レフォルマ 不動産競売必勝攻略法

    

 




対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

堂々完結!


物件: 3LDK(広さ:80u程度)

場所: 東京都港区某町

家賃: 6万円/月? 敷金500万円? 更新期間の期限の定め無し?

占有者: 本件所有者より口頭での賃貸借?

占有認定: 占有者の占有権原は使用借権である



  BACK → 第二百五十一話〜第三百話を読む

 

2004.11.13 土曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第三百一話−

希望の火と野望の闇…の巻。




風船男は茶碗に僅かに残った出がらしをすべて飲み干す。

ふううううう、と大袈裟に息をつくと、

目を瞑り、そのままだんまりを決め込んだ。

今日何度目かの空白の時間。

ワタシはその間、ずっと目頭をこすっていた。

腹の減りはピークを大分過ぎ、

そんなには苦にならなかったが、今度は眠くなってきた。

一難去ってまた一難、だ。

急遽発生した、とてつもない睡魔がワタシを襲う。



……ヤバイ。

こんなゴミの中で寝てたまるか。

それよりもどんな形であれ、

交渉の最中に居眠りをするのは、対面上もマズイだろ。

というか、いろんな部分で普通にマズイだろ。

寝るな、寝たら死ぬぞ。

死なないけど、死ぬってことになるぞ。

ワタシはワタシの中で、自分自身と闘っていた。

そして、一二分の間だったろうが、

自分にとっては長い長い時間の闘いの末、

自分に負けそうになったその時――。



風船男は決断した。



所有者Y
「――ボクはやっぱり彼女には幸せになって貰いたい。

そのためには、これからの幸せを考えるには、

一からやり直すのもいいんじゃないかと思う。

このボロ病院もそのうち、

持って行かれてしまうかもしれないけど、

いつまでかは分からないけれども――。

でも、あともう少しくらいは住めると思う。

彼女と――何だったら彼女の家族も一緒に、

ここに住めばいい。

そしてその後のことはその時になって考えればいい。

ボクはそう思いました。

だから――」



――ボクは彼女をここに連れてきます。



彼はそう断言した。

ワタシの顔を真正面に捉えた彼は「ちょっと電話します」

と言うと、重石をつけたような体を無理矢理立たせた。

その際、足がゴキっという鈍い音を立てていたのを、

ワタシは耳にするのであった。



風船男は、当然のようにゴミだかモノだかに占領されている、

カウンターに重い足取りで向かうと、

ゴミを取り、埃を払い退け、電話の受話器を取った。

そして少し震える人差し指で、

それでも指先は番号を覚えているのだろう、

電話帳やメモの類を見る事無く、ボタンを押していった。

その相手は当然――。

数回のコールの後、留守番電話サービスに繋がったようだ。

風船男はチッっと細かく舌打ちをすると、

電話を切り、また再度掛け直す。

それでも、やはり相手は不在なのか、

相手は電話口に出る事無く――。

所有者Yは今度はまたもや舌打ちをし、受話器を叩き付けた。

小声でブツブツ文句を言いつつ、

また元の低位置に座り直す、彼は困った口ぶりで述べる。



所有者Y
「彼女とは電話が繋がらなかったけれども、

でもボクが責任をもって守ります。

彼女を守ります。

だから、もうあんなマンションにいるんじゃなく。

ボクとボクと一緒に住もうと、言います」



彼の目がギラギラと輝いていた。

それは希望の火なのか、野望の闇なのか、

それとも……。



……続く。


<おまけ日記>


今日のひとこと。

眠い。忙しい。歩く。眠い。忙しい。歩く。

ここのところ毎日、この繰り返しです。


11/12 23時
>200の予定が300回突破!このまま行くと・・。


最初の予定では、今回の元アイドル編は大長編だから、

100回くらいのストーリーにしておくか。

と思っていたのですが……。

ただあと20〜30話程度で終わるはずです。

 

2004.11.19 金曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第三百二話−

 
帰り道、追い出し屋を呼ぶ声…の巻。




ボクがあのマンションから――。

彼女を――A子を出します。

そして――。



点々とした灯りの下、向かい行く人の流れもなく。

暗い闇の中、ただひとり取り残された街――。

冷たい風がしきりにワタシの頬を鋭くなでつける。

顔中血だらけになるのではないか、と思うくらい痛かった。

しかも足取りは重い。

まるで鉛のようだった。

堅くなった足を引き摺りながら、

それでも駅に続く道をゆっくりではあるが歩き行く。

冷え切った頭でワタシはボンヤリ思い返していた。

ゴミ溜め屋敷の主人の言葉を……。



彼女の幸せのためには――。

ボクと暮らすことが一番であり――。

お母さんの反対なんて関係がない。

ボクが――ボクが彼女を守る。

ボクは彼女の周りに居て――。

いつまでも、いつまでも――。

そのために、ボクは彼女を連れ出すのです。



所有者Yはそう断言していた。

あたかも自らを納得させるように彼は言った。

これ以上、彼女をあそこにおいては居られない。

彼女を連れ出すのだ。

何だったら、彼女の母親だって誰だって、

ボクが責任を持って面倒をみる――。

彼は両の手で握りこぶしを作り、大袈裟に振り下ろした。

そうして、ボクの決意を――。

熱く固い決意をワタシの目前にまじまじと見せつけた。

これも彼女への愛ゆえに、といったところか……。

ワタシは思わず――。



……そうか、愛、か。



ありきたり過ぎて腐り切ったフレーズを口した。

誰かが誰かを愛する。

だがその逆である誰かは誰かを果たして愛しているのか。

彼らの場合は一体どうなんだろう。

それ以前に、愛ってなんだ?



愛について物思うワタシは、

ゴミに埋もれていた彼の決断にこう言った。



ワタシ
「所有者Yさん。

貴方の占有者A子さんを思う気持ちは、分かりました。

ワタシもあのあんなマンションにいるよりかは、

貴方と一緒に過ごせた方が、幸せだと思います」



……心にもないことを言ったもんだ。

でも、この人なんかいい人そうだなんて、

世間にアピールするため、

自分で自分をフォローするつもりはないが、

実際ホンの少しはそう思ったのも事実である。

それだけ彼は彼女のことを思っていた。



ワタシ
「じゃあ、退去の日取りは具体的にいつにしますか」



……それでもここがチャンスだとばかりに話を詰めた。

ワタシの問い掛けに対し、

彼は表情を曇らせることなく言う。

でもいきなり引越しというのは、

物理的に難しいかと思います。

それじゃあ、来週の日曜日の昼の一時にでも、

まずはボクが退去についての段取りを組みますから。

だから、Gさんも来て下さい。



……日曜日休みのワタシの方が表情を曇らせることとなった。



回想の間もワタシは、

依然として重い足を少しずつ前に出していた。

と、そのときだ。



おーい!



ワタシを呼ぶ声が聞こえて来た――ような気がした。

鈍った頭にこだましたその声にワタシは――。

ああ、あれか、あの男か。

久々に登場したか。

あの男――大阪弁を手繰るあの脳内住人かと、思った。

でも悪いが今は、相手をしている暇はない。

いや、正確に言えば暇はあるのだが、

相手をする余裕が無い。

へえへえ、あんさん、そりゃそんなことおまへん――。

例のインチキ臭さ確変中の声がどこかで聞こえた。

ワタシはそれを無視し、ひたすら歩くことに集中した。



おおーい!



先程よりももっと大きく、はっきりした声だった。

最早、幻聴ではない。

確かにワタシを呼ぶ声が後ろからしていた。

ワタシが半身に力を込め、振り向くとそこには――。



――彼が居た。



……続く。


<おまけ日記>


今日のひとこと。

目がかゆい。

でも指でこするのはよくないんだよな、と思いつつも、

こすってしまう今日この頃。

11/14 12時
>借金が人を変えるんでしょうか?


何らかの理由があったとしても借金をつくるのは、

人であったりします。

やはりその人その人の問題ではないんでしょうかね。

非常に突き放すような言い方かもしれませんが……。

11/15 18時
>終わっちゃうとそれはそれで寂しくもありますね。


元アイドル編が終わっても、ネタは日々たまっているので、

どこかで発表はしたいと思ってます。

でも書く時間がないんですよねえ。

多分ニーズとして強制執行の風景とか、

皆さん興味あると思うんですが……。

 

2004.11.20 土曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第三百三話−

 
追い掛けて来た男…の巻。




ワタシが振り向くと――彼が居た。



ワタシ
「あなたは……」



彼は急いでワタシを追い掛けて来たのだろう。

一時停止の確認用ミラーの柱に体を預けるよう、

もたれ掛かり、息を荒げていた。

暗闇のなか、顔だけボオっとした白さが目立つ。

病的な白色である。

そんなに早く歩いていた訳ではなかったが、

彼にとってはここまで来ることだけで、

かなりの苦行だったようだ。



ワタシ
「……一体」



彼と遭遇したワタシは、少し戸惑いを覚えた。

ワタシの疑問符を他所に、

依然としてミラーの助けを借りながらも、

彼は震える手で手招きする。

ワタシは何故、彼がここに来たのだ?

