2005.03.28 月曜日
対決! 追い出し屋G 対 元アイドル 編
−第三百五十一話−
所有権の放棄…の巻。
まさに、決断を迫られている所有者Y。
心なしか、彼は震えていた。
止め処もなく、手が、足が、頭が、体が、
細かい振動を繰り返している。
微動はやがて、誰の目にも明らかな、
グラインドするような大きな動きに変わり、
ガクガクと打ち震えていた。
男の額には目に見えて汗がにじんでいる。
男の両目には充血の赤がありありとしている
怒りのせい――?
それとも、悲しみのせい――?
違う。
不動産の所有権を失う――。
この点において、彼の執着心は、
最早、全くないと言い切ってもいい。
遅かれ早かれ、競売のシステムにより、
彼が所有権を喪失することは、百も承知なのだ。
風船男は、呆けた顔をしているが、
その仕組みが分からないほど、馬鹿ではない。
無くなるものは、無くなる。
失わざるを得ないものを、
永遠に失わないなんて、装わない。
言い張らない。
しかして、当然の原理原則。
彼は、当たり前のことを当たり前に、
受け止めているのだ。
言葉を変えれば、諦めの境地にある、
と言い換えられるかもしれない。
したがって――。
彼は純粋なまでの怒りを表すことはない。
これまでは知らないが、
彼にとって、このマンションの所有権など、
今や片鱗すら惜しくはないのだ。
彼は、震える手で震える頭を押さえる。
ああ、ああ、ああ……。
熱い唸りを上げている……。
だとしたら――。
彼の衝動はどこから生まれ出るのか。
憤りでも、苦しみでもない。
ただ決断を下す、それについて――。
怖いのだ。
所有権なんてもの、
そんなものは、どうでもいい。
だが、決断をする――その行為自体に、
恐怖を感じているのだ。
自分が決める。
自分が即断する。
自分に求められている……。
やはりこめかみの辺りを手で押さえ、
薄く開いた口元から、熱いうねりを出していた。
ワタシは言った。
ワタシ
「……決断するのは苦しいかもしれませんが。
でも、決めるのは、貴方ですよ」
さあ、決めろ。
オマエのその手で、切り開け。
所有者Y
「……。
あ……そうか……。
そうですね……。
そうだな、うん……」
自問自答している彼は、ふるふると頭を振り、
目を瞑(つむ)っていたが。
それでも、ゆっくりと目を開き、
脇にいるワタシを見た。
その目には、もう迷いはなかった――。
所有者Y
「分かりました。
もう、所有権――?
そんなものは、いいです。
好きにしてください」
ワタシ
「……それは所有権が、
自分のものではなく、
ワタシの――ウチの会社が引き継いだ。
そう解釈してもよろしいですかね?」
所有者Yは、こくりと頷いた。
所有権の放棄。
これで彼は所有者Yではなくなり、
ただの風船のような男となった。
だが、しかし……。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
最近、ピルクルがお気に入り。
ヤクルトをガツンと飲んでるような気分がしますね。
3/28 0時
おつかれさまです。登記屋目指してる受験生♀です。
民訴民執等勉強してますが、
裏側にこんなドラマがあったのですね。
条文や問題が前と違って見えてきました。
お体大切に。(半端な送信スミマセン。)しょしん
法律の運用とその実務は違いますよね。
やはり人間が絡むことですので、
多彩な人間模様があります。
司法書士を目指すのも大変だと思いますが、
頑張ってください。
2005.03.29 火曜日
対決! 追い出し屋G 対 元アイドル 編
−第三百五十二話−
何、盛り上がっちゃってんの!?…の巻。
占有者A子姉
「さっきから、黙って聞いてたけど。
あんたら、ふたりで何、言っちゃってるの!?
何、盛り上がってんの!?
何、勝手に盛り上がっちゃってんの!?」
所有者Yから、所有者の文字が取れた瞬間、
異を唱える者が口を挟んだ。
――占有者A子の姉である。
占有者A子姉
「……所有権がどうこうとか。
アタシには、よく分からないけど。
でも、そんなのあんたらだけで勝手に決めて、
それで、だから何なの!?」
彼女は、髪を逆立たせ、
わあわあとガナリ立てる。
アタシはここにいる。
ここにいる存在を無視するな。
あたかも、存在価値を主張するかの如く。
ヒステリックに叫ぶ彼女に、
対比の濃淡を示すように、
ワタシはあえて、穏やかに言った。
ワタシ
「……所有権がYさんからワタシに移ったんですよ。
今、このときをもって、
ワタシが、ウチの会社がここの所有者です」
占有者A子姉
「だから、何、それが何!?」
ワタシ
「簡単に言えば、ワタシが所有者であり、
あなたが何かを主張したいというのならば、
直接ワタシに言わなければならない。
そう云うことです。」
……そう云うこととは、どう云うことなのか。
冷静に考えてみるとよく意味が分からない。
だが、これもその場のノリと云ったところか。
占有者A子姉
「……何で、何で、
そんな面倒なことしないといけないの!?」
ワタシ
「面倒なこと、確かに面倒なことと、
アナタは言うかもしれないけど。
でも、それが現実なのですよ。
面倒臭いという一言で片付けてはなりません」
あくまでも、穏やかに……。
しかし、彼女は取り付く島がなく。
占有者A子姉
「だって、だって、アタシは何も知らないし、
第一、アタシはここを、ただ借りてるだけなのよ」
ワタシ
「誰からですか?
誰から借りてるのですか?」
占有者A子姉
「誰って!?
何、言ってるの?
ちゃんと人の話聞いてないの!?
アンタ、さっきも言ったじゃないのっ!!」
彼女は怒りに任せ、テーブルに勢いよく手を突いた。
拍子に、灰皿代わりの空き缶が倒れた。
かつてタバコであった残骸と灰が、
少し残っていたコーヒーと入り混じり、
白のテーブルクロスを汚した。
布地は熊の模様を象ったものであるが、
彼女のおかげで、真っ白な白熊から、
灰色のグリズリーになった。
占有者A子
「あの子から、A子から借りてるのよっ!!」
……冷静に、穏やかに。
流石ににこやかに、までは実践出来なかったが。
こんな状況だからこそ、冷静に、穏やかに……。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
眠いです。
忙しいです。
3/29 2時
最近どうしたのですか?
どうもしませんよ?
なんだろ、文体とかですかね。
2005.04.04 月曜日
対決! 追い出し屋G 対 元アイドル 編
−第三百五十三話−
迷いの森から抜け出すのだ…の巻。
ワタシ
「堂々巡りになるかもしれませんが……」
堂々たるままに、迷い迷うよ。
ワタシもアナタも、キミもボクも。
巡る巡るよ、時代は巡る。
話はループしていた。
折れたレコード針みたいに、
さっきから同じところだけ、なぞっている。
だから、スピーカーから流れる音も同じ。
登場人物も同じ。
声も同じ。
同じシチュエーションで、
これまた同じ言葉を吐いている。
ワタシが云ったら、彼女が返す。
彼女が言ったら、ワタシが返す。
あたかも、迷いの森に入り込んだようである。
ワタシ
「この部屋の所有者であるワタシどもと、
この部屋を借りているアナタとは、
直接関係があるのですよ。
そして、ワタシたちはアナタたちと、
話し合いを求めている……」
「……話し合い?」
彼女は、何を今更と云った感で、
鼻で笑った。
占有者A子姉
「……何、云っちゃってるの?
今更、でしょ、今更。
そんなものは、もう、ねえ。
それ以前に……」
彼女は思い返すように、
視線を上に向けた。
ひとりごちるように、話を続ける。
占有者A子姉
「アタシも最初はそのつもりだったじゃないの。
だから、アタシはあの、歌舞伎町の、風俗街の、
くらーい事務所まで行ったんじゃないの。
……でも、駄目だった。
そっちが、すべて壊して、駄目だったじゃないの?」
ひとりごとは、ひとりごとでなくなる。
彼女はワタシを見据え、云った。
占有者A子姉
「話を壊したのは、アンタよ!
全部、アンタのせいなのよっ!!」
折れた針は急遽、曲のサビの部分に、飛ぶ。
いきなりの、ハードロックさ加減だ。
ロックよ、永遠に!!
思わず、ワタシはハードな彼女の物言いに、
ちょっと気圧(けお)された。
だが、ここで顔色変えて逃げてしまっては、
終わりだ。
すごすご逃げてしまったら、それっきりだ。
ワタシは引きつる顔に無理矢理、
冷静さを出し、答えた。
ワタシ
「……まあ、そんなこと云われても、ですね」
その時の、その通りの気持ちだ。
そんなこと云われても……。
ワタシにどうしろと云うのだ?
だが、それでも、自分の気持ちだけ吐露していては、
それこそ、彼女の二の舞になる。
ワタシは冷静に言い放った。
ワタシ
「それでは、A子さんのお姉さん。
アナタは話し合いに応じないし、
それで、A子さん本人にも会えることはない、と」
今や、呪詛を唱える元気もなくなったのか、
先程からしなびたキュウリのように、
萎えた表情の風船男の体がびくんとした。
A子、A子――。
彼女の名を心弱く、呟く。
占有者A子姉
「当たり前でしょ!!
なんで、アタシがそんなことしなくちゃいけないの?
もう、話し合いって、今日この場も、
そりゃあ、話し合いをしたってもんじゃないの!?
それでも、何の解決策もない状態じゃないの?
