったが――。
微量ではあるが、ワタシの使命には重さがあり、
重みを感じ取った左脳は、こう命令したのである。
彼女の幕引きを止めろ!
意外にも力強い、声であった。
何が何でも、占有者A子と、会え!
そのためには……。
肉体は、その比重からすると僅かばかりではあるが、
全知全能の、主たる脳の命令に従う。
従わねばならぬ。
しかして、どうすればいいのだ?
問いに、ワタシは、一瞬にして答えを示した。
極地の状態での、結論。
それは――。
この男を利用するしかない。
使えるものは、廃人でも使え、だ……。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
確定申告、明日までですね。
ワタシは今日行ったのですが、
不備を見つけてしまったので、明日ぎりぎりに行きます。
正直、面倒臭いです。
3/14 11時
良い感じだけど状況描写の比率が高くて会話が少ないですね。
基本は状況描写を詳細にしていこう、
と云うのが、最近の自分のトレンドだったりします。
会話文が多い方が読みやすいんだろうなあ、
と思うんですけどね。
2005.03.15 火曜日
対決! 追い出し屋G 対 元アイドル 編
−第三百四十七話−
レ・ミゼラブルな形相…の巻。
こじんまりとした恐山みたいな男は、
体中から臭気と怨念を垂れ流すままに発散している。
それとともに、垂れ流される呪いの言葉。
ブツブツブツブツ……。
盛んに呟きの声が、微かではあるが、聞き取れた。
ブツブツブツブツ……。
風船男は、ひたすら、念じていたのだ。
A子、A子、A子、A子……と。
ブツブツブツブツ……。
A子、A子、A子、A子……。
彼女の名を――。
男は、この空間にはいない女の名を呼び続ける。
ワタシのことは、気味の悪いモノとしか、
思ってないのだろうが、
占有者A子姉は、彼の存在など、
最早認識していない。
占有者A子姉
「……もう、帰って!」
何本目かのタバコに火を点けた彼女は、
体に行き渡させる程の紫煙を取り入れることもなく、
揉み潰した。
彼女なりの、我慢の臨界点は突破したのだ。
――時間は、もうない。
ワタシは彼女を見、ぐるりと横を向く。
風船男の横顔。
頼むから、想像通りの行動をしてくれ!
ワタシは切なる願いで、彼に云った。
ワタシ
「……帰ったら、もう会えなくなりますよ」
所有者Yはブツブツと呟くのを止めない。
ワタシは再度、繰り返す。
ワタシ
「……一生、会えなくなりますよ」
ブツブツブツブツ……。
ワタシ
「いいんですか、
会えなくなるのは他ならぬA子さんですよ?」
ブツブツブ……ツ。
彼は止まった。
A子、A子……?
ワタシ
「そうですよ、A子さんです。
あなたの会いたい、
そう切実に願ってるA子さんですよ」
A子、A子、A子……。
呟きのボリュームが徐々に上がっていく。
よし、もう一押しだ。
ワタシ
「そうです、そうです、A子さんです」
はっきりと断言した。
しかし、ここで一転、トーンを落として――。
ワタシ
「ただ……これで終わったら……」
目一杯の悲壮感を漂わせる。
こんな状況に陥ってたら、
誰であっても、嫌でもこの手の顔と声は出せる。
いや、むしろ、この手の顔と声しか出せないだろう。
それはそれは、嗚呼、レ・ミゼラブルな形相。
ワタシ
「もう一生あえないかも知れません」
……!!!!
所有者Y
「……だ、誰と?」
ワタシ
「決まってるじゃないですか。
A子さん、とですよ」
さも、相手の悲しみを理解していると云わんばかりに、
ワタシは言い切った。
ワタシ
「これでは、彼女と会えません」
あああああああ……。
風船男は、微かな嗚咽を漏らす。
絶叫するよりも、悲しみの度合いが大きかった。
今まで、彼女と会うのを我慢してきた。
だが、彼女と会い、
そして彼女と共に生活することを決意し、
この場に臨んでいたのに……。
彼女ともう、会えない――?