重い足を翻して、彼のそばに寄った。

間近で見れば見る程、

彼の白さは闇に溶け込むことを拒み、

その色は白痴的でさえあった。




「ああ、あのお……。

あのお……」



彼は言葉にならない声を上げ、

しかし懸命に言葉を見つけようとしている。

ワタシもかなり体力的精神的に消耗し切っていたが、

彼もまた同様に、いやワタシ以上に弱っている。

仕方が無い。

表面上の優しさかもしれないが、

ワタシから彼に言葉を掛けた。



ワタシ
「……一体、どうしたんですか、お父さん」



ワタシは彼――ニセ仙人こと所有者Yの父と対面していた。

ニセ仙人のブルブルと自動的にバイブする両手は、

ミラーの柱をかろうじて握っている。

自分ではしっかりと握っているつもりなのだろうが、

しかし手の握りが上に行ったり下に行ったり、

固定することなく、動いていた。

盛んに何か言いたそうなのだが、

やはり言葉に詰まっている。

ニセ仙人はワタシに何かを告げたいのだろう。

その何かは具体的には知る由もないが、

だけれども、何について伝えたいのか、

その程度であれば察しが付く。

当然、あのことについてだ。

しかるに――。



ワタシ
「息子さんについて――。

何かワタシに伝えたいことがあるのですか?」



ワタシが優し気に聞き返すと、

生まれたての子羊のように震える男は、

何度も何度も首を縦に振るのであった……。



……続く。


<おまけ日記>


今日のひとこと。

気をつけよう、暗い夜道と甘い言葉。

じゃあ、これからワタシが甘い言葉を出しますから、

騙される人を募集します。

 

2004.11.25 木曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第三百四話−

 
アイシの云うことは信じるな…の巻。




ワタシの問い掛けに壊れた操り人形のように、

カクカクしながら何度も頷く彼――所有者Yの父。

よく見ると、その震える手には、白い紙が握られている。

急いで追ってきたためか、強く握り締めていたためか、

紙はぐちゃぐちゃに丸められていた。

彼は何度も何度も首を縦に振りながら、

微動する腕を伸ばし、ワタシにその紙を突きつける。

どうやら、それを読めというらしい。

何かを告げたいのだったら、

自らの口で喋ればいいのに……。

そういや、彼が家から出てきたときも、

空気を吐くような音みたいな声しか出さず、

まともに話したところなんて見たことがなかったな。

もしかしたら、彼は肉体的に喋れない事情というものが、

あるのかもしれない……。

疑問と不審と同情を覚えながらも、

ワタシはニセ仙人からそれを受け取った。

受け取った紙片――大手不動産仲介業者の、

売物件募集のポスティングチラシの裏に、

マジックインクの太い筆の、

やはりミミズののた打ち回った文字で、

このように書かれていた。



――アイシの云うことは信じるな。



紙に落とした視線を上げ、ニセ仙人を見ると、

彼は未だに一生懸命首を上下させていた。



……。

というか、文章以前の問題で、アイシってなんだ?

ワタシは手に持つ紙と同じく、

ヨレヨレになったドドメ色の脳細胞をフル活用して、

その言葉の意を考えた――。



「愛し」? 

……誰かを愛しているってことか?

占有者A子を愛する、とかな。

でもそれだと話が繋がらない。

大体、愛している主体は誰なのだ?

ニセ仙人か?

ニセ仙人と占有者A子では年齢差あり過ぎだろう。

それとも愛に年の差なんて関係ないってこと?



「逢いし」?

……誰かと逢いたいってことか?

例えば占有者A子とか。

そりゃあ、風船男は逢いたいだろうが、

その気持ちをニセ仙人がワタシに伝えてどうする。

これは依頼か?

お涙頂戴番組の捜索依頼か?

生き別れになった、お母さんを探してください。

涙を見せつつ、番組に登場する素人(実は仕込み)に――。

分かりました。

実は番組はお母さんを探し当てました。

さあ、お母さんどうぞ!

なんて、島田紳助が司会で出てくるのか、ここに?



「哀史」?

……女工哀史とかな。

まあ、悲しい物語やねん。

大阪の女やねんって感じだな。

やっぱ好っきゃねん、みたいな。

ああ、止めよう、止めよう。

大阪のこととか頭の片隅にでも入れていたら、

突如、関西弁のオッサンとかが出てきそうだ。



……うーむ、やっぱ分からん。

アイシって――。

そんな疑問を思わず口にしてしまったらしい。

ワタシの言葉を踏まえてニセ仙人は――。



ニセ仙人
「……いや、アイツですよ、アイツ」



……。

ってゆーか。

喋れるんだったら、最初から喋れ!!



……続く。


<おまけ日記>


今日のひとこと。

今日みたいな下らない文章を書くのは楽しい。


11/20 19時
>私、ぜひGさんに甘い言葉かけてほしいです!


ワタシ、すげえ甘い人間ですよ。

普段はそれを隠していますけど。

いや、隠されてないかなー。

11/25 15時
>借金まみれでも、

>医師免許あるなら稼ぎようはあるような気がするけど。

>ナマケもの?


この辺りのことは、次辺りで分かりますよ。

もっとも怠け者は怠け者なんでしょうね。

でも、ひとつのことにだけはその熱情のすべてを掛ける。

彼の場合、その対象が占有者A子であった、

と云うことなのでしょうね。

 

2004.11.26 金曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第三百五話−

 
ニセ仙人と中華料理屋のジジイ…の巻。




……確かにさ、カタカナの”シ”と”ツ”を

混同している人間ってのはいるけどさ。

特に男女問わず年寄りなんかは、

”シ”を”ツ”と書く度数が異常に高いけどさ。



ふとワタシは自宅の近所にある、

廃屋同然で客の出入りもなさそうな、

ある意味ふたつの意味で今にも潰れる五秒前的な、

中華料理屋の割れた窓ガラスの張り紙を思い出した。



――ココにスクターを置くな! 置いたらモシテイク!



無駄に達筆な毛筆であり、怒りに燃えている。

しかし、ふんだんにカタカナが交じっている割には、

根本的な間違いを犯している文章だった。

ここにスクーターを置くんじゃねえ!

もしここに置いていたら燃すぞ! 燃して行くぞ!

燃やしちまうぞ、このヤロウっ!!

なんて最早、呪詛のレベルに到達していることを、

中華料理屋のジジイは言いたいのだろう。

今まではそう思っていた。

だが考えてみると、これは燃して行くという意ではなく、

モシテイク=モツテイク=持って行く、ではないのか。

大体、店の前でスクーターなんて燃やしてしまったら、

小火(ぼや)どころの騒ぎではない。

爆発したら、大騒動だ。

多分、そうだ。

この中華料理屋のジジイも、

”シ”を”ツ”の区別がつかないのだ。

そういや目の前にいるニセ仙人と同じくらいの年恰好だ。

思えば思う程、ますます似ているように思えてきた。

むしろ、同一人物じゃあなかろうか。

そんなわけはないか。

でも似ている。

それはそうとして――。

だとしたら、中華料理屋のジジイは、

スクーターをどこに持って行くのだろうか。

そして、持って行かれるべきスクーターは、

一体誰のものなのであろうか。

そんな二つの人生にとって意味のない疑問が、

湿った土から湧き上がるように出て来たが、

目の前にいる現実のジジイが、

ワタシに向かって「アイツ、アイツ」と連呼している。

彼に思考を戻した。



ニセ仙人
「……いや、アイツですよ、アイツ」



ワタシは彼の声を遮り、言った。



ワタシ
「あの、アイツっていうと、息子さんのことですよね?」



ワタシは様子見の意味を込めて、控えめに訊いてみた。

一応は、肉親関係にあるのだろうし。

ニセ仙人は頷く。

正解だったようだ。

もっとも選択肢がひとつしかないのだから、

この問題を外す方が難易度が高いだろう。



ニセ仙人
「そうだ、そう!

あの道楽者の馬鹿息子のことだ!!」



今までの無言の男が嘘のように、

大きな声を張り上げ、ワタシに主張する。



……。

ってゆーか。

めちゃめちゃ喋れるじゃんっ!!



……続く。


<おまけ日記>


今日のひとこと。

ごめん、”シ”と”ツ”話を引っ張っちゃった。

次回からはちゃっちゃか、進みますよ。

……多分。


11/25 23時
>うちの上司の字もツとシの区別がつきません。

ついでにアとマの区別がつかない人もいますよね。

 

2004.11.30 火曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第三百六話−

 
ニセ仙人、大いに語る!…の巻。




オマエ、喋れるじゃんっ!

むしろ、喋り過ぎじゃんっ!!



ワタシの心の叫びなど、完全に蚊帳の外にしながら、

ニセ仙人はわあわあ喚き立てている。

仙人のような顔面をしているくせに、

自分の年のことなどすっかり忘れているようだ。

そこら辺にいる近所の馬鹿な餓鬼みたいに騒いでいた。

彼の状況を無理矢理良い言葉で表現するとしたら、

童心に返っているといったところか。

……あ、でもそれは違う。

訂正。

ちょっと他の表現に直しておく。

うーむ。

……。

………。

…………。

って、別に良い言葉に変換しなくてもいいし。

こんな下らないことを真剣になって考える暇があるのなら、

まだ偽善者ライクに人類平和について思いを馳せた方が、

ナンボかマシな時間の使い方といったところだろう。

ぐちゃぐちゃになった脳内では、

彼の喚き声をBGMにし、誰かがコサックダンスをしていた。



ニセ仙人
「アイツのせいで、アイツのせいで……」



人間、時としてダムが崩壊した後、

轟々とした濁流が河川沿いの村を襲い呑み込むが如き、

激しい熱を持った勢いを見せる。

流れの勢いたるや、

その場のノリといった軽い言葉では片付けられない。

破壊的であり、破滅的ですらある。

ここにいるニセ仙人は、

まさしくそのようなダム決壊の状況にあり、

退廃的な衝動に駆られているようであった。

その変わり様はある種、異様なまでであって、

例えるのなら、ブラウン管からいきなり、

田原俊彦や山田邦子が消えてしまったかのような、

変わりっぷりが極端過ぎる――。

ああ、時代の流れってのは、

その時折に頂点を極めたものであっても、

表舞台から引き釣り降ろされる、

かくも無残で惨たらしいものなのね的な、

そんなシチュエーションに困惑しながらも、

ワタシは豹変激しさにますます磨きが掛かる彼に尋ねた。



ワタシ
「アイツ――と言いますか息子さんのせいで、

一体何が……起きたんです?」



ワタシの問い掛けが火に油を注ぐ結果になったようだ。

こめかみをひくひく引きつらせながら、

彼は烈火の如き、言葉を噴出す。



ニセ仙人
「……そんなん、分かるだろうがっ!!

この状況見てみろっ!!