で、また会いましょうなんて。
そんなの、無駄よ、無駄!」
激昂する彼女。
迷いの森は、かくも深いものだ。
右手を添えて、壁伝いに歩いても、
また同じ場所に戻る。
迷い迷うよ、いつまでも……。
しかし、迷いの森に囚われのまま、
ワタシは朽ち果てていく訳にはいかない。
だから、ワタシは云ったのだ。
カラカラになった喉から搾り出すように。
迷いの森から抜け出すのだ……。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
桜の季節になりました。
これまた契約も花開くといいですね。
ってか、花開け!
2005.04.05 火曜日
対決! 追い出し屋G 対 元アイドル 編
−第三百五十四話−
最後の切り札…の巻。
……。
喫茶店の薄暗い照明の中、
ワタシはソファに深く座り直すと、
テーブルの上のアイスミルク
――いつの間に来ていたのだ?
――を取った。
アイスミルクを運んで来ただろう、
昔お嬢さんのウエイトレスは、
最早、接客業は立ち仕事が基本、
と云うことも忘れ、カウンター席でへたり込んでいる。
もう、足腰がさほど、強くないから、
仕方の無いことなのか?
そうだな――。
なんとなく、納得する。
ワタシはミルクを手にし、
液体の冷たさを感じていた。
しばし、ひんやりとした感触を楽しんでいたが、
だが、本来の目的は冷を取ることでない。
ワタシはグラスを抱え込むようにして、
一気に飲み干した。
ああ……。
ワタシはどうでもいいポイントで感慨深げになる。
牛乳の一気飲みなど、
中学の給食以来の所業ではないか。
クラスで牛乳の一気飲み、流行ったなあ……。
だが、喫茶店のグラスには氷が入っており、
量の水増しがされている。
牛乳瓶を一気する程の苦しさはない。
通り過ぎる液体のおかげで、喉が潤った。
焦燥感まで取り除かれたようで、落ち着く。
それにしても……。
言葉が喉にへばりつく程、乾燥していた。
あの時は……。
あの時は喉が渇いていた――。
ワタシ
「無駄だ、無駄だ、と云いますけど……」
精一杯冷静な声で話し続けていたワタシであったが、
かたくななまでに拒否するA子に、
神経が昂ぶられ苛立ち、少し強めの声で応じた。
ワタシ
「無駄、無駄、無駄と云ってたら、
何も始まりませんよ!?」
占有者A子姉
「だから、最初から何も始まってないじゃないの?
こちらも妥協して、何か始めようとしたのを、
自分にばっか都合のいいこと云って、
全部、話を止めたのは、そっちの方じゃないの?」
A子の姉は、先日行った、
マスウラの事務所での交渉が、
余程、悔しいものであったに違いない。
自分の思い通り行かず、
ただただコケにされたと思い込んでいる。
だから、彼女はワタシの話になど、
耳を傾けようとしない。
完全なる、拒絶――。
ワタシ
「……じゃあ、A子さんには、
会えないことは確定ですかね?」
A子……A子……A子……。
彼女を呼ぶ、呟く。
風船男の目は虚ろだ。
A子……A子……A子……。
占有者A子姉
「会えない、に決まってるじゃないの!」
そして、彼女は締めの言葉を告げた。
占有者A子姉
「もう、これでいいでしょ!?
終わり、終わり。
これで終わりよっ!!」
ワタシ
「そうですか……。
わかりました。
今日はこれで終わり……ですね」
これで終わり。
ジ・エンド。
で、終わらせられるか?
――否。
ワタシには、秘策がある――。
ワタシ
「……だけれども、このままでは、
何も終わらない。
むしろ、始まり、ですよ
占有者A子姉
「何が、始まりなの?」
これが最後の切り札、だ。
さあ、行け!
ゴーだっ!!
ワタシは隣に座る風船男の肩を強く叩いた。
風船男はビクンと肩を戦慄(わなな)かせた。
あげた彼の顔は、ぐしゃぐしゃに崩れていた。
悲しみか、怒りか、それとも――?
ワタシ
「彼が……」
占有者A子姉
「はあ?
この男が何よ!?」
風船を見、露骨に嫌な顔をする彼女。
嫌悪感に塗れ、もだえている表情だ。
彼女の嫌々な表情に、
平然と視線を向け、断言した。
ワタシ
「彼が黙っちゃいませんよ……」
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
なんか、今日はあったかかったのですが、
個人的には悪寒が走りました。
なんだろ、風邪ひいてもうたかなあ?
2005.04.10 日曜日
対決! 追い出し屋G 対 元アイドル 編
−第三百五十五話−
家を取られるヤツと取るヤツ…の巻。
占有者A子姉
「……はあ?」
彼女は心底、虫唾の走るような、それこそ、
虫を踏み潰してしまったかのような、
そんな表情で声を出す。
ワタシ
「……だから、彼が黙ってはいません」
再度、繰り返す。
渦中の彼は――。
彼は彼で、呟き繰り返す。
彼女の名前を、A子の名前を――。
占有者A子姉
「だからー。
だから、なんだっていうのよ?」
ワタシ
「彼は、もうアナタの妹――A子さんのことしか、
考えられないのですよ……」
ポツリと漏らす。
ひとりごちるかのように。
依然として、想い人の名を――。
その名を呼び続ける、風船男。
自らの世界に埋没してしまったかのように。
占有者A子姉
「だから、どうしたの?
それがなんだっての!?」
苛立ちを隠すことなどまったくない。
ありのままの、
むき出しの姿で食って掛かる。
ワタシはそれをさらりとかわして、
あっさりと云いのけた。
ワタシ
「彼は――。
もう心の拠り所が、A子さんしか。
アナタの妹さんしかいないのですよ」
そう断言した。
だが、風船男の様子からして、
それは誰の目にも、明らかであろう。
彼は彼女を求めている。
自身の安らぎを、癒しを求めている。
救いは彼女にしか、いない。
彼は彼女を求めていた。
ワタシ
「……この家も取られ、失意に駆られ、
失うものばかり……。
彼の今の状況など、そんなものです。
だが、今日は一体、何のために、
彼はここに着たのか。
別にワタシは無理にここに来てくれ、
とは云っていませんよ。
もっとも、今回の競売によって、
ワタシが彼と会ったと云うのが、
きっかけになったでしょうけど。
でも彼は自分の意思でここに来た」
占有者A子姉
「それは、何だか知らないけど、
アンタの仲間になって、
手先になってここに来たんでしょ!?
アタシたちに言いがかりをつけるために。
大体、なによ、この男は。
この家の持ち主なんでしょ?
それがなによ。
家を取られるヤツが、
家を取る方と一緒になるなんて……」
占有者A子姉は、吐き捨てた。
占有者A子姉
「ホント、馬鹿な男。
そんな馬鹿なことやってるから、
結局、競売になんてなるのよ!」
……風船男は、自分のことを
悪しく云われているのにも関わらず、
それに反論することなく、
ただ自らの望み人の名を呼び続けていた。
ワタシ
「まあ、それについては、
こちらとしては、何ともいえないのですが」
だから、競売になるのか、か。
ワタシは苦笑する。
それぞれの思惑は違えど、
確かに、家を取られる側と家を取る側が、
一緒になって、占有者と相対している。
ワタシ
「しかし、現実問題として、彼女に会えない。
アナタが拒むことによって、彼女に会えない。
会いたいのに会えない、悲しみや重圧。
彼の心中やきっと、
常人には図りかねない状態なのでしょう。
だから、それ故……」
彼は何を仕出かすか、分かりませんよ?
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
やることいっぱいあって、すごい、大変です。
4/8 13時
面白い!! 頑張ってください
はい、ありがとうございます。
2005.04.11 月曜日
対決! 追い出し屋G 対 元アイドル 編
−第三百五十六話−
これは犯罪よっ!…の巻。
――固まっていた。
彼女も彼もワタシも、皆、沈黙。
ただ、沈黙と一口に云っても、
それぞれにそれぞれの思惑があって。
ワタシは、自分が投げ掛ける言葉は出した。
だから、その返答待ちだ、と云うスタンス。
彼女は、ふるふると震える唇の端を見る限り、
自らの怒りを、どのように表現すればよいのか、
ただそれだけを考えている。
そして、彼は……いや、彼の場合、
本当のところ、何をどう考えているかについては、
考えが及ばぬところがある。
基本は怒っているのだが、見ようによっては、
どことなく――笑っているような、
不気味な表情を崩さず、魔法の言葉を唱えている。
凍る人々の群れから、いち早く、
飛び抜けたのは、占有者A子姉だった。
やはり、怒りの炎はメラメラと、
燃え滾(たぎ)っていたからか……。
氷解までに時間はそう、掛からなかった。
占有者A子姉
「さっきから、何云ってるのよ、アンタ!!」
彼女の言葉にもう、遠慮はない。
占有者A子姉
「アンタ、ばっかじゃないの?
意味不明なことばっかり云って。
……いや、意味不明というよりも、
最早これは、脅迫じゃないの?
この男を、アタシんところに差し出して、
それでつけまとわせる!?
何を仕出かすか分からないって、
まさにそういった脅し文句じゃないの?
そういったことなの?
ねえ、そういうことなんでしょ?
やっぱ、アタシを脅してるの?
そういったことっ!?」
最後の方は、絶叫に近い形であった。
彼女は彼女なりに必死である。
だが、必死なのは、ワタシも同じだ。
多少なりともクールを心掛けているが、
しかし、ワタシも喰らいついていかなければならない。
ワタシ
「いえ、そんな脅しとか脅迫とか、
そういうことをワタシは云ってる訳じゃないですよ?」
占有者A子姉
「でも、アンタ、そう云ってるんじゃないの?