彼は今、苦しみの海に漂泊する、
海月(くらげ)のようだった。
一筋の光に向かって、海月は海月なりに、
泳ぎ浮かんでいたのであるが、
道標(みちしるべ)すら、消え去ってしまうのか。
所有者Y
「そ、それは嫌だ!
それだけは、駄目だ!」
苦し気だった。
実際、苦しいのだろう。
心は押し潰されそうなくらいに。
そんな彼に、間髪入れず、
ワタシはこう云ったのだった……。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
確定申告しました。
下手したら本業より、疲れました。
3/15 15時
<続き>悪いとは思わないのですが、
テンポが悪く感じられるので、
描写を読み飛ばしている人も居るのでは…と思いました。
最後の所に来ているので、
盛り上げてまとめてください!(^_^)
テンポよくいきますね。
って、そんなこと云ってるのっけから、
テンポ悪いっぽいですが(^^;
2005.03.17 木曜日
対決! 追い出し屋G 対 元アイドル 編
−第三百四十八話−
あなたの持っている所有権を…の巻。
攻め立てるように、ワタシが発した言葉。
それは――。
ワタシ
「……じゃあ、
ひとつだけ会える方法を教えましょうか?」
所有者Y
「……A子に会える、方法?
なんだ、なんなんだ、それは?
……欲しい……教えて欲しい。
もったいぶらずに……」
砂漠で水を彷徨い求めるジプシーの如き、
風船男の表情は、
藁人形にすら救いを求める信者のそれであった。
ワタシ
「いや、もったいぶってるつもりはないですよ。
それは――」
だが、ここで束の間の、逡巡(しゅんじゅん)。
この言葉を伝えるべきなのか、
それともやはり云わない方がいいのか。
これから云おうと思っている事柄は、
何の根拠も無い。
はっきり云ってしまえば、言葉のあや。
出たとこ勝負のフレーズ。
しかし、この場にいる登場人物の皆が、
多かれ少なかれ、発言は勢い任せだろう。
所有者Y
「それは……?」
藁をも掴みたい。
救いを求める。
額に異様な程の汗を輝かせる、
風船男は、催促する。
……。
ええい、云ってしまえ。
鬼が出るか蛇が出るか。
そんなのは、
相手にぶつけて見なければ分からない。
すべては、成り行き
すべては、勢い、だ。
ワタシは、風船男に顔を近づけ――。
近寄りたくないけど、近づけて、言い切った。
さあ、云え、云ってしまえ!!
ワタシ
「……あなたが持ってる、
この家の所有権をワタシに下さい!」
……。
場が凍りついた。
沈黙すら、凍りついた。
所有者Y
「……あ?」
風船がパンと割れるように、短く漏らした。
これ以上、何を語ることが出来よう。
所詮、藁は藁。
掴んだところで、藁は離散して、
バラバラになる。
そんなものに期待した、自分は馬鹿だった……。
彼は、自身の思いを如実に体現している。
ワタシは、再度云った。
ワタシ
「だから、このマンションの所有権を、
ワタシ――ウチの会社に下さい」
一度目よりも大分、落ち着いた感で、
ワタシは諭すように云う。
彼はと云えば、うーんと唸るばかりだ。
何を云ってるんだ、こいつは――?
所有者Y
「ん、あ、な、なんで?
なんで、ここで……所有権の話が、出るんだ?」
ワタシは、ゆっくりと答えるのであった。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
コートを冬物から、
ちょっと薄いのにかえてみました。
春はもうすぐですね。
3/16 12時
今回くらいだと凄くいいですね。
A子登場が待ち遠しい!
A子登場まで、あとどれくらいでしょうか?