どんな暮らしをしているか、見てみろっ!!」


ワタシ
「……はあ」



ちゅうか、アンタとアンタの息子の暮らし様は、

さっき嫌という程見てきたって。

そんなにゴミ溜めをアピールしたいのか?

それともまた、

ゴミ屋敷観戦ツアーにでも参加しなくちゃならんか?

……なんて、直線的に物事を荒んで捉える、

ワタシはワタシで疲労がたまっていたのだと思う。

そしてニセ仙人の話は、

ワタシの徒労感を更に増すものであった。



ニセ仙人
「大体、今こんな生活をしているのも、

アイツのせいだってんだ。

アイツさえ、訳の分からん投資さえしていなければ……。

病院だって、病院だって――」



――そういうと、誰に頼まれたという訳ではないのに、

彼は彼なりの真実を大いに語り始めた。

その話の間中ずっと、ワタシの脳内では――。

相変わらず、誰かがコサックダンスをしていた……。



……続く。


<おまけ日記>


今日のひとこと。

ごめん、ワタシの文章の性分で、

あまりちゃっちゃか展開を早めることは出来ないですね。

まあ、ゆっくりと適当に読んでみて下さい。

11/27 9時
>それって『この!アマ』が『この!ママ』ってことですか?

そういうことですね。

というか、その例題は面白いです。

11/27 16時
>近所のオオタ精肉店でコロッケ買ってきた。ウマー。

>次回は、ちょっと高かったが自家製ソーセージにしよう。

>スーパーのソーセージなんて

>混ぜ物ばっかりで不味いもんね。


肉屋のコロッケは確かに旨いですね。

なんだろう、別に油だってそうは取り替えていないのに。

まあ、食い物に関しても雰囲気というのは重要だ、

ということですかね。

11/29 0時
>明日かあさって電話しる いっしょにしゃべろうぜぇ 中


はいはい、了解です。

 

2004.12.01 水曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第三百七話−

 
ニセ仙人、もうひとつの真実…の巻。




ニセ仙人
「アイツが――。

息子が絶対に儲かるだなんて、

投資話に手を出したのは――。

多分、あの女と会い始めた、その時からだと……」



誰かが踊る幻想を垣間見る中、それを片隅にし、

ワタシの目前にいる風船男の父――ニセ仙人。

時々、つっかえひっかえしながらも語る爺の目には、

暗闇の中、強い光が宿っていた。

喋りまくる姿は、とてもじゃないが先程までの、

無言症の振る舞いを晒していた御仁には見えない。

我慢して溜めていた物を吐き出すように、

ブチまけるだけブチまけている。

内なる想いを搾り出すように、何度も何度も吐き出す。

その想いは汚物の如き真実であった。

風船男の語った真実とは違う、

ニセ仙人の視点から見た真実――。

もうひとつの真実だ。



ニセ仙人
「あの女――占有者A子と出会ったあの馬鹿は、

すぐさま、のめり込みました……。

毎日のように会合に参加して、やいのやいの言って、

それでもって、家に帰れば、金がねえ、金がねえ――」



ニセ仙人は少々、べらんめい口調になる。

元は江戸っ子か、はたまたニセ江戸っ子といったところか。

これでちゃんと呂律が回っていれば、

それはそれで形になるというものであるが、

どうにもこうにも回らない。

口に連動されたマブチモーターを新しいのにでも、

交換しておけ、それでもって、ぐるぐる回転させておけ、

といった感じだ。



ニセ仙人
「金がねえ、って口癖はそれこそ、

耳にタコが出来るくらいに――。

あんな女に出会って、あんな会合に入り浸って……。

金がねえ、はなかろうが、金がねえ、は――」



彼は、「会合」という言葉をさも憎々しげに、

吐き捨てるように口にした。

彼曰く「会合」は、どうやら風船男が入れ込んでいた、

アイドル時代の占有者A子ファンクラブの集まりのようだ。

それが分かったのは、この単語を何度目聞いた時だったろう。

とにかく、片手で数え切れないくらいの数だと思う。

会合と聞くと、町内会のオッサンどもの集まり的発想に

到るのが普通であろうし。

もっとも、占有者A子ファンクラブの集まりも、

オッサンどもの集まりには違いないのだろうが……。



ニセ仙人
「――あの会合は金を巻き上げる手段だったんだろう。

結局、あの馬鹿はそれにまんまと引っかかって、

金の無心を今まで以上にするようになっちまった。

アイツ、自分の収入も考えないで――」



ここまで黙って聞いていた、というか、

一心不乱にダンスをしていたのが自分なのか、

それとも他の人間なのだか分からない、

そんな事態に陥っていたのだが、

そんなグダグダな状況であっても、

当たり前に浮かんでくる疑問があった。



ワタシ
「……でも、医者だったんですよね。

だったら、そこそこはいい収入があったんじゃないですか?

それに医師免許があれば、

今でもそこそこは貰えるんじゃないでしょうかね?」



そりゃあ、そうだろう。

何と言っても風船男は医者だというのだから。

当たり前の感想、というか疑問。

でも――。

ワタシが疑問を口にした時、

ニセ仙人はふと間の抜けた、さっきの呆けた顔を見せた。

――と思うと、すぐに発作を起こしたかのように、

全身を揺らして、笑い出した。

笑い茸を食った後の症状みたいに。

ひいひいと涙だか鼻水だか涎だか体液を流し、

苦しそうに笑い――発作も治まらぬ内に、ワタシに告げた。



ニセ仙人
「……アンタ、そんなん信じていたのか?

アイツの、あの馬鹿の言ってることなど、

ほとんど嘘だよ、嘘」


ワタシ
「……えっ、じゃあ医者っていうのは?」



ワタシの問い掛けがダメ押しとなったようだ。

ニセ仙人はひときわ大きな発作を起こした。

笑い声は最後は苦しい喘息に近くなり――。



ニセ仙人
「医者っていうのも――。

嘘に決まってるじゃねえか!」



……続く。


<おまけ日記>


今日のひとこと。

テレビ関係の話をまた頂戴しました。

ありがたい話ですが、ワタシ自身が画面に登場出来るのは、

もうちょっと時間が掛かりそうです。

んでもネタ提供なら、今の段階でもご協力しますよ。


11/30 18時
>肉屋のコロッケがうまいのは、揚げる油の違いです。

>動物性のラードで揚げるからです。

なるほど、だから旨いんですね。

確かにラードは調味料としてはいいよなあ。

あー、肉屋のコロッケ食いたくなりました。

が、今は油モノを控えている身。

我慢しますですー。

 

2004.12.02 木曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第三百八話−

 
教えてー、アルムのもみの木よぉ…の巻。




嘘、嘘、嘘……。

風船男の話したことは嘘ばかり。

アイツ、あの馬鹿は嘘つきだ。

アイツの言うことなど信じるな――。

嘘という字がワタシの頭を駆け巡る。

ぐるぐるぐるぐる脳みそを掻き混ぜる。

それこそ、時にはアルプスの山を、

ヤギのユキちゃんと共に駆け回るハイジの軽やかさ、だ。

え、ハイジって、軽やかって――。

それじゃあ、今の気分は軽やかなのか。

重くはないのか。

鉛のように重くはないのか。

そうか、爽やかなのか。

高原の朝靄(あさもや)のように爽やかなのか。

……。

分からん、訳が分からん。

それに、ああ、誰なんだ。

コサック踊っているのは誰なんだ。

教えて、お爺さん。

教えて、お爺さーん。

教えてー、アルムのもみの木よぉぉぉぉ。



――混乱していた。

混乱すると同時に、ワタシはひどい脱力感を得る。

なんだよ、それ。

じゃあ、それじゃあ今まで聞いていた話は一体……。

虚無を掴む徒労感は、計り知れないものがある。

ワタシはその無の空間にただひとり取り残されていた。



ニセ仙人
「……なんか、間の抜けた顔をしているが。

まさか、信じていた?

アイツの発言を信じていた?」



そんな問いをするニセ仙人は、いい大人というより、

すでに老年時代に突入しているのにも関わらず、

心なしか、少々底意地の悪い顔をしていた。

全く持って、大人気ない。

というか、爺気ない。

いや、爺は爺なのだが――。

ニセ仙人の鬱憤晴らしにも似た真実の暴露は、

それだけに留まらなかった。



ワタシ
「はあ、まあ……」


ニセ仙人
「もしかして……。

あんな白々しいのにも騙されてるんじゃねえか?

まさかとは思うけど……な」



この男、いつの間にか先程までの呆け顔から、

悪代官と越後屋を足して二で割ったような、

底に悪意の泉を持つ、悪い顔になっていた。

悪代官は続ける。



ニセ仙人
「アイツの母親のことだけど――。

まだ生きてるぞ」



って、そこも嘘なのかいっ!

そんなツッコミをする気力すら起きず。

ただただ呆然……。



……続く。


<おまけ日記>


今日のひとこと。

知らない間に十二月。

師走だし。

とりあえず、走れっ!って感じ。

あー、コメント適当だな。

12/1 20時
>なに?うそだったのぉ…真剣に聞いてたのにねえ。

嘘だったようですが……。

はてさて。

12/2 11時
>展開のテンポがよくなった。果たして結末は?楽しみ!


テンポの悪さには定評のあるワタシの文章ですが、

最後ら辺の展開は面白いと思う。

ってゆーか、そうじゃないのかなー、と思う次第。

 

2004.12.04 土曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第三百九話−

 
嘘の分だけ、大人になる…の巻。




全部、嘘さ。

そんなもんさ。

夏の……。



――嘘の分だけ、大人になる。



もしその言葉が正しいとしたら――。

大きな嘘をつかれにつかれまくったワタシは、

今日だけでどれだけ大人になったのだろうか。

大人にされたのだろうか。

きっと、君はまだシンデレラさ、

なんて言ってられないくらい大人の階段を登ったに違いない。

そりゃあ、シンデレラも階段登りすぎて、

白雪姫に毒リンゴを渡す王妃の婆になるっての!