こいつが――」
これまたふるふると震える指で、風船男を指差す。
占有者A子姉
「この男が何を仕出かすか分からないって!
これって、立派な脅迫でしょ?
犯罪よ、犯罪っ!!」
ワタシ
「犯罪、ですか?」
すっ呆けてみる。
しかし、その言葉がガソリンになったのか、
ますますヒートアップする彼女。
占有者A子姉
「そ、そ、そうよ、そうよ!
犯罪よ、犯罪っ!
これは犯罪よっ!!
ああ、もうっ!!」
彼女はバンっと、
テーブル板を両手でぶっ叩いた。
拍子に、タバコの灰が勢いよくばら撒かれ、
粉塵として、辺りにもうもうと立ち込めた。
彼女は、テーブルに片手を突いたまま、
もうひとつの手で、ドアを指し示した。
占有者A子姉
「いいから帰って!
もう、帰ってよ!!」
ワタシはここが肝心な場面だと思った。
彼女の怒りの頂点は、今まさに達している。
ここが絶頂の時。
しかし、頂(いただき)を制覇した者は、
後は下るしか道はない。
しかも、下り道は急であり、それこそ、
ごろごろと転がり落ちるように、
急速にテンションが下がることが多いのではないか。
今までの僅かばかりの人生経験と、
そして、足りない脳味噌をフル回転させて、
得たワタシなりの結論だ。
ワタシはすくっと立ち上がった……。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
たいへーん。
2005.04.12 火曜日
対決! 追い出し屋G 対 元アイドル 編
−第三百五十七話−
じゃあ、呼ぶわよ、警察呼ぶわよ!…の巻。
ワタシ
「……残念ですが。
まあ、これ以上は、話は進まないようですから。
話は堂々巡りになっていますし……。
非常に残念です」
彼女の指し示す方向へと、
ワタシはゆっくりと歩を進める。
リビングの扉ドアに手を掛けた。
ワタシ
「……じゃあ、これでワタシは失礼させて頂きます」
――その時だ。
後ろから声が飛んだ。
占有者A子姉
「ちょ、ちょっと待って!」
彼女は、甲高い声でワタシを呼び止める。
ゆっくりと振りかえる。
玄関先へと向かっていた彼女の指先が、
違う向きへと変えられていた。
その先には、彼が居た。
風船男だ。
彼は丸い猫背を盛んに上下させながら、
はあはあと息を荒げていた。
ぶつぶつと云う彼女の名を呟く声も、
心なしか口調が早い。
占有者A子姉
「アンタ帰るんでしょ?
だったら、この男も連れて帰ってよ!!」
アンタは帰って当然だけど、
ついでにこの気持ちの悪い男も、
自分の視界から消し去ってよ。
彼女は自分の意向をダイレクトにぶつけた。
しかし、ワタシをゆっくりと頭(かぶり)を振る。
風船男は相変わらず、
背や腹を膨らましている。
ワタシ
「いいえ。
彼とワタシは、関係ないので……」
占有者A子姉
「関係ないも、何もないじゃないの!?
だって、アンタら一緒に来たんじゃないの!
一緒に来たなら、一緒に帰るのが、
それこそ、筋ってものじゃないの!?」
ワタシ
「いえ、筋道も何も……。
ワタシと彼との関係って云っても、
単にワタシは競売で不動産を買った者。
それだけの関係ですよ。
それ以上でもそれ以下でもありません。
彼は彼で、彼の意思でもって、ここにいる、
と云うことなんでしょう」
ワタシは、リアクション多過ぎな外人みたいに、
大袈裟に首を竦(すく)めた。
ワタシ
「だから、ワタシには、彼をどうすることなんて、
出来ないですよ」
彼は――ガクガクと頭を振り乱しはじめた。
脂ぎった髪の間から、
白い雲脂(ふけ)が辺り一面に舞い散る。
粉雪は、近くに置かれていた、
キティちゃんのぬいぐるみにも降り注いだ。
ボタンの黒目に、白い点々が出来る。
その様を見ざるを得ない占有者A子姉は、
見る見るうちに、嫌悪感を増した表情になった。
彼女は手を延ばし、
ぬいぐるみを奪い取るようにして、
手に取ると、眉一つ動かない猫の顔を、
乱暴に手で払い、不浄の粉を落とした。
そして、彼女は自分の想いを一身に捧げるように、
キティちゃんを抱きしめた。
彼女にとって、この猫のぬいぐるみは、
余程、大切な物なのかも知れない。
先程が怒りの頂点だと思っていたが、
更にその頂(いただき)は高かったようだ。
顔を真っ赤にして、うち震えていた。
占有者A子姉
「帰ってよ!!
いいから、帰ってよ!!
でないと……」
彼女はぬいぐるみを抱いたまま、叫んだ。
占有者A子姉
「警察呼ぶわよっ!!」
ワタシはドアに手を掛けたまま、
冷静に彼女に答えた。
ワタシ
「警察ですか。
そうですか。
まあ、呼べばいいんじゃないですか?」
占有者A子姉
「じゃあ、呼ぶわよ、警察呼ぶわよ!」
彼女は喚(わめ)きながら、
傍にあったコードレスの受話器を取る。
内心、警察を呼ばれたら状況として、
マズイのではないか、とも思ったのだが、
ここは勝負時。
最後の詰めの大勝負である、
と直感したワタシは、心の動揺や動悸を抑え、
最大限の穏やかな声を出した。
少し上ずったが、まだマトモに声は出たと思う。
ワタシ
「それは、アナタと彼との問題ですから。
ワタシがとやかく云うことではないし、
警察を呼べとか警察を呼ぶなとか、
そんな風に云える訳がないですよ。
ただ――」
話を続ける。
穏やかに、風のように、穏やかに。
ワタシ
「ただひとつ言わせて貰うと――。
こちらの部屋のですね、
実質的な所有者は、ワタシの会社ですけど。
ほら、先程、口頭ですが、
所有権をウチの会社に譲り渡すと、
所有者――いや、前所有者ですか――
が、そうはっきりと言い渡したことですし。
でもね、社会的には所有者は、
まだ、この人――Yさんなんですよ?
権利書だって、この人が持っていることですし、
登記の名義だって、この人のものですよ。
今の段階では、ね。
警察呼んで、じゃあ、不法侵入だ、
何だといってもどうなんでしょうかね?」
ひとつだけ、と云いながら、
長台詞を咬ましているな、と我ながら思う。
実際、彼女が主張するであろう不法侵入の罪が、
このケースで適応されるのか否かについては、
その時のワタシの知る由ではなかったが、
しかし、ここは勢いに任せて言い切ったのが、
功を奏したようだった。
彼女は、掴んだ受話器をそのままに、
ただ、じっと視線を胸に抱く、
キティちゃんに向けていた……。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
やっぱり、たいへーん。
2005.04.13 水曜日
対決! 追い出し屋G 対 元アイドル 編
−第三百五十八話−
ワタシの計画を妨害する者…の巻。
ワタシは彼女に問い掛けた。
ワタシ
「恐らく、Yさんは――。
警察が来たとなれば、
この人はこの人で、この部屋の所有者だと云うでしょう。
アナタはアナタで、いや、ここは借りていると云う。
お互いの主張が食い違うことになり、
一方的にアナタに有利な解決が導かれる、
なんてことはないでしょうね、きっと。
もしかしたら、アナタの方が、
警察によって、嫌な目に合わされるかもしませんし。
さあ、どうしますか?
それでも、警察に電話します?」
占有者A子姉
「……」
彼女の表情に迷いの影が表れた。
よし、これはいけるのではないか――。
ワタシは攻めの手を留めなかった。
ワタシ
「いずれにせよ、ワタシの預かり知らぬことですから。
電話したければ、したいようにすれば、
いいんじゃないですか?」
震える風船男の念呪の如き言葉は続き、
それに呼応するかのように、
コードレス受話器を持つ彼女の手が、
ブルブルと小刻みに振動していた。
占有者A子姉
「……あ、あ、あ」
彼女はキティちゃんを凝視していた。
しかし、キティちゃんが彼女を助けてくれる訳もなく、
猫はただ、沈黙を貫いていた。
ワタシ
「さあ、どうします?」
ワタシは沈黙する彼女に更に追い討ちを掛けた。
追い込むを掛けることによって、
このまま、風船男が居座り続けるのではないか、
との恐怖感を与え、一旦、
彼をここから連れ出す代わりに、
次回、姉のみならず、
占有者A子本人を引き釣り出す約束を取る。
これが目的だ。
だが――。
ワタシの意図を妨げる、
不確定要素が現れたのだ。
――ぎゃわわわわわわ。
沈黙するモノがあれば、沈黙せざる者もいる。
後者こそ、ワタシの計画を妨害する者であった。
彼の存在は、リビングの隣部屋に居た。
それは――赤ん坊であった。
絹を裂くような、泣き声が頭に響く。
彼女から、迷いの表情は消え、
苛立ちのそれになった。
占有者A子姉
「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ……。
うるさい!
うるさいのよっ!!」
突如、顔を奇妙に歪めたかと思った矢先――。
彼女は、手に持っていた受話器を、
リビングと隣部屋とを隔てる壁に、
投げつける。
叩き付けられた受話器は、
派手な音を立てて、充電池が飛び出た。
ワタシは、「あーあ」と呆れ声を出した。
彼女は構わず、喚き散らす。
占有者A子姉
「うるさい、うるさい、うるさい!!」
そう叫びながらも、
キティちゃんの首の辺りを絞める。
大事なモノじゃなかったのか。
彼女はギュウギュウと締め上げていた。
赤ん坊も占有者A子姉の、
殺気とも思える気配を機敏に感じたのか、
更に輪を掛けて、泣き声のボリュームが上がった。
それにしても――。
一体、誰の子なんだろう?