んー。
いつものことながら、
計画性がない、構成ですいませんね(^^;
2005.03.22 火曜日
対決! 追い出し屋G 対 元アイドル 編
−第三百四十九話−
ワタシが、なんとかします…の巻。
ワタシ
「いいですか――」
ワタシは話を進める。
そうだ、ここで論理を展開するのだ。
論理――と云っていいよな、多分。
ワタシ
「そもそも今回の件――。
ワタシやウチの会社が登場して、
立ち退きだ、なんだと云っている件ですね――は、
この物件が競売に掛かったことに由来しますよね。
それが最初の原因。
今の立場を考えると、所有者Yさんが、
その名の通り、所有者であり、
A子さんが占有者――まあ、
賃借人でも使用借権(ただ借り)でも、
なんでもいいですけど――。
あと、A子さんのお姉さんも、
占有者に当たりますよね」
所有者Yは、渋面を崩す事無く、首を縦に振った。
だから、何なのだ――そう云わんばかりの表情だ。
いいから、黙って聞いておけ。
そんな態度を見せながら言葉を紡ぐ。
ワタシ
「それで、あたしたちは、占有者だ。
でもただの占有者じゃない。
それじゃあ、何の権利があってここにいるんだ、
と云ったら、賃借権だ、又貸しだ、と。
彼女は、そう云っている訳ですよね――」
ふと彼女の方を向くと、
ますます不服気な顔色に変化している。
――まあ、黙っておけ。
少なくともワタシが喋っている間は黙っておけ。
ワタシ
「でも、考えてみましょうよ。
今日、所有者であるYさん――。
あなたは何のためにここに来たか。
その大前提を思い出してみましょうよ」
ゆっくりと噛み締めるように、
包みこむように……。
風船男は、咆哮の如き唸りを上げ、
ただ黙って耳を傾けていた。
ワタシ
「そうです。
思い出してみてくださいよ。
あなたがここに来たのは――。
この部屋の所有権を主張すると云うことではなく、
この部屋を貸している人にその思いを伝える、
そのために来たのではないですか。
ただ失礼ながら、この今の状況に、
彼女ではない、他の人物がいる。
その思いも寄らない状況に対して、
あなたは戸惑っている。
憤っているだけだ。
それだけなのですよ。
でも、それだけでは――」
ワタシはしっかりとした口調で、断言した。
ワタシ
「――間違いなく、彼女とは会えないですよ」
最愛の人と再会は、ない。
断定。
彼の咆哮は深く、悲しげであった。
しかし、悲しみに打ち震える男に、一縷の光を捧げる。
ワタシ
「だけれども、いいですか。
あなたが会いたい、
その元々の気持ちを変えずにいるのなら――。
ワタシが、何とかします。
ただ何とかするためには、
ワタシに、ウチの会社に、所有権が移ってなければ、
やりようがないのですよ。
だって、そうじゃないですか。
ワタシが今、何をどういったところで、
この人は聞く耳を持たないじゃないですか。
でも、ね。
そりゃそうなのですよ。
だって――」
大袈裟に首をすくめた。
風船男は額と両目を右手の甲でこすっている。
何か、汚れをとるように、こすっている。
ワタシ
「結局、ワタシには何の権利がないですし。
占有者が誰であっても、そりゃそうですよ。
こちらは所有者じゃあないんだから。
それじゃあ、聞く耳持たないですよね。
所有権が移るまでは、ね」
風船男の悲しげな咆哮は徐々に収まる。
片手で額を拭うとそのままの姿で――。
所有者Y
「あ、の……。
本当に何とかしてくれるのですか――?」
ワタシ
「無論、当然です」
ワタシは自信を前面に押し出して、言い切った。
言い切りが大事だ。
こちらの云っていることは正論だ。
正しい導きなのだ……。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
なんか、依然として目がしょぼしょぼしますね。
花粉症なのでしょうね。
しょぼしょぼ。
いやあ、しょぼしょぼってホント、
しょぼい感じがする、響きですね。
3/18 12時
そのマンションに住んでるのがA子の姉なら、
赤ちゃんは一体誰の子・・?