ニセ仙人
「まあ、アイツの母親とは離婚したんだから……。

言っちゃあ死んだも同然だけれども、な」



離婚話などマイナスオーラ漂う話なのにも関わらず、

爺はちょっと得意気になって言ってるのが見え見えで、

本来であれば、そんな態度を示す彼を、

ワタシは非常に疎ましく思うはずだ。

だが、今はそんな爺のことよりも、

風船男の嘘の方ばかり、頭の中でリフレインしていた。

ニセ仙人はニセ仙人で、またも同じ意を繰り返す。



ニセ仙人
「それでもアイツの母親と別れたのは、

五年だかそこら前の話だけれども……。

でも、そんなこと知らなくても、

あの馬鹿の話をフツーに聞いていれば、

如何に支離滅裂なことを言っている程度のことは、

分かるものだと思うけれどもな」


ワタシ

「……」



今回、赤坂のマンション占有者退去交渉に携わってから、

何度目の敗北感を味わう瞬間だったのだろうか。

冷静になって――いや、今この時この場所で、

沈着冷静な自分の姿はあり得ないのであるが――

錯乱した頭で風船男の発した断片を振り返るに、

確かにあの男が汗を掻き言っていた言葉の数々は、

その場限りの説得感を認めたとして、

話の繋がりを考慮してみると、果たして整合性はあるのか。

試しに「母親」というキーワードで当てはめてみる。

風船男は五歳だか小さい頃に、

母親と母系の祖父母を不幸なことではあるが、

交通事故で一瞬にして亡くしたと言った。

だけれども、だ。

ちょっと想い掘り返してみると、

それよりももっと前の会話では、小さい頃どころか、

風船男が成人した段階においても、

母親の存在というのを匂わせられていなかったか――?

やはり――。

風船男は嘘をついていたのか――。

改めて頭に鉄球を直撃したかの衝撃を覚えた。

全身を悪寒が襲う。



ニセ仙人
「アイツは……自分の都合が悪くなるとすぐ嘘をつく。

昔からそうだった。

腹が痛いから学校行かないだの。

大学に落ちたのは――アイツは高校を卒業してから、

マトモに社会に出たことすら、ないんだけれども――

やれ、受験の前の日の豚カツにあたったからだ。

油が悪いんだ。

使い回しにして、新しい油を入れなかったせいだ。

……なんて、そんなことばかり。

馬鹿か、アイツは。

もっとも、あれもこれも嘘も言い訳も、

自分を守るための方法なのかもしれないけれども……」



最後にちょっとしたフォローらしき表現が入ったものの、

地底を流れているのは冷たさであり、

他人事の如き、表現であった。

少なくとも肉親として、自分の息子に対する評ではない。



ワタシ
「……」



ニセ仙人と風船男との関係――父と息子というのが、

一番の嘘なのではないか。

ワタシはそう思わずにはいられなかった……。



……続く。


<おまけ日記>


今日のひとこと。

メルマガ、忘れてた。

というか、メルマガの物語をどこまで進めてたかな、と。

しゃーない。

今から読み返してみるかな。


12/3 11時
>フォントサイズ+4の突っ込み文字が出てこない。

>毎日楽しみにしてます。

どうでもいいことですが、ちょっと前までは、

テキスト系を少し気取っていましたので、

フォントいじりを少々使っていたのですが、

今はまあ、文章で直球勝負ってなところですかね。


12/4 3時
>森の木、じゃなくて、もみの木、じゃないっすか?


そうですね、訂正しました。

どうもです。

 

2004.12.07 火曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第三百十話−

 
金の色は血の色よりも濃い…の巻。




二人の間に浮遊する空白。

しばしの停滞。

それでも、ワタシは戸惑いを隠すことが出来ず――。



ワタシ
「……全部。

全部、嘘だったんですかね」



徒労感交じりのため息が出る。

風船男との会話は一体何だったのだろう。

ゴミ溜めで過ごした、あの時間は――。

目に見えぬ雲を掴むような話であったのか――。

ガックリと肩を落とし、虚脱感溢れるワタシに対し、

ニセ仙人は息を完全に吹き返したように喋る。

その姿はワタシを打ち倒した勝者のそれであった。

ワタシは、負けたのか。

背筋をぞくぞくさせる程の、この敗北感――。

きっと――きっと、負けたのだろう。

そんな感じがする。

そして、勝者は敗者に告げる。

その様は、冷たい夜風のように冷酷ですらあった。



ニセ仙人
「手っ取り早く言えば……。

その通りってことかな。

こんなこと言うのも親が言うのもなんだけど、

何せ、アイツはその場しのぎの嘘つきな男だから」



「親が言うのもなんだけど……」

ニセ仙人の発言で、この部分だけがいやに耳に残る。

爺の言葉でリフレインするフレーズは多々あったが、

これが一番強く印象に残った。

「親が言うのもなんだけど……」

それはまさしく、先程感じた親子関係の破綻そのもののを、

最も顕著に表している言葉である。

親子関係の破綻。

ニセ仙人は普段から、風船男への不満を持っていた。

だが彼は自分の感じる不満を、

自身の息子にぶつける術を持っていない。

もしかしたら、風船男から受ける、

家庭内暴力的な被害を恐れているのかもしれない。

いや、それとも暴力を受けていたのか。

息子といっても、反抗期の中学生ではなく、

四十を越えているだろう男が、

これまたもう年金暮らしのような老人を相手に、

リアルファイトをする姿は、想像するのも気色悪い。

そういえば、よくよく爺の顔を見れば、

彼の右目の下には青い痣(あざ)のようなものが、

薄っすらと……。

もっともそれが本当に、

息子から受けた暴力のせいかは分からない。

だが、親が息子に相当の不満を感じるに到る原因は分かる。

もちろん金銭だ。

例え血の通った親子であるとはいえ、

金勘定の問題は血の色とは別の問題である。

むしろ、金の色は血の色よりも濃いと言える。

世間で起きている事件を顧(かえり)みるまでもなく、

金は肉親が肉親を殺す陰惨な事件をも引き起こす。

ニセ仙人と風船男のケースでは、

そんな大事にまで陥ってはいなかったが、

しかし、ヨボヨボとした体でワタシを追い掛け、

道端に呼び止めて伝えたい程の、

不満の蓄積はあったのだろう。

だから、風船男と話した人間を捕まえ、

彼のことを言いたい放題に言う。

不満を残らず解消するためだけに、その口は動かされた。

多分、爺にとってはこれが、

最良のストレス発散方法となっているのかも知れない。



爺はたまりにたまった垢を流すべく、

風船男の所業を口汚く言っていた。

爺の思うがまま、言葉が発せられる。

ワタシは黙ってそれを受けていた。

ふらふらに弱っていたワタシに、何が言えるのだろう。

ただ黙って爺の話を聞いていた。



曰く、先物が云々。

曰く、和牛が云々。

曰く、金が云々。

曰く、株が云々。

全部、風船男が失敗して、残ったのは借金の山だけだ。

そうか、借金の山か。

ある意味、一山当てたじゃんっ!

……なんて、呆けた頭の中で上手い事を思ったワタシ。



――たっぷり三十分は経っただろうか、

ニセ仙人はこう言って、言葉を閉めた。



ニセ仙人
「……要するに、アイツの言うことは、

一切信用するな、ということだ」




……続く。


<おまけ日記>


今日のひとこと。

メルマガを久々に発行。

これまた長期シリーズになる?

大体、まだ雑魚のドイガキしか出てないしねえ。

真打の登場は、いつだ?

12/5 0時
>ハイジやH2O、なつかしいです!

H20いいですよね。

って「想い出がいっぱい」しか知らんけど、

それだけで必要十分条件を揃える、みたいな。

12/6 22時
>手に汗握りながら読ませて頂きました


手が汗まみれになると、

キーボードが駄目になっちゃうかもしれませんから。

気をつけて下さいね。

 

2004.12.11 土曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第三百十一話−

 
曇よりオーラ発生機…の巻。




それで――。

全部、嘘で――。

そいつら共の話は――。

すべて終わったということか――?



少々間延びした静かな喋り方であったが、

その語尾から与えられるのは、

決して真綿のようにふわふわと軽いものではなく――。

むしろ、ワタシの心臓を抉り取るような、

厳しく鋭い矛先であった。



ワタシは社長の前にいた。

明くる朝、ワタシは社長に昨日の顛末を報告していたのだ。

報告を聞いていた社長の顔つきは、

次第に険しいものとなり――。

それと比例するように報告者は報告者で、

呂律が回らず、しどろもどろになっていくのであった。

身振り手振りを加えた中途で採用した新入社員の、

たどたどしい報告を聞き終えた社長はゆっくりと、

それでいてハッキリと訊いてきた。



社長
「昨日の夜、何て言ったか覚えているか?」


ワタシ
「……」



「いつ」「どこで」「誰が」「誰と」くらいは、

正確に言ってくれないと、

何をどう覚えているかなんて問いに、

答えられる訳がないのであるが……。

でも、だからと言って――。



えーと、5W1Hって言葉知ってますか?

知らない?

あれ、5H1Wだったっけ?

まあ、いいか。

いやあ、そりゃあですねえ。

ワタシもじゃあ、何がWで何がHなのか、

ここで羅列してみろなんて振られても、

分からないですから、それはそれで、あれですね。

お互い様ということで……。



……とりあえず、何がお互い様なのか、

よくは分からないが、少なくとも、

このような軽いトークが出来る雰囲気ではない。

室内には、かなりの曇(どん)よりオーラが蔓延している。

あの脇にある空気清浄機は、

マイナスイオンを発しているのではなく、

マイナスオーラを供給し続けているのではないか、

と思わざるを得ないくらいの曇よりさ加減だ。

ああ、そうだ。

オマエは今日から空気清浄機ではない。

曇よりオーラ発生機だ!