この部屋で暮らしているのは、
彼女――占有者A子姉と、赤ん坊、彼女の母親、
の三人であるように見受けられる。
順当に考えれば、占有者A子姉の子供、
と云うのが普通だろう。
だが、今、この状況を、
そして、過去の状況を見る限り、
対応の仕方が実の母親のそれとは全く違う。
異質なものであるだった。
それ故に、ワタシにはこの赤ん坊が、
占有者A子の姉の子ではないように思えた。
だとすると……。
占有者A子姉
「うるさい、うるさい、うるさい!!」
彼女の怒声と、赤ん坊の泣き声。
不協和音はますます、混迷の一途を辿り、
場の雰囲気は、
ますます暗黒色めいたものになるのであった……。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
やっぱり、やっぱり、たいへーん。
いろんな準備をせな、ならんのです。
2005.04.14 木曜日
対決! 追い出し屋G 対 元アイドル 編
−第三百五十九話−
大きな勘違いをしていた…の巻。
どんよりと重苦しい場には、
微風すらそよぐことなく、
胸を圧迫するような重圧のみが負荷されていた。
占有者A子姉
「うるさい、うるさい、うるさい!!」
彼女はそう叫び、
赤ん坊はそれに負けじと、
泣き声も火がつき、それはそれは高らかに――。
絶叫と泣き声のコラボレーションは続くよ、どこまでも。
……と思われたが、
最初に折れたのは、占有者A子姉の方だった。
赤ん坊は、依然として火が消えず、
ギャアギャアと泣き喚いていたが、
彼女は、絶叫から一転、トーンダウンし、
「うるさい、うるさい、うるさい……」
などと字面こそ同じ言葉を発していたが、
彼女は一瞬顔をクシャッとすると、
顔を伏せてしまったのである。
ついさっきの、怒りに顔を歪めた表情とは違い、
悲しみのあまり、顔を崩したと云った感だった。
彼女が顔を伏せた際、
大きく開いた薄手の上着の胸元から、
ハラリと右胸の上に痕があるのが見えた。
小さい円形の痕。
それは、タバコを押し付けられた、
根性焼きの痕のようだった。
気になる痕であった。
赤ん坊はと云えば、それが仕事とばかりに、
飽くこともなく、泣き続けていたのであったが、
しかし、彼女の言葉は絶叫から、
かすり声へと変化した。
……。
彼女は、泣いていた。
声を押し殺して、泣いていたのだった。
嘘泣きか――?
とも一瞬思ったが、違う。
彼女のそんな様を、
リビングの端から見ていたワタシは――。
ワタシ
「……!!」
ああ……。
思わず溜息を漏らす。
ああ、そうだ。
そうなのだ。
ワタシはピンと来たのだ。
ピカッと稲妻が走り、脳裏に直撃したのだ。
占有者A子。
占有者A子の姉。
ふたりの母親。
赤ん坊――。
四人の登場人物の人間模様。
そこから導き出される、関係は……。
ワタシは――。
ワタシは、今まで、
大きな勘違いをしていたのかもしれない。
占有者A子の姉は、
ワタシや風船男を占有者A子に、
自ら望んで会わせたくないと云うのではなく。
それは……。
そして、一方で、占有者A子には、
是が非でも会わなければならない、とも確信した。
この閃きは、陥っている膠着状態を打開する、
チャンスへの扉でもあった。
ワタシは、握り過ぎて、手汗の塗れたドアノブを離し、
先だってまで座っていたソファセットに向かう。
そして、彼女に近づくと、
ワタシは優しげな口調で、こう云ったのであった。
ワタシ
「……アナタも大変なんでしょう」
占有者A子姉
「……」
胸に抱いたキティのぬいぐるみに、
顔を埋めている彼女は、
ワタシの呼び掛けに首を横に振る。
占有者A子姉
「……アンタに、
アンタにワタシの何が分かるって云うのよ」
声に勢いがない。
消え掛けたロウソクの炎のような囁きだった。
ワタシ
「分かりますよ。
ワタシ――いや、オレには分かりますよ。
お姉さん、アナタは、大変な目にあってるんでしょう?」
占有者A子姉
「……な、な、何が大変よ。
大変って……」
ワタシは、見せ掛けかもしれないが、
心よりの優しさを演じ、声を掛けた。
掛ける言葉は、ズバリのところだ。
ワタシ
「もう無理しなくていいですよ。
アナタは――。
ここに居たくて居るわけじゃないでしょう?」
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
話は最後の決戦へと向けて動いています。
来月中には完結させたいなあ……。
4/14 11時
うを〜〜!
どんどんぐちゃぐちゃになってきましたね!
どきどき!
もっとドキドキできる展開になる……はずです(笑
2005.04.15 金曜日
対決! 追い出し屋G 対 元アイドル 編
−第三百六十話−
あとはワタシが決着をつけます…の巻。
占有者A子姉
「……あ」
ワタシの投げ掛けた言葉に、
彼女は背中をひくんと大きく鼓動させ、答えた。
声にならない言葉を上げ、
体中、ふるふると震わせている。
いつの間にか、彼女から発せられていた、
怒りの気配は消えていた。
ワタシの目前にいるのは、
刺々しいばかりの殺気を漂わせる女ではなく、
弱々しい形(なり)の女であった。
一気にやつれるが如く、
豹変した彼女の様を目の当たりにして――。
ワタシは自分の想像が確信に変わったことを知る。
やはり、そうだ。
彼女は――。
ワタシは彼女の脇でしゃがみ込み、
声色を変える事無く、穏やかに云った。
ワタシ
「アナタは、居座る気など到底ないのでしょう。
むしろ、出たくて出たくて仕方ないはずなんだ。
問い掛けに対し、
最早、占有者A子姉は肯定もしないが、
否定もしてしない。
目を閉じ、顔をぬいぐるみに押し当て、
嗚咽を漏らしているだけだ。
これまでの彼女の対応を見ていれば、
否定のときは猛烈に抗議する。
青筋を立て、必死に全否定する。
それがないと云うことは、すなわち、
否定ではなく、肯定しているに等しい。
ワタシ
「だけれども、アナタはここに居る。
居続けようとしている。
それは何故か――」
ワタシは核心に迫った。
ワタシ
「――アナタは、自分の意思ではなく、
ここに居座っているのでしょう?
アナタは彼女から云われて、ここにいる。
ただそれだけなんですよ。
その彼女とは――」
――A子さん、ですよね?
その瞬間、彼女は更に強くぬいぐるみの頭に、
自身の顔を埋めていた。
赤ん坊の泣き声は、
大分、音量は絞られてきたものの、
隣の部屋から聞こえ続けていた。
ソファに座った風船男は、体を上下させながら、
ぶつぶつと愛しき人の名を呼び続けている。
ワタシはと云えば、占有者A子姉の傍で、
彼女の姿をじっと見つめていた。
間違いない。
姉は、妹に使われている。
妹のダミーなのだ。
――四者四様の空間がそこにはあった。
しばらく、ひくひくとしていた彼女であったが、
ようやく、顔を離した。
表情には生気が失せ、
虚ろな目は赤く充血していた。
占有者A子姉
「……怒られちゃう。
アタシ、怒られちゃう……」
うわ言のように続ける。
怒られちゃう、怒られちゃう、怒られちゃう……。
そこには今までの占有者A子姉の姿はなく、
何だか、風船男のようだった。
そんな彼女にワタシは云い続けた。
穏やかに……。
ワタシ
「……お姉さん。
いや、ワタシがお姉さんと云うのも何ですね。
あの、お名前伺ってもよろしいですか?」
彼女はこれまた虚ろな口元で、返答した。
ノゾミ――と。
ワタシ
「そうですか、ノゾミさんですか――。
それではノゾミさん。
アナタが、今まで頑張ったのは、
まあ、ワタシは相対する立場ではありましたが、
こちらとしても認めるところです。
アナタは、A子として、そして、A子の姉として、
いずれの立場であったとしても、
主張を繰り返した。
自分達の主張を崩そうとしなかった。
それは、ある意味、立派だと思いますよ」
心にもないことを、云っている。
我ながら、そう思う。
だが、一方でそれは真実の言葉でもあった。
ワタシ
「でも、もう、ここらで、おしまいにしませんか?
アナタは頑張った。
でも、ここらが潮時。
ノゾミさんが頑張るところじゃあ、
なくなってきますよ。
あとはワタシが決着をつけます。
アナタの妹さん――A子とワタシが……」
ノゾミ
「あ、あ、あ……はあ……。
もう、おわ、り、ですか」
苦しそうに呟く。
ワタシは力強く頷き、断言した。
ワタシ
「そう、終わりです」
ノゾミは「ああ……」と漏らし、
微かに首が動いた程度であったが、素直に頷く。
ワタシ
「あと、もうひとつだけ……。
赤ん坊には罪はありませんよ」
ワタシは優しい言葉のまま、
しかし、彼女を真芯に捉え切りつける。
彼女は一瞬、大きくのけぞると、
すべての鼓動を止めた。
ワタシ
「例え、アナタの子ではなく、
A子の子供であったとしても。
赤ん坊にA子に対する思いを、
暴力的にぶつけては、
その子があまりにも不憫で、可哀想ですよ」
ノゾミ
「……あ、あ、あ、あ、ああああああ」
そして、彼女は激しく泣き出した。
今まで心の内に溜め込んで来た想いが、
一気に解放されたかのようだった……。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
残りの展開はスピーディーにいっちゃいますよ?