一体誰の子なのでしょうか?
3/20 20時
まだるっこいね。つまんないなー。
まだるっこいのは、仕様です。
2005.03.23 水曜日
対決! 追い出し屋G 対 元アイドル 編
−第三百五十話−
ふたつにひとつの選択を…の巻。
正論とは――。
正しい論理と云う意味だ。
今回の話の流れも正論を展開しているに過ぎない。
もっとも、その前には、
”自分にとって”なんて枕詞がつく訳であるが――。
ワタシ
「あなたは今、所有者だ。
ワタシたちは所有者ではない。
その違いは、海よりも深く山よりも険しいのですよ」
その差が深く険しいことは確かだ。
所有者と所有者でない者。
物件に対する主張の権利を、
どちらが声高に叫べるか。
考えるまでもないことだ。
……いいから、所有権を移せ。
ウチに寄越せ。
風船男は、声無き主張に耳を傾けている。
だけれども、彼は、最後の最後に至って、
躊躇(ちゅうちょ)の表情を見せた。
……A子には会いたい。
そして、この男はボクと彼女を会わせてくれる、
と断言している。
でも……。
所有者Y
「……でも」
彼は額にしていた手を、
後ろ髪に持って行き、
ガシガシと音を立てるように掻いた。
ワタシ
「でも……なんですか?
やっぱり、駄目だ、と。
そんなことは出来ない、と。
そう仰られたいと思う訳ですか?」
ああ、うう……。
彼は嗚咽を漏らしつつ、激しく後ろ髪を掻き毟る。
それが答えか。
だが、こちらとしても、それで引き下がれるか。
――否。
ワタシ
「遅かれ早かれ所有権が、ウチに移るなんて事実は、
ああだ、こうだ、云ったところで、
変わることはありません。
いずれにせよ、所有権はウチの会社に移転し、
この物件はウチのモノになるのです。
それに、考えてみて下さいよ。
あなたが今日来た目的。
それは何か――考えて下さいよ。
あなたの目的は、何が何でも、
このマンションの所有権を主張する、
そんなことなのですか?
そんな小さいことなのですか?」
ワタシはじっくりと彼を見る。
風船の手は、止まっていた。
ワタシ
「――違いますよね。
Yさんの目的はそんな枝葉末節な目的ではない。
もっと大きな大きな目的ではないですか。
あくまでも、A子さんを守る。
それが、あなたの目的じゃないですか。
それこそ、あなたがA子さんを守る、
騎士にならなければ――」
風船は、じっと下を向いている。
ここで、最後の仕上げだ。
どうだっ!!
ワタシ
「いいですか、Yさん。
ワタシもガタガタ云いたくはありませんけど、
結局、どちらを選ぶか、ですよ。
このまま、ダラダラとして、
最終的には終わりを迎える。
終わりってのは当然、
この物件――あなたがA子さんに貸した、
このマンションをウチと大揉めに揉めて、
強制執行で退去させられるか――。
もしくは、ワタシどもに所有権を譲って――
それも今、ですよ――。
そして、最後の最後の関係者全員で話し合って、
すべての決着を円満につけるのか。
さあ、ふたつにひとつですよ」
さあ、どちらを選ぶ……?
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
今日は雨降り。
花粉もちょっとお休みですね。
3/23 11時
いやー今回は超(・∀・)イイ!感じでした。
盛り上がってきますな。
そういってもらえると、嬉しいですね。
単純に、小躍りします。
3/23 18時
まだるっこいね。つまんないなー。
まだるっこいのは、仕様です。
3/23 18時
まだるっこいね。つまんないなー。
↑おめー誰に向かって口きいとんじゃ!
まあまあ。
今度、レフォルマで書こうと思っている、
対決!ゴミ屋敷編は、ジェットコースター的展開で、
書ければいいなあ、って思っておりますよ。