ワタシは、そんな虚しいことを頭の片隅に置きつつ、

依然として黙ったままだった。

社長は通告した。

それは「喋る」という行為には違いないが、

まさに「通告する」という言葉がふさわしかった。



社長
「……時間を無駄にした、ってことだ」


ワタシ
「……」



ワタシは、背中を丸め、肩を落とし、

出来うる限り自分という存在を消したかった。

社長の前から、消えてなくしたかった。

しかし、それころ浅間山のマグマへとダイブしなければ、

現実に消えてなくなる訳がなく――。



……続く。


<おまけ日記>


今日のひとこと。

土曜恒例の行事とも云えるのですが、

またまた風邪を引きました。

鼻風邪です。

ちょっと辛いかも。


12/7 22時
>ちょっとひっぱりすぎ?

>もうちょっとチャチャット行けませんカ?

いけないですねえ。

12/8 17時
>誰にもわからないように、そっと教えます。

>冒頭部分、風船男がフネオトコなっています!シーッ


ある意味、船男ってのも、海の男っぽくていいですね。

鳥羽一郎っぽいし。

 

2004.12.15 水曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第三百十二話−

 
会社にとって時間とは何か?…の巻。




姿形は在りのままに、そのままに。

無論のことながら、赤いマグマに身を焦がすこともなく――。

ワタシはそこにいた。

しかし、例え肉体的な存在はそこに在ったとしても、

自分という存在を無の空地に変えたい程、

精神的な重苦は筆舌し難いものであった。

ただひたすらに無言の圧力。

眼前に迫る重圧に、

健気なまでに耐えなければならなかった。

一生に一度の御願いが叶えられるのであれば、

その時こそ、祈りはこうだ。

時間よ、早く進め!



社長
「……なあ、オマエ。

会社にとって時間とは何か、分かっているのか?」



社長は問う。

いやに耳障りのよい話し方であったが、

だが、問い掛ける言葉は厳しく――。

なまじっか優しげなオブラートに包まれているものだから、

その内蔵するものを逆に想像してしまい――恐ろしい。

ワタシはやはり、あうあう、いえいえと、

おろおろとするばかりであった。

社長はワタシの答えなど期待することなく、

自らその答えを突き付けた。

答えは変化球ではない、ストレートなものであった。



社長
「会社にとって時間は――まさに金だ。

金なんだよ、金。金。金。

オマエ、まさか金の大切さは分かっているよな?」



相も変わらず、優しげな喋り口調ではあるが、

これまたキャッチャーミットに、

ズバンと収まる程の直球な発言である。



社長
「オマエが昨日、やってたのは、分かるよな。

就業時間中にそんな行動をして――」



ってゆーか。

もう帰る時間の後に、ワタシが個人的に自主的に、

所有者宅に訪問したのだから、

それは就業時間じゃなく、

むしろプライベートな時間じゃんっ!!

とも思ったし、それは当たり前なことであるが、

そんなことをいえる程、余裕なんてなく――。



社長
「無駄だよ、無駄――」



またも静寂。

でも――。

ワタシの中でむくりと起き上がる衝動。

それはじわじわと形を成していく。

でも――。

本当に無駄だったのか?

確かに風船男は嘘つきであり、

ニセ仙人もちょっとおかしかった。

でも、その二人と会って話すことは、

本当に無駄な、意味も無いことだったのか?



――いや、それは違う。



……続く。


<おまけ日記>


今日のひとこと。

軽石で足の裏をこすると丈夫になるという、

豆知識を得た今日この頃。

ということで、軽石でゴシゴシこすってます。



12/11 18時
>最終回は、この社長に抱きしめてもらうのですね。

はい、そうです。

その後、濃厚なラブシーンが待っています。

 

2004.12.20 月曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第三百十三話−

 
キラウエア火山、噴火…の巻。




――そうだ、違うのだ。



意味がない、ということはない。

世の中にやってやらない意味はない。

そんな在り来たりのフレーズを引き摺り出すまでもなく。

ワタシは風船男から占有者A子を退去させるという、

話を引き出したではないか。

ワタシが行かなければ、彼に会いに戻らなければ、

そのような話など全く出なかったではないか。

大体、あの後だって……。



昨夜、ニセ仙人の最後通牒的な断言を聞いた後、

ワタシは風船男の住むあの廃病院を再々度、訪れたのだ。

風船男の言葉はすべて嘘。

経歴も嘘。

医者も嘘。

母親が死んだという話も嘘。

何から何まで、すべて嘘嘘嘘。

実の父であるニセ仙人の語った言葉は衝撃的であった。

ワタシに動揺をもたらした。

実際、目の前が真っ白になった。

ふわふわとした空虚感とは斯くの如きか――。



そんな虚しさを感じた時、

しかし、ワタシのどこかで声がした。



それで終わりやあらへんで。

事実はひとつ。

だけれども、それぞれの中に真実はあるんやで。



その言葉の意図するところを、

ワタシの疲れてへたっている脳味噌では、

多分に理解できなかったが、

でも、ただひとつ行動を起こそうという気持ちになった。

渋々というか嫌々というか、

明らかに抵抗しているニセ仙人を引き連れて。

じゃあ、その辺りをはっきりさせましょう。

そのためには、風船男――いや、所有者Yさんの話も、

当然聞かないと――。

対するニセ仙人は、「いや、それは困る」。

明らかに言い過ぎてしまったという、

絶妙な表情で示した彼は、頑強に嫌だと言い張る。

それはそうだろう。

ワタシが爺から聞いた有りのままを、

風船男が聞いたらどう思うか。

恐らく家庭内暴力だかなんだかの原因で、

直接息子にいえないからこそ、その不満の捌け口として

汚物のような言葉をワタシにぶちまけたのに、

それを掻き集めて、

そっくりそのまま息子に持っていったら……。

考えるまでもなく、ただでさえ自分の危うい立場が、

ますます悪化することこの上ないのは間違いない。

でもワタシは――そんな爺を説き伏せ。

いやいや、貴方のことは黙っていますよ。

ただ重要なところだけを再度確認しに戻る。

ただそれだけですよ。

それでも爺は「すんません、すんません、勘弁して下さい」

の一点張り。

でもワタシがそれで納得して帰るはずもなく。

いいから、いいから。

ワタシも確かめたいことがあるから、行くだけなんで――。



社長
「……」



だけれどもそれを言葉にすることが出来ず、

それこそ悶々としていた。

眉間の皺は恐らく、深かったことだろう。

社長はひとつ息をつくと、締めの言葉を吐いた。



社長
「……もう、いい。

いいから、次の準備をしろ」



……。

時間が止まった。

意味がまともに受け取れなかった。

次の準備とは――。

一体なんだろう。

更に眉間の皺を寄せたのが、

あまり気に入らなかったのだろう。

社長もまた、眉間の谷をグランドキャニオン並みに厳しくし、

突き放すのであった。



社長
「……オマエ、意味が分かってないのか?」



意味が分かっていない、か。

その意味――。

次の準備って何の準備だ?

分からない。

確かに、分からない。

ワタシが疑問の山に埋もれ窒息するかの如く黙っていると、

社長は機嫌が悪くなったのだろう。

見る見る間に顔が赤くなり――。



そして、キラウエア火山のように噴火するのであった……。



……続く。


<おまけ日記>


今日のひとこと。

先日、ねずみーランドに行ってきました。

久々だったんで、かなり浮かれてました。

土産買ったので、金も結構落としたなあ、と。

えーと、確実に資本主義の毒牙に掛かってますね。


12/17 15時
>それでGさんご飯食べられたん?かわいそうで…

大丈夫ですよ。

心配ありがとうございます。

 

2004.12.21 火曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第三百十四話−

 
再々度、所有者Y宅への訪問…の巻。




社長
「オレがこれだけ言っても、

オマエ、まだ分かっていないのかっ!?」



マグマの代わりに口から泡の飛沫を飛ばし飛ばし、

社長、一気に大噴火。

しかも今日は超特大級の怒りの様子だ。

こんな様子を垣間見たら――。

いつもだったら、生まれたての小鹿のように、

ひいいいと身をすくめ、ブルブルと震えながら、

早く早くと嵐が去るのをじっと待つのが常であるが、

だがこの時ばかりは違った。

ワタシは俯きがちの面を上げ、社長の目を逸らさず見据える。



――そうだ、違ったのだ。



社長
「……そんな変な顔しやがって!

オマエ、自分がやって来たことがどれだけ無駄か、

そんなことすら分かっていないのかっ!?」



……変な顔っていっても、これは元々だ。

今から、高須クリニックにでも行って整形してこい、

とでも言うのか?

はあ、もし整形費用くれるっていうんだったら、

それはそれでいいぞ。

鼻を高くするなり、脂肪吸引するなり、脱毛するなり、

なんなりしてやるっ!!



そう思う、ワタシの顔には更に険しいものが映っただろう。

そんなワタシの脳裏に、

彼――風船男との再々度の対面シーンが再生された。

そのシーンを一言で表すれば――。



それは涙であった。



渋るというよりも明らかに嫌がるニセ仙人を引き連れ、

ワタシは所有者Yの、

まるで田舎のヤンキーの溜り場にでも使われそうな、

廃屋一歩手前の自宅にワタシは舞い戻ってきた。

爺は家に近づけば近づく程、

嫌々とただでさえ震える手を更に大袈裟に震わす。

わざとらしさまで感じさせるその仕草であったが、

しかしそれは心の底からの叫びなのかもしれなかった。

「勘弁してください、勘弁してください」

そこまでに到る恐怖を駆り立てられるのは、

ひとえに風船男の存在に尽きるのであろうが――。

でも、だとしたら、例えそれが真実であったとしても、

わざわざワタシを追ってまで、

風船男の悪口を言わなければよかったのでは?