多分(笑)
2005.04.18 月曜日
対決! 追い出し屋G 対 元アイドル 編
−第三百六十一話−
独裁者の力による支配…の巻。
一頻(ひとしき)り、泣いた後――。
彼女は、腫れぼったい目もそのままに、
ぽつりぽつりと話し始めた。
顔を伏せる彼女の、
声のトーンもテンションも低い。
ノゾミ
「……この赤ちゃんは、
アナタが思われた通り、
ワタシの子供じゃありません。
あの子の――妹の子供です……」
ワタシ
「……そうですか」
ワタシは、無論そんなことはお見通しだ、
と云わんばかりに装う。
だが、内心では、やはり……との思いで満たされた。
赤ん坊は、ノゾミの子供ではなく、A子のそれだ。
彼女は、「ああ……」と漏らし、続ける。
ノゾミ
「子供は、あの子の子。
……子供の母親である――あの子は、
あんな子で……」
ワタシ
「……あんな子、ですか?」
――あんな子って、どんな子なんだ?
大方の想像はつくけれども……。
彼女はワタシの言葉を受けた。
ノゾミ
「あんな子――。
そう、あんな子は、あんな子よ」
言葉を振るわせる。
あんな子、あんな子、あんな子……。
彼女は言葉を繰り返すのが、
癖なのかもしれない。
ノゾミ
「あんな子……。
わがままで自分中心で、
気に入らなければ、都合が悪くなれば、
癇癪を起こして、手が付けられない。
そんな子ってこと。
あの子は、みんな、自分中心。
自分のことだけよ、考えている事と云えば。
子供のことですら、ちっとも思っていない。
母親だなんて、自覚すら、ちっともない。
それに――」
ワタシ
「それに――何でしょうか?」
彼女の声に棘がなくなった。
しかし、それは矛先を向ける相手が、
目前の男どもではなく、
自分の身内――A子に代わったからだろう。
しかし、A子に対して向ける、
その矛の先端は、ぶるぶると震えている。
とてつもなく大きな恐怖に、
別に望んではないのに、
成り行き上、立ち向かってしまった。
そんな感じだ。
ノゾミ
「あ、あ、あの子は、
家族を家族とも思っていない……。
自分にとって気に食わないことがあれば、
すぐ短気になる。
カッとなったら、手が付けられない。
それでもね、最初は違うと思ってた。
短気とか、自分中心とかなっちゃうのは、
あの子も色々あって――。
芸能界とか、仕事とかのストレスとか、
そう云った部分がとても大きくて、
どこかで発散しなければ、
心が押し潰されるんじゃないかって――。
でも、そう思ってアタシ達が、
彼女の暴力的なわがままを認めていたのが、
あの子をどんどんと悪い方向へ、
助長して行ったのかもしれない。
あの子はやることが過激になっていって……。
時には――いえ、時折とか、
そんな程度でなく。
いつも、いつも、暴力を振ってくるようになった。
それも、一見して分からないような……」
彼女は暴力で家族を支配していた、
と云うことか。
一見して分からないような、暴行。
それは、彼女の胸にあった、
タバコの押し付けられた痕のこと、か。
他にも彼女の服の下には、
それこそ、一見して分からない、
そんな生々しい暴力の痕跡があるのだろう。
恐らく、暴力といっても、最初は、
軽く叩くとかそんな程度の、
たわいもないことだったのだろう。
しかし、それが積み重なり、エスカレートしていき、
その結果が――。
ノゾミ
「……アタシはあの子が怖かった。
あの子を怒らせるのが、怖くて怖くて堪らなかった。
だから、アタシはあの子が云ったことを、
全部聞いていた。
聞かざるをえなかったのよ」
――独裁者の、恐怖による力の支配だ。
それがこの家庭の形なのだ。
姉である彼女はそうであるように、
多分、まだ見ぬ母親すらも、
その専制の統制下にいるのだろう。
ワタシは自分の背筋にぞくぞくするような、
戦慄を覚えた……。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
最近、体がなまってしょうがないです。
4/16 16時
昼ドラにしましょう!関西弁オヤジは鶴瓶で。
Gさんは志垣太郎で。
すげえ濃いメンツですね(笑
4/18 10時
おお〜〜一気に急展開!
つーか、A子って超むかつくんですけど・・。
A子は怖いですね。
それでもって、どうなってしまうのでしょうか。
4/18 10時
ある程度はフィクションだとは思うんですけど、
実際に似たケースがあったんでしょうね・・。
どこからどこまでがフィクションなのでしょうか。
世の中、色々あるのが現実ってヤツですね。
4/18 10時
自分の面倒を自分で見れない人って多くないですか?
最近・・。払えない住宅ローン組む人とか。なんだかね〜
家を買うってのは、夢ですから。
でも、夢を夢とだけしかみてない。
それだけだけは駄目なのですよね。
4/18 10時
それでいて、いざ払えなくなって逆切れするとか。
周りにもいますよ。そういう人とか予備軍とか。
怖い怖い。
逆切れしちゃう人、割といますよね。
んでも、その原因を作ったのは誰か。
そう云うことが分からないと、ですね。
2005.04.19 火曜日
対決! 追い出し屋G 対 元アイドル 編
−第三百六十二話−
いらないって云われちゃった…の巻。
リビングに差し込む陽当たりは暖かなものだった。
だけれども、そのシアワセな光も、
彼女の、そして場の暗澹(あんたん)たる空気を、
晴らすことは出来なかった。
ただ赤ん坊の泣き声はすっかり止んでいた。
ワタシとしては、隣の部屋にいるであろう、
A子の赤ん坊が柔らかな日差しのなか、
安らかに眠っていることを願うばかりであった。
ワタシ
「……怖かったんですね。
A子さんのことが怖かったんですね。
だから、A子さんの云うことを聞かなければ
何をされるのか――」
ワタシは、同情の意を最大限表現する、
そんな声で彼女に語り掛けていた。
ノゾミは、小さく頷く。
元来、A子の姉は、心根の優しい娘なのだろう。
芸能界と云う生き馬の目を抜く業界の、
そのまた片隅にいたA子の芽を、
大きく包み、守り、育んで行こう。
それが姉である自分の役割なのだ――。
ノゾミはそう思い、A子に接していたのだ。
だがそれは、ノゾミの思いとは裏腹に、
芸能界で生きるA子の思いを癒すどころか、
彼女のわがままで自己中心的な部分を、
激しく増幅させていったのだ――。
しかも、芸能界のあだ花と散っただろう今日でも、
その悪の思いは拡幅の一途を辿っている。
ワタシ
「……A子さんは、ノゾミさんに、
ここにいろ、と云われたわけですね。
そして、ついでと云ってはなんですが、
子供の面倒も見ろ、
赤ん坊はオマエに任せた、と。
そんな感じですかね?」
ノゾミは頷く。
姉であるにも関わらず、妹には逆らえない。
A子に対する抑圧された気持ちを、
晴らす吐け口の生贄(いけにえ)となったのが、
A子から託された赤ん坊か――。
妹に手を上げられ何も出来ない姉が、
そのお返しとばかりに今度は、
小さな手をひらひらと彷徨わせることしか出来ない、
赤ん坊に手を出す。
怒りに任せ、力をぶつける。
そんな図式が如実に浮かび上がり、
ワタシは吐き気を覚えた。
ワタシ
「……で、それで。
だけれども、あの、赤ん坊には、
何も関係ないですから。
何の罪もありませんから、ね」
嫌な想像を打ち消さんばかりに、
ワタシは赤ん坊に対する暴力を、
やんわりと否定した。
――親が子供を選べないように、
子供も親を選べない。
子供には、ましてや判断能力のない、
赤ん坊には何の罪もない。
因果応報なんて言葉は、ありえないのだ。
ノゾミは――。
ノゾミ
「あ、あ、あ、あああああ……」
彼女は、自ら赤ん坊に手を下した、
そのシチュエーションを思い出したのか、
両手で顔を覆い、微かな嗚咽を上げていた。
その刹那、ワタシの横の男の、鼻息が荒くなった。
元所有者Y
「子供……」
A子の名を呼ぶばかりの風船男が、
たった一言、違う言葉を呟いた。
――そうだ。
A子の子供は、赤ん坊だけではなく、
風船男とA子との間に、
生まれた子もいるはずだ。
その子は今、どうしているのだろう。
この部屋にいるのか?
それとも、A子と一緒にいるのだろうか。
ワタシ
「…・・・ノゾミさん。
あの、A子さんの子供と云えば、
もうひとり、隣に座ってるYさんとの子が、
いるはずなのですが」
しかし、彼女は、
ワタシのその質問にマトモに答えようともせず、
顔を覆ったまま――。
ノゾミ
「……アタシね、この前ね、
あの子に云われちゃったの」
ワタシ
「……なんて、云われたのですか?」
いや、その前にこっちの質問に答えてくれよ。
風船男との子供がどこにあるのか。
気持ち悪いじゃないか、とも思ったが、
彼女としては、
そんな質問に答える気分ではないようだった。
ノゾミ
「いらないって云われちゃったの。
あの子から、いらないって云われちゃったの」
彼女は、ワタシと目を合わせようともせず――。
顔を手で覆ったまま、いやいやをする。
ノゾミ
「……アタシって、いらないのかな?
そんなに、いらない?
……ねえ、教えてくれない?