言葉が正しいかどうかは分からないが、

ある意味、自業自得という部分もある。

ワタシは「余計なことは言わないから大丈夫」と繰り返す。

もっとも何が余計で何が余計でないのか、

そんなことを判断する余裕や余地はない。

まあ、その時になったらその時。

ワタシの話しひとつにより、

彼ら親子の間に深刻な事態が訪れても、これもまた運命だ。

そう、諦めてもらおう。

ワタシはひとり納得し、家の呼び鈴を鳴らした。

しばし待つ。



……誰も出てこない。



試しに扉をガチャガチャと開けようとしたが、

鍵が掛かっているようで、開かない。

その時、ひと辻の風が舞い、

冷たい空気が余計、ひんやりと感じた。

ワタシは寒さのせいか、

それとも他の恐怖に怯えているのか。

ああ、そうだ――とワタシは思った。

別に隣に家人がいるのだから、

ここでこの男を連れ、入ってしまえば、

別に不法侵入やら違法行為にはならないだろう。

むしろこの老体の身に冷たい夜風は厳しいだろうし。

大体、何でこの爺さんは中に入らないのだ?

鍵を持っていないのか、それとも……。

よし――。



ワタシはニセ仙人に声を掛けた。

「じゃあ、家の中へどうぞ」

ワタシの急に振られた言葉に、非常に驚いたように、

背筋をびくりとさせたニセ仙人。

いやあ、あのお、ええと……と言葉を濁す。

「いやいや、もう寒いでしょ。外にいる意味がないでしょ。

ワタシもあなたの息子さんに会わなければならないし。

だったら家の中に入るしか、ないでしょ」

ワタシが少し強く言うと、ニセ仙人は、ううむ、ううむと、

考える真似をして、ボソリと呟くのであった。

「あの……。開けなきゃ、駄目?」

ワタシは力強く頷く。

落胆の色を見せるニセ仙人。



こいつは――。

それだけ、ワタシを風船男に会わせたくないのか……。



……続く。


<おまけ日記>


今日のひとこと。

最近、怒鳴ることが多い。

でもストレス解消するどころか、

ストレスがますますたまっていくばかりであり……。

うーむ、なんだかなあ、と。

12/21 9時
>おっ!て事は、Gさん彼女出来た!

出来てないです。

友達と行きましたです。

彼女様は、年中無休で大募集中です。

 

2004.12.24 金曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第三百十五話−

 
変なテンション、あがりまくり…の巻。




社長が何か言いた気な表情――。

いや、実際には言いたそうと云う表現では追い付かなくて、

活火山の大噴火、真っ最中。

マグマが出るわ出るわの、そりゃあもう大騒ぎさ!

と云った体であったが、いずれにせよ、

自分の世界の中で怒りを増大させているに過ぎない。

社長の目には怒りしか見えておらず、

ワタシのことなど、逆に近すぎて視界に入っていないようだ。

それだったら、ワタシはワタシであの昨夜のことを、

もう少し思い返してみよう――。



――そうだ。

爺は頑強に嫌がっていたっけ。

震える身と手を、更にブルブルと震わせて――。

でもそんな彼を脇目にし、ワタシは強く言い切った。



……まあまあ、大丈夫だから。

さっきから云っての通り、

息子さんに余計なことは云わないから。

云わない、云わない。

ワタシを信じなさいって。



強い眼差しで爺を見据え、ワタシはそう伝えた。

心の中では――もっともその場のノリで、

喋ってしまうかもしれないけどね。

ポロリしちゃうかもしれないけどね……。

ってポロリなんて、あれか。

♪じゃじゃまる ぴっころ〜 ぽ〜ろり〜

どきど〜き あっちむいて ぷーん! か。

それとも「ドキッ!丸ごと水着女だらけの水泳大会」での、

AV女優の果たす最も偉大な役割、おっぱいポロリか。

どうだ、どうなのだ?



爺は――相変わらず、駄々っ子のように嫌々していたが、

その間もずっと目に力を入れていると、

諦めたのか、ふうと一気に肩の力を抜き、うな垂れた。



――風が冷たい。

冷たいんじゃ、こんちくしょう!

冷たいか、臭いがきついかの二者選択だったら、

ううむ、仕方がない。

後者を選択しよう。

さあ、中に入るぞ爺!

ワタシは「さあさ」と促すと、

ニセ仙人は大人しく扉の鍵を開けた。

いざ、中へ行かん!

風船男に会いに行かん!!



……なんだか、疲れがたまりにたまって、

思わずテンションが変に昂ぶるワタシだった。

さあ、風船男よ、どこだ!?



……続く。


<おまけ日記>


今日のひとこと。

清しこの夜、クリスマスイブ。

皆様、いかがお過ごしでしょうか?

って、こんなイブだってのに、

こんな文章を手繰っているワタシ。

ええ、クリスマスなんかなんぼのもんじゃーい!!

と云ってみる今宵ひととき。

とりあえず、メリークリスマス!

 

2004.12.27 月曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第三百十六話−

 
風船男の涙は何色に輝る?…の巻。




彼は――。

そうだったのだ。

あの部屋でうずくまるようにして。

そして――。



疲れで吹っ切れたせいか、

テンションは上がり調子であった。

この人は何かクスリでも打ってしまったのですか?

なんて、それこそ問い掛けたくなるくらい、

無駄に高いテンションであった。

ニセ仙人が鍵を開けるのと同時に、

ワタシは勢い勇んで、ゴミ屋敷に雪崩れ込んだ。

その家の本来の主人はオレだと主張するかの如く、

到る所に不燃物可燃物が鎮座する室内。

外と同じく土足で踏み込みたいところをグッと堪えて、

「お邪魔します」といつまで経っても履き慣れない、

茶色の革靴を急いで脱ぐと、

そのまま二階へと繋がる階段をバタバタと駆け上った。

後からはヨタヨタとニセ仙人が続く。

ワタシと同じように階段を駆け登ってしまった、

ニセ仙人の絶え間ない息切れを微かに耳にしたが、

だからどうした。

それがどうした。

爺を気遣う心配りなど、

その時の自分には微塵もあろうはずもなく。

ええい、そんなことよりも爺よりも、

風船男に会うのが先決だ。

二階へ到着すると、念の為もう一度、

形を繕うように扉の先にいる風船男に声を掛けた。



ワタシ
「ええと、ワタシ、先程お会いした追い出し屋Gですが――。

所有者Yさん、またお邪魔してますよ。

確認したいことがありまして……」



そう言いながら、

二階の、昔はリビングだかダイニングであったろう、

これまたゴミだらけの部屋へと続く扉を開けた。



ワタシ
「ええと、入りますよ、所有者Yさん……」



問い掛けに対する返答を待たずして、

部屋に入ったワタシ。

そこを見渡すまでもなく、そこに彼は――いた。

ゴミの中に埋もれるようにして、彼はうずくまっていた。

そして、彼は――。



ワタシ
「所有者Yさん、貴方……」


所有者Y
「……」


彼は涙を流していた。

果たして彼の涙は何色だっただろうか。

まだ昨夜の記憶であり、色鮮やかとはいえないが、

それでもまだ彩色された記憶であるはずなのに。

その部分だけは靄(もや)が掛かったように、

深く白く濁っていて――。

ワタシは思い出すことが出来なかった。



一体、何色だったのだろうか――?



……続く。


<おまけ日記>


今日のひとこと。

歯医者行ってきました。

歯医者の一言は結構強烈なものでした。

 

2004.12.31 金曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第三百十七話−

 
男が泣いている理由…の巻。




男が泣いている。

その密閉されたゴミ空間で、泣いている。

もっとも男が泣くと云う行為自体、

珍しいものではないかもしれない。

老いも若きも男も女も、人間泣くときは泣く。

理由がどうであれ、他人からみて重かろうが軽かろうが、

例えそんなことは泣く理由に足るものか、

なんて思われるものであっても、

それは本人がどのように感じたのかが重要なことである。

だとしたらワタシが必要以上の動揺を感じているのは、

誠に不思議なことではないか。

泣くなんて感情の吐露なんて、珍しくも何ともないのに。

でも、ワタシはゴミの中に埋まる風船男を見て、

言葉も普通に掛けられずに、立ちすくんでいる。

彼は何だか萎(しぼ)んでいるようにも見えた。

それこそ、ガスの抜けた風船のように……。



ワタシ
「あ、の……」



意を決するかの意気込みでワタシは彼に話し掛けた。

彼は、呆けたように泣き続ける。

その時のその状況で、

まだワタシと話している状況の時に、

思わず涙を見せてしまったと云うことならば、まだ分かる。

相手と対峙したことにより感情が昂ぶり、

その勢い余って涙が出るのは普通であろう。

彼自身は住んでいないとはいえ、

家を巡っての争いである。

涙腺を開放するだけの理由はある。

しかし彼はワタシがここに戻ってくる前から、

泣いていたのだ。



……。

何も――だ。

その時、瞬時に感情が噴出すとは限らない。

時を隔て泡盛が旨味を増すかのように、

思いも又、時間が置かれて熟成されたのかもしれない。

ワタシとの話を終え、

彼は彼なりに色々と――。



――そうか。

色々と思うところがあったのだ……。



依然として彼はこちらの方など一顧だにせず。

……。

これ以上、言葉はいらない。

ワタシは黙って、二階のその部屋から出た。

後ろに控えていたニセ仙人は、

心なしかホッとしたようで、

「これで終わりですね、終わりですね」

と一人繰り返していたが、

ワタシはその言葉も無視し、

「お邪魔しました」とだけ言って帰路に着いた。



――夜風はやはり冷たかった。



……続く。


<おまけ日記>


今日のひとこと。

今年も後わずか数時間です。

思い起こせば……。

って別に思い起こさなくてもいいですね。

とりあえず、前に向かって歩くのみ、です。

 