アタシの存在ってなんだろう……。
アタシって……」
彼女の独り言のような呟きに、
ワタシは答えようもなく――。
ただ時間だけが、
無為に過ぎて行くのを感じていた……。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
最後の決戦には一体誰が出てくるのか。
ガツンとやっちゃいましょう(笑
4/22 18時
やっとおもしろくなってきた。
これから、もっと面白くなる予定です。
2005.04.20 水曜日
対決! 追い出し屋G 対 元アイドル 編
−第三百六十三話−
最後の大勝負は、これからだ…の巻。
――薄暗い喫茶店の中、
ワタシは空になったアイスミルクのグラスを傾ける。
溶けた氷を口に含み、ガリガリと噛み砕く。
噛み砕く力がまだワタシには残っていた。
そんなことを意識をするくらい、
ワタシの精神は甚(いた)く消耗していた。
大きな溜息が自然と漏れた。
今日、何度目なんだろう。
息を大きく漏らすのは……。
そんなワタシの様を、
昔お嬢さんのウエイトレスが、
遠くから、気だるそうに見ていた。
――結果から云うと、
占有者A子姉――ノゾミとは、
占有者A子本人と会う機会を作ることで合意した。
彼女は、しゃくりあげながらも、
ワタシの言葉に素直に頷いていた。
A子の操り人形であり、
暴力によりA子の支配下に置かれていたノゾミ。
A子という魔物からようやく解放された彼女の姿は、
以前のそれは、
A子の呪縛のせいだと分かったとしても、
変貌の様に、驚きを覚えるのだった。
そんな風に大きく変わった彼女は、
A子と連絡を取れ次第、
必ず、A子と会うセッティングをする、と約束した。
ワタシが「A子さんには、確実に会えますか?」
と問い掛けたが、彼女はひとつ頷き、云ったのだ。
「お約束します」と。
帰り掛け――。
ようやく、伏せていた顔を上げた彼女には、
疲労の色が色濃く出ていた。
その彼女に、ワタシはお疲れ様です、
と声を掛けられた。
ワタシの顔も極度の緊張状態ゆえに、
これまた酷いものだったのだろう。
占有者A子と会う、その交換条件として、
ワタシの隣席についていた、
呪詛を撒き散らし続ける風船男を、
一緒に連れて行くことを彼女にお願いされた。
風船男をダシにして、A子と会うアポを取る。
それは、ワタシがそのように仕向けたことだ。
A子とのアポが取れた以上、
風船男はこちらが責任をもって、
対処せねばならないだろう。
風船男は、ワタシがあごで玄関を示すと、
ブツブツとした呟きをピタリとやめ、
大人しくワタシの後を付いて行った。
もしかしたら――。
風船男に席を立つよう自分が促しても、
動じることなく、そのまま、
自分の世界のなかに居続けるのではないか。
だとしたら、この男を外へ連れ出すのは、
少々の努力ではにっちもさっちもいかないかもしれない。
……などと内心、冷や冷やしていたが、
そんな状況に陥る事無く、
風船男は動きこそ遅かったが、
自力で歩を進めていた。
ワタシは、ホッと胸をなでおろした。
ワタシ
「……それでは、
今日はYさんと一緒に、失礼します」
玄関のたたきで、靴を履いていた時――。
ワタシを送り出そうと、精も根も尽き果てた、
そんな様でよろよろと、
玄関先まで出て来た彼女に、
あとから考えれば、
余計なこととしか思えない発言をしてしまった。
ワタシ
「……でも、本当にA子さん、
呼び出せることが出来るんですかね?
ほら、ノゾミさんにとって、
A子さんは怖い存在じゃないですか――」
ここまで云って、即座に後悔する。
確かにノゾミにとって、
A子は恐怖の大王以外の何者でもないだろう。
だが、それでも、せっかく相手が勇気を振り絞って、
A子を呼び出すと云っているのにも関わらず、
その意思を腰砕けの方向に持っていくようなことを、
ワタシは、何故云ってしまったのだ――。
我ながら間抜けだ。
ノゾミは薄く笑った。
一方では、投槍の様にも見える。
ノゾミ
「いえ、アタシも……。
云わないといけないことは、云わなくちゃ。
アタシは……いらない子、じゃないから。
あの子に、そう云わなくちゃ……」
……。
喫茶店のソファに身を沈めていると、
体が沈み沈み行く感覚になるが、
そのままここに居ても仕方がない。
少し休んで、アイスミルクを飲んで、
気力は回復した……はずだ。
ワタシは、鉛の如き体に活を入れ、立ち上がった。
まだ、終わってはいない。
ここで力を抜くことは出来ない。
最後の大勝負が始まるのは、
まさにこれからなのだ……。
その日の夕方には、
ノゾミから、A子とアポが取れ、
交渉の場を設けることが出来た、
との連絡が入った。
日にちは、一週間後である。
そして、最後の決戦の舞台は……。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
最近は、ちょー忙しいです。
んでも、更新は平日欠かさずやっていたり。
自分の時間を削りまくりです(^^;
2005.04.21 木曜日
対決! 追い出し屋G 対 元アイドル 編
−第三百六十四話−
最後の決戦の舞台は…の巻。
そして、最後の決戦の舞台は……。
ワタシ
「えっ……そこなんですか?」
電話口のノゾミは、「ええ、そこです」と答えた。
あっさりとしたものだ。
声のトーンに起伏は、ない。
だから、占有者A子とのアポイントを取るにあたって、
ノゾミがどのような仕打ちを受けたのか、
それはいまいち、
こちらに伝わってくることは無かった。
ワタシ
「ああ……」
思わず、声を漏らす。
それ程、思いも掛けぬ、交渉場所であった。
ワタシは受話器を持たない方の手で、
頭を掻き毟(むし)った。
……ああ、なんてことだ。
あの場所で交渉をするのか。
となると、アイツらが……。
意外な場所ではあったが、
想定の範囲にあると云えば、あるものだ。
でも実際にそこだと告げられると……。
だが、ここで驚きとどまってはならない。
――ノゾミからの電話を切ると、
ワタシは、マンションから出た後、
すぐに別れた風船男に連絡を取った。
数コールの後、電話に出た風船男の父、
ニセ仙人は、要領を得ないこと、この上なかったが、
まもなくして、その受話器を奪い取るようにして、
風船男の荒い声が聞こえた。
彼に、A子と会う時間を場所を告げると、
風船男は「分かった」と、
更に鼻息を荒げるのであった。
関係者ふたりとの電話を終えた後、
ワタシはひとり、天井を仰いだ。
そこに行けば、彼女に会える。
彼女に会って、引導を渡さねば。
あのマンションの占有を解除しなければ……。
ワタシの中で、
ふつふつと盛り上がる炎の息吹を感じた。
一週間後――。
その日も晴れだった。
昼の陽射しは眩しいくらいだった。
もっとも、ワタシの心まで晴れている訳ではなく、
代わりに、ピンと張り詰めた緊張感で満たされていた。
これが、最後の交渉だ。
いや、最後の交渉にしなければならない――。
約束の時間五分前に、
ワタシはその前に立っていた。
ここは、歌舞伎町の古い四階建ての雑居ビル。
あのコンサルタント事務所が入った建物だ。
どこからか、不安げな視線がワタシに向けられている、
そんな気を感じたが、気のせいであろう。
ワタシはその気配を無視した。
一階のテナントの中華料理屋から、
飯の炒められる音と匂いがしてくる。
中華の脂っこい匂いは、
普段は食欲をそそるものではあるが、
しかし、その時ばかりは受け付けられるものではない。
軽く昼飯でラーメンを食べたせいもあってか、
少々胃のむかつきを覚えた。
ワタシは胃を抑えながら、中華料理屋の脇にある、
申し訳程度のエントランスに入る。
そのまま、地下へと続く、
階段を一歩一歩着実に降りていくと――。
薄暗いその先には、魔界へと続く門よろしく、
鉄扉が立ちはだかっていた。
ワタシは扉を二度ノックした。
ドンドンと、廊下に鉄を叩く重い音がこだました。
腹の中まで響くような音だった。
中からは、返事らしき声が聞こえたようだったが、
実際にそれが中に入ってもよい、と云う、
返答だったのかは、分からない。
だけれども、そのまま、こんな地下廊下で、
棒切れのように立ち尽くしているのも、
意味のないことである。
ワタシは、鉄の扉を開いた。
「あ〜ら、いらっしゃい」
中華料理屋以上に、胃をムカムカさせる声だった。
この声は……。
「ああ、アナタか……。また、来たな」
聞き覚えのある、ダミ声。
この声は……。
ふたりの中年ども――。
マスウラとルリカワが、ニタニタ笑って、
ワタシを出迎えていた……。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
なんだか、気分がよれよれです。
温泉でも行きたい気分ですね。
4/20 12時
はたして、A子は来るのか〜!?
さて、どうなのでしょうか。
続きを読んでくださいね。
4/20 12時
そして、風船男の子は!?
これについても、引き続き、
見逃さないで下さい。
4/20 21時
ついにこのWEBも報道ステーションにも
紹介されちゃうんですね!
このサイトは紹介されないですよー。
レフォルマがコメントを述べています。
あと、企画に協力です。
4/20 21時
やっぱりドラマ化しましょう!
この話。絶対面白いですよ!
テレ朝やってくれないかな〜♪
趣味で書いているものが、
そう云ってもらえると、うれしいですねー。
4/20 21時
CASTは私=ユースケ・サンタマリア、
A子=相田翔子(古い?)、ノゾミ=YOU、
風船男=伊集院光で。
ってか、交渉人ですね(笑
それにしても、年齢層が実際よりも上っぽいですねえ。
4/21 0時
風船男は喫茶店に一緒に行かなかったのですか?
フラフープしてたのかな〜。。
一緒にはいかなかったですよ。
フラフープは、マスウラですね(笑
4/21 9時
予想もつかない展開でした。
今後の展開も、予想がつかなければいいなあ、と。
それにしても、現実は小説より奇なり、
とはよく云ったものです。
2005.04.22 金曜日
対決! 追い出し屋G 対 元アイドル 編
−第三百六十五話−
アタシたちは、みーんな知ってたの…の巻。
ふたりのオッサンの顔を見、声を聞いた瞬間、
ワタシの背中を親指大の毛虫が這いずり回るような、
嫌な感覚に襲われた。
こんな輩どもに、旧年来の友人のように、
久しぶり、だなんて気軽に声を掛けられ、
しかも、ねっとりとしたニヤリ顔で、云われて――。
その刹那を境にして、
一気にワタシの気分が悪くなるのも、
無論のことだ。
決して、ワタシだけが、
嫌悪感を感じるものではないだろう。
しかしながら、ワタシも社会人の端くれ。
しっかりした――とまではいかないが、
それでも大人であることには変わりがないのだ。
駄目なときは駄目であると云った表情を、
相手方にまざまざと見せ付けることもなかろう。
それが大人故の社会的ルールだ。
大人の作法と云うヤツだ。
ワタシは、大人なのだ――。
だから、ワタシはテンションが下がる思いを堪え、
顔に出す事無く――ちょっとは出したかもしれないが
――「ああ、どうも」と会釈し、部屋に入った。
この部屋は、やはり、この前と変わることはなかった。
淀みきった空気が支配する、
地下室の空気は、薄暗く重々しい。
部屋の中には、長テーブルひとつと、
それを囲むようにして、パイプ椅子が数脚あった。
長テーブルに置いてある、
使い込まれた空気清浄機が、
ぐわんぐわんと音を立てて、
部屋に漂っていた紫煙を吸い込んでいる。
灰皿には、すでにタバコが数本分、灰になっていた。
ワタシは手前にあったパイプ椅子を引き、
鉄扉を背にして座った。
ワタシ
「まだ、みたいですね……」
対面側に陣取っている、マスウラとルリカワ――。
経営コンサルタントを名乗る彼らふたりしか、
この部屋にはいなかった。
占有者A子は、まだ来ていない。
風船男も、まだ来ていない。
そう云えば、ノゾミはどうしたのだろう。
彼女はここに来るのだろうか。
それ以前に、彼女はA子に何かされていないか。
ワタシはノゾミの安否を心配していた。
強者だと思っていた彼女が、実は弱者であり、
A子によって虐げられている立場にある。
その一点で、ワタシは彼女に同情していたのだ。
ルリカワ――達磨オヤジは、
相も変らぬ口調で、マスウラに云った。
達磨オヤジ
「そうよねー。
まだ来ていないわねー。
んでも、A子ちゃん、もうすぐ来るって。
ねえ、そんな電話が掛かって来たわよね?」
マスウラは、タバコに火を点けながら、答える。
マスウラ
「はあ……そうですね」
ダミ声のオッサンは、何だかやる気がなさそうだ。
むしろ、心ここにあらず。
浮付き、そわそわしている。
ワタシ
「もう、そろそろですか……」
約束の時間から、三分程、時計の針は進んでいた。
このまま、時計の針が進むのを、ジッと見守り、
こんな煙く、オヤジ臭が充満する、薄暗い照明の下、
待ち惚けを食わせられるのか――。
達磨オヤジ
「まあ、ねえ。
久々に会ったんだから。
ゆっくりしていきなさいよ、ねえ」
達磨みたいな顔が、のんびりしたことを云う。
こちらとしては、こんなところで、ゆっくりしたくない。
三人の空間は、どう考えても、嫌だ。
早いところ、終わらせて、
早いところ、撤収したい。
ワタシ
「……はあ」
やる気がなさそうな声を上げ、
ワタシは胸のポケットから取り出した、
ボールペンを所在無さげに玩(もてあそ)んだ。
一刻も早く、登場人物が揃いますよう……。
達磨オヤジは、ワタシのことなど、
おかまいなしに話し掛けて来る。
達磨オヤジ
「ねえ、そうだ、そうだ。
A子ちゃんのこと、もう知ってるのよね?」
ワタシ
「あっ……。
この前、ここであったA子が、本当のA子でない。
そのことですね?」
あ、そうだ――。
こいつらも、グルだった訳だ。
ワタシは、ムッとした表情を隠さずに云った。
そりゃ、そうだろう。
思い返すと、腹立たしい出来事であることには、
代わりがない。
ルリカワは、対照的に楽しそうだった。
達磨オヤジ
「そんな、怒らないでー。
ごめんね、ごめんなさいね。
アタシもね、そう、アナタにはね、
悪いことしちゃったなー、って。
思ってるのよ、実際のところ。
そうよ。
アタシたちは、みーんな知ってたの。
この前のA子ちゃんが、ホントは、
A子ちゃんのおねえさんってこと。
アタシもね、頼まれちゃったから。
頼まれちゃったら、断れない性質(たち)なのよねえ。
そうそう。
タチって云っても、アッチの方じゃないわよー」
何がどう面白いのだか、
ルリカワは自分で云った言葉に、
ひとりで大受けして、大爆笑している。
ワタシ
「……」
何を云ってるんだ、この達磨のオッサンは。
心の中に、怒りの炎が立つかと思ったが、
最後の余計な一言で、その気の動きは萎えた。
ワタシの感情を、ダウンさせるべく発動された、
それも巧妙な作戦のひとつか、
と頭に過ぎったが――。
違うか。
達磨オヤジ
「まあ、まあ、何はともあれ、何があっても、
A子ちゃんたちは来るわよ。
そうよ、ねえ?」
マスウラ
「……はあ」
ルリカワの問い掛けに、マスウラは、
ダミ声を更に潰した声で、
曖昧に答えるのであった……。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
テレビ欄にもあります通り、
テレビ朝日系「報道ステーション」で、
競売の特集あります。
そちらにレフォルマが登場しています。
是非、ご覧下さい!
4/21 23時
お〜忘れた頃に出てきたマスルリ!なんか懐かしい。
懐かしいですよね。
書いてるワタシも懐かしいです(笑)
2005.04.24 日曜日
対決! 追い出し屋G 対 元アイドル 編
−第三百六十六話−
唖然とするばかり…の巻。
達磨オヤジ
「あらあら、何か落ち着かない、
そんな感じねえ……」
マスウラの態度を見て、
ルリカワはそう独り言を云った。
口元は緩んでいる。
疑問を口にしているようではあるが、
その実、彼の浮付いた気持ちの源泉を知っている。
そんな態度がありありと見えた。
ワタシは、彼らの前に座ったものの、
彼らふたりだけしかいない状況で、
交渉をする気はさらさらない。
だから、ふたりの顔を見る事無く、
黙って下を向いていた。
ルリカワは、タバコを吹かしていた。
灰皿に捨てられる、彼のタバコの残骸は、
一本、二本と増えていった。
そして、三本目に火を点け、一服したところで、
ふいに、鉄扉が開く音がする――。
達磨オヤジ
「……ああ、来たわね」
ルリカワが呟くまでもなく、誰かが入ってきたのだ。
ワタシは首だけ振り向くと、そこには――。
女が立っていた。
彼女は、ぶかぶかの白い二本ラインの入った、
黒いジャージと、
上に灰色のパーカーをだらしなく着ていた。
彼女の細い目は、世間を睨んでいるようだ。
齢は――不明だった。
彼女は、齢をどうこう云う前に、
まずは、その体型に目が行く。
彼女の体型は、
一言で評するならば、「丸」であった。
身長はさほど高くないのに、横幅はある。
その体に、これまた丸い顔が乗っている。
まるで雪だるまみたいだ。
彼女はワタシを一瞥(いちべつ)すると、
遠慮も躊躇(ちゅうちょ)もする事無く、
ズカズカと地下室に入り込んできた。
誰だ、この女――。
年齢不詳とは云え、
A子やノゾミの母親とまでは、
年は取ってないように思えるが。
ルリカワは、これまた自然体で彼女に接した。
達磨オヤジ
「あら、やっと来たわね。
A子ちゃん」
ワタシ
「……えっ!」
ワタシは、声を上げた。
A子、A子――ってこの女が、か。
A子
「ああ、遅れちゃった?
まあ、十分くらい?
そんくらい、遅れた内に入らないわね」
そう云って、不躾に笑う。
悪気は、全くないようだ。
人の迷惑など、顧みないタイプなのだろう。
達磨オヤジ
「……相変わらずねえ、A子ちゃん。
ねえ、マスさん」
マスウラ
「……ああ」
ルリカワの脇に座った女の方に、
嫌でも目が行く。
丸々と太った顔と体。
温和を、微塵すらさせない、その細い目。
この女が、追い求めていたA子かと云うのか?