2005.01.03 月曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第三百十八話−

 
果て無き沼の主への反抗…の巻。




――夜風の冷たさとはまた違う悪寒に襲われた。

そして、夜風と同様、

冷たい言葉がワタシの眼前にあるのに気が付いた。



無論、身内から唱えられたその言葉に、

気が付かない訳はなく――。

むしろ気が付いたと云うより、

目前の人物を再認識し始めた、と云う方が適切であろう。

ワタシはようやく自分の世界から、脱したようだ。

しかし、回想の泥沼から這いずり出たとしても、

現実の世界も汚泥の深き底無し沼の如きものである。

そこにいるのは、果て無き沼の主か――。



社長
「……おいっ。

ちゃんと話を聞いているのか?」



社長の言葉は疑問を口にしたのではなく、

不満を伝えたものであった。

実際、ワタシには社長の言葉など耳に入っておらず、

回想のモードに入り込んでいたのだから。

それはそれは心ここにあらず感を遺憾なく発揮し、

さぞや気の抜けた顔をしていたのだろう。

社長もそんな部下の姿を、

いつまでも見過ごす訳にはいかない、と云うことだ。



社長
「多分、オマエは昨日、

会った奴等のことを考えているのだろうが。

所有者だろうが、賃借人だろうが、

いずれにせよ、そんな嘘だか虚言癖だか被害妄想だかに

蝕まれた奴等にこちらが付き合う必要はない!」



ええい、看過出来ぬ。

無駄なことを考える暇があるんだったら。

いいや、無駄なことを考えるまでもなく。

オマエはただひとつの行動だけおこせばいい。

そうだ。

オマエは労働者階級の人間なのだから、

無駄なことを考えず、無駄口を叩かず、

ただひたすら、ひたすら、

働け働け働け働け働け働け……。



事実、会社の代表者の顔には、そう書いてあった。

ああ、それが経営者の真理。

果て無き沼の主の意思。

労働者とは相容れることは決してない。



ワタシは黙ったままであった。

沈黙の時間など、

数えるに両手の指が余る程だと思われたが、

主にとっては永久の時に感じられたのだろう。

すぐさま、停滞する時を劈(つんざ)いた。



社長
「……もう、いい!

この件は他の奴に引き継げ!」



主は、ワタシの同僚の名を挙げ、

彼にこの立ち退き案件の引継ぎをしろと言った。

命じる社長の顔には、諦めの色が出ていた。



……。

それは不良社員に対する諦め?

ワタシは出来損ない、か?

でも、ワタシは何も、それこそ、

一言も発してはいないのだけれども……。



社長は「もういいから下がれ、他の仕事をしろ」と言い、

手を振り、ワタシを部屋から追い出そうとした。



追い出そうとした……。



ワタシはモヤモヤとした感情を消化し切れずに、

それでも「失礼します」と残し、退室しようとした。

……。

しようとしたのだが、出来なかった。

廊下へ踏み出す一歩が出なかった。

ドアノブに手を掛けたまま、また振り返り……。

ワタシは――。



ワタシ
「……だけれども、ワタシは彼を信じたいと思ってます」



……続く。


<おまけ日記>


今日のひとこと。

あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。

なんて、月並みな挨拶ですね。

それもまあ、いいか。

お約束だし。

 

2005.01.07 金曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第三百十九話−

 
鳩が豆鉄砲を喰らった顔の社長…の巻。




――その後のことは、ぼんやりとしか覚えていない。



社長に面と向かって吐いてしまった、あの言葉。

思いがけぬ言葉を喰らって、面食らった顔をする社長。

鳩が豆鉄砲を喰らった顔と云うのは、この顔か。

これまでそのフレーズを聞いたとき、

そんな顔ってどんな顔だよっ!!

と思うことしばしばであったが、ああ、この顔か。

そうだ、この顔なんだ――。

鳩豆の顔なんだ――。



――ここで鮮明な記憶が止まる。



社長室から戻って来た後、

ワタシは自席の古い事務椅子に座っていた。

背もたれにもたれ掛かる度に、

その骨董品はキイキイと悲鳴を立てる。



ワタシは目を瞑(つむ)った。

瞼(まぶた)の裏に残った風景は、

靄(もや)掛かり、薄ら寒々とした灰色の空。

その霧中にひとり残されたワタシ。

ワタシの発言に社長は何か云い……、

そして、ワタシは社長に何かを答えた。

それの繰り返し繰り返し……だと思う。

何かを云った。

何を云ったのだろう。

詳しくは覚えていない、が……。

社長室から出た後、顔が火照(ほて)っていた。

顔が熱かった。

それで目が覚めたのだ。

抜け落ちた記憶はここから再開する。



それで、薄っすらとした記憶の答えは――。



その熱さが物語っているだろう。

顔を赤くする程、ワタシは激昂したのか。

感情が面に出たのか。

「ワタシは彼を信じたいと思っています」

フレーズがリフレインされる。

「ワタシは彼を信じたいと思っています」

……その言葉のつながりを受けて、

社長は何か云った。

云った、と云うよりも……。

叫んだ?

怒鳴った?

分からないが、でもワタシが顔を赤くして答えたくらいだ。

それを踏まえたら、恐らく社長も……。



ため息をつき、椅子に深くもたれる。

顔の熱さが残っていたのは、

まだ数分前だと云うのに、

それはもう、遥か昔のように思える。

熱は、急速に冷めていった。

急速冷凍だった。

その時のワタシの心に飛来する想いはただひとつ……。



……ああ、やってもうたあ。

熱くなりすぎてしもうたあ。



ひたすら、後悔の二文字のみであった……。



……続く。


<おまけ日記>


今日のひとこと。

知らない間にサイト開設二年目突入です。

これからもごひいきに。

それはそうと。

年明け早々、正月ボケしてくれないくらい、

仕事をこなしています。

頑張っているぞ、オレ!!

と云いたい位、仕事してます。

いや、自分なりにですけど。

明日も頑張れ、オレ!!

1/6 19時
う〜ん・・・心が揺れるわ。

♪揺れる想い〜 体中感じて〜 ですね。

って、何が「ですね」なのかは分かりませんが。

それにしても――。

心の動きを表現するのは、とても難しいことです、はい。

 

2005.01.08 土曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第三百二十話−

 
迷い迷いてどこへ行く?…の巻。




何をここまで熱くしてたんだろう。

何がここまで熱くさせたんだろう。

何でここまで熱くなっていたんだろう……。



顔の火照りは泡沫の末に消え、

思いを占領しているのは氷水に漬かったトマトのように、

隅々まで冷え切った心であった。

熱し易く冷め易いの言葉通り、

ワタシは冷めていた。

後悔していた。



自分にとって、縁もゆかりも弱みも強みもメリットもない、

あの男――風船男を信じてみよう。

いや、信じるんだ!

なんて、そんな一念を重んじ、

挙句の果てには社長相手に啖呵を切った。

……実際、啖呵を切ったかどうかは、

ぽっかりと空いた狭間の中での出来事であるので、

明確なまでに定かではない。

だけれども、先程の激昂による顔の熱さから判断するに、

相当のことを言ってしまったのは間違いないだろう。



「ワタシは彼を信じたいと思っています」



ああ……。

何故、こんな台詞を吹いてしまったんだ?



このフロアーにはワタシ以外、誰もいない。

ワタシは背もたれに全身の体重を預ける。

すると、椅子が悲鳴を上げた。



本当に……。

本当に自分自身で追い込んでどうするよ……。

大体、ワタシは……求道者だったか。

苦難辛苦を自らの枷(かせ)とし、真実の道を求め、

そして人間としての道を究める。

そんな世捨て人のような、人間だったか?

…・・・そんな訳がない。

それともただのマゾヒスティックか?

……うーむ、それはあるかもしれないが、

だけれども、オッサンに精神的に追い込まれて、

嬌声を上げるような、ハードな趣味は持ち合わせていない。

……多分。

って、いやいや、ちゃんと否定しろよっ!!



何故、あんな男のために、

自分で自分を追い込まなければならないのだ?

何故……。


……涙。

そうだ、ワタシは彼の流していた涙に拘(こだわ)っていた。

あの場でひとり、男が流した涙の理由。

だから、ワタシは彼を信じた――。

確かに彼は嘘つきかもしれない。

学歴も嘘、職歴も嘘、今までの生い立ちに関すること、

家族のことですら、そのすべてが嘘であった。

でも、自分の最愛の女である占有者A子を退去させる、

ワタシと交わしたこの約束は、必ず守る。

そう確信したのだ。



でも……。

退去を確信するには、弱い材料だよなあ……。



ワタシの心の迷宮は果てしなく続き――。

迷い迷いてどこへ行くのだろうか……。



……続く。


<おまけ日記>


今日のひとこと。

拙いですが、ホント、拙いですが、

こーゆー心理描写と云うか、

本題とは掛け離れたディテールを描いていくのが、

ホント好きなんだなあ、と思った次第であり。

はよ、物語すすめろやーっ!!

ってな人には、焦れったいこと、この上ないでしょうが、

もうしばし我慢して付き合って下さい。

1/8 12時
あけましておめでとうございます。

頑張って下さい日記を

あけましておめでとうございます。

今年も宜しく、ごひいきに。

この物語は今年中には完結しますよ。

…・・・多分。

 

2005.01.15 土曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第三百二十一話−

 
信じるモノは救われぬ?…の巻。




結局、心の迷宮に取り残されたまま――。

心の中が晴れぬまま、日曜日になった。

所有者Yとの約束――。

占有者A子との話し合いを行う、その日である。



麗らかな冬晴れの午後一番。

ワタシは、占有者のいるマンションから、

程近い地下鉄駅の改札で、彼の到着を待っていた。

本来、休日なのであるが、

交渉となれば致し方がない。

それにしても……。



約束は確かに、した。

次の日曜日の午後一時、彼女と会いに行く――約束。

しかし、午後一時半を過ぎても、

まだ彼は姿を見せていない。



ワタシは午後一時の十分前から、

改札口で仁王立ちしていた。

時間が刻々と過ぎ行くのと比例するように、

自身の内を押し潰す程の焦燥感が膨れ上がる。

未だ現れぬ、風船男。

油脂など摂っていないのに、

じりじりと胸焼けを起こした。

油脂どころか、今日は何一つ口にしてない。

でも、この嘔吐感は一体なんなのだ?

何を吐き出したいのだ?



待ち合わせ場所を間違えたのか・・・…?