ワタシは、彼女の芸能界での活動を、
実際には知らないが、
仮にもアイドルであったとの昔話が、
今の彼女の姿から、想像出来る訳もなく――。
唖然とするばかりであった……。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
報道ステーションに、レフォルマの伊藤が出ました。
もしかしたら、他でも出るかも、
みたいなことを、伊藤が云っていました。
その際は、また告知します。
2005.04.25 月曜日
対決! 追い出し屋G 対 元アイドル 編
−第三百六十七話−
本当に占有者A子なのだろうか…の巻。
マスウラの吐き出す紫煙がゆらゆらと漂い――。
煙の行方を見つめながら、ワタシは思った。
――この女は、本当にA子なのだろうか。
前回は、騙された。
「この人が占有者A子さんです」
と紹介された女は、
実のところ、彼女の姉――ノゾミだった。
一度あることは二度ある。
ワタシの対面にいる、
この女――丸い丸いパーカーの女は、
本当に占有者A子なのだろうか。
疑わしい。
非常に疑わしい。
猜疑心(さいぎしん)に塗れたワタシの眼差しを、
感じ取ったのか、否か――。
占有者A子と名乗る彼女は、
ふてぶてしい様子で、
ポーチから取り出した、シガレットケースから、
スリムサイズのメンソールを一本摘(つま)み出した。
口にくわえると、そのままの格好で――。
しかし、彼女は、火を点けなかった。
一瞬、今、禁煙でもしていて、
気分だけで煙を吸いたいと云う意味で、
タバコをくわえたのか。
ワタシは、そう思ったのであるが、しかし――。
マスウラがふいに席を立つと、
隣のルリカワの、
更に隣に座る自称A子の元まで寄り、
彼女のタバコに火を点けた。
マスウラの表情は、固まったままであった。
A子
「遅いわね……」
タバコに火を点けるのが遅い、と云うことだろうか。
もっと、しゃきしゃき動いて、機敏に火を点けろ!
そう主張したいようだった。
彼女はマスウラを横目にし、不満を表した。
不服を申し立てられた側の、
マスウラは、やはり固まったままであった。
不機嫌な表情のまま、だ。
彼の顔かたちは、
ワタシが入ってきた時とは明らかに違う。
それはそれは、固いものだった。
ルリカワはと云えば、
ニタニタと粘着質な笑いを浮かべている。
……彼女がA子である以前に、
マスウラは彼女に何らかの借りがあるのか、
それとも弱みを握られているようだった。
それに対して、彼女とルリカワとは、
程度の差はあれ、対等的な立場と云うところか。
人間関係の上下が、彼らの中ですら、生じている。
――なるほど。
これが、人間が三人集まれば、それが社会であり、
”社会があれば、上下関係が生まれる”
の典型的な例だ。
社会の組成について、ワタシが思いを馳せている、
そんな時――。
タバコを丸々一本吸いきった彼女は、
ワタシの存在など無視するかのように、
隣のルリカワに云った。
A子
「……ねえ、今日はアタシ、
忙しいところ来てるんだけど。
まだ、始まらないの?」
困った子供に対し、噛んで含めるように、
ルリカワは答えた。
達磨オヤジ
「あらあら、A子ちゃんはせっかちちゃんねえ。
アタシは、ほら、マスさんの頼みだからって、
この場所を提供してるってことだけだから。
だkら、いつ、始まるとかそういったことは、
アタシの範疇には、ないのよ」
ねえ、マスさん――。
ちょっとばかり甘えた口調で、
マスウラに問い掛ける。
マスウラはと云えば、「ああ、まあ」と言葉を濁す。
非常にのらりくらりとした会話だ。
彼ら三人の中で、誰か進行役の人間などいない、
とのことだろう。
では、誰が話の進む先を決めるのだ?
それは――ワタシだけだろう。
ワタシはひとつ、ゴホンと咳を立て、
彼らに云ったのだった……。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
ゴールデンウィークは、
ちょっとどこかに旅立とうかと思います。
4/24 13時
報ステで顔モザイク出演は、Gさんですか!?
どうでしょうか……(笑)
4/25 9時
むむむ〜〜A子登場!でもこれじゃ風船男もがっかり?!
がっかりなのでしょうか?
さてさて、どうなることやら……。
2005.04.26 火曜日
対決! 追い出し屋G 対 元アイドル 編
−第三百六十八話−
挑発に乗ってしまったワタシ…の巻。
ワタシ
「あの、それで……。
今後の退去に関してですが……」
初っ端が肝心とばかりに、
ワタシはストレートに話し出した。
別にこんな地下室まで来て、オッサンふたりと、
丸々とした年齢不詳の女ひとりと一緒に、
よもやま話に興ずる、
だなんて趣味はないし、暇もない。
一刻も早く、薄暗く息苦しいこの地下から、
脱出しなければ……。
ワタシ
「どうしますか?」
ふうん、と息を鼻から出し、自称A子は述べる。
A子
「……で、何が?」
ワタシ
「いや、何がではなくて……」
この女、話す気はあるのだろうか。
女はワタシには全く興味がない、
といった体でルリカワの方を見ている。
まあ、こちらに興味ありありなのも困るが、
興味全くなし、と云うのも違うだろう。
何事もほどほどが肝要だ。
そんな肝要の精神が欠けている、
彼女は云った。
A子
「あーあー、もう、うるさいわね。
知ってるわよ。
知ってる、知ってる」
彼女は、手をひらひらさせながら云った。
A子
「ああ、もう、うるさい、うるさい」
ワタシ
「何が、うるさいんですか?」
――うるさい?
こちらが真剣に聞いているのに、
さも、面倒臭いように、
うるさいと吐き捨てるとは、
この女、一体何様のつもりだ?
少し頬を引きつらせながら、尋ねる。
A子は、当然のことは当然とばかりに――。
A子
「……うるさいっつーの!
それがうるさいってのが分からない?
アンタも、バカねえ。
バカよ、バカ!」
ワタシ
「……バ、バ、バ、バカ!?
バカとは何ですか、バカとはっ!!」
まだ交渉らしい交渉が始まっていないのに、
いきなりのバカのラッシュ。
それはワタシも怒る。
怒るよ、そりゃ。
怒るのも、もちろんのことだろう!!
このヤロウ!!
A子
「だって、そんな、勢いよく云われたって、
困っちゃうじゃないの、こっちだって。
だから、そんな無理無理に話してくる、
アンタがバッカみたいってことよ?」
ワタシ
「だから、何ですか。
バカって何ですか、バカって!!」
お互いがお互い、バカがバカと呼び、バカと叫ぶ。
これでは、子供の喧嘩だ。
ちょっと呆れ顔をしたルリカワが割って入る。
達磨オヤジ
「まあ、まあ。
バカって云うのは、ね。
最後に、バカって云った人が、本当のバカなのよ」
A子
「ふふん。
じゃあ、最後にバカって云ったのは、
そっちねえ」
ああ、低レベルな言い争い。
レベルは、低いも低い。
小学生の朝の会でも、やっているみたいだ。
センセー!
鈴木くんが、アタシの教科書に落書きするんで、
困ります!
何とかして下さい!!
――そんな感じ。
普通だったら、相手がバカバカ云おうが、
軽く流しておしまいにするところだ。
だけれども、その時のワタシは、
彼女の挑発に乗ってしまった……。
……続く。
<おまけ日記>
今日のひとこと。
眠いです。
毎日が眠い。
2005.04.27 水曜日
対決! 追い出し屋G 対 元アイドル 編
−第三百六十九話−
自称A子は、本当のA子か?…の巻。
ワタシ
「いやいや、バカとかは、ね。
そう云ったことを云う神経。
それは疑われますよ?」
こちらとしては、溢れる怒気を抑え、
冷静に云っているつもりではあるが、
端から見ればお互い様。
どっちもどっちで、むしろ、
ワタシがA子から受けた挑発に、
完全に乗っているとしか、思われないだろう。
抑えているつもりの怒りは、
第三者の目からすると、
全く抑え切れていないようにしか、
見えていないようだった。
A子
「んんん、なーに云っちゃってるんだか。
全く全然なーに云ってるのか、分からない。
ま、分かりたくもないけれどもね」
――何だろう、この不毛な会話は。
我ながら、こんな挑発に乗り続けていること自体が、
本当にバカらしい行為だと気付く。
せっかく、こちらが夢にまで見るくらいの勢いで、
ようやく会えた占有者A子だと云うのに――。
こんな言い争いで時間を潰していいものなのか?
――いい訳がない。
バカバカ云われても、いいじゃないか。
最終的な目標は、別に彼女に好かれること、
とかそんな程度のことじゃないのだし。
むしろ、好かれたくはないだろう。
急速に、怒りの気持ちは醒めていく。
それにしても――。
この女のこと、だ。
この女の正体は、誰なのだ?
いや、本当にA子なのか、どうか。
まだ、分からない。
確信が持てない。
想像とは違い過ぎる、外見。
この女は本当に――。
ワタシ
「……ううむ。
まあ、分からないとか分かりたくないとか、
そう云う風に云われても、
ワタシはワタシで困るのですがね。
でも、大体にして、あの、アナタは――。
本当にA子さんなのですか?」
ズバリのところを尋ねた。
彼女は、一瞬、驚いた表情を見せたが、
すぐに小バカにした顔をする。
A子
「……いやあ、ねえ。
ちょっと、聞いた?
この人の発言、聞いた?」
ルリカワに問い掛ける。
ルリカワは、下卑た笑い声を上げながら、
ワタシに云った。
達磨オヤジ
「いやあ、ねえ。
バカバカ云い合ってたと思ったら、何?
今度は、A子ちゃんのこと、A子ちゃんじゃないって?
そう思ってるの?」
A子
「本気でそう思ってるの?
思ってるみたいねー。
おっかしー。
バッカみたい」
ワタシ
「……いえ、先日のこともありましたから」
そうだ、こちらは決して、
馬鹿げたことを云っているつもりはない。
A子だと偽ったノゾミを出してきたのは、
そちらの方じゃないか。
何度も騙されて、たまるか。
達磨オヤジ
「あのねえ、アナタねえ。
この前のことがあったからって、
そう人を疑うことはよくないわよー」
よ