とも思ったが、だがこの駅の改札はここだけである。

もしかして、改札口といっても地上出口付近で、

待っているかもしれない。

ワタシは思い立ってすぐ、地上へと続く階段を

ダッシュで上ってみたが、

風船の如き人間はどこにもいなかった。

また改札口に戻り、しばらく後、

見落としたかもしれないと胸騒ぎがし、

再度、長い長い階段を駆け上がり――。

でも、誰もいない。

いや、人は幾らでも、それこそ腐る程いるが、

風船男はいなかった。

落胆の様相で、ワタシはトボトボと階段を下りる。

長い階段を二往復した後に残ったのは、

疲弊感だけであった。

昨日、彼に電話したものの、

電話は通じることなく――。

そして、徒労の中、ワタシは最悪の予感を感じた。



果たして。

果たして……だ。

そもそもの問題として、あいつは来るのか?



そんな根源的な疑問で、ワタシは焦る。

そうなのだ。

あの夜、風船男の方から、

ワタシに話を持ち掛けて来たのだが……。

彼は親公認の嘘つきであった。

だけれども、ワタシは信じた。

嘘つき男を信じた。

あの、涙。

風船男の涙。

ワタシはここ数日、そればかりを後悔していた。

あの涙を見たばかりに……。



所詮、この世は信じるモノは救われぬ、のだ。

信じて、馬鹿を見て、それで終わり。

今回のケースに限ったことではない。

今までも乏しい人生経験の中でも、

多かれ少なかれ、人を信じて、

裏切られたなんてことがなかったか。

あるに決まっていよう。

なのに、なのに……。



風船男は、やはり来ない。

来るわけがない。

そんな約束など、微塵の価値もない。



社長に刃向かったあの日から、

数日来続く、後悔の念はここで絶頂となる。

時間はすでに、二時を過ぎている。

ここで一時間以上待っている。

ワタシは、もう何も感じることすら、出来なくなっていた。



……。

これで終わりだ。

ゲームオーバー。

社長の云う通り、法律的な対処で。

ドライに物事を進めることに。

その通りにしよう。



失意の内に、ワタシは叩き落され。

しかし、虚ろになったワタシの目に――。

あいつが映った。



風船男が、来たのだ……。



……続く。


<おまけ日記>


今日のひとこと。

最近、人に酔うことがわかった。

1/14 15時
信じても、たぶん、もののみごとに裏切るんだろうなぁ。

誰が誰をモノの見事に裏切るのか?

それは物語の展開を見てもらえれば、

分かると思います。

 

2005.01.17 月曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第三百二十二話−

 
風船男は、やって来た…の巻。




風船男は、やって来た。


約束の時間から、一時間以上遅れて、

約束の場所へとやって来たのだ。



所有者Yは風船のような体を揺らし、

こちらへ向かっている。

彼はそのはち切れんばかりの巨体を、

カーキ色なのか、単に薄汚れているのか、

ヨレヨレのダブルのスーツに押し込み――。

ボタンを留めることは最早、不可能であった。



――そうだった。

風船男のまさに体をスーツで包み込む、と云うより、

オバちゃんがスーパーの買い物袋に、

パンやら肉やら野菜やらを、

ギュウギュウにして、いっぱいいっぱい詰め込む。

まさに、そんな様子に似ていた――。



ハアハアと息を切らせ、歩いている。

風船男にとってみたら、

ここまで歩いてくる、電車に乗ってくる、

ただそれだけでも大冒険なのであろう。

高橋名人の冒険島くらいの勢いの、大冒険だ。

それにしても、よくこんな調子で、毎日毎日、

ファンクラブ活動に精を出すことが出来たと云うものだ。

もしかしたら――。

彼も、彼の父親も口には出していないが、

ここまで丸々と太ってしまったのは、

この数ヶ月、長くても一年程度の出来事なのではないか。

そうワタシは思った。

今となっては、どんな姿だったかまでは分からないが、

以前は少なくとも、普通程度には活動できる位の、

そんな姿であったのだろう。

そう思うと、ちょっと心臓が痛くなった。



何故、痛くなる?

彼の身を考えて?

いや、それとも――?



ワタシが思いの狭間に落ちていたさなか、

ようやく、彼はワタシの目の前に立ち止まった。

彼は――これまたヨレヨレの白のワイシャツの、

首に締めた赤いネクタイが、何故だか痛々しい。

なんだか、血にぬれた首輪のようだった。

ワタシは、視線を彼の首から顔に移す。

冬だと云うのに、額から、じわじわ汗がにじみ出て、

彼の息は荒く激しいものであった。

まるで、エベレスト山頂でも制覇したかのように……。



ワタシ
「……所有者Yさん。

よくぞ、いらっしゃいましたね」



着の身着のまま――。

どこから這う這うの体で逃げ出してきたかのような、

彼の姿を見ると、ワタシは大遅刻をしてきた彼に、

強い言葉をぶつける意欲がなかった。

もっとも着の身着のまま、

と云う言葉の部分は間違ってるかもしれない。

彼にしてみたら、それがヨレヨレであろうと、

着古しであろうと、クリーニングされてなかろうと、

一張羅であることには違いない。

まだ一度しか会ったことがないが、

彼の部屋着と比べたら、

それでも十分、フォーマルである。

彼は彼なりに、今日と云う日を意識しているのだろう。

もちろんワタシと会う、と云うよりも、

占有者A子と会う、と云う、その一点に掛けて。



そんな風船男は息を整え整え――。

ふうふうと息を収めると、

ワタシに言ったのであった……。



……続く。


<おまけ日記>


今日のひとこと。

先日、カラオケ行って、その後、血ヘド吐きました。


1/17 9時
来た!

来ました(笑)

 

2005.01.20 木曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第三百二十三話−

 
彼女が、待っています…の巻。




所有者Y
「ちょ、ちょ、ちょっとばっかし遅れてしまい……」



改札口の前で、彼は掌(てのひら)で、

額の汗を拭いながら言った。

彼はハンカチは持っていないのだろうか。

もっとも持っていたとしても、

着ているスーツやワイシャツと同様、

ヨレヨレのグシャグシャだろう。

それだったら、手を使って拭うのも、

同じか――なんてワタシは思った。



所有者Y
「……ぼ、ぼ、ボクは、

こんなに遠出するのは、ひさびさ、で。

大変でした。

ええ、途中、体が動かなくなっちゃって――。



彼は自分がここまで来るのに、如何に大変だったか。

彼曰く埼玉の奥の方から、

東京の都心の都心に出ることは、

大冒険――やはり、高橋名人の冒険島並みの、

野生テイスト溢るる大冒険――だと、

どもりながらも、くどくどと言葉を連ねる。




所有者Y
「急いで急いで来たんですけど、

本当に急いで来たんですけど。

でも、半日――本当に半日掛かりました。」



彼のいる自宅の駅から、

東京都心のこの駅の改札まで、

移動時間は二時間弱と云ったところだ。

しかし、彼のこの巨体をみると、

なるほど人よりも移動時間が掛かるのも頷ける。

頷けるのだが――。

その一方で、苛立ちの想いが芽生えてきた。

風船男への苛々感だ。



所有者Y
「だから、しょ、しょーがないですね。

でも、ボクはここに来ましたから。

だから、大丈夫です。

だいじょーぶなんです……」



彼の口からは言い訳の言葉の数々が、

スーパーの特売たまご大安売り、らっしゃっい!!

早く買わないとなくなっちゃうよっ! らっしゃいっ!!

みたいに、ズラズラと並べられていたが、

しかし、最後の最後まで詫びの言葉は出てこなかった。

彼がここに来た――たったそれだけの事実で、

ワタシが得ていた、

ちょっとした安堵感が段々と薄れ行く中、

今度は不躾な彼に対する不満と不安が、

ワタシの心中を覆っていく。



彼に対する思いは――不信感。

たったひとつのこの言葉に集約されている。

不信感。

――その通りだ。

ワタシの得ていた安堵の気持ちなど、

空を掴むような、幻想に過ぎない。

夢幻(ゆめまぼろし)に過ぎないのだ。



風船男への不安からなる、

彼を信じることが出来ぬ心は、高まっていく。

それはワタシの視力にも作用していた。



本当に――。

ワタシの目前にいる、この風船の如きこの男は、

なんて醜悪なのだろう。



彼の背中から湯気のようなオーラが立つ。

嫌悪すべき灰色のオーラだ。

ワタシの顔は露骨にゆがんでいただろう。

だが、風船男はそれに気付いているのかいないのか、

気に留めるそぶりすら見せず、

彼なりのテンションをあげて、声を出すのであった。



所有者Y
「さあさ、行きましょう。

彼女のところへ、行きましょう。

彼女が、待っています」



……続く。


<おまけ日記>


今日のひとこと。

さあさ、週末に向かって、具合が悪くなっています。



1/17 21時
読んでいて面白いと思った

でも長すぎて中だるみした

仕様です。

だらだら書いてますんで、

読んでる方も気持ちがだらだらするのは、

当然なのかもしれません。

1/19 5時
最初から一気に読みました。おもしろかったです。

続き頑張ってください!


はい、とりあえず、今書いてるモノに関しては、

この連載にしろメルマガ連載にせよ、

早々に完結させますっ!

多分。

 

2005.01.21 金曜日


対決!追い出し屋G 対 元アイドル!

−第三百二十四話−

 
固まる風船男…の巻。




……彼女が、待っています、か。



心なしか、自信有り気に云う風船男に、

先程までの挙動不信感はなくなったのか――。

それどころか、彼のどす黒い唇の端には、

余裕の笑みすら浮かんでいる。

その姿に、ワタシは彼の醜悪さを如実に感じた。

実際、今の彼が、ちょっと前の彼と比べて、

精神的ないしは外面的に変化を来たし、

別の物に変化したと云うことはないだろう。

彼は、彼――だ。

しかし、ワタシは風船男に対して、

妙なまでに腹立たしさを得、

それはなかなか治まらなかっ